下郷町連続殺人・死体遺棄事件

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下郷町連続死体遺棄事件
場所 日本の旗 日本福島県南会津郡下郷町
日付 2007年8月2016年6月
攻撃手段 撲殺
武器 素手
死亡者 男性2名
犯人 兄X(主犯)・弟B(共犯)
対処 主犯に懲役三十年、共犯に懲役二年六ヶ月(執行猶予五年)
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下郷町連続殺人・死体遺棄事件(しもごうまちさつじん・れんぞくしたいいきじけん)とは、2017年福島県福島県南会津郡下郷町湯野上温泉で発覚した連続殺人死体遺棄事件。

2007年8月頃に発生した男性失踪事件を発端に、暴行監禁などの虐待で死亡した2名の被害者が確認されている。

裁判年月日  平成30年12月14日

裁判所名   福島地裁

裁判区分   判決

事件番号    平29(わ)150号・平29(わ)162号・平30(わ)10号・平30(わ)19号

事件名     殺人、傷害致死、傷害、死体遺棄、詐欺、公用文書毀棄被告事件

事件の概要[編集]

加害者であるXが、2007年8月頃に男性A(当時37歳)を福島市北中央のアパートで胸部を拳で複数回強打し死亡させ[1]、2016年6月7日には監禁時状態同然の男性C(当時42歳)を宇都宮市下岡本町の自宅アパートで喉を右拳で5回殴り殺害した事件[2]

死亡した被害者は、加害者の出身地である福島県南会津郡下郷町湯野上温泉に運ばれ、Aは山林にCは阿賀川河原の近くの国有地に遺棄された。その際に両件とも加害者は弟であるBに協力を要請している(後にBは死体遺棄容疑で逮捕)。

Xは2017年10月15日にCに対する恐喝未遂容疑で福島県警察福島北警察署に逮捕され、翌月6日には傷害容疑で再逮捕、9日にAとCに対する死体遺棄容疑で再逮捕(供述通りの場所からCの遺体が同日13時50分ごろに発見され同20日にAが発見される)された[3]

更に2018年1月17日にAに対する殺人容疑[注 1]で再逮捕[4]。され、2月9日にCの家族に対する詐欺容疑で再逮捕、同19日に公文書毀棄でも再逮捕されている。

加害者はCの家族に対して「Cに金を貸しているので代わりに返して欲しい」などと嘘を言い、数回にわたって立件分だけでも218万円(判示で認定した額もふくめ3、500万円前後)をCの殺害前後にだまし取っていた[5]

それ以外にもCに友人・知人へ連絡を取らせ、「経営していた店舗の借金を返すため」と嘘を言わせて、少なくとも20万円前後を新潟市仙台市在住の友人・知人から集めさせた事が判明している。

最終的には殺人傷害致死傷害死体遺棄詐欺公文書毀棄で起訴された。

なお、公文書毀棄があるのは、詐欺容疑で取り調べ中に調書を取調官の目前で破り捨てたためである[6]

裁判[編集]

裁判は裁判員裁判で行われ、福島地方裁判所(柴田雅司裁判長(第50期)、内藤和道裁判官(第58期)、菊池眞由美裁判官(第70期))で裁判が行われた。

検察側の佐藤かよ検察官・田中邦彦検察官・佐々木和也検察官(いずれも福島県検察庁)はXに対し無期懲役刑を求刑、弁護側の川端茂樹弁護士(主任)・安倍孝祐弁護士(いずれも国選弁護人)は2007年の傷害致死事件は「関与していない」として無罪を主張、2016年の殺人事件では「殺すつもりはなかった」と殺意を否定した。

なお弁護側は、詐欺傷害死体遺棄公文書毀棄の各罪については起訴内容を争うことなく認めた[7]

2018年12月14日、福島地方裁判所はX(判決時40歳)に対し懲役30年(求刑無期懲役)を言い渡した[8]

判決で柴田雅司裁判長は、争点となった2007年の傷害致死について、先に死体遺棄罪で有罪が確定したBの証言などを元に「犯人であることに合理的疑いはないと言える」と傷害致死を認定。その際に「Aに何らかの落ち度があるとは考えられず、動機は身勝手」「暴行態様は執拗かつ危険で悪質」「本件は傷害致死事案の中でも相当に悪質」と言及した。

2016年の殺人についても「強い殺意をもって喉を5回殴った」と認定し、「その暴行の態様をみても残酷というほかないばかりか、被告人はこれらの暴行を楽しんでいたというのである」「苛烈な暴力等によって言いなりにさせた上、同人及びその家族から多額の金員をだまし取るなどしていたところ、このような経緯自体が相当に悪質」「Cに何らかの落ち度があるとも認められず、このような犯行動機自体身勝手極まりない」「Cの死後も、なおその両親に対する詐欺行為を続けるなどしており、犯行後の事情も極めて悪い」とA同様に言及を行い、本件に対して「暴行の度合いは極めて残虐」と悪質性を強く指摘した上で、「有期刑の上限(30年)が相当」と量刑の理由についての説明を行った。

その後、検察・弁護側共に控訴せず2019年1月4日までに判決は確定した[9]

また、B(判決時36歳)に対しても2018年3月8日、福島地方裁判所(宮田祥次裁判官)は懲役2年6月・執行猶予5年(求刑懲役2年6月)を言い渡し、こちらも一審で判決は確定した[10][11]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 後に傷害致死に切り替えられた。2007年当時傷害致死の時効は10年であったが、2010年の法改正で時効が20年に延長されていたことにより、傷害致死罪での立件が可能となった。

出典[編集]

記事名のうち、判決主文に倣い被害者男性(当時37歳)をA、被害者男性(当時42歳)をC、主犯(判決主文では被告人と表記)の男をX(判決時40歳)、共犯者(Xの実弟)の男をB(判決時36歳)と表記した。

  1. ^ [1] -殺人容疑で兄再逮捕 福島・下郷遺体遺棄 産経新聞 2018年01月18日 産経ニュース
  2. ^ [2] -殺人容疑で男を再逮捕 産経新聞 2017年12月13日 産経ニュース
  3. ^ [3] -死体遺棄容疑で男2人逮捕 昨年10月から不明の40代男性か 福島県警 産経新聞 2017年11月09日 産経ニュース
  4. ^ [4] -殺人容疑で兄再逮捕 福島・下郷遺体遺棄 産経新聞 2018年01月18日 産経ニュース
  5. ^ [5] -被告、起訴内容を一部否認 下郷の殺人死体遺棄、福島地裁初公判 福島民友 2018年12月15日 みんゆうNet県内ニュース
  6. ^ [6] -調書破った疑いで男再逮捕 殺人事件の被告、福島県警 産経新聞 2018年02月19日 産経ニュース
  7. ^ [7] -被告、起訴内容を一部否認 下郷の殺人死体遺棄、福島地裁初公判 福島民友 2018年11月27日 みんゆうNet県内ニュース
  8. ^ [8] -有期刑上限の懲役30年 下郷事件で判決、殺人と傷害致死罪認定 福島民友 2018年12月15日 みんゆうNet県内ニュース
  9. ^ [9] -下郷の殺人、懲役30年確定 検察、弁護側ともに控訴せず 福島民友 2019年01月5日 みんゆうNet県内ニュース
  10. ^ [10] -男性遺棄を認める 懲役2年6月求刑、福島 産経新聞 2017年06月06日 産経ニュース
  11. ^ [11] -福島の男性死体遺棄で有罪判決 福島地裁「兄に脅され従属的立場」 産経新聞 2018年03月09日 産経ニュース

外部リンク[編集]