HE 1327-2326

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HE 1327-2326
仮符号・別名 2MASS J13300595-2341497
星座 うみへび座
視等級 (V) 13.5[1]
分類 準巨星[2]
HMP[2]
炭素星[1]
種族 種族II or 種族III[3]
天文学上の意義
意義 極めて金属量の少ない軽質量星
位置
元期:J2000.0
赤経 (RA, α) 13h 30m 05.951s[1]
赤緯 (Dec, δ) -23° 41′ 49.72″[1]
赤方偏移 0.000374[1]
視線速度 (Rv) 112km/s[1]
距離 4000光年以内[3]
(1226.4 pc以内)
絶対等級 (MV) 3.1以下
物理的性質
質量 太陽より軽い[3]
0.8M以下[4]
色指数 (B-R) 0.744 ± 0.017[1]
色指数 (B-V) 0.4[1]
色指数 (U-B) -0.139 ± 0.021[1]
色指数 (V-R) 0.344 ± 0.017[1]
色指数 (V-I) 0.697 ± 0.020[1]
色指数 (V-J) 1.143 ± 0.023[1]
色指数 (V-H) 1.432 ± 0.023[1]
色指数 (R-I) 0.353 ± 0.037[1]
色指数 (R-J) 0.799 ± 0.040[1]
色指数 (J-H) 0.289 ± 0.046[1]
色指数 (H-K) 0.082 ± 0.044[1]
金属量 -5.4 [Fe/H]
炭素量 -1.0 [C/H]
酸素量 2.5 or 2.8 [O/Fe][5]
3.7 or 3.4 [O/Fe]OH[5]
年齢 130億歳[3]
発見
発見年 2005年[3]
発見者 ハンブルク大学[3][6]
発見場所 チリの旗 チリ ラ・シヤ天文台

[6]

発見方法 シュミット式望遠鏡[3][6]
別名称
別名称
HE0107-5240[3],
2MASS J13300595-2341497[1],
SPM3.2 4266486[1]
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HE 1327-2326は、うみへび座の方向にある恒星である。2012年現在、最も金属量の少ない恒星である[3]。別名2MASS J13300595-2341497

概要[編集]

HE 1327-2326は、地球から見てうみへび座の方向にある恒星である。距離ははっきりとは分かっていないが、4000光年以内の距離にあると考えられている[3]太陽より軽い恒星であり[3]恐らく太陽の80%以下である[4]。年齢は130億年と推定されており[3]、これは、1個の恒星として観測された中では最も古い恒星の1つである。視等級は13.5等級と暗く[1]絶対等級でも3.1等級以下である。

化学組成[編集]

金属量[編集]

HE 1327-2326は、知られている中で金属量が最も少ない恒星である[3]。金属量の指標として一般的な[Fe/H]の値は-5.4で、これは金属が太陽の25万分の1の割合しか含まれていないことを意味する[3]。これまで知られていた中で最も金属量の少ない恒星は[Fe/H] = -5.3のHE 0107-5240だったが、この星はその1.5分の1しかない。また未発見の種族IIIの恒星は、理論上は[Fe/H] = -6.0という値を持つが、この恒星はそれに迫る値である。このような極めて金属量の少ない恒星は超低金属星(HMP, hyper-metal-poor star)と呼ばれている[2]

初期の宇宙の元素組成は、ビッグバン時の元素合成で生成した、水素ヘリウム、痕跡量のリチウムベリリウムのみで構成されていたと考えられている。それ以上の重元素は、恒星内部での核融合によって生成されたと考えられている。そのため、金属量の少ない恒星は、それだけ初期に近い時代で生成された恒星であると考える事が出来る[3]。このような初期宇宙の恒星は、現在では見られないような、太陽の数百倍もの質量を持つ超大質量星であったと考えられているが、質量が大きい恒星は、寿命が数百万年と極めて短い時間で寿命を迎え、超新星爆発を起こしてしまうため、発見は困難である。実際、種族IIIと呼ばれるこのような恒星は未発見である[3]。しかし、質量が小さな恒星ならば、観測が出来るほどの長い寿命を持つ事が出来る。これまでの理論では、太陽質量程度の軽い恒星は生成しないと考えられてきたが、2002年のHE 0107-5240と2005年のHE 1327-2326の発見により、このような軽い恒星も生成されている事が判明した[3]

炭素量[編集]

しかし、HE 1327-2326は、HE 0107-5240と共に、他の低金属量の恒星とは違う特徴がある。それは、炭素窒素の量が多い事である[3][4]。CH分子の吸収線から推定される炭素量は太陽の10分の1であるが、この量は、金属量から推定される炭素量と比べると多量であり、通常の低金属星の生成方法ではあり得ない元素比率である。

その他[編集]

HE 1327-2326からは、ニッケルの弱い吸収線が認められている[7]。また、検出可能な量のリチウムは発見されていない[7][4]。これは、HE 1327-2326の表面で、リチウムを消費するような元素の枯渇が見られるためと考えられている[7]

[O/Fe]OHの値から推定される[O/Fe]の値は2.5か2.8であるが、これは準巨星の値である[O/Fe] < 3.0と矛盾しない値である[5]

また、似た恒星であるHE 0107-5240と比較すると、と炭素以外の元素組成比に無視できない違いがあり、特にMg/Feと、Sr/FeがHE 0107-5240と比べると高い[3]。これは、初期の恒星の生成理論に強い制限を加えるものである[3]

生成の説明[編集]

HE 1327-2326のような、金属量は少なく、炭素量の多い恒星の生成は、以下のような複数の説がある。

金属量の少ない第2世代説[編集]

金属をほとんど含まない種族IIIである第1世代の大質量星が超新星爆発を起こす際、重元素をほとんど放出しない特異な爆発があったという説[3]。この場合、HE 1327-2326は、超新星残骸から生まれた第2世代の恒星ということになる。この場合、対応する第1世代の恒星は、太陽の数十倍の質量となる[3]。この説は、HE 0107-5240と比べた場合の元素比の違いも説明できる[3]

第1世代の生き残り説[編集]

HE 1327-2326は、第1世代の恒星の生き残りであるという説。この説の場合、HE 1327-2326が準巨星[5]の段階にあり、主系列星[3]に近い事が問題となる。HE 0107-5240は巨星まで進化した恒星であるので、内部の元素合成がある程度進んでいるが、HE 1327-2326はそれほど進化していないため、表面は内部で合成された元素の影響を受けていないと考えられるからである[3]。検出される元素の説明は、星間物質からHE 1327-2326の表面にわずかな降着があるのと、軽元素を供給する源が必要となる[3]。この場合、やや質量の大きな恒星とHE 1327-2326が連星をなしており、先に寿命を迎えた恒星から軽元素が供給されたと考えられている。この場合、連星である証拠が見つかっていないのが問題であるが、恐らく白色矮星として暗く冷えており、検出困難な状態になっていると考えられている[3]。またこの場合、どのようにして初期宇宙から低質量星が生成されるのかが問題である[3]

観測の歴史[編集]

HE 1327-2326は、ヨーロッパ南天天文台ラ・シヤ天文台が1メートルのシュミット望遠鏡を用いて撮影した、他の約8000個[6]もの低金属星の中から、2005年に発見された。HE 0107-5240も、この候補の中から発見されている。金属量は、同天文台3.6メートル望遠鏡を用いて観測された[3]。なお、これらの観測は元々はクエーサーの探索を行っていた際に偶然発見されたものである[6]

その後、東京大学マグナム望遠鏡による測光観測と、すばる望遠鏡の高分散分光器を用いて分光観測を行い、詳しい化学組成が明らかとなった[3]。HE 1327-2326の重元素量は極めて少ないので、その組成の測定にはすばる望遠鏡による高精度の観測が威力を発揮した[3]

関連項目[編集]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t 2MASS J13300595-2341497 SIMBAD
  2. ^ a b c HE 1327-2326, An Unevolved Star with [Fe/H] < -5.0. III. Does its Atmosphere Reflect its Natal Composition? ESO
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae すばる望遠鏡、最も重元素の少ない星を発見 ~第一世代星の元素合成に迫る~ すばる望遠鏡
  4. ^ a b c d An extremely primitive halo star ESO
  5. ^ a b c d The Oxygen Abundance of HE 1327-2326 ESO
  6. ^ a b c d e A Glimpse of the Young Milky Way ESO
  7. ^ a b c HE 1327-2326, an Unevolved Star with [Fe/H]<-5.0. II. New 3D-1D Corrected Abundances from a Very Large Telescope UVES Spectrum ESO

外部リンク[編集]

座標: 星図 13h 30m 05.951s, -23º 41' 49.72''