GRS80

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。49.133.250.32 (会話) による 2012年6月3日 (日) 12:39個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (→‎概要)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

GRS80は、測地系における「地球の形」の基準である準拠楕円体 Reference ellipsoid)または地球楕円体の一つであり、 WGS84と並んで、現在世界中で最もよく使われているものである。Geodetic Reference System 1980の略語である。

概要

地球の正確な形は、平均海水面を大陸まで延長した仮想面によって表現される。これをジオイドと呼ぶ。しかし、ジオイドを直接に測地測量に用いると計算が極めて複雑になるため、通常はジオイドに最適に近似した回転楕円体を用いて地球の形を表現する。このような回転楕円体地球楕円体と呼ばれるが、そのうちで個々の測地系が準拠すべき地球楕円体準拠楕円体 Reference ellipsoid)と呼ばれる。GRS80は、世界測地系を構成する準拠楕円体の一つであり、現在では世界的に最も広く使われているものである。

地球楕円体や準拠楕円体は、その長半径(=赤道半径) a および扁平率 f によって記述されるのが普通である。 GRS80は、長半径 6 378 137m および 扁平率 1/298.257 222 101 で定義される。このシステムは、第17回国際測地学・地球物理学連合(IUGG)において採択された。これは、本質的に GPSによる測地位置の基礎であるばかりでなく、測地学コミュニティ以外においても広範に使用される[3]

日本における測地系も、測量法と関係法令を改正することにより、2002年4月1日から、GRS80をその一部とする世界測地系に移行した。具体的には、測量法施行令第3条[1]の改正によって法的に位置づけられた。

ただし、水路業務法の場合は、国際的な取り決めが異なるために、GRS80とはわずかに異なる WGS84を基にして、水路業務法施行令第2条第2号[2])を改正している。扁平率がわずかに異なる理由は、地球の扁平率を参照のこと。

地図海図の制作のために様々な国々で使われてきた数多くの他の準拠楕円体は、次第に世界的に共通のGRS80やWGS84を用いる世界測地系に移行しつつある。

GRS80の定義と導出値

GRS 80は、赤道半径(=長半径)と扁平率を次のように定義している。

赤道半径 a = 6 378 137m(正確に)

扁平率 : (正確に)

楕円または回転楕円体長半径a短半径b とすると、扁平率

であるので、上記の定義から、

極半径 b = 6 356 752.314 140 356m (近似値)となる。

また扁平率は、0.003 352 810 681 182 319(近似値)である。

離心率の2乗 e^2 = f(2-f)であるから、e^2 = 0.006 694 380 022 900 788(近似値)、

離心率 e は、0.081 819 191 042 815 791(近似値)となる。

子午線弧長の計算に用いられる第3扁平率 n は、

であり、  n = 0.001 679 220 394 628 744 689 667(近似値)である。


GRS80の定義数値の誘導

基準楕円体面は、通常、 長半径(赤道半径) 短半径(極半径) の両方、アスペクト比 または 扁平率 で定義される。しかし、GRS80は例外である。

  • 定義する幾何学定数(Defining geometrical constants)
    • 長半径 = 赤道半径 6 378 137 m(正確に)
  • 派生の幾何学定数(Derived geometrical constants)
    • 扁平率 0.003 352 810 681 225
    • 扁平率の逆数 298.257 222 101
    • 短半径 = 極半径 6 356 752.314 14 m
    • アスペクト比 0.996 647 189 318 816
    • 国際測地学・地球物理学連合が定義する平均半径[Mean radius as defined by the International Union of Geodesy and Geophysics (IUGG)]R: 1= (2a+b)/3 = 6 371 008.7714 m
    • 正積の平均半径(Authalic mean radius) = 6 371 007.1810 m
    • 同じボリュームの球の半径(Radius of a sphere of the same volume) 6 371 000.7900 m
    • リニア偏心(Linear eccentricity) 521 854.0097 m
    • 両極を通る楕円断面の離心率(Eccentricity of elliptical section through poles) 0.081 819 191 0435;
    • 極の曲率半径(Polar radius of curvature) 6 399 593.6259 m
    • 赤道上の子午線曲率半径(Equatorial radius of curvature for a meridian) 6 335 439.3271 m
    • 子午線象限(Meridian quadrant, 赤道から極までの子午線弧長) = 10 001 965.7293 m;
  • 定義する物理定数(Defining physical constants)
    • 空気塊を含む地心重力定数(Geocentric gravitational constant, including mass of the atmosphere) 3 986 005・108 m3/s2
    • 動的フォームファクタ(Dynamical form factor) = 108 263・ 10-8
    • 回転角速度(Angular velocity of rotation) = 7 292 115・10-11 s-1

完全な定義のために、4つの独立した定数が必要である。GRS80は、およびを選び、幾何学の定数に組立量を作らせる。この数式は[3]反復し...定義された定数をプラグインできる。

ここで、

[4]と置き換えると、の丸めた値が出てくる。

0.006 694 380 022 903 415 749 574 948 586 289 306 212 443 890

そこから、 の丸めた値を逆数のように計算する。

298.257 222 100 882 711 243 162 8366

この値を、小数以下9桁に丸めた、1/f = 298.257 222 101 が、定義値として用いられる。

GRS80は、グローバル・ポジショニング・システムで使用され、実用上は、en:WGS84(World Geodetic System 1984)と呼ばれる。しかしWGS84楕円体の扁平率は、GRS80楕円体の扁平率に比べて極めてわずかの違いがある(WGS84楕円体では、1/f = 298.257 223 563)。詳細は扁平率#地球の扁平率を参照。

出典

  1. ^ [1] 測量法施行令
  2. ^ [2] 水路業務法施行令
  3. ^ p395, p398 of Bulletin Geodesique for 1980
  4. ^ Jason Tiscione's Big Calculator
  • [4] 国土地理院 世界測地系移行に関する質問集(Q&A)


参考文献

  • その他の派生物理定数および測地学の数式は、次を参照されたい。 Geodetic Reference System 1980, Bulletin Geodesique, Vol 54:3, 1980.

関連項目

外部リンク