コニイン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

コニインの構造
コニインの構造

コニイン(Coniine)は偽アルカロイドの一種であり、ドクニンジン(Conium maculatum)に含有される毒として知られる化合物である。ソクラテスの処刑の際に用いられた事で有名(後述)。なお、コニインの名前は、ドクニンジンの学名に由来する。

  • 分子式:C8H17N
  • 分子量:127.229
  • 構造名:(S)-2-propylpiperidine
  • 骨格名:ピペリジン
  • 生合成経路:酢酸-マロン酸経路
  • 性状:無色の油状液体、刺激臭有り
  • 融点:−2 ℃
  • 沸点:166 ~ 166.5 ℃
  • 密度:0.844
  • 溶解性:1mLの溶解に90mLのが必要、温水にはさらに溶けにくい。アルコールには溶けやすい。
  • CAS登録番号:458-88-8

目次

[編集] 歴史

  • 1881年:A・ホフマンが分離に成功、構造も決定。
  • 1886年:A・ラーデンブルクが合成に成功。

[編集] 毒性

ヒトに対する致死量は60~150mg、マウスでのLD50は経口で100mg/kg(静注のLD50はこれの1/8程度)である。消化管からの吸収が速いために症状は急速に起こり、中毒を起こしてから30分-1時間で死に至る。

コニインを摂取すると、初めは中枢神経興奮麻作用を示した後、中枢神経抑制作用を示す(ニコチン様作用)。その後、運動神経の末梢から麻痺が進んでいく。

症状は、

  1. 悪心嘔吐及び口渇、瞳孔散大
  2. 手足末端の麻痺(脚部→腕部→表情筋の順)
  3. 痙攣
  4. 呼吸筋麻痺による呼吸障害

の順に進行する。 なお、意識は最期まで正常に保たれたまま死に至るとされる。

また、家畜に対し催奇形性を示し、妊娠初期のウシにドクニンジンやコニインを与えると、四肢関節や脊椎の彎曲奇形の仔牛が高確率で生まれる。

[編集] 中毒時の対処法

  1. 早期に0.05%過マンガン酸カリウム水溶液で胃洗浄。
  2. 活性炭20gを水に加え、懸濁させて内服。
  3. 利尿剤(フロセミド20mg静注)による排出促進。
  4. 塩類下剤(硫酸ナトリウム30gを250mLの水に溶解)の内服。
  5. 人工呼吸による呼吸の管理。
  6. 痙攣が生じた場合、ジアゼパムを緩徐に静注又は深く筋肉内注射。

[編集] ソクラテスの処刑

古代ギリシャでは、罪人の処刑にアヘンドクニンジンを混ぜたものが用いられていた。 ソクラテスの処刑にはドクニンジンが用いられたと言われ、その最期の様子は弟子プラトンの著書「パイドン」に詳しく記されている。 しかし、一説にはソクラテスの処刑に用いられたのはドクニンジンではなくドクゼリ(Cicuta virosa)の毒であったともいわれる。

[編集] フィクションでの使用

  • 和久峻三の小説「赤かぶ検事シリーズ」のエピソード「ソクラテスの毒薬」では、赤かぶ検事毒殺の手段にコニインが使われた。犯人は高山市で購入した赤かぶ漬けにコニインを塗り、匂いを消すためペパーミントを添加して、かつての隣人の名を騙って松本市の赤かぶ検事宅に送りつけた。結果は受け取った夫人が赤かぶ検事に無断で行天遼子警部補にまわし、夫の行天珍男子がそれを食べたところ中毒症状を起こし、一時意識不明の重体となった(幸い一命は取り留めた)。
  • 相棒(Season 2『ロンドンからの帰還~ベラドンナの赤い罠』・『特命係復活』)では、犯人の小暮ひとみ(演:須藤理彩)が相棒コンビの追及を逃れるために、その遅効性を利用して偽装自殺を図った。その結果、あべこべに相棒コンビが懲戒処分にまで追い込まれてしまう。