テンゲン

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テンゲン(Tengen Inc.)は、アメリカのコンシューマーゲームメーカー。社名は「アタリ」同様、囲碁用語の天元よりとられているが、アタリの創設者であるノーラン・ブッシュネルとは関係がない。

アメリカ本社

Tengenはアメリカのアーケードゲーム会社・アタリゲームズのコンシューマ部門を担当する子会社として1985年に設立された。アタリゲームズ社は元々アタリ社という名前で、アーケード部門とコンシューマ部門の両方を持っていたが、赤字続きのコンシューマ部門をアタリコープとして別の会社に売却し、アーケード専業メーカーアタリゲームズとなった際、一時的にコンシューマから撤退することになっていた。経営を立て直した後、新たにアタリゲームズのコンシューマ部門として設立した子会社がTengenである。

1986年、任天堂がNintendo Entertainment Systemを引っ提げてアメリカ市場に進出すると、テンゲンは直ちに参入を決定。『ガントレット』など、親会社の人気ゲームの移植作を投入しようとした。

しかし製造ロット数などを巡って米国任天堂(Nintendo of America. NOA)との確執が生じ、テンゲンはNESのリバースエンジニアリングを行って、独自にNES用ソフトを販売。実際には特許当局からNESチップのコードを盗用していた。これに対してNOAも契約違反やコード盗用などを挙げての訴訟に踏み切り、『テトリス』の販売権なども絡んで、対立は90年代前半まで続いた。これは結局任天堂に有利な条件で和解する。アタリショックから立ち直ろうとしたアタリゲームズはこれで再度傾き、挙句にはセガメガドライブ用に準備していた『テトリス』がお蔵入りになるという波紋も呼んだ。

1994年、アタリゲームズの親会社・タイムワーナーの方針で、コンピューターゲームなどのインタラクティブ・メディア部門が「タイムワーナー・インタラクティブ」(TWI)の名称の下にグループ化される際、テンゲンはアタリゲームズに吸収された。

日本法人

日本において「テンゲン」という場合、Tengen Inc.の日本法人「株式会社テンゲン」(Tengen Ltd.)を指す。メガドライブ時代には『ハードドライビン』、『ピットファイター』、『ガントレット』、『マーブルマッドネス』等の移植作品を主に発売していた。『ガントレット』と『マーブルマッドネス』は日本法人が直接移植に携わっており、マーブルマッドネスにおいては、先に他社より海外で発売されてたものよりもテンゲン版の方が移植度は高く、当時のゲーマーからの評価も高かった。

1994年、テンゲン日本法人は社名を「株式会社タイムワーナーインタラクティブ(TWI)」に改めると共にセガサターンプレイステーションに参入。日本オリジナル作品の制作も開始した(第1作は『TAMA』)。しかし、1997年、『モータルコンバット』のミッドウェイやピンボールの老舗メーカー・バリーを傘下に持つWMSインダストリーズがタイムワーナーに代わってアタリゲームズの親会社となった。同社は「日本に開発拠点を置くメリットがない」としてTWI日本法人を解散した。最終作はアクションゲーム『心霊呪殺師太郎丸』。開発中だった『レイディアントシルバーガン』はトレジャーが引き継いで完成させた。

テンゲンマニュアル

テンゲンが日本のゲーマーに注目され始めたのは、日本国内の家庭用ゲーム機市場に参入した1990年の、『ハードドライビンメガドライブ)』『クラックスPCエンジン)』辺りとされているが、発売していたゲームのクオリティもさることながら、当時他社にはあまり見受けられなかったジョークやギャグを織り交ぜた取扱説明書のマニュアル内容も評判を呼んだ。

「余計なお世話かもしれませんが、運転免許を持っている方で、恋人の前で遊ぶのなら、EASYにして安全運転をこころがけたほうが良いと思います。事故を目撃されて乗ってもらえなくなったら問題ですから。」

といった感じの砕けた軽いノリの文章で構成された内容が、日本国内で発売されたテンゲンブランドのマニュアルでは恒例となっており、特に一時期ほぼ月1本に近いペースでメガドライブ用ソフトを発売していた頃には、マニュアル内に読者のおたよりコーナーまで設けていた。当時の他のゲームメーカーでは当たり前だった、マニュアルは取扱い説明に終始した無味乾燥なものとは一線を画しており、当時のユーザーからは大きな注目をひいた。尚、タイムワーナー・インタラクティブ時代になってもこれらの路線は継続された。

その上で同社の移植作品にはゲーマーを納得させる内容のものが多く、テンゲンブランドはこれらの奇抜なマニュアル内容に頼ったものだけではなかったことからも、当時のマニアには評価されていた。

翻訳テロップ

アタリのアーケードゲームを日本国内で発売する際に、ローカライズ作業で日本語化を担当していたのはテンゲンである。代表的な翻訳には「コインをいれよ 1クレジット(ハードドライビン)」「残虐行為手当(ピットファイター)」「コインいっこいれる(スタンランナー)」等があり、直訳的かつどこか外してるジョークめいた日本語テロップは、発売当時のゲーマー世代には今日まで語り草となっており一定の熱狂的ファンを産んだとされる。

脚注