シャッター (カメラ)

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カメラにおけるシャッターとは写真フィルム、あるいは固体撮像素子に対して撮影時のみ光があたるように、撮影時露光時間中のみ開き、それ以外の時は光をさえぎる装置。同様の構造の装置が映写機ビデオプロジェクター機械式テレビ液晶テレビコピー機ミニラボステッパー回光通信機などの各種光学機器、表示機器、映像機器、露光装置にも使われる。

歴史

初期の写真撮影においては、乾板(フィルム)の感度が悪く長時間露出は当たり前であったのでレンズキャップの開閉でシャッターの役割を兼ねていた[1]。しかし技術の発展によってフィルム感度が上がってくると、瞬間的かつ正確な時間露光する必要が出てきたため、シャッターが開発された。

本来、シャッターは「shutする(閉じる)機構」のことである。露光を開始(レリーズ)するのは撮影者であり、決められた時間で露光を停止させることがシャッターの役割となる。しかし現在では「シャッター(シャッターボタン)を押す」ことが露光を開始し、終了する一連の動作をさすようになっている。

シャッター速度

レンズシャッターのシャッター速度設定リングで、古い大陸系列である。

現在は、ごく簡易なものを除き、露光時間(シャッター速度)は撮影者やカメラの露光計・コンピュータ等が適切な秒時に調節できる。 シャッターは基本速があり、その基本速を何らかの手段で遅らせたり、実効速度を速くしたりすることで必要な速度を得ている。 選べるシャッター速度の調整幅はシャッターによって異なるが、速度の系列が大体決まっており、露光時間が約2倍ずつになっていく倍数系列が現在の主流である。露光計算上では、露光時間を2倍にすることはレンズ絞りを1絞り開けることと等価になるため、倍数系列が一般的になったが、かつてはきりの良い数字を用いた大陸系列が多く使われていた。また、このどちらにも属さない系列も存在する。

シャッター速度の系列
倍数系列 1秒-1/2秒-1/4秒-1/8秒-1/15秒-1/30秒-1/60秒-1/125秒-1/250秒-1/500秒-1/1000秒
大陸系列 1秒-1/2秒-1/5秒-1/10秒-1/25秒-1/50秒-1/100秒-1/200秒-1/500秒-1/1000秒

撮影者が手動で露光開始、終了の制御をする(露光時間をレリーズボタンを押す時間の長さで制御する)ことを特にバルブ撮影等と呼ぶ。この「バルブ」は元々フラッシュバルブを指しており、かつてシャッターの開閉に連動してフラッシュを光らせるフラッシュシンクロ機構がなかった時代にはシャッターを開けたままフラッシュバルブを焚いて撮影する目的で使われた[2]。バルブと似た動作をするものに「タイム」というものもあり、こちらはレリーズボタンから手を離してもシャッターは開いたままになりシャッターを閉じるには別に操作をするというものである。フラッシュシンクロが当たり前に搭載されるようになった現在でも長時間露光に使う目的でバルブシャッターは多くのカメラに搭載されているが、タイムに関してはリモートレリーズとバルブで代用ができるため、ほとんど姿を消した。

露光秒時は、通常分母のみを表示する。たとえば125分の1秒なら「125」、2分の1秒なら「2」というように表示される。しかし、1秒を超える長時間露出と紛らわしくなってしまうため、そのようなシャッター速度がある場合は、たとえば2秒を「2"」「2s」と表示したり、数字の色を変えたりして区別していることが多い。

先述のバルブは「B」と表示されることが多いが、古いドイツ製のカメラやシャッターでは「Z[3]と表示されていることもある。タイム露出は「T」と書かれることが多い。

フォーカルプレーンシャッターにのみ存在する「X」は、X接点シンクロの最速同調速度をあらわしている。

シャッターの種類

カメラのシャッターは、設置する位置・制御方式によって分類することができる。しかし、どの種類にも含めることができない特殊なシャッターも存在する。

設置位置別の分類

設置する位置によって、感材の直前に設置するフォーカルプレーンシャッター、レンズ付近に設置するレンズシャッター、感材とレンズの中間に設置するレフレックスミラーシャッター、レンズの先端に設置するソロントンシャッターに大別される。

フォーカルプレーンシャッター

いずれもフォーカルプレーンシャッターのシャッターダイヤルで、倍数系列である。
一番上は旧式で目盛りが等間隔ではないタイプである。
二番目はX位置がなく、60がXを兼ねているタイプである。
一番下のタイプは絞り優先AEになる「AUTO」位置がある。黄色の「2」「4」は2秒と4秒である

フォーカルプレーンシャッターとは、像面のすぐ近くに設置されたシャッターのことである。レンズシャッターと比較してシャッタースピードの高速化が容易であり、なおかつ、レンズ設計の自由度が高まり、大口径化が容易である。撮像面の直前で遮光をしているため、レンズ交換のために別の遮光装置が必要なく、レンズ交換式カメラに用いられることが多い。2005年現在販売中のライカ判一眼レフカメラは全てこの方式を採用している[4]

動作原理は2枚の遮光性のシャッター幕の走行によって画面の片側から開閉するもので、フォーカルプレーンシャッターでは基本速は幕速と呼び、中間的な速度になっている。幕速は、X=何分の1秒、というように表される。幕速より低速のシャッター速度では先幕が走行した後、スローガバナーや電磁制御によって指定した時間の間後幕が閉まるのを遅らせて全開状態を維持し、その後後幕が閉まって露光が終わる。幕速より高速のシャッター速度では全開せずに2枚の幕はスリット状になって走行するが、幕そのものの移動速度は変化しない[5]。さらにシャッター速度を高速にする場合、先幕走行後に後幕が走行する時間差をさらに短くする。仮に幕の走行中の速度が一定だと仮定すると、この場合における2枚の幕によって形成されるスリットの幅は

設定した速度÷幕速×画面の幅[6]

となる。この仮定のもとでは

幕速1/30秒ライカ判カメラ用横走りシャッター

のシャッタースピードを1/60秒に設定するとスリット幅は画面幅36mmの半分である18mmになり(1/60÷1/30=1/2、36×1/2=18)、シャッタースピードを1/125秒に設定するとスリット幅は画面幅の1/4である9mmになる(1/125÷1/30≒1/4)。また同じシャッター速度でも幕速の速いシャッターのほうがスリットの幅は広い。シャッタースピードを1/125秒に設定した時、上記幕速1/30秒のシャッターはスリット幅9mmであったが、幕速が1/60秒のシャッターではスリット幅18mmになる[7]。ただし実際のシャッターは走行中の速度が一定ではないので、露光時間は同じでもスリット幅は画面上の位置によって変化する。

理論上はスリット幅を狭めれば幕速に関係なくいくらでも速いシャッター速度を作ることができるが、実際は同じ高速シャッター秒時でも幕速の速いシャッターに比べて幕速の遅いシャッターではスリット幅をより高い精度で制御しなければならず[8]、またあまりにスリット幅が狭いと幕の部品の厚みにより画面の端で露出不足になる割合が高くなることもあって、スリット幅のみによって極端に速いシャッター速度を出すことには限界がある。また、スリットを狭めすぎると回折現象により像面の画質が著しく低下する。

フォーカルプレーンシャッターはカメラの内部に直接組みつけられているものとユニットになっているものがあるが、ユニットのほうがコストが安く、故障時もユニット交換で対応できるため、現在のフォーカルプレーンシャッターはほとんどすべてユニットになっている。

フォーカルプレーンシャッターは長所の多い方式だが、フラッシュを使う場合スリット露光の高速秒時では発光時間内に露光を終えることができない[9]ので幕速以上の速度ではフラッシュが同調しない[10]、シャッター幕の走行方向にて画面の両端で露出されている時刻が異なる[11]、2枚のシャッター幕の走行により露出するために先幕と後幕の走行特性差による露出むらが出やすいことなどの欠点もある。

フォーカルプレーンシャッターは、その機構によりドラム型スクエア型ロータリー型の3つに大別できる。

ドラム型
ドラムフォーカルプレンシャッターのシャッター幕。巻き上げ途中で止めたもので、中央の縦線は棹である。棹より左が先幕、右が後幕である
布や金属箔でできた2枚の幕をシャッターの左右に配置した3~4本の軸(ドラム)によって高速で巻き取る方式で、最も古いタイプのフォーカルプレーンシャッターである。
先幕・後幕は片側がそれぞれ1本ずつのテンション軸(巻きバネで巻き取る方向にテンションがかかっている)に取り付けられており、常に巻き取られる力がかかっている。また反対側は先幕が開くタイミングと後幕が閉まるタイミングを制御するために鉤針状のストッパーが付いている制御軸に取り付けられているが、この制御軸は先・後の幕で共通の軸になっているタイプと、別々の軸になっているタイプがある。制御軸が共通になっているタイプのほうが古い形式である。テンション軸と先幕、制御軸と後幕同士は直接接着されているが、制御軸と先幕、テンション軸と後幕は露光のための開口部を作るためにフィルム面の外でリボンや糸などを介して接着されている。また幕にはリボン取り付け部に金属製の棹が取り付けられている。
巻き上げによってチャージされると先幕はテンション軸から引き出されてフィルム面を覆い、後幕は制御軸に巻き取られる。最後までチャージされると制御軸についている先幕用・後幕用の各鉤が掛かる。レリーズボタンを押すと先幕を止めていた鉤が外れて先幕が走り、シャッターは開く。基本速では、先幕が全開すると後幕の鉤が外れ、シャッターは閉まり露光は終了する。高速シャッターでは、規定のスリット幅まで先幕が走行すると後幕の鉤が外れて先幕を追いかけるように走行する。低速シャッターでは、先幕が全開すると後幕の鉤が外れるが、走行を遅延させるためにガバナーなどを使って後幕の走行を規定の時間遅らせ、その後後幕が走行して露光が終わる。
この方式の場合、横走行型になることがほとんどであるが、縦走行型のものもある。現在の形式のドラム型シャッターを最初に35mmカメラに用いたのは独ライツのバルナックライカであるが、ソロントンシャッターやグラフレックスシャッターなど、その原型となるシャッターは以前から存在していた。
現在は多くがスクエア型に置き換わっているが、静粛性に優れるため現在でもM型ライカなどには採用されている。また大型化が容易なため、中判一眼レフなどでも使用されている。
スクエア型
スクエアフォーカルプレンシャッターのシャッター幕。横から腕木が伸びて羽根を支持している。これは巻き上げた状態で、見えているのは後幕である
現在主流の方式で、幅数ミリの金属等でできた羽根を複数並べてシャッター幕とする方式のシャッターである。閉じているときは羽根の間隔を広げて画面を遮光し、開いているときは羽根同士が重なることで小さなスペースに退避する。幕は腕木によって横から制御機構に接続されており、羽根は互いに平行に動くようになっている。
チャージされると先幕はフィルム面に展開されて遮光し、後幕は画面上方に折りたたまれ、ともにストッパーでロックされる。シャッターボタンを押すと先幕のストッパーが外れて先幕が画面下方に瞬時に折りたたまれて露光が始まり、指定された秒時が経過すると後幕のストッパーが外れて後幕が瞬時にフィルム面上に展開し、露光が終わる。
この方式は必ず縦走行型である。ドラム型に比べユニット化しやすい、省スペース、幕速が速いなど数多くの利点を持つため、現在ではほぼすべてのフォーカルプレーンシャッターがこの形式になっている。しかし、シャッター音がドラム型よりうるさいという欠点もある。
この形式は1960年に日本のコパル(現・日本電産コパル)が複数の精密機器メーカーやカメラメーカーと協力して開発した。その第一号製品「コパルスクエア」の製品名からこの方式はスクエア型と名づけられた。スクエア型シャッターを初めて搭載したカメラは小西六の「コニカF」と「コニカFS」だが、「コニカF」に搭載されたのは「コパルスクエア」シャッターユニットではなくカメラに直接組み込まれたスクエア方式シャッターである。当初の製品は先・後各2枚の羽根で構成されていたが、小型化のため各3枚、各5枚と増えていった。
ロータリー型
映画用カメラシャッターの基本動作:シャッターが開いたときフィルムは一瞬感光する。シャッターが閉まったとき、パーフォレーションを使い、次のコマに送る。
2枚の扇型の羽根を回転させて露光を与えるシャッターである。シャッター速度は2枚の羽根の角度によって変更される[12]。主にムービーカメラに使われてきたシャッターであり、開角度を調整することでフェードイン、フェードアウト効果を演出できる。かつてはスチルカメラでもいくつか採用例があったが[13]、等速で連続的にシャッターを切ることが容易であるものの複雑で機構が大型化しやすいため、スクエア型のシャッターで高速連写ができるようになった現在では全く用いられない。


旧来はドラム型が多かったが、現在ではスクエア型が主流である。ライカ判など横長の画面を持つフォーマットでは、縦走りの方が距離が短い分高速化に有利である。全フォーカルプレーンシャッターにおける最高速度はミノルタのα-9xiおよびα-9が備える1/12000秒である。

補足事項

特に古いフォーカルプレーンシャッターは、特殊な操作を必要とするものがある。

回転ダイヤル式ドラムフォーカルプレーンシャッター
ドラム型シャッターのうち旧式のものは、シャッターチャージ時・シャッターレリーズ時にシャッターダイヤルが回転する。これは回転ダイヤル式と呼ばれ、シャッターチャージ前と後ではシャッターダイヤルの目盛り位置が変わってしまう。そのため、シャッター速度をチャージ前でも後でも設定できるように設定指標がチャージ前用・チャージ後用と2つ用意されているカメラや、指標をダイヤルと同軸に組み込んで指標もダイヤルとともに回転するようにしたカメラが多い。しかし特に古いカメラの場合はシャッターチャージ後に合わせる目盛りのみが付いていたり、チャージ前にシャッターダイヤルを回そうとすると幕が開いてしまうカメラもあり、これらのカメラはシャッターをチャージするまでシャッター速度を変更できない。また、シャッターレリーズ時にダイヤルに触るとシャッター速度が狂ってしまうため、レリーズ時はダイヤルに触ってはいけない。
回転ダイヤル式に対し、一般的なレリーズ時に回転しない方式のものは不回転ダイヤル式と呼ばれる。
二軸ダイヤル式ドラムフォーカルプレーンシャッター
また同じく古いドラム型シャッターを持つ機種では、1/25秒あるいは1/30秒以下の低速秒時に設定するダイヤルが別に付いていることがある。これは二軸ダイヤル式と呼ばれる。二軸ダイヤル式のカメラは必ず回転ダイヤル式である。二軸ダイヤル式のカメラでは、高速側ダイヤルに「1-25」などの低速切り替え目盛りが付いている。低速シャッター使用時には高速側をここにあわせて、実際の秒時は低速側ダイヤルで合わせる。低速側ダイヤルはレリーズ時に回転しない。
二軸ダイヤル式に対して、一般的な、1つのダイヤルで高速から低速まで設定する方式のものは一軸ダイヤル式と呼ばれる。
布幕のドラムフォーカルプレーンシャッターを装備しているカメラの取り扱いについて
布幕のシャッターを持つ距離計連動カメラ、あるいはミラーアップした一眼レフカメラを、撮影レンズを装着したまま太陽に向けると太陽光がシャッター幕に結像して焼損する危険性がある。カメラは極力太陽に向けないようにし、特に距離計連動カメラは撮影時以外はレンズキャップをしておくのが安全である。

レンズシャッター

レンズシャッターとはレンズ付近に設置される、1枚ないし複数枚のシャッター羽根(セクター)を円形に組み合わせて光路を開閉するシャッターである。羽根の形状からリーフシャッターとも呼ばれる。主に大判カメラ中判カメラコンパクトカメラで採用されている。

デッケルが自社製品であるコンパーで1番(最大口径φ27mm)、2番(最大口径φ35mm)、3番(最大口径φ40mm)、4番(最大口径φ52mm)、5番というように定めた規格が広く使われている。ただカメラの小型化に伴いデッケル自身により0番(最大口径φ22mm[14])が定められ、そして他社によりさらに小型の00番、000番が追加された。0番は後にデッケル自身によりφ24mmに拡大されており、またセイコー0番はφ25mm、コパル3番はφ45mmである。2番と4番は使用されなくなっており、5番もよほど大型レンズでしか使用されず特殊である。

シャッタースピードの高速化は容易ではなく、一般的によく用いられる00番や0番の機械式シャッターの最高速度は1/500秒であることが多い。大きな口径のシャッターは羽根の移動距離が大きいため特に高速化が困難で、大判カメラに使われる5番シャッターになると最高速が1/50秒程度の場合もある。

レンズシャッターの基本速は一般にそのシャッターの最高速であり、それ以外の速度はすべて閉動作を遅延することで得ている。しかし後述するプログラムシャッターや半開高速シャッターは全開する最高の速度が基本速である。またかつては最高速をバネ圧強化で得ているもの[15]も存在していたが、これも通常のバネ圧での最高速度が基本速となる。

レンズシャッターはレンズに組み込まれているので、レンズ交換式カメラに用いる場合はシャッターとは別に遮光装置が必要になり、フォーカルプレーンシャッターより不利である。特に一眼レフカメラに用いる場合はファインダーに像を投影しなければならないので通常は開放にしておいて、露光前に一度シャッターを閉め、ミラーアップと遮光解除をした上で改めてシャッター開閉、遮光・ミラーリターンしてまたシャッターを開く、といった非常に複雑な動作になってしまう。またレンズ口径に大きな制約が生まれる。しかしフォーカルプレーンシャッターより小さな力で作動させることができ、小さくて軽い羽根が短距離移動するだけなので振動が少なくブレにくいという利点がある。全開していない状態でも画面内に等しく露光されるため、フォーカルプレーンシャッターのようなシンクロ速度の制限はなく、画面の両端で露出時刻が異なるという欠点もない。またシャッター内部にセルフタイマーを内蔵することが可能である。

2枚羽根レンズシャッター。半開きになっているところ
3枚羽根レンズシャッター。レンズを外した状態
5枚羽根レンズシャッター。半開きになっているところ

羽根の枚数は1枚から5枚のものがある。2枚、5枚のものが多いが、かつては3枚のものも多く存在した。1枚のものは特に簡易なカメラに使われることが多く、レンズ付きフィルムでも1枚羽根シャッターが採用されている。羽根の枚数が多いほうが羽根が小さくなり、羽根が小さければ羽根1枚あたりの移動距離は短くて済むので高速に開閉が可能になる。通常薄い金属板が羽根の材料として使われるが、簡易なシャッターではプラスチック製の羽根が使われることもある。

具体的な構造は羽根の枚数によって異なる。典型的な3枚羽根・5枚羽根シャッターの場合、シャッターの羽根に固定ピンと移動ピンを設け、固定ピンをシャッター筐体に、可動ピンを可動リング(セクターリング)にはめ込んである。レリーズボタンを押すと、バネ仕掛けや電磁駆動によってセクターリングがわずかに回転し、羽根は固定ピンとの差動によって開く。指定した秒時が経過してリングが元に戻ると、羽根は閉じる。

2枚羽根の場合はリング構造にせず、2枚の羽根を2本の固定ピンと1本の可動ピンで動作させることが多い。

原理的にはほぼ同じだが、内部の調速機構の違いなどにより、コンパー型・プロンター型・バリオ型・エバーセット型・平面展開型・鏡胴一体型などがある。古典的なレンズシャッターが前3つである(かつてはコンパーが5枚羽根、プロンターが3枚羽根、バリオが2枚羽根だったが、5枚羽根タイプのプロンターの登場によりチャージングや調速機構の差を指すようになった)。またエバーセット型は事前のチャージを必要とせず、レリーズボタンを押す力でチャージ・そのまま露光する簡易シャッターである。平面展開型は1枚の板に開閉機構や調速機構を組み込んだもので、小型でプログラム式が多く初期のコンパクトカメラによく使われた。鏡胴一体型は非常に小さく作ることができ、現在のコンパクトカメラによく使われている。

レンズシャッターはフォーカルプレーンシャッターと違い、往復動作で露光している。これはレンズに近い場所で光路を開閉しているので、半開状態でも画面内の露光に偏りが出ないからである。これは全開させなくても露光可能であるということでもあり、これを応用して作られたのが、シャッター羽根を絞りとして兼用するプログラムシャッターである。プログラムシャッターでは、明るい場所ではシャッターを途中までしか開けず、小絞りで高速シャッターになり、暗い場所では全開するので低速シャッターで絞り開放での撮影になる。同様の手法で、シャッター羽根を途中までしか開けず絞り込んだ時のみ1/2000秒シャッターが使えるミノルタV2や、1/1200秒が使えるコンタックスT3などもある。

フォーカルプレーンシャッターのようにスリット状の開閉動作をするシャッターもあり、これはヤシカエレクトロ35FCなどに使われた。

現在の多くのレンズシャッターカメラに採用されているのはレンズ構成の内部に位置するビトウィーンシャッターである。これは、レンズの中心にシャッターを置けばシャッターの口径が小さくてすむからである。レンズシャッターは他にカメラに対して外側に位置するフロントシャッター、フィルム側に位置するビハインドシャッターがある。フロントシャッターはポケットカメラによく用いられてきたが、現在は8×11mm判のミノックス以外ではほぼ使われていない(ただし針穴写真に利用される、針穴を黒いテープなどで塞ぐことはこれにあたる)。一方ビハインドシャッターはレンズ付きフィルムなどで現在も使われている。かつてはビハインドシャッターであることを利用してレンズ交換ができるカメラもあった[16]

全開しないレンズシャッターでもっとも速い速度が出せるシャッターはミノルタV3に採用されたシチズン製「オプチパーHS 000番」の1/3000秒、全開するものに限定した場合はシチズン製「オプチパーMLT 000番」、コパル製「コパルSV 000番」、セイコー製「セイコーシャSLS 000番」などの1/1000秒である。

レフレックスミラーシャッター

光路の途中に反射鏡を組み込んで回転、あるいは往復運動することで開閉するシャッターである。1937年エーリッヒ・ケストナー(Erich Kästner(en) 、作家のエーリッヒ・ケストナーとは別人)が発明した世界初のレフレックスミラーシャッターをアリフレックス35カメラに導入した。この技術は回転する鏡により静止画像用の一眼レフカメラ同様にフィルムに送られるのと同じレンズを通した画像をファインダーで確認することができるので構図やピント合わせに有利であり、この技術は今日でも多くの映画用カメラに使用されている。またスチルカメラでもいくつかの使用例がある。[17]

ソロントンシャッター

レンズシャッターが一般的になる前に多用されていた、レンズ鏡胴に被せるようにして使用するシャッターである。ソロントン・ピッカードの製品が著名になったのでこの名がある。フォーカルプレーンシャッターと類似する構造だが、多くは1枚の幕に複数幅のスリットを設けることで調速する。このため幕速以下の低速シャッターを使うことができないので、幕速自体をある程度下げることができるようになっている。またシャッターをチャージするときもスリットが開いたままであるため、チャージ時はレンズにキャップ、もしくはフィルムバックに引き蓋を装着しておく必要がある。巻き上げ時には幕が閉じているタイプのものはセルフキャッピングと呼ばれる[18]

一般にエアレリーズ様の空気圧レリーズを使用してレリーズする。大きいゴム球を押すとチューブで接続された反対側の小さいゴム球が膨らみ、レリーズされる。

制御方式別の分類

シャッター速度を制御する方式によって、大きく機械式電子式に分けられる。また、両者の機能を併せ持ったハイブリッドシャッターも存在する。デジタルカメラでは機械的構造を持たない撮像素子電子シャッターも存在する。

機械シャッター
シャッター速度の制御をガバナーやスプリングなどによって機械的に行うものである。かつてはシリンダーを取り付け、空気圧を利用して秒時制御をするものもあった。精度は電子式(電子シャッター)に比べて劣るが、電源が不要である事と、極寒地などでも確実に動作する利点がある。135フィルム使用カメラではこの方式は少なくなっている。
電子シャッター
シャッター速度の制御をソレノイドによる電磁制御で行う方式である。コンピューターや水晶振動子(クオーツ)などを利用しており、自動露出機構との連動も可能である。精度の高いシャッター速度の制御が可能であるが、電源が必要であり、極寒地などでは動作の信頼性が低下する場合もある。絞り優先AEなどシャッター速度を自動的に制御するためには、事実上電子式シャッターが不可欠である。シャッター羽根を電磁石で直接駆動するものと、駆動そのものは機械式でシャッター羽根閉じ動作の遅延のみ電磁石で制御する方式があり、電子制御プログラムシャッターなどの多くは前者、絞り優先方式レンズシャッター(コパルの「コパルエレク」など)および電子制御フォーカルプレーンシャッターは後者の方式を用いている。
ハイブリッドシャッター
電子式と機械式の機構を組み合わせたもの。広義には上記の「電子シャッターのうちシャッター羽根閉じ動作のみ電磁石で制御するもの」を指すこともあるが、通常は特に複数のシャッター速度を機械制御と電子制御のいずれの方法でも作り出すことができる機構を持つシャッター全般を指す。たとえば高速シャッターは機械制御式で、機械式では得ることが困難な低速シャッターは電子制御式のもの、自動露出モードのときは電子制御、手動露出のときは機械制御となるもの、基本的には電子制御による自動露出で、電池消耗時用に補助的に手動露出の高速シャッターのみ備えるものなどがある。
撮像素子電子シャッター
メカニカルな機構は一切持たず、CMOSセンサーの特性を利用した完全電子式シャッター。
ローリングシャッターの場合、順次露光する為に高速に移動する被写体の像が歪むという欠点が有る。グローバルシャッターの場合は一度に取り込む為にその欠点は無くなる。

特殊なシャッター

レチナレフレックスのレフレックスミラーシャッターとリーフシャッターの複合シャッターなど。

脚注

  1. ^ 天体写真の分野では長時間露出が当然であり、シャッターブレを最小限にするため現在でも多用される。
  2. ^ オープンフラッシュという。
  3. ^ 時間を表すドイツ語Zeitから
  4. ^ 過去にはレンズシャッターを採用したライカ判一眼レフも存在した。
  5. ^ このため、画面全体の露光が終わるのに幕速分の時間が掛かっても、画面上のある一点だけを見るとそれより短い時間だけしか露光されない。
  6. ^ 縦走りシャッターでは縦の幅、横走りシャッターでは横幅。
  7. ^ つまり幕速が倍になるとスリットの幅も倍になる。
  8. ^ たとえば、幕速が1/30秒の横走りシャッターで1/2000秒を実現しようとするとわずか0.55mmのスリット幅を維持しながら走行させなければならない。
  9. ^ その発光時間が極めて短く、フラッシュによる露光もスリット状になってしまうため。
  10. ^ フォーカルプレーン式シャッターが走行中光り続ける、発光時間の長いFP発光のフラッシュも例外的に存在する。
  11. ^ 具体的には動いているものを撮影した時に被写体が変形して写る。
  12. ^ en:Rotary disc shutter
  13. ^ オリンパス・ペンFシリーズ、米ユニバーサル・マーキュリーシリーズなど。ただし、オリンパス・ペンFシリーズのロータリーフォーカルプレンシャッターは一枚羽根で開角度・回転速ともに固定であり、最高速を基本として途中で回転を停止させることで調速する形式である。
  14. ^ 後に変更されていることに注意
  15. ^ たとえばコンパーラピッド、セイコーシャラピッドなどラピッド型レンズシャッターは最高速度より一段遅い速度が基本速で、最高速はバネ圧を一時的に強化して出す。
  16. ^ オリンパス・エースやキヤノン・デミCなど。
  17. ^ フジカST-Fはレンズ固定式のライカ判一眼レフで、ミラーをシャッターとして用いた。他にイハゲーEXAシリーズなど
  18. ^ ごく初期のフォーカルプレーンシャッターもセルフキャッピングではないものが存在した。

関連項目