アンカーボルト

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
市販のアンカーボルト(M12)
木造建築物の基礎に埋め込まれたアンカーボルト。短いのは土台用のM12、長いのはホールダウン金物用のM16。
貯水タンクを基礎に固定しているアンカーボルト(画面右下)。

アンカーボルト英語:anchor bolt)とは、木材鋼材といった構造部材、もしくは設備機器などを固定するために、コンクリートに埋め込んで使用するボルトのこと。

引張りせん断に抵抗することによって、コンクリートに取り付けられた構造部材や設備機器が、分離・浮遊・移動・転倒することを防ぐ役割をもつ。

特徴[編集]

  • 形状は、L型、J型などがある。
  • 太さは、M12・M16・M20・M22・M24・M27・M30・M33・M36などがある。
  • 長さは、太さに応じてさまざまである。
  • 材質は、一般構造用圧延鋼(JIS G 3101)のSS400・SS490、あるいは、建築構造用圧延棒鋼(JIS G 3138)のSNR400A・SNR400B・SNR490Bなどがある。
  • 表面処理は、素地(無処理)のものや、電気めっきや溶融亜鉛めっきを施したものがある。
  • アンカーボルトの引き抜き強度は、一般的に、アンカーボルトのコンクリートに接する表面積に比例し、深く埋め込むほど、また、太いアンカーボルトほど、引き抜き耐力が大きくなる。埋め込み長さは、一般的に、直径の35~40倍必要である。埋め込み長さが短いと、アンカーボルトが所定の耐力に達する前に抜けてしまい、アンカーボルト本来の強度や粘りを発揮できない。また、引き抜き強度を増大させるために、ボルトの先端を曲げたり、先端にプレートを取り付けたりする。
  • 建築構造物や土木構造物の基礎(この場合の基礎は橋台なども入る)の場合には、コンクリート打設前に、あらかじめアンカーボルトを埋め込んでおく。この場合、アンカーボルトは鉄筋に結束するか、アンカーボルト用の架台に取り付けて固定する。
  • コンクリート製の床や壁面に部材などを固定する場合や、天井に配管や二重天井のための吊りボルト(全ネジ、寸切りとも呼ばれる)を吊るために、コンクリート打設後にドリルなどで穴を空けてボルトを押し込む、または叩き込むものは、あと施工アンカーボルトという。一旦埋め込むと抜けにくい形状となっている。コンクリート打設後に行うものは基本的には打ち込み式とケミカル式に分類される。
  • 設備機器などを据え付ける時に、もう一度位置を微調整する必要がある場合は、箱抜きを行いL字型アンカーボルトを機器の設置後にモルタルで埋める工法も以前は行われたが、地震時にモルタルごと抜けることがあり、引き抜き強度で劣る。

主な用途[編集]

設計方法[編集]

  • アンカーボルトに生じる引張り力とせん断力を計算する。
  • 下の表を参考に、(1)コンクリートからの許容引抜き力、(2)アンカーボルトの許容引張り力、(3)アンカーボルトの許容せん断力を計算し、アンカーボルトに生じる引張り力とせん断力を超えないように、太さ・材質・埋め込み長さを決定する。引張りについては、下記の表の(1)と(2)のうち小さい方を採用する。なお、(1)が(2)より小さい場合、コンクリートの破壊が先行しもろい破壊となる。逆に(1)が(2)より大きい場合、鋼材の降伏が先行し、粘り強さに富んだ破壊となる。耐力壁など、耐震性を必要とする箇所では、(1)が(2)より大きくなるように設計する。
  長期 短期
(荷重のかかる時間が
約1時間以内)
(1) コンクリートからの許容引抜き力 許容付着応力度σa[N/mm2] = 0.7
付着面積Aa[mm2] = 直径D[mm]×π×埋め込み長さL[mm]
許容引抜き力[N] = σa[N/mm2]×Aa[mm2]
許容付着応力度σa[N/mm2] = 1.4
付着面積Aa[mm2] = 直径D[mm]×π×埋め込み長さL[mm]
許容引抜き力[N] = σa[N/mm2]×Aa[mm2]
(2) アンカーボルトの許容引張り力
(SS400の場合)
許容引張り応力度σt[N/mm2] = 235÷1.5
ねじ部断面積An[mm2] = 直径D[mm]2×π÷4×0.7
許容引張り力[N] = σt[N/mm2]×An[mm2]
許容引張り応力度σt[N/mm2] = 235
ねじ部断面積An[mm2] = 直径D[mm]2×π÷4×0.7
許容引張り力[N] = σt[N/mm2]×An[mm2]
(3) アンカーボルトの許容せん断力
(SS400の場合)
許容せん断応力度σs[N/mm2] = 235÷1.5÷√3
ねじ部断面積An[mm2] = 直径D[mm]2×π÷4×0.7
許容せん断力[N] = σs[N/mm2]×An[mm2]
許容せん断応力度σs[N/mm2] = 235÷√3
ねじ部断面積An[mm2] = 直径D[mm]2×π÷4×0.7
許容せん断力[N] = σs[N/mm2]×An[mm2]

※各種許容応力度は、建築基準法令90条・91条及び建設省告示第2464号による。

※ねじ部断面積Anはおおよその値であり、詳細は製品の仕様書による。

  • 鉄筋の混み具合などを考慮して、本当にアンカーボルトがその位置に納まるかどうか検討する。納まらない場合、アンカーボルトの位置・形状・太さ・長さ・数量などを、計算した引張り力・せん断力を下回らないように変更する。

施工方法[編集]

通常のアンカーボルト[編集]

コンクリート打設前に、鉄線を用いて、鉄筋に強固にアンカーボルトを結束する。鉄筋への結束だけでは位置精度が十分に出ない場合は、型枠に穴を開けてアンカーボルト固定したり、位置出し材を取り付けてそれに固定したりする。近接した複数のアンカーボルトを高精度に配置するには、あらかじめ用意した鋼板に複数の穴をあけ、アンカーボルトを差し込み、点付け溶接するなどして、複数のアンカーボルトを一体化する。いずれの場合も、埋め込み長さ、出の長さを間違えないように注意する。その後、コンクリートを流し込み、凝固するのを待つ。

打ち込みアンカー[編集]

打ち込みたい位置に指定された径と深さの穴をハンマードリルなどで開け、コンクリートの切り粉をブロワーなどで除去し、アンカーボルトを埋める、もしくは打ち込んでから、さらにアンカーの芯、もしくは外周部を打ち込み棒を使ってハンマーで叩くと、外周部が膨らんでコンクリートに固定される仕組みである。内周部にはメスネジが切ってあって、全ネジなどを差し込んで、構造物を固定するが、あらかじめオスネジを切ってあるボルトが外に出るようになっているものもある。

かつては火薬を用いた鋲打ち銃によって打ち込みを行っていたため、事故が多かった。そこで熟練工でなくても安全に施工できる技術として、芯棒を打ち込むだけの安全かつ簡単な施工で、しっかりと取り付けできる現在の打ち込みアンカーが開発され、オールアンカーという商品名で三幸商事より商品化された。

締付けアンカー[編集]

取り付けたい位置に規定の径と規定以上の深さの穴を開け、切り粉をブロワーなどで除去し、アンカーボルトを埋め、アンカーのナットを規定のトルク値まで締めつけることによって固定する。

ケミカルアンカー[編集]

ケミカルアンカーとは、化学反応を利用した接着剤によって全ネジや、異形鋼棒を固定するものである。日本デコラックス社の商品名で、正式には接着系アンカーという。試験管のような容器に入っていることが多く、カプセル型接着系アンカーとも呼ぶ。

コンクリートにドリルで穴を開け、ブロワーで切り粉を除去し、更にケミカルブラシで孔壁の粉塵を除去、更にブロワーや集塵機で清掃したあと、ケミカルアンカーを穴に挿入。先端を斜めに切った全ネジや異形鋼棒を打ち込むことによってケミカルアンカーの容器が破壊され、化学反応が起こり、しばらくすると固定する。

アンカーボルトの欠落と欠陥住宅[編集]

木造の住宅では、土台用のアンカーボルトは、M12を使い、埋め込み長さは250mm以上なければならない。また、ホールダウン金物用のアンカーボルトは、M16を使い、埋め込み長さは360mm以上なければならない。しかし、アンカーボルトが少なかったり、埋め込み長さを守っていなかったりすることがある。建築主・設計士・施工業者ともよくチェックする必要がある。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]