代替現実ゲーム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

代替現実ゲーム(だいたいげんじつゲーム、: alternate reality game)は、日常世界をゲームの一部として取り込んで現実と仮想を交差させる体験型の遊びの総称である。

インターネット、テレビ、雑誌、ラジオ、ポスター、映画、FAXサービス、携帯電話、携帯ゲーム機など様々なプラットフォームの一部もしくは全てを通して提供される断片的な情報を、不特定多数のプレイヤーが協力して情報を主体的に集めながらゲームの進行へ影響を与えることで、1つの大きなストーリーが明らかになってゆくという特徴を持つ[1]

なお、拡張現実: augmented reality)としばしば混同されるが、別のものである。また、代替という訳語から「代わりの」という含みがある alternative としばしば紹介されることがあるが、「交差する」というニュアンスの alternate が正式である[2]

概要[編集]

代替現実ゲームの定義は非常に曖昧であり明確な区分けを行うことは難しいが、トラディショナルな代替現実ゲームは総じて下記のような特徴を有している。

  • 日常世界をゲームの一部として取り込んでいる。
  • プレイヤーの行動によってリアルタイムに展開が変化するインタラクティブ性を備えている。
  • プレイヤー同志がコミュニケーションをとることでゲームが進行する。
  • インターネット、テレビ、ラジオなど様々なプラットフォームを通じたクロスメディア展開を行う。
  • 断片的な情報が少しずつ判明してゆくことで、1つの大きなストーリーが徐々に明らかになってゆく。
  • プレイヤーへ与えられた謎解きやミッションを解決することでゲームが進行する。

実際の代替現実ゲームは、個人やサークルが自分たちの楽しみのために非営利で運営するもの[3]から、営利目的で行われているもの[4]、企業がプロモーションのために広告費を投じて行う大規模なもの[5]、書籍[6]やトレーディングカード[7]の体裁をとったものなど様々な形がある [参考文献 1]

元々プロモーション手法として発案されたゲームのため、広告との親和性が高い。代替現実ゲームを利用したプロモーションは、既存のプロモーション手法と比較して

  • 長期にわたり継続的に行うことができる(数日から数カ月にわたり行われるものが多い)。
  • プロモーション対象の商品やコンテンツを知らない層へ向けてもリーチできる。
  • プロモーション対象の商品やコンテンツのファンに対しては顧客ロイヤルティの深化を期待できる。

などの特徴があり、北米のデジタルゲームや映画では定番の手法となっている [参考文献 2]

さらに、近年では、ジェイン・マクゴニガル英語版らが主導する、ゲームテクノロジーにより現実世界をよりよいものにする活動の手段としても代替現実ゲームは用いられている。現実世界にゲームルールを注入するという代替現実ゲームの性質により、人々の現実世界の受け止め方を作り変えることが可能であるためである。これは、ゲーミフィケーションと近しい考え方であるが、ゲーミフィケーションを取り巻く言論がポイント獲得やレベルアップといった個々のメカニクスに重点を置きがち[8]であることに対し、ジェインらは人間の内発的報酬を如何に引き出すかに重点を置いている [参考文献 3] 。 日本では、ロックバンド・くるりがアルバム・魂のゆくえ発売時にプロモーションの一環としてARGを展開している。

歴史[編集]

The Beast[編集]

The Beast英語版は代替現実ゲームという言葉も概念も確立されていなかった2001年にスティーヴン・スピルバーグ監督の映画『A.I.』のプロモーションのために実施された世界初の本格的代替現実ゲームである。

映画のポスターやトレイラー映像に隠された人名や電話番号をきっかけに、興味を持ったプレイヤーたちが映画・動画・ポスター・電話・FAX・電子メール・実在の場所などに散りばめられた情報を協力して集め始め、徐々に大きなストーリーが明らかになってゆくという仕組みになっており、代替現実ゲームの特徴を備えていた。

3か月のゲーム期間を経て最終的に参加したプレイヤーの総数は約300万人となり、老若男女を問わず多くの層が参加した。また The Beast を通じて形成されたCloudmakers英語版と名付けられたコミュニティではゲーム終了後も活発な交流が行われ、欧米のその後の ARG の発展に寄与した[参考文献 1]

RYOMA the Secret Story[編集]

『RYOMA the Secret Story』は、2009年4月から実施された、非個人により日本国内で制作・実施された最初の欧米スタイルの典型的なARGである[9][参考文献 1]慶應義塾大学経済学部 武山政直研究室、アサツー ディ・ケイメディアファクトリー大日本印刷株式会社オフィス新大陸アルフレッドコアエリアワークス株式会社が産学連携で設立した「ユビキタスエンターテインメント手法による事業創造コンソーシアム」による、ARGの有効性を検証することを目的とした、共同ビジネストライアルであった[参考文献 4]

女子大生が誘拐された瞬間の防犯カメラの映像を模した動画がYouTubeに掲載されたところからゲームは始まり、最終的には坂本竜馬の暗殺の秘密に迫るというストーリーであり、歴史を題材に、特に若年層の興味の喚起や史跡保存の問題提起もテーマの一環としていた。

誘拐事件を解決するまでのPhase1、坂本竜馬の暗殺の謎に迫るPhase2、小説が刊行されて全ての謎が明らかになるPhase3、という3段階の構成を予定していたが、Phase2までしか実施されていない。

Phase1は、誘拐事件をたまたま知ったというフリージャーナリストのブログ[10]を中心に展開し、Phase2 は幕末に関する市民セミナーのサイト[11]を中心に展開した。欧米の典型的なARGと同様に、活発なプレイヤーコミュニティが形成され、参加者が積極的にゲーム情報のまとめが行う現象もみられた[12]

脚注[編集]

  1. ^ ARGology.org What is an ARG? 参照。
  2. ^ ARG情報局 ARG(代替現実ゲーム)とは? ARG の可能性に興味がある方へ内「よくある間違い」参照。
  3. ^ BUBBLEGUM』など。
  4. ^ CRAZY DROP』など。
  5. ^ The Beast(映画『A.I.』プロモーション)、I Love Bees(Xbox用ゲームソフト『Halo 2』プロモーション)、Why So Serious?(映画『ダークナイト』プロモーション)など。
  6. ^ Cathy's Book、『サーティーナイン・クルーズ』など。
  7. ^ Perplex City、『名探偵コナン カード探偵団』など。
  8. ^ GameBusiness.jp 【GDC2011】ゲーミフィケーション、明日から使える60のハウツー
  9. ^ 個人制作では2005年の『AI/HA』が、海外制作・国内実施では2008年のThe Lost Ring英語版が、カード販売型ARGでは2008年の『名探偵コナン カード探偵団』がある。
  10. ^ 雑草〜記者魂〜
  11. ^ 西谷幕末ゼミ
  12. ^ RYOMA the secret story wiki

参考文献[編集]

  1. ^ a b c 八重尾昌輝、2010、「第20章『ARG』」、『デジタルゲームの教科書』、ソフトバンククリエイティブ ISBN 4797358823
  2. ^ 三宅陽一郎、2010、「IGDA日本代替現実ゲーム部会 第一回研究会『ARG入門:体験型エンタテインメントの現在と未来』参加記―新しいコンテンツの展開の形 ARG (Alternate Reality Game) ― (PDF) 」 、『コンテンツ文化史研究』3号
  3. ^ ジェイン・マクゴニガル(著)・妹尾堅一郎(監修)・武山政直(解説)・藤本徹(訳)・藤井清美(訳)、2011、『幸せな未来は「ゲーム」が創る』、早川書房 ISBN 4152092297
  4. ^ 「ユビキタスエンターテインメント手法による事業創造コンソーシアム」による『RYOMA the Secret Story』のプレスリリース(PDF)

外部リンク[編集]