12弦ベース
12弦ベース(じゅうにげんベース、12 string bass、Twelve-string bass)とは、単弦あるいは複弦からなる12本の弦で構成されるエレクトリックベースの一種。
概要
一般的な4弦ベースの各弦に1オクターブ上の複弦を2本ずつ加え、3本を1コースとした4コースの弦(3×4弦)を持つ複弦エレキベース。8弦ベースの拡張版。音色は8弦ベースよりさらにきらびやかで、ディストーションやオーバードライブを利用した音色は「バイクのエンジン音のよう」と形容される。フィンガー・ピッキング、ピック、スラッピングのいずれによっても演奏できるが、一般に弦を押さえるのが大変で、スムーズに弾きこなすのは熟練のベーシストにとっても容易でない。ディーン、チャンドラー、Kid'sギターなど、多数のメーカーのモデルが存在しアメリカでは根強い人気があるが、日本国内ではほとんど販売されていない。
12弦ベースの考案と製作
1970年代後半にアメリカのロックバンド、チープ・トリックのベーシストであるトム・ピーターソンが考案し、ヘイマー(w:Hamer_Guitars)のJol Dantzigによって最初に制作された。メーカーは最初、弦の張力にネックが耐えられないことを危惧し、妥協案である高音側の2コースのみを3弦、低音側2コースを2弦とした10弦ベースを試作する。この10弦ベースの成功により、続けて当初の案であった12弦が実現された。当初は1コースの弦ごとに出力できるよう小さなミキサーがベース本体に内蔵されており(4ch出力/クアドロフォニック)、そのためにこのベースは「クワッド・ベース」と呼ばれた。[1]
当初は弦の張力の問題で、30.5インチのショートスケールのみで作られていた(B12Sモデル)。1980年代にロングスケールモデルが作られるが、ネックが弦の張力に耐えられずに問題が発生したため、1989年にデュアルトラスロッドシステムが採用される。以降、ミディアムスケールおよびショートスケールモデルにもデュアルトラスロッドが組み込まれる。現在のヘイマー社ではミディアムスケールモデルのB12MとロングスケールモデルのB12Aのみが製造されている(ショートスケールB12Sは廃版)。
著名な使用者
- トム・ピーターソン (チープ・トリックのベーシスト)
- ニッキー・シックス (モトリー・クルーのベーシスト)
- ダグ・ピニック (King's Xのボーカリスト兼ベーシスト)
- ジェフ・アメン (パール・ジャムのベーシスト)
- ビリー・シーン (MR. BIGのベーシスト)
- ジョン・エントウィッスル (ザ・フーのベーシスト)
その他の12弦ベース
- 6コースの12弦ベース
- 6弦ベースの各弦に1本の複弦を加えたもの。レッド・ツェッペリンのジョン・ポール・ジョーンズが使用していた。
- 単弦12弦ベース
- 12本の単弦のあるベース。さまざまなチューニングがなされる。音域が非常に広く、指板の幅が広い。従来のベースのように演奏されず、スティックのように演奏されることが多い。
脚注
- ^ Hamer Quadraphonic 12-String Bass, 12stringbass.net
関連項目
外部リンク
- 12stringbass.net
- ヘイマーギターズ
- 指輪師 日本の12弦ベース奏者の演奏動画