ポリヒドロキシ酪酸

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ポリヒドロキシ酪酸
Poly[(R)-3-hydroxybutyrate]
Poly-[(R)-3-hydroxybutyrate] (P3HB)の構造式
別名 PHB
P(3HB)
融点 175 °C

ポリヒドロキシ酪酸(polyhydroxybutyrate; PHB)は、3-ヒドロキシ酪酸ポリエステルであり、ポリヒドロキシアルカン酸 の一種である。 フランス化学者および細菌学者であるモーリス・レモインによって1925年に初めて単離され、性質が調べられた。

PHBはバチルスメガテリウムラルストニア・ユートロファ(アルカリゲネス・ユートロファス)などの様々な細菌または古細菌が、細胞内封入体として炭素源が豊富な環境において産生する。このポリマーは、炭素同化の一次産物であり、細胞内にエネルギー貯蔵物質として蓄えられ、他に利用可能な炭素源が無ければ代謝される。よく知られたPHBの細菌による生合成反応は、2分子のアセチルCoAが重合してアセトアセチルCoAになる反応で始まり、次にそれが還元され3-ヒドロキシブチリルCoAとなり、これが前駆体となりポリマーが合成される。.[1]

熱可塑性高分子[編集]

近年の合成樹脂は、主に石油から作られるが、それらは容易に分解しないので、廃棄物が環境汚染を引き起こしている。それらは焼却処分されるかリサイクルされる。しかし、PHBは生分解性プラスチックであるため、環境中で容易に分解される。

産業利用[編集]

ICIは、1980年代にPHBの生産を試験工場段階にまで進めたが、製造費用が高過ぎることとその性質がポリプロピレンに匹敵しなかったため、興味を失った。1996年にMonsantoがICI/Zenecaからそのポリマーの製造に関する全ての特許を買収した(Biopolという商標でPHBをPHVとのコポリマーとして販売)。しかし、Biopolに関するMonsantoの権利は、米国の企業Metabolixに2001年に売却され[2]、2004年の始めには細菌からPHBを製造していたMonsantoの培養施設は閉鎖された。現在の焦点は細菌のかわりに植物からのPHB製造へ移っている。しかし、最近のマスコミの遺伝子組み換え作物に対する過剰な報道にも関わらず、MonsantoのPHB産生用植物のニュースは聞かない。.[3]

2005年6月に米国企業Metabolixは、PHBを含むPHA全般の費用効果のある製造方法に対してグリーンケミストリー大統領賞(小企業部門)を受賞した。

Biopolは現在、医療系企業で生体内の縫合糸に使われている。

PHBの性質[編集]

水に不溶性であり、加水分解耐性が比較的ある。これは、PHBを現在利用されている他の生分解性プラスチックと区別する性質である。それらは可溶性か、湿気に弱い。酸素透過性がよい。紫外線耐性が高い。酸とアルカリに弱い。クロロホルムと他の塩素化された炭化水素に溶ける[4]。生体適合性であるため医療への応用に適している。融点175°Cでガラス転移温度は15°Cである。引張強度40Mpaであり、ポリプロピレンに近い。水に沈む(ポリプロピレンは浮く)ので、堆積物中での嫌気的分解が促進される。毒性が無い。

参考文献[編集]

  1. ^ Steinbüchel, Alexander (2002). Biopolymers, 10 Volumes with Index. Wiley-VCH. ISBN 3-527-30290-5. 
  2. ^ METABOLIX PURCHASES BIOPOL ASSETS FROM MONSANTO”. 2007年2月17日閲覧。
  3. ^ Plastics You Could Eat”. 2005年11月17日閲覧。
  4. ^ Jacquel, N.; et al. (2007). “Solubility of polyhydroxyalkanoates by experiment and thermodynamic correlations”. AlChE J. 53 (10): 2704-2714. doi:10.1002/aic.11274. 

外部リンク[編集]