ズーミングユーザインタフェース

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ZUIから転送)

ズーミングユーザインタフェース: zooming user interfaceZUI)は、ユーザーが詳細を見たり全体を概観するために表示領域を拡大縮小できるグラフィカル環境である。グラフィカルユーザインタフェース(GUI)の一種である。情報要素は直接、無限な広さを持つ仮想デスクトップに配置され(通常、ベクターイメージを使う)、ウィンドウは使わない。ユーザーは仮想画面を上下左右に移動させたり、興味を持ったオブジェクトにズームしたりできる。例えば、テキストオブジェクトにズームしていくと、最初は小さな点だったものがテキストページのサムネイルになり、さらにページをフルサイズで表示し、最終的にページの一部を拡大表示する。

一部の専門家は、ズーミングユーザインタフェースがウィンドウを使ったグラフィカルユーザインタフェースの後継となるパラダイムだと考えている。しかしこれまで[いつ?]のところ、ズーミングユーザインタフェース開発の試みは一般的なGUI開発の中では少ない。

歴史[編集]

最も長く続いているズーミングユーザインタフェース開発として、ニューヨーク大学のケン・パーリン[1]、ジム・ホラン[2]、ベン・ベダーソン[3]が開始した Pad++パッド・プラスプラスプロジェクトがある。その後ホランはニューメキシコ大学で同プロジェクトを続行している。一方、ベダーソンは後にメリーランド大学カレッジパーク校JazzジャズPiccoloピッコロ[4]を開発し、特に Piccolo は今も活発に開発が続いている。最近ではその他にもジェフ・ラスキンArchyアーキー英語版、プログラミング環境 Squeakスクイークなどがある。ズーミングユーザインタフェースという呼称は、ソニーの研究所で働いていたフランクリン・ゼルファン=シュライバー[5]がベダーソンおよびパーリンと共同研究した際に考案した。

ズーミングユーザインタフェースのツールキットではないが、KDEGNOMEなどのXウィンドウマネージャはズーミングユーザインタフェース的な利点を提供する仮想デスクトップ機能を持っている。Mac OS X v10.5 にも Spaces という仮想デスクトップがある。マイクロソフトWindows XP 向けに Virtual Desktop Manager という仮想デスクトップ機能を実装したツールを提供している。

Mac OS X v10.3 以降の macOS は、Exposéエクスポゼというズーミングユーザインタフェースを持っている。重なったウィンドウを縮小表示して画面に整列するという表示モードで、特定ウィンドウをクリックするとそれが前面に出現し、ウィンドウが元の位置に戻される。アップルの iPhone(2007年6月)も特殊なズーミングユーザインタフェースを使っており、タッチインタフェースで画面移動やズームができる。このインタフェースはウェブページや写真など一部に限定されており、ズームや移動の範囲も限定されているので、完全なズーミングユーザインタフェースではない。

ジュリアン・オーバネス[6]、アドリアナ・グツマン[7]、マックス・リーゼンフーバー[8]らがMITメディアラボと共同で設立したジオフェニックス社[9]は2002年から2003年にかけて、ソニーCLIE 向けに Zoomspaceズームスペースというズーミングユーザインタフェースを開発した[10]ニンテンドーDSブラウザーもズーミングユーザインタフェースを使っている。ウェブをブラウズする際、下の画面にページ全体を表示し、そこにユーザーが動かせるフレームが表示されており、上の画面にフレーム内を拡大表示する。

ピクセル・テクノロジーズは2000年ごろから、HTML、WordExcelPowerPoint、PDF、各種画像ファイル、動画ファイルなどの各種形式文書の高速ズーミング技術の開発を行っている。結果としてそのインタフェースはiPhone のそれと酷似している。特定の文書形式のズーミングは真のズーミングユーザインタフェースのごく一部だが、小さな画面を有効活用するという意味では重要である。

2007年3月、マイクロソフトの Live Labsライブ・ラブスはウェブブラウジング用ズーミングユーザインタフェース「Deepfishディープフィッシュ」を Windows Mobile 5 プラットフォーム向けに公開した。

ゼルファン=シュライバーは1990年代中ごろにソニーの研究所で行った研究に基づき「ズーモラマ」[11]を設立した。2007年10月には、高解像度画像のコラージュのためのズーミングブラウザのアルファ版を効果した。ズーモラマのブラウザは全て Flash ベースである。

脚注[編集]

  1. ^ : Ken Perlin
  2. ^ : Jim Hollan
  3. ^ : Ben Bederson
  4. ^ http://www.cs.umd.edu/hcil/piccolo/
  5. ^ : Franklin Servan-Schreiber
  6. ^ : Julian Orbanes
  7. ^ : Adriana Guzman
  8. ^ : Max Riesenhuber
  9. ^ : GeoPhoenix
  10. ^ Sony implements GeoPhoenix interface in new CLIE PEG-NZ90 and NX series handhelds”. EDP Weekly's IT Monitor (2003年1月20日). 2012年7月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年5月13日閲覧。
  11. ^ Zoomorama

外部リンク[編集]

Eagle Mode のファイルマネージャがプレーンテキストのソースコードディレクトリを表示しているところ
  • MooZUIMooTools用ズーミングユーザインタフェース・プラグイン(オープンソース)
  • AutoBAHNJazz を使ったブラウザコンパニオン
  • BlueBottle/AosBluebottle OS英語版Native Oberon英語版 を発展させたもので、がある。
  • Eagle Mode — アプリケーションをプラグインする方式のズーミングユーザインタフェース・フレームワーク
  • Pad++ — プロジェクトは終了している
  • Piccolo2DJava および C# 用ズーミングユーザインタフェース・ツールキット
  • Seadragon — マイクロソフト社による
  • ZoomDesk — 実験的ズーミングデスクトップ
  • Zoomable visual transformationJava 用ズーミングユーザインタフェース・ツールキット
  • Zumobi — 携帯機器用ズーミングユーザインタフェース
  • Zoomorama — 高解像度画像をコラージュするためのズーミングユーザインタフェース
  • ZuiPrezi — ズーミングプレゼンテーションエディタ
  • PhotoMesa — ズーミングフォトブラウザ

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