アネマ・エ・コーレ

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アネマ・エ・コーレ』(Anema e core) は、イタリアポピュラー音楽の歌、ナポリ語で歌詞が書かれたカンツォーネ・ナポレターナ[1]。曲名は、「魂と心」といった意味である[2]

作曲者はサルヴェ・デスピートイタリア語版、オリジナルのナポリ語の歌詞を作詞したのはティート・マンリオイタリア語版であった[1]。また、以下に紹介するように、少なくとも3種類の英語の歌詞が知られている。

テノール歌手アンドレア・ボチェッリは、この曲について、古典的作品であり、数多くのテノールが歌い、ポップ歌手も多く取り上げていると述べている[3]

オリジナルのナポリ語によるバージョン[編集]

この曲は、ナポリ語の歌詞で歌われるカンツォーネ・ナポレターナであるが[1]、単にイタリア語、ないし、イタリア語のナポリ方言と説明されることもある[4]

この曲が最初に発表されたのは、1950年で、歌ったのはテノール歌手のティート・スキーパであった[4]

ロベルト・ムロロイタリア語版も同じく1950年に78回転盤を発表しており[5]、彼が国際的な名声を確立するきっかけとなった[1]

翌1951年に公開された同名のイタリア映画Anema e core[6]では、この曲が主題歌として使用された[7]

エツィオ・ピンツァは、1969年のアルバムArias And Songs』など、英語による歌唱も含め、この曲の録音を何度もおこなっているが、1980年の映画ブルース・ブラザース』の女家主の家を訪れる場面では、原語による歌唱が流れる[8][9]

グレイス・ジョーンズ1978年にリリースしたアルバム『フェイム (Fame)』のイタリア盤では、アルバムの最後の曲が「Below the Belt」から、ピエール・パパディアマンディスフランス語版によってディスコ調に編曲されたこの曲に差し替えられた[10]。また、シングル「Autumn Leaves」(「枯葉」のフランス語英語による歌唱)のB面に、この曲が収録された[11]

「Until」[編集]

最初に付けられた英語の歌詞は、「アンティル (Until)」と題され、シルヴィア・ディー英語版シドニー・リップマン英語版が作詞を手がけた。この曲名と歌詞による最も有名な録音は、1952年に吹き込まれダイナ・ショアのバージョンである[12]ディーン・マーティンもこの曲を、1951年11月19日に録音していた[13]

ジョニー・デズモンド英語版は、1951年12月16日にこの曲を録音した。コーラル・レコードからリリースされた彼のレコードにはカタログ番号 60629 が付けられた[14]

フランキー・カール英語版楽団やフレディ・マーティン英語版楽団によるインストゥルメンタルの録音も出されたが、器楽である以上当然ながら、下で述べる別の曲名で発表されたバージョンと変わるものではない。

「Anema e core/With All My Heart and Soul」[編集]

上記のものとは異なる英語の歌詞が、マニー・カーティス英語版ハリー・アクスト英語版によって書かれた。このバージョンは、イタリア語の曲名のままで録音されることも、英語で「With All My Heart and Soul」という曲名で録音されることもあった。

1953年には、ブロードウェイミュージカルJohn Murray Anderson's Almanac』で取り上げられ、カーティスとアクストが改めて新たな歌詞を書いた[15]

このバージョンで最大のヒットとなったのは、1954年エディ・フィッシャー盤で、ヒューゴ・ウィンターハルター英語版の楽団、合唱団ととともに、ニューヨークマンハッタン・センター英語版1954年2月11日に録音したものであった。このレコードは、アメリカ合衆国では、RCAビクター・レコードからカタログ番号 20-5675 の78回転盤として[16]、またカタログ番号 47-5675の45回転盤シングルとしてリリースされた。また、His Master's Voice レーベルの EA 4167、および、(S) X 7981 としてもリリースされた。米国盤は、1954年3月31日付『ビルボード』誌の「ベスト・セラー (Best Seller)」チャートに初登場し、14週チャートにとどまり、最高14位まで上昇した[17]。『キャッシュボックス』誌の「ベスト・セリング・レコード (Best-Selling Records)」のチャートでも、同じ年に最高12位を記録した。

ヴィック・ダモーンは、1958年のアルバムAngela Mia』にこの曲を収録した[18]

ジェリー・ベール英語版は、1963年のアルバムArrivederci, Roma』にこの曲を収録した[19]

ペリー・コモも同じ曲名で1951年に録音しているが[20]、作者のクレジットはラリー・ストック英語版とされていた。コモは、この曲を「Anema e core」として1966年のアルバムイタリアの思い出 (Perry Como In Italy)』に収録した[21]

コニー・フランシスによる録音のひとつは、大部分がイタリア語の歌詞で歌われているが、部分的にはカーティスとアクストの歌詞が歌われている。

マイケル・ブーブレは、2002年のアルバムDream』にこの曲を収録した[22]

「How Wonderful to Know」[編集]

さらにまた別の「How Wonderful to Know」と題された英語詞は、カーミット・ゴエル英語版が書いたもので[23]ジョーン・レーガン英語版[24]1960年のアルバム21 Today』に収録したクリフ・リチャード[25]カテリーナ・ヴァレンテ英語版アンディ・ウィリアムスなどが録音してきた。セルジオ・フランキ英語版は、RCアビクターの赤盤 (RCA Victor Red Seal) では2作目となった1963年のアルバムOur Man From Italy』でこの曲をカバーした[26]。このアルバムは『ビルボード』誌のアルバム・チャートである Billboard 200 で、最高66位まで上昇した[27]

「To Be or Not to Be」[編集]

ペペ・ハラミジョ英語版や、ジョック・ハットル (Jock Hattle) 名義のアルベルト・カルパーニ英語版は、「To Be or Not to Be」というタイトルで、この曲のインストゥルメンタル演奏を録音している[28]

「Srcem i dusom」[編集]

「Srcem i dusom」と題されたセルビア・クロアチア語の歌詞によるバージョンは、クロアチア人ジャズシュラーガー英語版歌手スティエパン・ジミー・スタニッチセルビア・クロアチア語版によって1963年に録音され、ユーゴスラビア社会主義連邦共和国ベオグラードPGP-RTBレーベルから EP 50 220 としてリリースされた[29]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d Anema e Core”. Radio Napoli. 2020年7月23日閲覧。
  2. ^ Anema e Core(アネマ・エ・コーレ) Live / 熊谷めぐみ Megumi Kumagai - YouTube - 動画に添えられたコメント
  3. ^ Andrea Bocelli - Anema E Core - Live / 2012 - YouTube - 動画冒頭の英語による発言。
  4. ^ a b Anema e core”. The Second Hand Songs. 2020年7月24日閲覧。
  5. ^ Roberto Murolo – Anema E Core / Chi Sà ? - Discogs (発売一覧)
  6. ^ Anema e core (1951) - IMDb(英語)
  7. ^ Anema e Core - Film Completo by Film&Clips - YouTube
  8. ^ ブルース・ブラザース - IMDb(英語) - Soundtracks
  9. ^ The Blues Brothers: "Abbiamo il serbatoio pieno, mezzo pacchetto di sigarette, è buio, e portiamo tutt'e due gli occhiali da sole"”. ONDA Musicale (2019年10月30日). 2020年7月24日閲覧。
  10. ^ Grace Jones – Fame - Discogs
  11. ^ Grace Jones – Autumn Leaves / Anema E Core - Discogs
  12. ^ 45cat.com”. 45cat.com. 2017年12月11日閲覧。
  13. ^ Tosches, Nick (1993). Dino - Living High in the Dirty Business of Dreams. New York: Dell Publishing. p. 583. ISBN 0-440-21412-2 
  14. ^ 45cat.com”. 45cat.com. 2017年12月11日閲覧。
  15. ^ ANEMA E CORE (WITH ALL MY HEART AND SOUL)”. International Lyrics Playground. 2020年7月24日閲覧。
  16. ^ RCA Victor Records in the 20-5500 to 20-9999 series
  17. ^ Whitburn, Joel (1973). Top Pop Records 1940-1955. Record Research 
  18. ^ Vic Damone – Angela Mia - Discogs (発売一覧)
  19. ^ Jerry Vale – Arrivederci, Roma - Discogs (発売一覧)
  20. ^ Perry Como Discography”. kokomo.ca. 2017年12月11日閲覧。
  21. ^ ペリー・コモ / イタリアの思い出 [紙ジャケット仕様] [廃盤]”. シーディージャーナル. 2020年7月24日閲覧。
  22. ^ Michael Bublé – Dream - Discogs
  23. ^ Anema e core”. The Second Hand Songs. 2020年7月24日閲覧。
  24. ^ Joan Regan – How Wonderful To Know - Discogs
  25. ^ Cliff Richard – 21 Today - Discogs (発売一覧)
  26. ^ Sergio Franchi – Our Man From Italy - Discogs (発売一覧)
  27. ^ http://www.allrovi.com/ Archived 2011-10-14 at the Wayback Machine. Sergio Franchi
  28. ^ To Be or Not to Be ~ Song”. MusicBrainz!. 2020年7月23日閲覧。
  29. ^ Stjepan Jimmy Stanic - Srcem i dusom - (Audio 1964) HD - YouTube

外部リンク[編集]