オオバキリン

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オオバキリン
大葉麒麟
保全状況評価
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
Status iucn3.1 LC.svg
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
: ナデシコ目 Caryophyllales
: サボテン科 Cactaceae
: コノハサボテン属 Pereskia
: オオバキリン P. grandifolia
学名
Pereskia grandifolia Haworth, 1819
シノニム

"Rhodocactus grandifolius" (Haw.) F.M.Knuth, 1935"
"Rhodocactus tampicanus (F.A.C. Weber) Backeberg, 1958"

和名
大葉キリン[1]
英名
Rose cactus
亜種
  • P. grandifolia subsp. grandifolia
  • P. grandifolia subsp. violacea

オオバキリン分布図.svg

オオバキリン大葉麒麟学名: Pereskia grandifoliaペレスキア・グランディフォリア)は、ブラジル南東部に分布するサボテン科の半落葉広葉樹である。サボテン科の中で最大のを備える種のひとつで、葉のサイズは最長で30cmにもなる。ローズカクタス[3]サクラキリン[4]の名で流通している。

概要[編集]

オオバキリンは、ブラジルのリオデジャネイロ州ミナスジェライス州エスピリトサント州を中心に分布する[5]。見た目は普通の木の様であり、一見サボテンには見えないが[6]、葉脇には確かに刺座があり、サボテン科の植物であることが分かる。葉に隠れて目立たないが刺を備えており、特に古い枝には非常に多数の数のが密生する。

丈夫で繁殖力旺盛、鉢植えでも開花する特性のため、熱帯アメリカを中心に世界各地に移入されている[7]。本種の栽培品の中には刺が無いものもあり。これには全くサボテンの趣はない。耐寒性にやや難があるため、日本では西日本沖縄といった南関東以南のサボテン愛好家を中心に少数栽培されるのみである。

和名は本種よりも先に導入された同モクキリン(杢麒麟)やサクラキリン(桜麒麟)に準じたもので、大葉はラテン語学名翻訳。学名の種小名はラテン語のgrandis(大きな)とfolia(葉)を合成したもので、葉が大きいことに由来している。

特徴[編集]

本種はサボテン科の原始的な特徴を残しているコノハサボテン亜科に属しており、に変化していないを持っている。2-5m、最大で10mに達する[8]灌木で、他の樹種に混ざって生える。民家の軒先に植えられていることもある。生息地の一般的な気候は降水量1200mm、平均気温23℃[9][10]の熱帯気候である。

大多数のサボテンが幹を太らせを蓄える適応を見せているのに対し、本種は堅くて細い枝に普通の葉を付ける。それでも乾燥に対して他の大多数のサボテンほどではないがかなり強く、乾季のある地域、あるいは旱魃に対しては葉を落として耐える。CAM型光合成の経路自体は持っているものの[11]、通常時はカルビン回路のみで二酸化炭素を固定している[12]

枝には若干の気孔が存在し、長期間緑色を保つ。これは木の葉サボテン属南方種の特徴であり、より原始的な北方種に比べれば、いわゆるサボテンに近い特徴である。

刺座と刺[編集]

葉の脇には通常のサボテンと同様刺座があり、時間の経過とともに刺を増やしていく。刺座は3-7mm(古い枝で12mm)で茶色のふさふさにこんもりと覆われる。かなり長い間活動し、刺や葉を出し続ける。刺の数は主幹で90本に達することがある。刺は長さ1-6.5cmの針状で、こげ茶~黒色。刺さると非常に痛い。一般的に後から出てきた刺の方が長くて太い。[13]

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葉は9-23(最大30)×4-6(最大9)cmの楕円から槍倒卵形[13]。羽状の葉脈が目立つやや明るい緑色で、亜種ウィオラケアはやや色が濃い。木の葉サボテン亜科の中でも特に大きい。自生地では食用に供されることもある。

一定以上の乾燥又は低温にさらされると葉を落とすが、条件が良くなると刺座から刺ではなく直接葉の形成を行い、急速に葉を茂らせる[13]。これは同目のディディエレア科植物が雨期に短枝葉を葉出するのによく似ている。

オオバキリンの花
Pereskia grandifolia3.jpgPereskiagrandifloraviolacea.jpg
左が基亜種の花。ピンク色の花が群開している。右が亜種ウィオラケアの蕾

花及び実[編集]

花期は初夏、時折にも開花する。散房花序で、3-5cmのバラに似た桃色の花が枝先端に多数(5~30)群開する[13]。同属のサクラキリンほど大きな花ではないが、多数の花を咲かせる。栽培下での開花も容易である。

果実は緑色又は黄~赤色で4-10cm、枝の先端が膨らんだ様に見え、さらに房なりになる[13]。熟すと動物に食べられるか、そのまま落下する。6mm前後の黒い種子が内部に含まれる[13]。未熟な実は非常に渋いが、完熟したものは香りがよく、時に食べることもある。

亜種ウィオラケアは、花序の色に明確な差があり、苞葉が紫色、花が紫がかった桃色に着色することが特徴となっている[14]

系統と分類[編集]

分子系統解析から、木の葉サボテン属は側系統であり、原始的な北方種と、柱サボテンなどに近い南方種の二つに大きく分けられると考えられている。北方種をRhodocactus、南方種をPereskiaに分けるとこもある。オオバキリンは南方種の方に属しており、分割されたとしても学名に変更はない。南方種の中ではサクラキリンなどに近い仲間で、モクキリンなどとはやや離れている。[15]

下位分類として2亜種を含む

Pereskia grandifolia subsp. grandifolia

ブラジル東部から南東部に広く分布。苞葉は緑色で、桃色の花を咲かせる。葉は明るい緑色で、刺はクリーム色から焦げ茶色。

Pereskia grandifolia subsp. violacea (Leuenb.) N.P. Taylor & Zappi, 1997[16]

ミナスジェライス州エスピリトサント州に分布。基亜種と形態的な違いは殆ど無いが、紫色の苞葉と、紫がかった桃色の花を咲かせる。葉の色は濃い緑。刺は若い時赤色で、後に黒くなる。[14]

利用[編集]

熱帯アメリカでは観葉植物として栽培されるほか、刺を生かして有刺鉄線の代わりに生垣として利用される。葉や実は食べられることもあるが、それほど美味しくはない。繁殖種子繁殖、枝挿しで容易。

木の葉サボテンの中では寒さに強い方だが、耐性が無く、栽培は暖地に限られる。伊豆シャボテン公園にある数メートルの大木が日本では最大級の株である[17]サクラキリンの名でも流通することがあるが、本来のサクラキリンは同属のPereskia nemorosaのことであり、混同されている[18]。また、ヨーロッパで栽培[19]されるバラキリン(Pereskia sacharosa)とも混同されていることがある。

画像[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 大葉キリン(オオバキリン)伊豆シャボテン公園
  2. ^ 清水(2002)p.58
  3. ^ 同属のPereskia bleo(花の色は赤~オレンジ色)もローズカクタスの名で流通しており、欧米では混同されている。なお、P. bleoは熱帯雨林性のため温帯での越冬・開花が極めて難しく、混同される理由となっている[2]
  4. ^ サクラキリンとは、本来は近縁なPereskia nemorosaのことであるが、本種がサクラキリンと間違われ、流通することが多い
  5. ^ Leuenberger(1986)pp.113,115-116,118
  6. ^ 清水(2002)p.55
  7. ^ Leuenberger(1986)p.115
  8. ^ Leuenberger(1986)p.111
  9. ^ 日本でいえば石垣市の気候とほぼ同じ
  10. ^ Erika J. Edwards and Michael J. Donoghue (2006). “Pereskia and the Origin of the Cactus Life-Form”. the american naturalist 167: 777–793. 
  11. ^ Nobel PS, Hartsock TL. (1984). “Hydrogen, Oxygen, and Carbon Isotope Ratios of Cellulose from Submerged Aquatic Crassulacean Acid Metabolism and Non-Crassulacean Acid Metabolism Plants”. Plant Physiol. 80: 913-7. 
  12. ^ Leonel Sternberg, Michael J. Deniro, Jon E. Keeley (1986). “Leaf and Stem CO(2) Uptake in the Three Subfamilies of the Cactaceae.”. Plant Physiol. 76: 68–70. 
  13. ^ a b c d e f Leuenberger(1986)p.112
  14. ^ a b Leuenberger(1986)p.116
  15. ^ Edwards EJ, Nyffeler R, Donoghue MJ. (2005). “Basal cactus phylogeny: implications of Pereskia (Cactaceae) paraphyly for the transition to the cactus life form”. Am J Bot. 92: 1177-88. 
  16. ^ [1]
  17. ^ 伊豆シャボテン公園
  18. ^ 清水(2002)p.57
  19. ^ ただし自生地はアルゼンチン

参考文献[編集]