新型出生前診断

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新型出生前診断(しんがたしゅっしょうぜんしんだん)とは、妊婦から採血しその血液中の遺伝子を解析することにより、胎児の染色体や遺伝子を調べる非侵襲的検査である。

「新型出生前診断」はマスコミがつけた仮の名前であり、医学的に正確には、無侵襲的出生前遺伝学的検査(むしんしゅうてきしゅっしょうぜんいでんがくてきけんさ、non-invasive prenatal genetic testing; NIPT)、あるいは母体血細胞フリー胎児遺伝子検査(ぼたいけつさいぼうふりーたいじいでんしけんさ、maternal blood cell-free fetal nucleic acid (cffNA) test)などと呼ばれる。またMPS法と呼ばれることがあるが、これはmassively parallel genomic sequencing methodを意味し、NIPTのいくつかある検査原理のひとつを指す。

検査目的[編集]

母体血中にある胎児由来遺伝子を調べることにより、胎児性別診断、RhD陰性妊婦での胎児のRhD血液型診断、胎児の単一遺伝子病や染色体異常の診断、さらには妊娠高血圧症候群の発症予知・胎盤機能評価の評価などを目的とする。臨床的にすでに実用化されていたのは胎児性別診断とRhD血液型診断であったが、2011年より胎児染色体異常の診断が可能となり、医学的のみならず社会的にも大きなインパクトを与えた。

なお、検査が可能なのは21トリソミー18トリソミー、13トリソミーの異常のみである。この3つ以外の染色体異常は見つけられない。このため、「診断」と呼ぶべきではないとする意見もある[1]

染色体診断[編集]

アメリカ・シーケノム(Sequenom)社が2011年10月から検査受託を開始したMaterniT21は、妊婦の血液から胎児染色体異常が高精度で診断できるという画期的検査であった。当初は21トリソミーダウン症候群)が対象であったが、その後に18トリソミー13トリソミーも追加されている(MaterniT21 plus)。国内でも複数医療施設による2012年内での検査開始が模索されている。

検査精度[編集]

シーケノム社のMPS法については、米国をはじめとする世界の27施設で計1988例を対象としたコホート研究が行われた。21トリソミーの出生前診断では感度sensitivityが99.1%、特異度specificityが99.9%という高い精度が報告されている。ただし陽性的中率陰性的中率は対象群の罹患率によって変化することに注意が必要である。また、妊婦の年齢が低いほど、結果が正しい確率は下がる[2]

倫理的問題[編集]

非侵襲的でかつ高精度の出生前診断法であるため優生的な目的への応用が危惧されている。感度特異度からみる検査自体の精度はきわめて高いが、トリソミー21のローリスク群を900人にひとり程度の頻度と考えて計算すると陽性的中率は30%程度にしかならない。あくまでも確定診断ではなくスクリーニング検査と考えられるため、倫理的な問題の本質は従来の血清マーカーテストと同じと考えられる。

世界的にも生命倫理の観点からさまざまな議論がなされているが、実際には一般妊婦からの検査に対する圧倒的なニーズがあるため、高額な検査にもかかわらず広く普及しつつあるのが現状である。

世界の状況[編集]

シーケノム社の検査はすでに世界20か国で行われている。さらにアメリカ・ヴェリナタ(Verinata)社が2012年3月から、アメリカ・アリオサ(Ariosa)社が2012年6月から検査受託を開始した。また詳細は不明であるが、中国・BGI社が2011年から中国国内で検査を行っている。

日本においては、2013年4月より、日本医学会の認定・登録委員会により認定された施設での検査が始まった[3]。2013年11月22日、NIPTコンソーシアムが検査結果を集計したところ、新型出生前診断を受けたのは約3500人であり、そのうち67人が陽性と判定され、56人が異常ありと診断された。異常ありと診断された者の9割が、中絶を選択していると発表された[4]

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ NIPT 新型出生前診断”. クリフム夫律子マタニティクリニック臨床胎児医学研究所 (2013年7月7日). 2014年1月30日閲覧。
  2. ^ “出生前診断…まず「超音波」 専門外来で”. 読売新聞. (2013年4月25日). http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=76350 2014年1月30日閲覧。 
  3. ^ 新出生前診断、1日から 遺伝相談重視、17施設で順次 朝日新聞 2013年3月31日配信
  4. ^ “新型出生前診断、陽性の9割以上中絶 羊水検査で確定後”. 朝日新聞. (2013年11月22日). http://www.asahi.com/articles/TKY201311220411.html 2013年11月23日閲覧。 

外部リンク[編集]