HD 140283

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HD 140283
星座 てんびん座[1]
視等級 (V) 7.205 ± 0.020[2]
分類 恒星
低金属星
位置
元期:J2000.0[3]
赤経 (RA, α) 15h 43m 03.09706s[3]
赤緯 (Dec, δ) -10° 56′ 00.6036″[3]
赤方偏移 -0.000564 ± 0.000001[3]
視線速度 (Rv) -169.00 ± 0.2 km/s[3]
固有運動 (μ) 赤経: −1114.50 ± 0.12 mas/年
赤経: -304.59 ± 0.11 mas/年[2]
年周視差 (π) 17.15 ± 0.14 mas/年[2]
距離 190.15 ± 1.57 光年
(58.30 ± 0.48 pc[2])
絶対等級 (MV) 3.377 ± 0.038
物理的性質
スペクトル分類 sdF3[3]
表面温度 5777 ± 55 K[2]
(5504 ± 55 ℃)
色指数 (B-V) 0.506 ± 0.020[2][3]
色指数 (U-B) -0.203[3]
色指数 (V-I) -1.005 ± 0.040[2][3]
色指数 (V-J) 1.191 ± 0.039[2][3]
色指数 (V-H) 1.509 ± 0.056[2][3]
色指数 (J-H) 0.318 ± 0.055[3]
色指数 (H-K) 0.108 ± 0.053[3]
金属量 −2.40 ± 0.10 [Fe/H][2]
酸素量 −1.67 ± 0.15 [O/H][2]
窒素量 Solar log N 8.69 ±0.05[2]
種族 種族II?
年齢 144.6 ± 8.0 億年[2]
別名称
別名称
Ci 20 942,
CSV 101522,
DENIS-P J154303.0-105600,
GC 21124,
GCRV 9069,
GEN# +1.00140283,
GJ 1195,
グリーゼ1195,
GSC 05601-00694,
HIP 76976,
JP11 2636,
LAL 28607,
LFT 1220,
LHS 405,
LPM 579,
LTT 6279,
NBP 217,
NSV 7210,
PLX 3552,
PLX 3552.00,
PM 15404-1046,
PPM 230636,
SAO 159459,
SKY# 28415,
SRS 13112,
SV* ZI 1150
TYC 5601-694-1,
UBV 13389,
UBV M 20927,
uvby98 100140283,
VVO 315,
YZ 0 5090,
YZC 11 5477,
2MASS J15430307-1056009[3],
Methuselah star[4].
■Project ■Template

HD 140283とは、地球から見ててんびん座の方向に約190光年離れた位置にあるF型の恒星である。2013年現在、発見されている中で宇宙で最も古い天体である[2][4]

概要[編集]

HD 140283は、スペクトル分類がsdF3の恒星である。直径や質量、光度は不明である。視等級は約7.21等級であり、地球から約190光年の距離にあることから[2]絶対等級は約3.38等級であると推定されている。HD 140283は青方偏移をしており、169.0km/sで地球に近づく方向へと動いている[3]。また固有運動は非常に大きく、ハッブル宇宙望遠鏡の観測では数時間で移動しているのがわかるほどである[4]銀河系内を361.3km/sで移動していると考えられている[2]

HD 140283は、金属量の値が−2.40と低い値を持つ低金属星である[2]。このような恒星は一般的に宇宙の初期に形成された年齢の古い恒星に見られる[4]。表面温度は5777K (5504℃) と、太陽とほぼ同じ温度であると推定されている[2]

年齢[編集]

HD 140283は、発見されている中で最も古い恒星と推定されている。その年齢は136億6000万年から152億6000万年と推定されている。年齢の下限値に近い値をとれば、現在推定されている宇宙の年齢である137億1300万年から138億3100万年[5]の範囲に収まる[2][4]。これは不確かさが大きいものの、それまでで最も古い恒星であったHE 1523-0901の132億年[6]よりも大きな値を持っている。また、年齢ではなく時代で考えると、133億6000万年前の天体であるUDFj-39546284[7]や、133億年前の天体であるMACS0647-JD[8]と比べても古い。このためHD 140283は、知られている限り宇宙で最も古い天体である。この年齢の古さから、NASA聖書で最も長寿な人物であるメトシェラに因み「メトシェラ星 (Methuselah star)」というあだ名で呼んでいる[4]

HD 140283の年齢は、まず恒星に含まれる金属量と表面温度の値から、144億6000万年と導入され、それのみでの不確かさは3億1000万年である。更にいくつかの値の不確かさを導入すると、年齢の不確かさは8億0000万年となる。不確かさの値が大きくなったのは、特に酸素量の不確かさに起因する[2]。この値は、2000年に求められた少なくとも140億年、最大でも160億年という値や[4][9]2002年に出された120億年から150億年[2]という値よりも改善されている。

HD 140283の年齢の不確かさの要素[2]
要素 不確かさ
(億年)
年周視差 (mas/年) 17.15 ± 0.14 ±2.1
視等級 (等級) 7.205 ± 0.02 ±2.3
E(B − V) 0.000 ± 0.002 ±0.6
表面温度 (K) 5777 ± 55 ±3.5
金属量 [Fe/H] -2.40 ± 0.10 ±1.0
酸素量 [O/H] -1.67 ± 0.15 ±6.1
窒素量 (solar log N) 8.69 ± 0.05 ±2.0
合計の不確かさ ±8.0

年齢の不確かさが改善したのは、ハッブル宇宙望遠鏡により詳細な固有運動の値が求まったことによるものが大きい。ハッブル宇宙望遠鏡より以前に、ヒッパルコスによる固有運動の値が求められていたが、ハッブル宇宙望遠鏡による観測では、ほとんど差がないことが分かった。ただし、不確かさはヒッパルコスのものより5倍も改善している[4]

固有運動の値[1][2]
赤緯 (/年) 赤経 (/年)
ハッブル宇宙望遠鏡 (2013) −1114.50 ± 0.12 −304.59 ± 0.11
ヒッパルコス (2007) −1114.93 ± 0.62 −304.36 ± 0.74

HD 140283の年齢は更に不確かさを引き下げる事が可能である。特に酸素の量が予想より高いため、宇宙に存在する酸素の量と比較すれば、HD 140283の年齢を引き下げ、恐らく宇宙の年齢以下にすることが可能である[4]

恒星の歴史[編集]

HD 140283は固有運動が非常に大きく、元々銀河系に属していた天体ではないと考えられている。恐らくかつては銀河ハローの中にある矮小銀河に属する恒星であったが、約120億年前に銀河系に衝突し、吸収されたと考えられている。銀河ハローの中にある天体は一般的に年齢の古い恒星が多いため、この観測結果と矛盾しない[4]

HD 140283は、低金属星とはいえ金属を含んでいるので、宇宙最初に形成されたと考えられている、金属を全く含まない、宇宙のビッグバン原子核合成で生成される水素ヘリウムのみで構成された種族IIIの恒星ではない可能性がある[4]。これは、HD 140283が形成された時代には、既に別の恒星が超新星爆発を起こし、それによって生じた重元素で「汚染」されている事になる[4]

出典[編集]

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関連項目[編集]

座標: 星図 15h 43m 03.09706s, -10º 56' 00.6036''