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ネジバナ

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ネジバナ
ネジバナ(東京都多摩市・2006年6月)
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 単子葉植物綱 Liliopsida
: ラン目 Orchidales
: ラン科 Orchidaceae
: ネジバナ属 Spiranthes
: ネジバナ S. sinensis
学名
Spiranthes sinensis (Pers.) Ames
var. amoena (M.Bieb.) H.Hara
和名
ネジバナ(捩花)
別名:モジズリ(綟摺)

ネジバナ(捩花、学名:Spiranthes sinensis (Pers.) Ames var. amoena (M.Bieb.) H.Hara)は、ラン科ネジバナ属の小型の多年草。別名がモジズリ(綟摺)。

特徴

源融百人一首でネジバナを「もぢずり」と詠んでいる

湿っていて日当たりの良い、背の低い草地に良く生育する。花色は通常桃色で、小さな花を多数細長い花茎に密着させるようにつけるが、その花が花茎の周りに螺旋状に並んで咲く「ねじれた花序」が和名の由来である[1]。「ネジレバナ」、「ネジリバナ」、「ねじり草(そう)」とも呼ばれる事もある。学名のSpiranthes(スピランセス)は、ギリシャ語の 「speira(螺旋(らせん))+ anthos(花)」に由来する。右巻きと左巻きの両方があり、中には花序がねじれない個体や、途中でねじれ方が変わる個体もある。[2]。右巻きと左巻きの比率は大体1対1である[3][4]

花茎から伸びる子房は緑色で、茎に沿って上に伸び、その先端につく花は真横に向かって咲く。花茎の高さは10-40 cm[5]。 花は小さく、5弁がピンク、唇弁が白。花のつく位置が茎の周りに螺旋状であるため、花茎の周りにピンクの花が螺旋階段のように並ぶことになる。この螺旋は右巻きと左巻きの両方が見られる[6]。白花や緑色の個体もしばしば見られる。コハナバチのような小形のハナバチなどが花粉塊を運んで他花受粉が起こると考えられるが、長期にわたって花粉塊が運び去られないと、これが崩壊して柱頭に降りかかり、自家受粉を成立させることが知られている。開花時期は4-9月[1]

ねじれた花序のネジバナ

葉は柔らかく厚みがあり、根出状に数枚つける。冬期は楕円形だが生育期間中は細長く伸びる。根は極めて太短く、細めのサツマイモのような形で数本しかない。

ごく稀に真っ白い花をつける個体(シロネジバナ)が見られ、園芸愛好家に特に好まれる[6]源融百人一首で詠んだ「陸奥の しのぶもぢずり 誰ゆゑに 乱れそめにし 我ならなくに」の中で、「もぢずり」はネジバナである。俳人でもある角川源義が、「ねじ花をゆかしと思へ峡燕(かいつばめ)」と詠んでいる。

生育環境

日本全土[7]ヨーロッパ東部からシベリアにかけて、温帯・熱帯アジア全域、オセアニアなどに広く分布する[5]

ラン科ではめずらしく、芝生や土手、都市公園等の人間の生活圏に近い所で普通に見ることができる。この為、ともすれば花の綺麗な雑草として扱われ、芝刈り機で刈り取られてしまう。他方、その花の可愛らしさから、昔から愛でられ、愛好家主催の展示即売会等で、山野草として販売される事もある。昭和の終わり頃、当時の野性ランブームの中で管状の葉や斑入りなどの変異個体を収集するのが流行したが、後述のように単独栽培や株分けによるクローン増殖が困難なこともあって、ごく一部を除いて保存されていない。

栽培に関して

江戸時代に栽培されていて、花壇地錦抄では「もぢずり」として掲載されていた[2]。庭園の芝生などに普通に見られ、サツキや他種の山野草を植えた鉢に落ちた種子から発芽した株が非常に強健に育つにもかかわらず、ネジバナ単独で鉢植え栽培をしようとすると、栽培がかなり難しい場合がある。

ネジバナの根は菌根となって菌類と共生しているが、ネジバナに共生する菌根菌として知られるもののひとつは、植物遺体を分解して生活する担子菌Tulasmella calospora であり、これは不完全菌 Rhizoctonia の完全世代のひとつである。

近縁種

  • ナンゴクネジバナ(南国捩花、学名:Spiranthes sinensis var. sinensis
奄美大島以南の南国諸島と中国南部・海南島台湾に分布する[5]鹿児島県で、レッドリスト危急種(絶滅危惧種II類・VU)指定を受けている[8]

出典・脚注

  1. ^ a b 林弥栄『日本の野草』山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、2009年10月、572-573頁。ISBN 9784635090421 
  2. ^ a b ネジバナ”. 三重県立博物館. 2011年9月26日閲覧。
  3. ^ 本田陽子 (1976年12月20日). “ネジバナSpiranthes sinensis A.花穂の拗捩について”. CiNii. 2011年9月26日閲覧。
  4. ^ 古澤結理 (2003年). “ネジバナのねじれに関する研究” (PDF). 新潟日報. 2011年9月26日閲覧。
  5. ^ a b c 『種子植物 双子葉類9・単子葉類1』朝日新聞社〈朝日百科 植物の世界〉、1997年10月、155頁。ISBN 4023800104 
  6. ^ a b 岩槻秀明『街でよく見かける雑草や野草がよーくわかる本』秀和システム、2006年11月5日、428-429頁。ISBN 4-7980-1485-0 
  7. ^ ネジバナ”. 国営昭和記念公園. 2011年9月26日閲覧。
  8. ^ 日本のレッドデータ検索システム(ナンゴクネジバナ)”. エンビジョン環境保全事務局. 2011年9月26日閲覧。

関連書籍

  • 田代勇司『ネジバナの形態と生理―自然をどう観るか』ソルト出版、1989年1月。ISBN 4915482057 

外部リンク