チョーク

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。Floe~jawiki (会話 | 投稿記録) による 2022年10月25日 (火) 03:38個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (出典を付して整理)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

黒板用チョーク
絵画用チョーク
路上にチョークで絵を描く人物

チョーク(白墨[1]: chalk, chalk stick)は、対象物に粉を擦り付ける事によって筆記を行う文房具の一種。黒板に字を書き込んだり、絵を描く事、物品への記入などに用いられる。白墨(はくぼく)とも呼ぶ。

概要

「チョーク」とは本来、原料である白亜を指すが、工業製品としては炭酸カルシウム石膏硫酸カルシウム)を水で練り成型したものがチョークとして使われている。また、ホタテ貝殻[2]卵殻[3]もリサイクル原料として用いられている。

基本は白色だが、赤、青、黄などに着色されたチョークも黒板に使われる。色覚異常者でも色の違いを判別しやすいチョークも販売されている。

チョークで手指や被服を汚さない、また手荒れ、チョークの折損を防ぐ、短いチョークを有効活用するなどのためにチョークを保持する「チョークホルダー」が用いられることもある。なおチョークの寸法は日本産業規格で長さと最小径が定められているが、製品や時代によっても異なる[4][5]

歴史

19世紀初頭、イギリスで建築材料の石灰岩で硬い物に対して線が書けることが知られるようになった[5]。さらにフランスで使いやすいように石灰の粉末を焼いてから溶かして棒状に固めたものがチョークとして誕生した[5]

日本では大阪の雑貨商の杉本富一郎が1873年(明治6年)に初めて輸入し、さらに1875年(明治8年)には初の国産白墨を完成させた[5]。学校の授業でチョークが本格的に使用されるようになったのは大正時代といわれている[5]

かつて日本の警察でも駐車違反監視用にタイヤ・路面への基準線・時刻のマーキングに使用されていたが、2006年の道路交通法改正後は即時取り締まりとなり使われなくなった[6]

種類

炭酸カルシウムタイプ
炭酸カルシウム()でできているチョーク。粒子が細かく比重が重い[5]。細かい文字を書くのに適している[5]。現在は販売されていない羽衣文具のフルタッチチョーク、日本理化学工業のダストレスチョーク、日本白墨工業のセラミックチョーク、スクール72チョーク、エコチョーク72、馬印のDCチョークDX、CCチョークなど。カキやホタテの貝殻、卵の殻などを混ぜていることもある。なお、炭酸カルシウム製のチョークを称してダストレスタイプと言われることがある。
また、蛍光チョークや太字チョーク、耐水性チョーク、マーブルチョークなどバリエーションも豊富である。
硫酸カルシウム(焼き石膏)タイプ
硫酸カルシウム()でできているチョーク。粒子密度は粗く比重は軽い[5]。太い文字を書くのに適している[5]。現在は販売されていない羽衣文具のニューポリーチョーク、日本理化学工業のホケンソフトチョーク、日本白墨工業のきぬごしチョーク、馬印のスクールチョーク、クラウンのクラウンチョーク、橘高白墨の橘高チョーク、ニューゴールデンチョークなど。

安全性

チョークには基本的に毒性があるとは考えられていないが、大量に経口摂取すると腹痛や便秘などの症状を引き起こす場合がある[7]。2003年には有毒なを含んだチョークが大手玩具店や百貨店で販売されていた事例もある[8]

日本産業規格JIS S 6009「白墨」や、欧州指令EN71(CEマーク)、日本玩具協会のSTマークでは有害物質の規制基準を設けている[9]

また一般にチョーク粉のような難溶性粉塵の吸入は異物反応の原因となる[10]。長期の吸入摂取による肺疾患が疑われる症例報告もあるが、報告数が少なく因果関係は明らかでない[11]。チョークは10マイクロメートル以下の浮遊粉塵(浮遊粒子状物質)を発生させるが、炭酸カルシウム製は硫酸カルシウム製に比べて粒子の比重が大きく飛散が少ない[12]。日本では学校保健安全法に基づく学校環境衛生基準でこうした浮遊粉塵の環境基準を設けている。

チョークが出てくる作品

  • グリム童話狼と七匹の子山羊』 - オオカミが声を変えようしてチョークを食べる場面がある。なお、現在の日本で販売されているチョークにはそのような性質はない。
  • 安部公房魔法のチョーク』(月曜書房。1950年)
  • 筒井康隆虚航船団』(新潮社、1984年) - 宇宙船の乗組員。
  • 学園を舞台にした漫画やドラマでは居眠りする生徒に教師がチョークを投げつけるシーンが定番であるが、実際行うと体罰になりかねない行為である。

脚注

  1. ^ 大槻文彦「チョウク」『大言海』(新編)冨山房、1982年、1333頁。 
  2. ^ ホタテ貝殻配合チョーク日本理化学工業
  3. ^ 卵殻リサイクルチョーク(日本白墨工業)
  4. ^ JIS S 6009:2013「白墨」日本産業標準調査会経済産業省
  5. ^ a b c d e f g h i 黒板のお話”. 関東黒板工業会. 2020年5月27日閲覧。
  6. ^ 道路のチョークの印、昔は駐禁いまは…?”. 乗りものニュース. メディア・ヴァーグ (2017年9月24日). 2022年10月25日閲覧。
  7. ^ Swallowing chalk”. MedlinePlus. U.S. National Library of Medicine. 2019年12月15日閲覧。
  8. ^ Playing With Poison: Lead Poisoning Hazards of Children’s Product Recalls 1990 - 2004. Kids In Danger. (2004-8). https://kidsindanger.org/docs/reports/2004_playingwithpoison.pdf 
  9. ^ 子供用おもちゃに関連する法規制等”. 身の回りの製品に含まれる化学物質. 製品評価技術基盤機構 (2019年10月2日). 2019年12月15日閲覧。
  10. ^ 森忠繁、竹岡清、明石信爾、大羽和子「講義室内のチョーク粉塵」『日本衛生学雑誌』第31巻第5号、日本衛生学会、1976年、589-594頁、doi:10.1265/jjh.31.589 
  11. ^ 資料4 ILO職業病一覧表記載疾病文献レビュー: 10 慢性閉塞性肺疾患(COPD)”. 労働基準法施行規則第35条専門検討会 資料. 2019年12月15日閲覧。
  12. ^ 学校環境衛生管理マニュアル』(平成30年度改訂版)文部科学省https://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/hoken/1292482.htm 

関連項目

  • 羽衣文具 - 最高級品として重宝されていたが、2015年に廃業し、馬印に技術移転した。