SS 433

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SS 433
Ss433 art big.gif
SS 433の想像図
データ
元期 J2000.0 (ICRS)      Equinox J2000.0 (ICRS)
星座 わし座
赤経 19h 11m 49.56s[1]
赤緯 +04° 58′ 57.6″[1]
視等級 (V) 14.2[1]
特徴
スペクトル分類 A7Ib
変光星 食変光星
アストロメトリー
距離 18000±700 光年
(5500±200[2] パーセク)
他の名称
V* V1343 Aql, GAL 039.7-02.0, 2MASS J19114957+0458578, USNO 659, 1A 1909+04, 87GB 190920.8+045332, NEK 40.1-02.1, 3A 1909+048, GPS 1909+049, RGB J1911+049, BWE 1909+0453, GRS 039.60 -01.80, RX J1911.7+0459, 4C 04.66, 1H 1908+047, 1RXS J191149.7+045857, 2E 1909.3+0453, HBHA 204-02, AAVSO 1906+04, 2E 4204, INTEGRAL1 110, TXS 1909+048, 1ES 1909+04.8, INTREF 969, 4U 1908+05.
参照データベース
SIMBAD data

SS 433は、これまで観測された中で最も風変わりな恒星系である。食連星かつX線連星であり、主星はおそらく恒星質量ブラックホール、もしかすると中性子星であり[3], pp. 23–24.、伴星は後期のA型主系列星と推定されている[4]。またSS 433は最初に発見されたマイクロクエーサーである[5]

命名[編集]

SS 433の命名は、初めて星表に収録したケース・ウェスタン・リザーブ大学の天文学者ニコラス・センデュリュークとブルース・ステフェンソンによる。強い輝線を持つ恒星として、1977年版の星表に433番目に収録されたため、この名前が付けられた[5]。SS 433は食変光星でもあるため「わし座V1343星」という変光星としての名前も持っている[6]

位置[編集]

SS 433は、約1万歳と推測されている[7]超新星残骸W50星雲の中に位置している。主星は、W50星雲を形成した超新星爆発を起こした恒星の核が崩壊した残骸である。SS 433は、わし座の方角に地球からは約1万8000光年の距離にある[2][8]可視光線の相対光度は14等級で[1]X線源電波源にもなっている。

恒星系[編集]

伴星は急速に質量を失っており、降着円盤が形成されている。降着円盤は高温に熱せられてらせん状に主星に落ち込み、円盤の上下方向に回転の軸に沿って強いX線と熱い水素ジェットを噴出している。ジェットを構成する物質は光速の25%の速度で進む[3], pp. 23–24; [9], p. 508.。伴星はおそらく元々の主星の質量より小さかったと考えられており、そのため寿命が長くなっている。質量は太陽質量の3倍[3], p. 25から30倍[10]と見積もられている。主星と伴星は互いの周りを非常に近い距離で、約13.1日の周期で公転している[9], p. 510.

観測データ[編集]

主星からのジェットは降着円盤と垂直に放出されている。ジェットと円盤は、軸の周りを79°傾斜して歳差運動している。ジェットと軸の間の角度は約20°であり、歳差周期は約162.5日である[3]。歳差運動によって、ジェットは時に、より地球向きの方向や地球と逆向きの方向に噴き出すことがあり、観測される可視光線に赤色方向、青色方向のドップラーシフトを引き起こす[9], p. 508.。また、歳差運動によってジェットのらせんは拡大している[11]。ジェットが超新星残骸の分子雲と衝突することで、W50星雲は引き延ばされた形に歪んでいる[12]

2004年に行われた超長基線アレイによる42日間連続の観測で、ジェットについて新しいデータが得られ、理解が進んだ。ジェットの一部は、噴き出した直後に分子雲の物質に衝突し、光を発しているようだった。ジェットが衝突する物質は、置き換わる時もそうでない時もあり、ジェットの明るさが変動する原因となっていた[13][14]

SS 433のスペクトルは、ドップラーシフトだけではなく特殊相対性理論の影響も受けていた。即ち、ドップラーシフトの効果が除いても、恒星系が地球から遠ざかる真の速度と比べて、時速約1万2000kmに相当する赤方偏移が残り、これは時間の遅れによるものだと考えられている。また相対論的運動はジェットの原子を励起して振動を遅くし、放射は赤方偏移する[9], p. 508.

出典[編集]

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  1. ^ a b c d SIMBAD, entry for SS 433. Accessed on line September 14, 2007.
  2. ^ a b Symmetry in the Changing Jets of SS 433 and Its True Distance from Us, Katherine M. Blundell and Michael G. Bowler, Astrophysical Journal 616, #2 (December 2004), pp. L159–L162.
  3. ^ a b c d Observational Manifestations of Precession of Accretion Disk in the SS 433 Binary System, Anatol Cherepashchuk, Space Science Reviews 102, #1 (2002), pp. 23–35.
  4. ^ Identification of the Mass Donor Star's Spectrum in SS 433, T. C. Hillwig, D. R. Gies, W. Huang, M. V. McSwain, M. A. Stark, A. van der Meer, and L. Kaper, Astrophysical Journal 615, #1 (November 2004), pp. 422–431.
  5. ^ a b SS 433, David Darling, entry in The Internet Encyclopedia of Science, accessed on line September 14, 2007.
  6. ^ 『奇妙な42の星たち』、p. 188.
  7. ^ Observation of Very High Energy Gamma Rays from SS433/W50 with CANGAROO-II Telescope, Seiichi Hayashi, Fumiyoshi Kajino and Tsuguya Naito, in The Universe Viewed in Gamma-Rays, proceedings, University of Tokyo Workshop, 2002, ed. R. Enomoto, M. Mori and S.Yanagita, Tokyo: Universal Academy Press, 2003. ISBN 4-946443-75-4.
  8. ^ 『奇妙な42の星たち』、pp. 185–189.
  9. ^ a b c d Observations of SS 433, Bruce Margon, in Annual review of astronomy and astrophysics, volume 22, Palo Alto, CA: Annual Reviews, Inc., 1984, pp. 507–536. DOI 10.1146/annurev.aa.22.090184.002451.
  10. ^ INTEGRAL observations of SS433: Results of a coordinated campaign, A. M. Cherepashchuk, R. A. Sunyaev, S. N. Fabrika, K. A. Postnov, S. V. Molkov, E. A. Barsukova, E. A. Antokhina, T. R. Irsmambetova, I. E. Panchenko, E. V. Seifina, N. I. Shakura, A. N. Timokhin, I. F. Bikmaev, N. A. Sakhibullin, Z. Aslan, I. Khamitov, A. G. Pramsky, O. Sholukhova, Yu. N. Gnedin, A. A. Arkharov, and V. M. Larionov, Astronomy and Astrophysics 437, #2 (July 2005), pp. 561–573.
  11. ^ Gigantic Cosmic Corkscrew Reveals New Details About Mysterious Microquasar, press release, National Radio Astronomy Observatory, October 26, 2004, accessed on line September 14, 2007.
  12. ^ Interaction of Jets with a Supernova Remnant in the SS 433/W50 System, Kenji Murata and Noriaki Shibazaki, Publications of the Astronomical Society of Japan, 48 (1996), pp. 819–825.
  13. ^ VLBA "Movie" Gives Scientists New Insights On Workings of Mysterious Microquasars, press release, National Radio Astronomy Observatory, January 5, 2004. Accessed online September 14, 2007.
  14. ^ Exploring the Jet Proper Motions of SS433, K. Schillemat, A. Mioduszewski, V. Dhawan, M. Rupen, Bulletin of the American Astronomical Society 36 (2004), p. 1515.

参考文献[編集]

座標: 星図 19h 11m 49.56s, +04º 58' 57.6''