クロマチン

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染色体、クロマチン、DNAの関係 左上の細胞 (Zelle)の核内には細胞分裂に先立って染色体 (Chromosom) が現れる。ヒストン八量体DNA分子が巻き付いた構造(クロマチン)がさらに折りたたまれて染色体の形にまとめられる。
典型的な動物細胞の模式図: (1) 核小体(仁)、(2) 細胞核、(3) リボソーム、(4) 小胞、(5) 粗面小胞体、(6) ゴルジ体、(7) 微小管、(8) 滑面小胞体、(9) ミトコンドリア、(10) 液胞、(11) 細胞質基質、(12) リソソーム、(13) 中心体
細胞核の概要(1) 核膜 (2) リボソーム (3) 核膜孔 (4) 核小体 (5) クロマチン (6) 細胞核 (7) 小胞体 (8) 核質

クロマチン(chromatin)とは、真核細胞内に存在するDNAタンパク質の複合体のことを表す。ただし、精子のDNAにはヒストンではなくプロタミンが結合している。元来、『核内の染色される物体(染色質)』を意味しており、ゲノムDNAの貯蔵形態としての役割が強調されてきたが、分子生物学の発展とともに意味合いは変わってきた。すなわち、クロマチンの構造とダイナミックスは、遺伝子の発現、複製、分離、修復等、DNAが関わるあらゆる機能の制御に積極的な役割を果たしていると考えられるようになってきた。

目次

[編集] クロマチンの構造

一つの核に納められているDNAの総延長はおよそ2mといわれている。これを10μmの核に収納するための構造がクロマチンである。ヒストンにはH1、H2A、H2B、H3、H4の5種類あり、このうちH1を除く4種それぞれ2個が組み集まりヒストン八量体を形成する。DNAがヒストン8量体におよそ2周巻きついた(約140~150bp)ヌクレオソーム構造を取る。ヌクレオソームにおいて、ヒストン8量体にDNAが巻きついた粒子をコア粒子、コア粒子の間を繋ぐDNAの領域をリンカーDNAと呼ぶ。こうした構造が150-200bpの周期で繰り返される。さらにこのヌクレオソーム繊維が折り畳まれ、直径30 nmのクロマチン繊維(30 nmファイバー、30nm繊維)を形成する。その構造を説明するものとして、ソレノイドモデル等、多数のモデルが提出されているが、まだ定説はないのが現状である。

細胞分裂期にはいると、このクロマチン構造がコンデンシン複合体等の働きによってさらに組織的に折り畳まれ、よりコンパクトな染色体構造に変換される。この過程は染色体凝縮と呼ばれ、染色体が正確に分離されるために重要である。クロマチンはその凝集の度合いによりヘテロクロマチンユークロマチン(真正クロマチン)に分類される。セントロメアやテロメアに代表される遺伝子の殆ど存在しないDNA領域は更に強く畳まれ、ヘテロクロマチンを形成する。一方、ヘテロクロマチンを除く、遺伝子の転写が活発な領域のクロマチンはユーロクロマチンと呼ばれる。

[編集] 発現とクロマチン

クロマチン構造は発現の調節に関与している。例えば、遺伝子を保有しているDNAに直接化学的な刺激を与えずに発現の促進、抑制を実行する化学的修飾がそれである。ヒストン分子に、ある化合物を結合させることにより、クロマチン全体の形に影響し、その付近の遺伝子の発現を調節する。

ヒストンは強い塩基性のタンパク質であり、酸性のDNAとの高い親和性を示す。ヒストンが塩基性を持つのは、正の電荷を持つアミノ酸の含量が高いからである。各ヒストンを構成するアミノ酸のうち、20%以上がリシンまたはアルギニンである(表)。ヌクレオソームヒストンの構造は球形のカルボキシル末端と、直鎖状のアミノ末端(ヒストンテール)からなっている。ヒストンテールのリシンアスパラギン残基はアセチル化、メチル化、リン酸化、ユビキチン化といった化学修飾を受けることが知られている。例えば、細胞分裂の際には、ヒストンH3の10番目に位置するセリンが特異的にリン酸化される。このセリンは酵母からヒトまで多くの動物種で保存されている。これらの化学修飾は、遺伝子発現等、数々のクロマチン機能の制御に関わっていることが証明されつつある。複数の修飾の組み合わせがそれぞれ特異的な機能を引き出すという仮説は、ヒストンコード仮説と呼ばれている[1]

[編集] 歴史

1882年 ドイツの細胞学者ヴァルター・フレミング(Walther Flemming)が、特異的な染料によって染められる細胞核内の構成要素を示す用語として、クロマチンという言葉を提案した。

1973年 精製クロマチンをエンドヌクレアーゼで消化したところ、断片はすべて200 bp の倍数であった。このことにより、タンパク質がDNAに規則正しい長さで結合していること、そしてそのタンパク質はエンドヌクレアーゼの消化からDNAを守っていることなどが示唆された。

1974年 オリンズら(Ada & Donald Olins)は、電子顕微鏡を用いクロマチンのビーズ状構造を初めて可視化した。

1974年 ロジャー・コーンバーグ(Roger Kornberg)は、X線回折、生化学、ヌクレアーゼ消化実験の結果をもとに、ヒストンとDNAから構成されるクロマチンの繰り返し構造のモデルを提出した。

1975年 ピエール・シャンボン(Pierre Chambon)らにより、この繰り返しのユニットを表す用語として、ヌクレオソームという言葉が提案された。

1976年 アーロン・クルーグ(Aaron Klug)らは、電子顕微鏡観察をもとにして、30 nmファイバーのソレノイドモデルを提出した。

1997年 リッチモンド(Timothy Richmond)らは、ヌクレオソームの結晶構造を2.8オングストロームの解像度で決定した。

1990年半ば以降、ヌクレオソームをダイナミックに変化させる活性(クロマチンリモデリング活性)やヒストンを修飾する活性が相次いで発見され、クロマチン構造の機能的な重要性が再認識されるようになった。

最新のクロマチン圧縮モデル

[編集] 脚注

  1. ^ http://www.bioinfo.sfc.keio.ac.jp/class/bioinfo-a/WEB_RS/Texts/nucleosome_nzkt1_2.pdf


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