アメリカ・イギリス相互防衛協定

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1958年アメリカ・イギリス相互防衛協定(The 1958 US–UK Mutual Defence Agreement)は、アメリカ合衆国イギリス間での核兵器開発協力に関する二国間条約

この協定が署名されたのは、イギリスがグラップル作戦英語版で最初の水素爆弾のテストに成功した後のことであった。アメリカはフランスを含むいくつかのNATO加盟国とニュークリア・シェアリングを結んでいたが、この協定はもっとも包括的なものだった[要出典]

この協定は10年ごとに更新され、2004年の更新では協定が2014年まで延長された[1]

協定[編集]

こ の協定によりアメリカとイギリスは、それぞれの「核兵器の設計、開発および生産能力」を改善することを目的とする機密情報を交換することが出来るようになった。この協定には、核兵器の使用と防護に関わる人員の訓練、敵の能力の評価、核兵器運搬システムの開発、および軍用原子炉の研究・開発・設計といった防衛計画が含まれている。協定により、特別な核関連の物質(例えばプルトニウム、高濃度濃縮ウラントリチウム)や、部品、装備、および、「核兵器の非核部分」の両国間の移転が可能になった。協定は、イギリスの最初の原子力潜水艦ドレッドノートに組み込まれた、アメリカの潜水艦用核推進プラントの完全な一式およびその濃縮ウラン燃料の輸出をもカバーしている。この協定により、イギリスはネバダ核実験場における地下核実験を実施することも可能であり、最初の核実験は1962年3月1日に行われた[2]

この協定では、機密情報事項もカバーされているが、イギリス政府は協定のこの部分を公開しなかった。「なぜなら、重要な機密事項を秘匿する必要があるし…核拡散を助長してしまうかもしれないからだ」[3]。この協定により、以前の相互防衛を目的とする核情報に関する協力合意(1955年)は差し替えられた。1963年4月6日、別途、ポラリス売却協定 (Polaris Sales Agreementが署名された。

イギリスの核兵器開発に対する支援[編集]

本協定により最初期に得られた利益は、1961年、アメリカ製のW28爆弾を、ブルースチール・ミサイルのためのレッドスノー熱核爆弾として「イギリス化」することが認められたことである[4]1974年CIAの核拡散評価は「多くの場合、(核およびミサイルの分野におけるイギリスの機微に係る技術)はアメリカから受け取った技術に基づくものであり、アメリカの許可なしに正統に移転させることはできない」[5]と記している。アメリカ大統領は核兵器部品のイギリスへの移転を少なくとも1975年から1996年にわたって認可していた[6][7]

イギリス政府の英国会計検査院英語版は、イギリス・トライデント計画英語版向けの核弾頭の開発および生産に関する支出は、「とある核弾頭関連部品」を供給したアメリカのせいで好ましくない影響を受けた[8][9]と記している。イギリスのトライデント・ミサイル用の核分裂性物質のあるものは、アメリカから購入したもの[9]である。イギリスのトライデントの弾頭の設計もまた同様に、アメリカのトライデントに装着されているW76と、設計および爆発モデル・データについて同様に購入したかあるいは基礎にしたという証拠がある[10][11]

特別核物質取引[編集]

本協定のもとで1960年から1979年にかけての時期に、5.47トンのイギリス製プルトニウムが、6.7キログラムのトリチウムと7.5トンの高濃縮ウランと引き換えに、アメリカに送付された。さらに、470キログラムのプルトニウムが両国間で交換されたが、この件は秘匿されたままである[12]。イギリス製プルトニウムのいくらかは、1962年、原子炉級プルトニウムの核兵器実験としてのみ知られるアメリカ政府の実験に用いられた[13]

アメリカに送られたプルトニウムには、イギリスの民需向けマグノックス炉で生産されたものを含んでおり、アメリカはそのプルトニウムを核兵器プログラムには使用しないと保証した。そのプルトニウムはカリフォルニウム生産および原子炉研究を含む民需向けプログラムで使用された[12]。しかしながら、イギリスは引き換えに軍用核物質を手に入れており、この取引でイギリスの民需向け発電施設は兵器用物質をおそらく提供している[14]

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ Amendment to the 1958 US-UK Mutual Defence Agreement (on nuclear weapons' cooperation)”. British American Security Information Council (2004年6月). 2006年11月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年3月15日閲覧。
  2. ^ UK Mounts First Underground Nuclear Test (UGT)”. Atomic Weapons Establishment. 2008年1月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年3月15日閲覧。
  3. ^ UK-US Mutual Defence Agreement”. Lords Hansard – column 1119. Hansard (2004年6月22日). 2007年3月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年3月15日閲覧。
  4. ^ Yellow Sun MK.2 Enters Service”. Atomic Weapons Establishment. 2008年1月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年3月15日閲覧。
  5. ^ Prospects for Further Proliferation of Nuclear Weapons, Special National Intelligence Estimate, CIA, (23 August 1974), p. 40, SNIE 4-1-74, オリジナルの13 February 2008時点によるアーカイブ。, http://web.archive.org/web/20080213130511/http://www.gwu.edu/~nsarchiv/NSAEBB/NSAEBB240/snie.pdf 2008年1月20日閲覧。 
  6. ^ National Security Decision Memorandum 276”. United States National Security Council (1974年10月15日). 2007年3月15日閲覧。
  7. ^ National Security Directive 61 (PDF)”. The White House (1991年7月2日). 2007年3月15日閲覧。
  8. ^ Dan Plesch (March 2006) (PDF). The Future of Britain’s WMD. Foreign Policy Centre. p. 15. オリジナルの21 June 2006時点によるアーカイブ。. http://web.archive.org/web/20060621034126/http://www.danplesch.net/articles/WMD/WMDMar10FINAL.pdf 2007年3月15日閲覧。. 
  9. ^ a b Ministry of Defence and Property Services Agency: Control and Management of the Trident Programme. National Audit Office. (29 June 1987). pp. ara. 1.1, 3.27, A4.4. ISBN 978-0-10-202788-4. 
  10. ^ Britain's Next Nuclear Era”. Federation of American Scientists (2006年12月7日). 2007年2月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年3月15日閲覧。
  11. ^ Stockpile Stewardship Plan: Second Annual Update (FY 1999) (PDF)”. United States Department of Energy (1998年4月). 2007年3月15日閲覧。
  12. ^ a b Plutonium and Aldermaston – an historical account”. UK Ministry of Defence (2001年9月4日). 2006年12月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年3月15日閲覧。
  13. ^ Additional Information Concerning Underground Nuclear Weapon Test of Reactor-Grade Plutonium”. U.S. Department of Energy (1994年6月). 2007年3月15日閲覧。
  14. ^ David Lowry (2004年4月29日). “Obituary: Ross Hesketh”. The Guardian. http://www.guardian.co.uk/news/2004/apr/29/guardianobituaries1 2012年3月23日閲覧。 

外部リンク[編集]