ヴァイオリン協奏曲 (モーラン)

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ヴァイオリン協奏曲ニ長調は、イギリス作曲家アーネスト・ジョン・モーランによって作曲された唯一のヴァイオリン協奏曲である。

作曲の経緯[編集]

交響曲ト短調の姉妹作として1938年に着手され、1941年に完成した。

初演[編集]

1942年7月、BBCプロムスにおいてアーサー・カッターラル独奏、ヘンリー・ウッド指揮、BBC交響楽団により初演された。

編成[編集]

独奏ヴァイオリンフルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、ティンパニハープ弦5部

作品の内容[編集]

非常に悲劇的な交響曲ト短調とは対照的に、穏やかで平和な曲調である。やはりアイルランド民族音楽の影響の強い旋律が多く、美しい作品である。

第1楽章 Allegro moderato[編集]

ト長調。弦楽の美しい和音で開始され、ヴァイオリン独奏がすぐに息の長い第1主題を奏し始める。オーケストラとの対話がしばらく続き、低弦の響きの上でカデンツァが始まる。かなり長いカデンツァが終わると再びオーケストラも加わり、やがて木管群の先導で舞曲的な主題が登場する。しかしこれはすぐに途切れ、ヴァイオリンは第1主題の変奏を始める。やや薄暗い響きとなり、一度静かになるとヴァイオリンがたっぷりと歌い、木管の和音に弦楽器ピッツィカートで応え、ひっそりと曲を閉じる。

第2楽章 Rondo:Vivace[編集]

ニ長調。弦楽器がリズムを刻み始め、木管が上行音形を吹き、金管も加勢して盛り上がり、ヴァイオリン独奏が舞曲を奏し始める。舞曲が一通り終わると今度は甘い旋律をヴァイオリンが出し、木管と絡み合う。ハープが寄り添う。このあとは舞曲と緩やかな旋律が交互に現れ、やや派手に変奏されてゆく。最後はニ長調で勢いよく曲を閉じる。

第3楽章 Lento[編集]

嬰ヘ短調ニ長調。弦楽器の和音で始まり、ヴァイオリン独奏が浮遊する旋律を弾く。続いて、クラリネットのカデンツァが入る。ヴァイオリンが応える。弦楽が悲痛に盛り上がり、再びヴァイオリンに冒頭の旋律が登場し、ハ短調で一つの頂点を形成する。続いてやや明るい旋律がヴァイオリンに現れ、弦楽に受け渡される。後半はこの旋律を軸にして流れてゆき、木管とヴァイオリンが対話する。最後はニ長調主和音が鳴り渡り、ディミヌエンドして静かに消えてゆく。

録音[編集]

複数の録音が存在する。

参考文献[編集]

  • 『ヴァイオリン協奏曲』ピアノスコア(ノヴェロ版)

外部リンク[編集]