sinc関数

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
正規化sinc(青) と非正規化sinc(赤)。−6π ≤ x ≤ 6π

sinc 関数(ジンクかんすう、シンクかんすう)は、正弦関数をその変数で割って得られる初等関数である。sinc(x), Sinc(x), sinc x などで表される。

定義[編集]

sinc 関数は、正規化 sinc 関数と非正規化 sinc 関数という名で区別される、2種類の定義を持つ。

  1. デジタル信号処理などでは、次の正規化 sinc 関数標本化関数ともいう)が普通である。
    • \mathrm{sinc}(x) = \frac{\sin \pi x}{\pi x}.
  2. 数学では、次の歴史的な非正規化 sinc 関数が使われる。
    • \mathrm{sinc}(x) = \frac{\sin x}{x}.

いずれの場合も、可除特異点である 0 での値が必要であればしばしば明示的に sinc(0) = 1 が定義として与えられる。sinc 関数はいたるところ解析的である。

sinc 関数は カーディナル・サイン (cardinal sine) とも呼ばれ、"sinc" (英語発音: [ˈsɪŋk]) の関数名はラテン語の sinus cardinalis を短縮したものである。

sinc関数の性質[編集]

特にことわらないかぎり、正規化sinc関数について述べる。 非正規化sinc関数は、スケールファクタ \pi が違うだけなので、非正規化sinc関数についての式を得るには、x \leftarrow x / \pi \,を代入すればいい。

特殊値など[編集]

フーリエ変換[編集]

  • \mathrm{rect}(x) \leftrightarrow^\mathfrak{F} \mathrm{sinc}(\omega), \mbox{ where } \mathrm{rect}(x) = \begin{cases} 1, & \mbox{if } |x| \leq 1 / 2 \\ 0, & \mbox{otherwise} \end{cases}
    • ただし、f(x) \leftrightarrow^\mathfrak{F} F(\omega)フーリエ変換対、\mathrm{rect}(x)\,は(単位)矩形関数。つまり、矩形関数のフーリエ変換はsinc関数、sinc関数のフーリエ変換は矩形関数である。

テイラー展開[編集]

  • \frac{\sin x}{x} = \sum^{\infin}_{n=0} \frac{(-1)^n}{(2n+1)!} x^{2n}

定積分[編集]

  • \int_{0}^{\infty} \mathrm{sinc}(x) \, dx = \frac{1}{2}, \ \int_{-\infty}^{\infty} \mathrm{sinc}(x) \, dx = 1
  • \int_{0}^{\infty} \mathrm{sinc}^2(x) \, dx = \frac{1}{2}, \ \int_{-\infty}^{\infty} \mathrm{sinc}^2(x) \, dx = 1 \quad \left(\mathrm{sinc}^2(x) = \{\mathrm{sinc}(x)\}^2 \right)
  • \int_{0}^{\infty} | \mathrm{sinc}(x) | \, dx = \int_{-\infty}^{\infty} | \mathrm{sinc}(x) | \, dx = \infty

不定積分[編集]

直交性[編集]

  • \int_{-\infty}^{\infty} \mathrm{sinc}(x-i)\mathrm{sinc}(x-j) \, dx = \delta_{ij}, \mbox{ if } i, j \in \mathbb{Z}
    • sinc関数の平行移動同士は直交する。

無限積[編集]

  • \frac{\sin x}{x} = \prod_{k = 1}^{\infty} \cos \frac{x}{2^k}
  • \mathrm{sinc}(x) = \prod_{k = 1}^{\infty} \left( 1 - \frac{x^2}{k^2} \right)

信号処理への応用[編集]

さまざまな用途が考えられるが、コンパクト・サポートでない(非0の値が有限区間に限定されていない)ため、非常に多くの計算量を要することが多い。有限長で計算をうち切らなければならないことも多く、無限長では生じない問題が発生することもある。概して、理論的背景やシミュレーションにとどまることが多い。

  • 直交性と ±∞ での収束性から、直交ウェーブレット変換基底に用いる。ただし、コンパクト・サポートでないため、計算量が O(N2)(ランダウの記号)で増える。これは、コンパクト・サポートな基底だと計算量が O(N) であることに比べ、大きなデメリットである。
  • sinc 関数のフーリエ変換が矩形関数であることから、リサンプリング内挿補間カーネル低域通過フィルタ)に用いる。無限系列の信号に対しては、sinc 関数は理想的な補間カーネルである。しかし、コンパクト・サポートでないことが実際の有限長の信号を処理する際には問題となるため、実際の信号処理では、sinc 関数に似たコンパクト・サポート関数である、3次畳み込み関数や、ランツォシュ・フィルタ(Lanczosフィルタ)などが使われることが多い。
  • 矩形関数のフーリエ変換がsinc 関数であることから、sinc 関数を使えば、理想的なD/A変換ができる。ただしこれは、重要な概念ではあるが、実際にこのやりかたで D/A 変換がなされるわけではない。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]