超絶技巧練習曲
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
| クラシック音楽 |
![]() |
| 作曲家 |
| ア-カ-サ-タ-ナ ハ-マ-ヤ-ラ-ワ |
| 音楽史 |
| 古代 - 中世 ルネサンス - バロック 古典派 - ロマン派 近代 - 現代 |
| 楽器 |
| 鍵盤楽器 - 弦楽器 木管楽器 - 金管楽器 打楽器 - 声楽 |
| 一覧 |
| 作曲家 - 曲名 交響曲 - ピアノ協奏曲 ピアノソナタ ヴァイオリン協奏曲 ヴァイオリンソナタ チェロ協奏曲 弦楽四重奏曲 - オペラ 指揮者 - 演奏家 オーケストラ - 室内楽団 |
| 音楽理論/用語 |
| 音楽理論 - 演奏記号 |
| 演奏形態 |
| 器楽 - 声楽 宗教音楽 |
| イベント |
| 音楽祭 |
| メタ |
| ポータル - プロジェクト カテゴリ |
超絶技巧練習曲(ちょうぜつぎこうれんしゅうきょく)は、ハンガリーのピアニスト、フランツ・リストの作曲した、ピアノのための12の練習曲である。
名前の通り、非常に高度な演奏技巧を要するが、決して何から何まで超絶技巧の会得を目的としたわけではない。transcendanteという言葉には宗教的な意味があり、普通「超越」と訳されるが、肉体、精神、魂、これらの全てを超越するというのが最も近い訳である。つまりこの曲集は、肉体、精神、魂を超越した練習曲なのである。超絶技巧という訳も決しておかしな訳ではないが、どうにもリストが定義したこの曲集の意味からは少し遠のいてしまっているようである。
2度にわたる改訂が行われている。
- 原題:Études d'exécution transcendante(仏)
- サール番号 139
- ラーベ番号 2b
目次 |
[編集] 改訂の歴史
- 1826年(15歳)フランス(作品番号6)、ドイツ(作品番号1)で初稿を出版。「すべての長短調のための48の練習曲」(実際には12曲)というタイトルであった。サール番号はS136。
- 1837年(26歳)パリ、ミラノ、ウィーンにて第2稿「24の大練習曲 Op.6」(実際には12曲)が出版される。献呈は彼の師匠でもあるカール・ツェルニー サール番号はS137。
- 1840年「マゼッパ」を改作
- 1852年(41歳)第3稿が出版される。今日もっとも頻繁に演奏されているのはこの稿である。この曲集についても第2稿同様にカール・ツェルニーに献呈された。
[編集] 特に演奏困難な中間稿
中間稿の「24の大練習曲」については良く演奏される第3稿に比べるとはるかに難易度が高い。かの大ピアニストクラウディオ・アラウ、偉大なピアノ教師ゲンリフ・ネイガウスの2人共に「演奏不可能」との見解で一致している。
何故そこまで難しくなったのかについては次のような理由が考えられる。
- ピアノが現在のものと違って鍵盤が軽く弾きやすかった(特に第8番が既に現代のピアノの限界を超えているのが分かる。今までに極少人数のピアニストが録音に成功しているが、いずれも鍵盤を通常より軽くするか、テンポを規定よりも下げて行われたものである。)
- 当時のピアノ演奏技術がまだまだ発展途上だったため、ミスタッチだらけで演奏された難曲でも音楽的に筋が通っていれば「弾ける」と見なされた(これは、音盤のSP時代を生きた演奏家が多く証言している。但し、リストもそうであったかどうかは定かではない。)
その後改訂されるようになった経緯は、1850年代に入ってからピアノが現在のものに近くなり、曲自体を音楽的に洗練すると同時に、進歩していくピアノに合わせられたと考えられる。
シューマンの音楽エッセイ集『音楽と音楽家』には、1837年時点での“24の大練習曲集”についてのエッセイが収められており、内容は以下のようになっている。
「前にも言った通り、この曲は巨匠による演奏で聴かなければならない。できる事ならば、リスト自身による演奏がいいだろう。しかし、たとえリストが弾いても、あらゆる限界を超えたところや、得られる効果が、犠牲にされた美しさに対して、充分の償いとなっていないようなところでは、耳障りな箇所がたくさんあるだろうと思う。しかし何はともあれ、来るべき冬の彼の到着は、心から待ち遠しい」
つまり、中間稿はリストの技術をもってしても、十分な表現力をこめた演奏は非常に困難であるとシューマンは言っていた事となる。但し、このエッセイは彼がリストによる中間稿の演奏を聴く前に発行されたものであり、実際にリストが中間稿を持て余していたかどうかはこのエッセイからは窺い知れないが、歴史に名の残る大ピアニスト達から見ても中間稿は特に突出した難易度であった事がわかる。
[編集] 構成
すべて異なる調で書かれている。2曲組で同じ調号の長調と短調(平行調)とし、2曲ごとに調号の♭がひとつずつ増えていく。初版と第2、3版では曲順が異なる。
以下は第1版の構成である。『12の練習曲』として全音楽譜出版社から出版されている。
- ハ長調 Allegro con fuoco
- イ短調 Allegro non molto
- ヘ長調 Allegro sempre legato
- ニ短調 Allegretto
- 変ロ長調 Moderato
- ト短調 Molto agitato
- 変ホ長調 Allegretto con molta espressione
- 第2版以降、移調して11番に移動。
- ハ短調 Allegro con spirito
- 変イ長調 Allegro grazioso
- ヘ短調 Moderato
- 変ニ長調 Allegro grazioso
- 第2版以降削除。
- 変ロ短調 Allegro non troppo
以下は第2、3版の構成である。特記したもの以外は第1版の曲を改作したもの(テンポの変更も記す)。
- ハ長調、『前奏曲』 (Preludio)、Presto
- イ短調、Molto vivace a capriccio→Molto vivace
- ヘ長調、『風景』 (Paysage)、Poco adagio
- ニ短調、『マゼッパ』 (Mazeppa)、Allegro patetico→Allegro
- 変ロ長調、『鬼火』 (Feux follets)、Equalmente→Allegretto
- ト短調、『幻影』 (Vision)、Largo patetico→Lento
- 変ホ長調、『英雄』 (Eroica)、Allegro deciso→Allegro
- ハ短調、『荒々しき狩』 (Wilde Jagd)、Presto strepitoso→Presto furioso
- 変イ長調、『回想』 (Ricordanza)、Andantino
- ヘ短調、Presto molto agitato→Allegro agitato molto
- 変ニ長調、『夕べの調べ』 (Harmonies du soir)、Lento assai→Andantino
- 第1版の第7曲を移調・改作。
- 変ロ短調、『雪あらし』 (Chasse-neige)、Andantino→Andante con moto
ちなみに第2版にはタイトルはまだついておらず、「マゼッパ」の題がついたのは1840年の改作からである。
また第2版のみつけられる愛称ではあるが、シューマンが特に第6番、第7番、第8番の3曲を「嵐の練習曲」と呼んだ。
稀にだが第3版の第10番ヘ短調の俗称で「熱情」と呼ぶことがある。
[編集] リャプノフの超絶技巧練習曲
後世の作曲家セルゲイ・リャプノフは、リストが構想した全調による24の練習曲を完成することを意識し、リストの用いなかった12調でピアノのための練習曲を作曲した。これが「超絶技巧練習曲Op.11」(1905年完成)である。第10曲の『レズギンカ』(バラキレフ調)ロ短調はリャプノフの代表的作品である。
ルイス・ケントナー、コンスタンティン・シチェルバコフ、マルコム・ビンズなどが代表的な全曲録音者である。
[編集] 構成
- 嬰ヘ長調、『子守歌』(Колыбeлънаяно)、Andantino、4分の2拍子:穏やかな曲調の間に重音を駆使したカデンツァがたびたび挿入され、次第にリズムが複雑になって最後は静かに閉じられる。
- 嬰ニ短調、『霊の踊り』(Призрачное рондо)、Presto、8分の6拍子:無窮動の曲。
- ロ長調、『教会の三連鐘』(Трезвон)、Allegro moderato e maestoso、4分の4拍子:3段楽譜で書かれ、ロシアの鐘の音が描写される。最後は4段楽譜となる。
- 嬰ト短調、『テレク川』(Терек)、Allegro impetuoso、4分の4拍子:冒頭にレールモントフの詩が掲げられている。左手が常にせわしく動き回る無窮動。
- ホ長調、『夏の夜』(Летняя ночь)、Lento ma no troppo、8分の6拍子:3段楽譜で書かれた夜想曲。
- 嬰ハ短調、『嵐』(Буря)、Allegro agitato molto、4分の2拍子:両手のオクターブ、ポリリズムなどが盛られた難曲。
- イ長調、『牧歌』(Идиллия)、Andantino pastorale、8分の6拍子:全曲の中では比較的平易な技巧の曲。
- 嬰ヘ短調、『ブィリーナ』(Былина):ブィリーナは、ロシア伝統の英雄を詠った叙事詩の様式。その名にふさわしくバラード的な曲調で、最後はAllegro vivoになって嬰ヘ長調で結ばれる。
- ニ長調、『エオリアン・ハープ』(Эоловы арфы)、Adagio non tanto、8分の9拍子:64分音符の細やかなパッセージに埋め尽くされた曲。
- ロ短調、『レズギンカ』(Лезгинка)、Allegro con fuoco、16分の12拍子:バラキレフの様式による。
- ト長調、『妖精の踊り』(Хоровод сильфов)、Allegretto scherzando、4分の2拍子:右手の重音が駆使された難曲。
- ホ短調、『フランツ・リストの追悼の悲歌』(Элегия памяти Франца Листа)、Lento capriccioso、4分の3拍子:リストのハンガリー狂詩曲の様式による。曲集の最後を飾る大曲。


