ウォーターゲート・サラダ

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ウォーターゲート・サラダ
別名 ピスタチオ・ディライトなど
種類 デザート
発祥地 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
地域 中西部
主な材料 ピスタチオプリン英語版、缶詰のパイナップル、クールホイップ、マシュマロ
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ウォーターゲート・サラダ(watergate salad, pistachio delight[1]など[† 1])とは、サイドディッシュもしくはデザートとして食べるサラダの一種[5]

ピスタチオプリン英語版、缶詰のパイナップルホイップクリーム、砕いたピーカンナッツマシュマロから作られる[6][7][8]。材料を和えてから必要に応じて冷やしただけの食品であり、時間や手間がかからない[9][10]アメリカ合衆国北中西部などポットラック英語版(参加者が各々料理を1品持ち寄るパーティー)が盛んな地域で人気がある[5]

一般的なパイナップルの代わりにフルーツミックスマンダリンオレンジの缶詰が使われることもあり、材料が少しだけ異なるバリエーションが数多く存在する。アンブロシア・サラダは製法が似通っており[11]、パイナップルとマシュマロを基本の材料としているほか、ホイップクリームやナッツを用いるバリエーションもある[要出典]

歴史と語源[編集]

「ウォーターゲート・サラダ」という名の起源ははっきりしない。ワシントンDCウォーターゲート・ホテル英語版が発祥地だという説もあるが、同ホテルのレストランやスイーツ店でメニューに載せられたことはない[11]

ゼリーマシュマロと果物を和えたスイーツは20世紀初頭に粉末ゼラチンが一般化したころからアメリカの家庭の定番だった。ホイップクリームとパイナップルを合わせるレシピも同じくらい古い[11][12]ヘレン・ケラーは1922年に刊行されたレシピ集 Favorite Recipes of Famous Women[13]にウォーターゲート・サラダと似たレシピを提供している。缶詰のパイナップル、ナッツ、マシュマロ、ホイップクリームなどを材料とするもので、カリフォルニアで初めて食べたことから「ゴールデンゲート・サラダ」という名がつけられていた。ウォーターゲート・サラダのレシピが出版物で紹介された例としては、デンヴァー・ポスト社が発行していた『エンパイア・マガジン』誌の1976年6月27日号があるものの名前の由来は不明だと書かれている。

現代的なウォーターゲート・サラダを広めたのはゼネラルフーヅ社(合併を経て現在はクラフト・ハインツ)だと見られている。このスイーツの主材料であるマシュマロ、ピスタチオプリン、ホイップクリームはいずれもクラフト社の定番ブランド(ジェットパフト・マシュマロ英語版ジェロークールホイップ英語版)が存在する[11]。クラフト社の主張によると、同社はピスタチオプリンのミックスを発売した1975年にレシピの原型を作っていた[14]。1980年代半ばにはレシピが「ピスタチオ・パイナップル・ディライト」という名でジェローのパッケージに印刷された。1993年にマシュマロが材料に加えられ、それと同時に外部で定着していた「ウォーターゲート・サラダ」の名前が採用されたのだという[15]

生活コラムニストのアン・アダムズとナン・ナッシュ=カミングズは1997年の新聞コラムで、問題の名前の元になったのは「ウォーターゲート・ケーキ」だと書いている[16]。このケーキはニクソン大統領ウォーターゲート・スキャンダルを巻き起こしていた1970年代前半に登場したもので、本項のサラダとほとんど同じ材料を用いていた。アンとナンによるとその名は一種の政治ジョークで、「隠ぺい工作」を思わせるアイシングと大量のナッツ(英語で「バカげたこと」という意味がある)から連想されたものである[17]。このころ政治風刺とレシピ集を組み合わせた書籍が一種のブームになっており、ほかにも「はっきりさせておきたいニクソンの透明コンソメ[† 2]」「貝になったリディチャウダー[† 3]」といったメニューが盛んに作られていた[18]

21世紀に入ると、粉末ミックスから作られるウォーターゲート・サラダは安っぽく時代遅れな食品だというイメージも持つようになった[11]

関連項目[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ そのほかくだけた表現として shut the gate salad[2]、green goop、green goddess salad、green fluff[3]、green stuff[4]がある。
  2. ^ "Nixon's Perfectly Clear Consomme"。「はっきりさせておこう (Let's make things perfectly clear)」はニクソンの口癖だった。
  3. ^ "Liddy's Clam-Up Chowder"。"clam up" は黙秘を意味する。ジェームズ・ゴードン・リディはウォーターゲート・スキャンダルで告発されたが、事件への関与を最後まで認めなかった。

出典[編集]

  1. ^ Recipe from Deseret News April 3, 1985
  2. ^ Recipe from Cooks.com
  3. ^ Recipe from Cooks.com
  4. ^ Van Dyke, Louis (2013). The Blue Willow Inn Bible of Southern Cooking: 450 Essential Recipes Southerners Have Enjoyed for Generations. Thomas Nelson Inc. p. 121. ISBN 9781418586263. https://books.google.com/books?id=NKY37Flu9GcC&q=%22watergate+salad%22+name&pg=PA1121 
  5. ^ a b Watergate Salad”. Gastro Obscura. 2021年8月21日閲覧。
  6. ^ Sacramento Bee recipe August 08, 1990
  7. ^ Zalben (2011年6月15日). “In Salads Named After Political Scandals: Watergate Salad”. Serious Eats. 2015年7月14日閲覧。
  8. ^ Orchant (2014年1月9日). “Earth To America: Dessert Salad Is Not Actually Salad (PHOTOS)”. Huffington Post. 2015年7月14日閲覧。
  9. ^ Two recipes from Our Savior's (Montevideo, Minnesota) Lutheran Church (1879-2004) 125 Years cookbook[要文献特定詳細情報]
  10. ^ Olver. “The Food Timeline: history notes--salad”. The Food Timeline. 2019年2月20日閲覧。
  11. ^ a b c d e Watergate Salad: A Fluffy Green Bite Of Washington, D.C.'s Past”. NPR (2019年8月3日). 2021年8月20日閲覧。
  12. ^ Watergate Salad: A Fluffy Green Bite Of Washington’s Past”. Wamu 88.5 (2019年7月26日). 2021年8月21日閲覧。
  13. ^ Cates (2016年2月17日). “Favorite Recipes of Famous Women” (英語). The Paris Review. 2018年11月19日閲覧。
  14. ^ Mahoney, Louis (1999年8月4日). “The Proof is in the Pudding; Crashing Watergate”. The Richmond Times Dispatch: p. F1 
  15. ^ The History of the Watergate Salad”. Kraft Foods. 2016年3月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年8月18日閲覧。
  16. ^ baking.com, Watergate Cake With Cover-Up Icing
  17. ^ The Daily Courier, "Ask Anne & Nan" October 09, 1997
  18. ^ Sagert, Kelly Boyer (2007). The 1970s. Greenwood. p. 111. ISBN 9780313339196. https://books.google.com/books?id=9feBCLNhcFQC&q=%22watergate+salad%22+name&pg=PA111