IELTS
International English Language Testing System(IELTS, アイエルツ)は英語熟練度を測る英語検定の1つで、ケンブリッジ大学ESOL試験機構、ブリティッシュ・カウンシル、IDP Education社によって協同で運営されている。アカデミック・モジュール(Academic Module、大学や他の高等教育機関への出願のためのテスト)とジェネラル・トレーニング・モジュール(General Training Module、一般的な生活、仕事や、移住関係に関わる英語のテスト)の2種類がある。
IELTSはオーストラリア、イギリス、カナダ、アイルランド、ニュージーランド、南アフリカ共和国のほとんどの教育機関で受け入れられ、アメリカ合衆国の3000以上の教育機関で受け入れられている。またオーストラリア、ニュージーランド、カナダへの移民の必要条件となっている。
合格に必要な点数が決められているわけではなく、試験結果は0から9のバンドスコアで示される。入学に必要なスコアなどは教育機関によって各々決められている。受験者は受験後も熟練度を維持していることを証明しない限り、各教育機関は2年以上前の試験結果を受諾しないこととされている。
IELTS の概要
- 国際的な英語(イギリス英語、アメリカ英語などを含む)が考慮されている。
- TOEICやTOEFL(ITP)のペーパーテストと異なり問題用紙への書き込みは許可されている。
- IELTSは聞く、読む、書く、話すの4つの英語力の試験を行なう。
- 2つのフォーマット - アカデミック・モジュール、ジェネラル・トレーニング・モジュールのどちらかを選んで受ける。アカデミック・モジュールは大学進学向けのモジュール。ジェネラル・トレーニング・モジュールはイギリス、オーストラリア、カナダなどでの外国人の永住権やビザ取得で英語レベルを求められたときのためのモジュール。
- 聞く、読む、書く、話すの4つの英語力はそれぞれ0(非受験者)から9(エキスパート・ユーザー)のバンドスコア(熟練度)で測られる。
- 大学によって必須スコアに差があるが、通常のイギリス・オーストラリア・ニュージーランドの大学の場合が総合バンドスコア5.5~7.0が求められる。なお、イギリスの大学生レベルのバンドスコアの平均が5.5~6.0と言われている。
- 最近では英国(イギリス)の移住のための英語ビザ取得の為に、英語能力を図るためにTOEIC(SWテストも含む)、TOEFL等もIELTS同様に語学能力証明として認められていたが、英国国内におけるTOEICテストの実施を委託された団体による不正があったためTOEFLとTOEICのスコアが認められなくなり、唯一認められるのがIELTSだけとなった。
IELTSの試験構成
Listening
(試験時間:30分、問題数:約40問) 日常的な会話や話し言葉から、講義、セミナーまで多岐にわたる内容が出題される。会話や文章が録音されたCDを1回だけ聞き、その内容に関する質問に答えていく。ETS系のテスト(TOEFLやTOEICテスト)と異なるのはリスニング問題を聞きながら問題用紙にメモを書いたりできることや、別に解答用紙に回答を書き込みをする時間が与えられていることなどである。問題構成はTOEFLやTOEICと異なり、選択肢が5個以上あることや電話番号や数などを正確に解答しなければならない。
Reading
(試験時間:60分、問題数:約40問) 試験では文章が3つ(トータルで約2,000~2,750語)出され、これらに対してさまざまな形式の問題が40問出題される。このセクションでは解答用紙に記入するための特別な時間は用意されておらず、すべて60分以内に解答する必要がある。ただし、General Training ModuleとAcademic Moduleでは問題構成が大きく異なっている。
General Training の場合, 問題文は、注意書き、広告、公式文書、小冊子、新聞、マニュアル、チラシ、時刻表、雑誌、書籍などから出題される。基本的に1問目と2問目は実際に留学したての頃の現地での生活を想定した問題が多い(住やアパートの比較・商品の説明・英語学校のパンフレットなどTOEICのReading問題に近い)3問目に関しては、実際に受験者が大学生活で想定する文章(Academic Moduleと同等の問題)が出題される。
Academicの場合、問題文は、雑誌、新聞、書籍などから出題されるが、一般教養的なものが多く、専門知識は必要とされない。少なくとも1問は論理的な議論を扱ったものであり、ほかにグラフやイラストを使用した文章が登場する場合もある。文章中に専門用語が使われている場合には、簡単な用語解説がついている。選択肢以外に単語で解答する問題形式もある。3つの問題のうち最低1問は文章全体を把握しないと大幅に得点ロスになってしまう問題が頻繁に出題される。なお、日本で受験できる英語試験で1時間で2,500字の文章読解を課されているのは英検1級・準1級ぐらいである。
Writing
(試験時間:60分、問題数:2題) 試験ではGeneral Training、Academic 両方とも、各問題に最低150~250単語で自分の考えなどを論述しなければならない。論述した単語数が規定分量を下回った場合、どんなに論理的な文章を書いたとしても大幅にスコアダウンを受けることになる。
General Training の場合、課題のひとつめは、提示された問題に関して、現状を説明したり情報を請求したりする手紙を書く。個人的な内容の文章ではあるが、フォーマルな感じの文章に仕上げることが求められる。2つめは、Academic Modulesの場合と同様に、与えられたテーマに対して意見を述べ論証していくもの。テーマに関してはTOEIC Speaking&Writing Testのようにごく日常の暮らしの意見の問題が多い。
Academicの場合、課題のひとつめは、グラフや図などで与えられた情報を整理し、文章にまとめるというもの。2つめは、与えられたテーマに対して意見を述べ論証していくタイプである。ここでは、試験官や先生に提出するような、短いエッセーや一般的な報告書の形式の文章に仕上げる問題。General Trainingと異なるのは、データなどを説明して論理的に展開して今後の推測を説明する形式があること、2問目の問題が大学の試験の論文などを想定した問題が多い。
Speaking
(試験時間:15分~20分) 3つのセクションに分かれており、マン・ツー・マンのインタビュー形式で行われる。まず簡単な自己紹介を要求され、その後、受験者自身や家族について聞かれる。次のセクションでは、渡されたカードに記載された課題(たとえば、これまでもっとも影響を受けた先生について述べよ、など)について、同じくカードに指示された内容を加味して試験官に自分の体験や考えを伝える。最後のセクションでは2番目のセクションでの課題に関連したディスカッションをする。なお、インタビューはすべて録音され、試験センターでまとめて評価される。
受験代金と支払い方法
- 日本での受験料は2万5,380円。TOEFLと異なり日本円で支払うので、為替レートによって受験代金が変動することはない。支払方法はクレジットカード・コンビニ収納代行・郵便局のATMから選べる
- 申し込みは全てインターネット上で行う。
バンドスコア
点 | タイトル | 詳細 |
---|---|---|
9 | エキスパート・ユーザー | 十分に英語を駆使する能力を有している。 適切、正確かつ流暢で、完全な理解力もある。 |
8 | 非常に優秀なユーザー | 時折、非体系的な不正確さや不適切さがみられるものの、十分に英語を駆使する能力を有している。 慣れない状況においては、誤解が生ずることもありえる。込み入った議論に、うまく対応できる。 |
7 | 優秀なユーザー | 時折、不正確さや不適切さが見られ、また状況によっては誤解が生ずる可能性もあるが、英語を駆使する能力を有している。複雑な言語も概して上手く扱っており、詳細な論理を理解している。 |
6 | 有能なユーザー | 不正確さ、不適切さ、および誤解がいくらか見られるものの、概して効果的に英語を駆使する能力を有している。 特に、慣れた状況においては、かなり複雑な言語を使いこなすことができる。 |
5 | 中程度のユーザー | 部分的に英語を駆使する能力を有しており、大概の状況において全体的な意味をつかむことができる。 ただし、多くの間違いを犯すことも予想される。自身の分野においては、基本的なコミュニケーションを行うことができる。 |
4 | 限定的ユーザー | 慣れた状況おいてのみ、基本的能力を発揮できる。 理解力、表現力の問題が頻繁にみられる。複雑な言語は使用できない。 |
3 | 非常に限定的なユーザー | 非常に慣れた状況おいて、一般的な意味のみを伝え、理解することができる。コミュニケーションが頻繁に途絶える。 |
2 | 一時的なユーザー | 確実なコミュニケーションを行うことは不可能。慣れた状況下で、その場の必要性に対処するため、極めて基本的な情報を単語の羅列や短い定型句を用いて伝えることしかできない。 英語による会話、および文章を理解するのに非常に苦労する。 |
1 | 非ユーザー | いくつかの単語を羅列して用いることしかできず、基本的に英語を使用する能力を有していない。 |
0 | 非受験者 | 詳細可能な情報なし。 |
世界の傾向
- 世界で300か所ほどのテスト会場
- 2012年の世界におけるIELTS受験者数は200万人を突破し5年前の100万人と比べて倍の受験者となっている。これはTOEFLの受験者数を大幅に超えている[2]。
- 最も受験者数が多い場所:
- 毎年最大で48テスト行われ、各テストセンターは場所によって1か月に最大4回のテストを行っている。
日本
2010年から、英検などを運営している日本英語検定協会が日本におけるIELTSとの共同運営が決まった[3]。内容は英検協会がIELTSの普及促進活動や受付申込・試験実施などを全面的に引き継いだうえで、ブリティッシュ・カウンシルは今後ともノウハウを提供しながら共同運営を行う。
ブリティッシュカウンシルの拠点がある東京だけでなく、2013年度の実績としては札幌、仙台、埼玉、横浜、金沢、名古屋、京都、大阪、神戸、岡山、広島、福岡の全国13都市で公開会場を設けていたが、2014年では松本と高知でも実施される予定。
日本の受験者数は2万4,000人と2008年と比較して受験者数が3倍近く増えている。
受験時の注意点
- TOEFLやTOEICの場合は本人確認書類でパスポートや運転免許証、学生証や住民基本台帳カード等が可能だが、IELTSの場合はパスポートのみが本人確認書類として認められ、パスポートがない場合は受験が一切できない。
- 他の英語の検定資格と異なるのは本人確認が厳格で2012年より「本人審査システム」を完全導入して「パスポートの登録」「指紋登録」「顔写真撮影」と言う出国審査や入国審査並みの本人確認が導入された[4]。
- 他の試験と異なり荷物チェックがある。国連英検や英検の場合はシャープペンシルでも解答用紙の記入が可能だが、IELTSは鉛筆のみしか認めていない[5]。
関連項目
- 国際コミュニケーション英語能力テスト (TOEIC)
- TOEFL
- 英語検定
- ケンブリッジ大学ESOL試験
脚注
- ^ http://www.eiken.or.jp/ielts/result/pdf/interpretation-of-ielts-bandscores-j.pdf
- ^ [1]IELTS白書
- ^ (財)日本英語検定協会とブリティッシュ・カウンシル - 英語運用能力試験IELTSの共同運営で合意
- ^ [2]
- ^ [3]
外部リンク
- アイエルツについて日本英語検定協会のIELTS日本語公式ホームページ
- IELTS日本公式ブログ
- IELTS 公式サイト
- ブリディッシュカウンシルIELTS日本語公式ホームページ