ルシッチ・グループ

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破壊工作・攻撃偵察グループ "ルシッチ"
Диверсионно-штурмовая разведывательная группа «Русич»
ルシッチ・グループのパッチ。
活動期間2014年 –
国籍ロシアの旗 ロシア
兵科歩兵
任務破壊工作・攻撃偵察
上級部隊 ルガンスク人民共和国軍
ワグネル・グループ
主な戦歴
ウェブサイトvk.com/dshrg_rusich t.me/dshrg2
指揮
現司令官アレクセイ・ミカコフ
著名な司令官アレクセイ・ミカコフ
ヤン・ペトロフスキー
識別
旗

破壊工作・攻撃偵察グループ "ルシッチ"(ロシア語: Диверсионно-штурмовая разведывательная группа «Ру́сич», tr. Diversionno-shturmovaya razvedyvatel'naya gruppa «Rusich»)は、2014年6月から2015年7月までのドンバス戦争でノヴォロシア人民共和国連邦側として、またロシアのウクライナ侵攻でロシア軍の一部として、ともにロシア・ウクライナ間の戦争に参加した親ロシア極右主義者の戦闘部隊である[1][2][3]。

「ルシッチ」の歴史の始まりは2009年であり、軍事訓練のための基地が設立された[4] 。

創設者のアレクセイ・ミカコフ（1991年 - ）はサンクトペテルブルク出身の悪名高いネオナチで[1][5] 、2011年に子犬を拷問して斬首する動画をオンラインに投稿して耳目を集めた人物である[6][7]。ドンバスに送られる前は "Fritz"というニックネームを持っており（そこで "Serb"というコールサインに変更）[2][8][9]、兵役を経てロシア帝国運動の戦闘部門が運営するノヴォロシア支援コーディネーションセンター（KCPN）で軍事訓練プログラムに参加した[10]。

ミカコフ曰く、「ルシッチ」は「ロシアとヨーロッパからの義勇兵で構成される閉鎖的な集団」として活動し、ポーランドのネオナチ集団 "Zadruga"のメンバーの少なくとも一人はこの部隊の構成員として戦った。また、この部隊にはロシア連邦麻薬流通監督庁の特殊部隊のメンバーが配属されていることが判明した[11]。

ルーン文字、特にティワズ（ᛏ）[12]（武勇の神テュールの意）、コロヴラート、バルクヌート[2]、コード・スローガンなどがグループのシンボルとして使用されている。また、ロシアの多くの民族主義者と同様にロシア帝国旗（黒・黄・白）を使用するが、順番が逆になっている。

「ルシッチ」は民間軍事会社ワグネル・グループとの密接な関係が報道されており[13]、アレクセイ・ミカコフとワグネル・グループの司令官であるドミトリー・ウトキン中佐はどちらもロシア空挺軍の第76親衛空挺師団出身である[10]。

2022年、「ルシッチ」とその指揮官アレクセイ・ミカコフおよびヤン・ペトロフスキーはハルキウ州での戦闘における「特別な残虐行為」によりアメリカ合衆国の制裁リストに加えられた[14][15]。

戦闘への参加[編集]

ドンバス戦争[編集]

「ルシッチ」はドンバス戦争において、ルガンスク人民共和国軍の一部として活動した。主な協力者はロシア派の分離主義者の司令官アレクサンダー・「バットマン」・ベドノフ中佐[16]と彼の中隊であり、ノヴォスヴィトリフカ近くのルハンスク空港の戦いや2014年9月5日のウクライナ軍のアイダール大隊の隊列への襲撃[2]といった作戦に2015年まで参加した。

この間「ルシッチ」のメンバーらはウクライナ兵の遺体から耳を切り落とす、もしくは火をつける。捕虜を拷問するといった所業を行っており、ウクライナ、国際刑事裁判所 (ICC)から戦争犯罪として訴追された。

その後、殺されたウクライナの兵士の写真や、グループが捕虜を取らないという逸話から、ウクライナのメディアやブロガーの間で否定的な意味合いで最も言及され[17][18]、ドイツの連邦情報局（BND）内部文書にも「極度の残虐行為で知られ」、リーダー2人のうちの1人がサディストであると書かれていたという[19]。

2017年にウクライナの軍事検察庁はミカコフを40人のウクライナ兵殺害に関与したと告発している[20]。

ドンバス戦争終了後、ミカコフは極右思想を掲げる民間軍事会社E.N.O.Tコープと共にロシアの特別キャンプで10代の若者達への戦闘訓練に従事した[21]。

シリア内戦[編集]

「ルシッチ」はシリア内戦中、ロシアの石油企業がロシア企業が所有する戦略的に重要なシリアの油田やガスパイプラインの警備を行っていた。この際、彼らの一人が古代遺跡の前でナチス式の敬礼を取る写真をInstagramにアップロードした[10][22]。

またヤン・ペトロフスキーは、"Þorbrandr"という武装集団を率いてシリア内戦に参加した。"Þorbrandr"はノルウェーの独立メディアのインタビュー中にノルウェー国旗を掲げ、自分達をノルウェー、スウェーデン、アイスランドから来た北欧人義勇兵であるかのように語っていたが、現在は2016年にノルウェー在住権を剥奪されたペトロフスキー以外の北欧人は参加が確認されず、その正体は「ルシッチ」と判明している[23]。

2022年ロシアのウクライナ侵攻[編集]

2022年4月8日、「ルシッチ」はロシアが今後攻撃を集中させるとみられるウクライナ東部地域に姿を現した[24]。

同年8月28日、ミカコフがウクライナ軍人の耳を切り落とし、焼かれた遺体と写真を撮ったことが報じられた[25]。9月22日、ミカコフはTeleglamで自分の部下や他の部隊のロシア兵に捕虜となったウクライナ兵を尋問し、殺害した後で遺体の場所と引き換えに親族から活動資金を得るよう呼びかけ、それらの方法についても具体的に指示した[26][27][28]。10月には、ウクライナの児童（10歳以上の女子、5歳以上の男子）の根絶を提案している[29]。また11月には麻薬取引、ウクライナの慈善団体のサイトのハッキング、マルウェアによる暗号通貨の窃盗をしていることが判明しており、Medusaの取材に対してミカコフ本人が認めている[30]。

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b “Who Are The Neo-Nazis Fighting For Russia In Ukraine?” (英語). RadioFreeEurope/RadioLiberty. 2022年6月27日閲覧。 “Rusich is one of several right-wing groups that are actively fighting in Ukraine, in conjunction with Russia’s regular armed forces or allied separatist units.”
  2. ^ a b c d “Руни, православ'я та георгіївські стрічки. Що відомо про неонацистів у російській армії”. BBC News Україна. https://www.bbc.com/ukrainian/features-61668126 2022年6月28日閲覧。 
  3. ^ “Spiegel: «В составе российских войск в Украине воюют неонацисты»” (ロシア語). belsat.eu. 2022年5月27日閲覧。
  4. ^ “Говорит ангел смерти: Алексей Мильчаков, ДШРГ «Русич»” (ロシア語). CzarTalks (2020年12月26日). 2022年10月6日閲覧。
  5. ^ “Фашист-живодер из Петербурга приехал воевать за ополченцев ЛНР” (ロシア語). www.mk.ru. 2022年6月25日閲覧。
  6. ^ “Dying to kill The Russian neo-Nazis fighting Vladimir Putin’s war to ‘denazify’ Ukraine” (英語). Meduza (2022年7月15日). 2022年12月14日閲覧。
  7. ^ “https://twitter.com/kamilkazani/status/1584941082395435008”. Twitter (2022年10月26日). 2022年12月14日閲覧。
  8. ^ “Интервью с Алексеем Мильчаковым, командиром ДШРГ «Русич» — Спутник и Погром” (ロシア語). 2022年6月25日閲覧。
  9. ^ “Неонацист Алексей Мильчаков, который отрезал уши украинском солдатам, похвастался отдыхом в Беларуси” (ロシア語). naviny.belsat.eu. 2022年6月27日閲覧。
  10. ^ a b c “Inquiry into the Murder of Hamdi Bouta and Wagner Group Operations at the Al-Shaer Gas Plant, Homs, Syria 2017” (英語). New America. 2022年6月26日閲覧。
  11. ^ “О причинах вывода ДШРГ «Русич» из «ДНР», или как живодеры становятся героями”. Новини України - #Букви (2015年7月13日). 2022年6月25日閲覧。
  12. ^ “Meet the Irregular Troops Backing up Russia's Army in the Kharkiv Region” (英語). bellingcat (2022年6月17日). 2022年6月26日閲覧。
  13. ^ “Wagner Group Contingent Rusich on the Move Again” (英語). New America. 2022年6月26日閲覧。
  14. ^ “BBC News | Русская служба”. Telegram. 2022年9月15日閲覧。
  15. ^ “Russia-related Designations; Issuance of Russia-related General License and Frequently Asked Questions; Zimbabwe-related Designation, Removals and Update; Libya-related Designation Update” (英語). U.S. Department of the Treasury. 2022年9月20日閲覧。
  16. ^ “Wagner Group Contingent Rusich on the Move Again”. New America. 2022年6月26日閲覧。
  17. ^ “Грани.Ру: Казнекрады”. graniru.org. 2022年6月25日閲覧。
  18. ^ “Германская разведка доложила о воюющих в Украине «российских неонацистах». Они и сами этого не скрывают”. BBC News. (2022年5月22日). オリジナルの2022年5月23日時点におけるアーカイブ。. https://archive.ph/c7nDX 2022年7月24日閲覧。 
  19. ^ 「Bericht des BND: Zahlreiche Neonazis kämpfen für Russland in der Ukraine」『Der Tagesspiegel Online』、2022年5月22日。ISSN 1865-2263。2023年1月25日閲覧。
  20. ^ “Военная прокуратура Украины обвинила российского неонациста Мильчакова в причастности к убийству 40 украинских военных”. gordonua.com. 2022年6月27日閲覧。
  21. ^ “Неонацист Мильчаков, который тренировал белорусских подростков, уехал в Сирию в «ЧВК Вагнера»” (ロシア語). naviny.belsat.eu. 2022年7月13日閲覧。
  22. ^ “Русские националисты на сирийском контракте (фото)” (ロシア語). fontanka.ru - новости Санкт-Петербурга (2017年10月19日). 2022年6月26日閲覧。
  23. ^ “An untimely death reveals the nature of a Russian neo-Nazi unit that fought in Syria” (英語). DFRLab. 2022年10月7日閲覧。
  24. ^ “露がネオナチ部隊を投入か”. note - @niftyニュース - コリア・エコノミクス. 2022年10月7日閲覧。
  25. ^ “https://twitter.com/nexta_tv/status/1563793653025456129”. Twitter (2022年8月28日). 2022年12月14日閲覧。
  26. ^ “https://twitter.com/kamilkazani/status/1572972414451027970”. Twitter (2022年9月23日). 2022年12月14日閲覧。
  27. ^ “ネオナチ「ルシッチ」：ウクライナ人捕虜のリサイクル”. note - Yurietta. 2022年10月7日閲覧。
  28. ^ “Pro-Kremlin neo-Nazi militia inciting the torture and murder of Ukrainian prisoners” (英語). the Guardian (2022年10月2日). 2022年12月14日閲覧。
  29. ^ “https://twitter.com/kamilkazani/status/1584939740502970370”. Twitter (2022年10月26日). 2022年12月14日閲覧。
  30. ^ “Как российские неонацисты воруют криптовалюту через сайты по сбору средств для ВСУ — и компьютерные игры про «безжалостных роботов» А потом тратят ее на продолжение войны” (ロシア語). Meduza (2022年11月26日). 2022年12月14日閲覧。
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