「小膠細胞」の版間の差分
削除された内容 追加された内容
→活性化: 単なるタイプミスの訂正 それは脳内の炎症であるり(編集前) ↓ それは脳内の炎症であり(編集後) タグ: モバイル編集 モバイルウェブ編集 |
編集の要約なし |
||
1行目: | 1行目: | ||
[[Image:Mikroglej 1.jpg|thumb|250px|小膠細胞]] |
[[Image:Mikroglej 1.jpg|thumb|250px|小膠細胞]] |
||
'''小膠細胞'''(しょうこうさいぼう、{{lang-en|Microglia}})は、脳脊髄中に存在する[[グリア細胞| |
'''小膠細胞'''(しょうこうさいぼう、{{lang-en|Microglia}}、{{lang-ja|'''ミクログリア'''}})は、脳脊髄中に存在する[[グリア細胞|膠細胞]]の一種。中枢神経系における細胞の約5〜20%を占めている<ref name="pmid24852223">{{cite journal |author=Yasui M, Yoshimura T, Takeuchi S, Tokizane K, Tsuda M, Inoue K, Kiyama H. |title=A chronic fatigue syndrome model demonstrates mechanical allodynia and muscular hyperalgesia via spinal microglial activation. |journal=[[:en:Glia_(journal)|Glia]]. |volume=62 |issue=9 |page=1407-17 |date=2014-9 |url=https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/glia.22687/abstract |doi=10.1002/glia.22687 |pmid=24852223 |accessdate=2016-09-11}}</ref>。'''Hortega細胞'''とも呼ばれる。他の膠細胞は[[胚葉#外胚葉|外胚葉]]由来であるのに対して小膠細胞は[[胚葉#中胚葉|中胚葉]]由来である。[[マクロファージ]]様の食作用を有し、神経組織が[[炎症]]や[[変性#変性(医学用語)|変性]]などの障害を受けると、小膠細胞は活性化し、病変の修復に関与する。[[Fcレセプター]]、[[補体レセプター]]、[[主要組織適合遺伝子複合体|MHC]]の発現、[[インターロイキン1]]の分泌を行い、[[神経系#中枢神経系|中枢神経系]]の免疫担当細胞としての役割を有する可能性が示唆されている。 |
||
== 活性化 == |
== 活性化 == |
||
; 神経変性 |
|||
ミクログリアの活性化は炎症性[[サイトカイン]]を放出し[[細胞傷害]]を惹起する。それは脳内の |
: ミクログリアの活性化は炎症性[[サイトカイン]]を放出し[[細胞傷害]]を惹起する。それは脳内の炎症であり、[[神経変性]]や[[中枢神経系]]の[[炎症応答]]を引き起こす<ref name="pmid16169595">{{cite journal |auther=Inoue K. |title=The function of microglia through purinergic receptors: neuropathic pain and cytokine release. |journal=[[:en:Pharmacology & Therapeutics]]. |volume=109 |issue=1-2 |pages=210-26 |year=2006 |url=http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0163725805001567 |doi=10.1016/j.pharmthera.2005.07.001 |pmid=16169595}}</ref>。 |
||
; 神経因性疼痛 |
|||
: [[神経因性疼痛#神経因性疼痛の病態生理学的所見|神経因性疼痛の病態]]としてミクログリアの活性化が引き起こされる。 |
|||
; HANS |
|||
: [[HPVワクチン]]の副反応とされる[[HANS]](子宮頸がんワクチン関連神経免疫異常症候群)の病態は、ミクログリアの活性化によるものと示唆される<ref name="blogos_140544">[http://blogos.com/article/140544/ 子宮頸がんワクチン薬害説にサイエンスはあるか 日本発「薬害騒動」の真相(中篇) - 村中璃子](2015年10月22日 12:55)</ref>。 |
|||
=== 神経炎症 === |
|||
: 重症の[[慢性疲労症候群]]では、脳内ミクログリアの活性化による[[神経炎症]]が起こっていた<ref name="jst_cfs_2016">{{cite web |title=慢性疲労症候群の病態機序とその治療 |url=https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnt/33/1/33_40/_pdf |date=2016 |accessdate=2016-09-11}}</ref>。 |
|||
== 抑制 == |
== 抑制 == |
||
; アポトーシス |
|||
ミクログリアの活性化を抑制すると[[脳細胞]]の[[アポトーシス]]と神経変性が誘導される<ref name="pmid26482736">{{cite journal |author=Inta I, Vogt MA, Vogel AS, Bettendorf M, Gass P, Inta D. |title=Minocycline exacerbates apoptotic neurodegeneration induced by the NMDA receptor antagonist MK-801 in the early postnatal mouse brain. |journal=[[:en:European Archives of Psychiatry and Clinical Neuroscience]]. |volume= |issue= |pages=1-5 |date=2015-10-19 |url=https://link.springer.com/article/10.1007/s00406-015-0649-2 |doi=10.1007/s00406-015-0649-2 |pmid=26482736}}</ref>。 |
: ミクログリアの活性化を抑制すると[[脳細胞]]の[[アポトーシス]]と神経変性が誘導される<ref name="pmid26482736">{{cite journal |author=Inta I, Vogt MA, Vogel AS, Bettendorf M, Gass P, Inta D. |title=Minocycline exacerbates apoptotic neurodegeneration induced by the NMDA receptor antagonist MK-801 in the early postnatal mouse brain. |journal=[[:en:European Archives of Psychiatry and Clinical Neuroscience]]. |volume= |issue= |pages=1-5 |date=2015-10-19 |url=https://link.springer.com/article/10.1007/s00406-015-0649-2 |doi=10.1007/s00406-015-0649-2 |pmid=26482736}}</ref>。 |
||
; 慢性疲労症候群 |
|||
: ミクログリアの活性化を抑える薬剤は慢性疲労症候群の[[特効薬]]として開発が始まっている<ref name="jst_cfs_2016" />。 |
|||
=== 神経保護 === |
=== 神経保護 === |
||
一般的に[[神経保護]]とはグリア細胞の活性化を抑制することを指しており、[[髄鞘|髄鞘(ミエリン鞘)]]の形成を指してはいない。むしろグリア細胞の活性化を抑制することは、その一種である[[オリゴデンドロサイト]]も抑制することになり、髄鞘(ミエリン鞘)の機能不全を引き起こすことが考えられる。そのため神経保護作用は正常な[[神経回路形成]]に悪影響が出ることが示唆されている。特にそれは発達期において有害であることを意味する。 |
一般的に[[神経保護]]とはグリア細胞の活性化を抑制することを指しており、[[髄鞘|髄鞘(ミエリン鞘)]]の形成を指してはいない。むしろグリア細胞の活性化を抑制することは、その一種である[[オリゴデンドロサイト]]も抑制することになり、髄鞘(ミエリン鞘)の機能不全を引き起こすことが考えられる。そのため神経保護作用は正常な[[神経回路形成]]に悪影響が出ることが示唆されている。特にそれは発達期において有害であることを意味する。 |
||
; ミノサイクリンの臨床試験 |
|||
: ミクログリアの活性化を抑制する薬剤として知られている[[ミノサイクリン]]の[[鎮痛]]効果を検証する第III相の臨床試験が[[東京大学医学部附属病院]]で[[2012年]]から行われている<ref name="r000007619">{{cite web |title=侵害受容性・炎症性疼痛および神経障害性疼痛患者に対するミノサイクリンの鎮痛効果に関するOpen label探索試験 |url=https://upload.umin.ac.jp/cgi-open-bin/ctr/ctr.cgi?function=brows&action=brows&type=summary&recptno=R000007619 |work=upload.umin.ac.jp |publisher=[[東京大学]] |date=2014-02-01 |accessdate=2016-09-11}}</ref>。 |
|||
== 関連項目 == |
== 関連項目 == |
||
* [[神経食現象]] |
* [[神経食現象]] |
||
⚫ | |||
* [[アストロサイト|星状膠細胞]] |
* [[アストロサイト|星状膠細胞]] |
||
* [[オリゴデンドロサイト]] |
|||
* [[希突起膠細胞]] |
* [[希突起膠細胞]] |
||
* [[上衣細胞]] |
* [[上衣細胞]] |
||
* [[神経回路形成]] |
* [[神経回路形成]] |
||
⚫ | |||
== 参考文献 == |
== 参考文献 == |
||
28行目: | 42行目: | ||
{{DEFAULTSORT:しようこうさいほう}} |
{{DEFAULTSORT:しようこうさいほう}} |
||
[[Category:神経]] |
[[Category:神経]] |
||
[[Category:神経保護剤]] |
|||
[[Category:マクロファージ]] |
[[Category:マクロファージ]] |
||
[[Category:ヒト細胞]] |
[[Category:ヒト細胞]] |
2016年9月11日 (日) 11:59時点における版
小膠細胞(しょうこうさいぼう、英語: Microglia、日本語: ミクログリア)は、脳脊髄中に存在する膠細胞の一種。中枢神経系における細胞の約5〜20%を占めている[1]。Hortega細胞とも呼ばれる。他の膠細胞は外胚葉由来であるのに対して小膠細胞は中胚葉由来である。マクロファージ様の食作用を有し、神経組織が炎症や変性などの障害を受けると、小膠細胞は活性化し、病変の修復に関与する。Fcレセプター、補体レセプター、MHCの発現、インターロイキン1の分泌を行い、中枢神経系の免疫担当細胞としての役割を有する可能性が示唆されている。
活性化
- 神経変性
- ミクログリアの活性化は炎症性サイトカインを放出し細胞傷害を惹起する。それは脳内の炎症であり、神経変性や中枢神経系の炎症応答を引き起こす[2]。
- 神経因性疼痛
- 神経因性疼痛の病態としてミクログリアの活性化が引き起こされる。
- HANS
- HPVワクチンの副反応とされるHANS(子宮頸がんワクチン関連神経免疫異常症候群)の病態は、ミクログリアの活性化によるものと示唆される[3]。
神経炎症
抑制
- アポトーシス
- ミクログリアの活性化を抑制すると脳細胞のアポトーシスと神経変性が誘導される[5]。
- 慢性疲労症候群
- ミクログリアの活性化を抑える薬剤は慢性疲労症候群の特効薬として開発が始まっている[4]。
神経保護
一般的に神経保護とはグリア細胞の活性化を抑制することを指しており、髄鞘(ミエリン鞘)の形成を指してはいない。むしろグリア細胞の活性化を抑制することは、その一種であるオリゴデンドロサイトも抑制することになり、髄鞘(ミエリン鞘)の機能不全を引き起こすことが考えられる。そのため神経保護作用は正常な神経回路形成に悪影響が出ることが示唆されている。特にそれは発達期において有害であることを意味する。
- ミノサイクリンの臨床試験
- ミクログリアの活性化を抑制する薬剤として知られているミノサイクリンの鎮痛効果を検証する第III相の臨床試験が東京大学医学部附属病院で2012年から行われている[6]。
関連項目
参考文献
- 日本獣医解剖学会編集 『獣医組織学 改訂第二版』 学窓社 2003年 ISBN 4873621135
外部リンク
- ^ Yasui M, Yoshimura T, Takeuchi S, Tokizane K, Tsuda M, Inoue K, Kiyama H. (2014-9). “A chronic fatigue syndrome model demonstrates mechanical allodynia and muscular hyperalgesia via spinal microglial activation.”. Glia. 62 (9): 1407-17. doi:10.1002/glia.22687. PMID 24852223 2016年9月11日閲覧。.
- ^ “The function of microglia through purinergic receptors: neuropathic pain and cytokine release.”. en:Pharmacology & Therapeutics. 109 (1-2): 210-26. (2006). doi:10.1016/j.pharmthera.2005.07.001. PMID 16169595 .
- ^ 子宮頸がんワクチン薬害説にサイエンスはあるか 日本発「薬害騒動」の真相(中篇) - 村中璃子(2015年10月22日 12:55)
- ^ a b “慢性疲労症候群の病態機序とその治療” (2016年). 2016年9月11日閲覧。
- ^ Inta I, Vogt MA, Vogel AS, Bettendorf M, Gass P, Inta D. (2015-10-19). “Minocycline exacerbates apoptotic neurodegeneration induced by the NMDA receptor antagonist MK-801 in the early postnatal mouse brain.”. en:European Archives of Psychiatry and Clinical Neuroscience.: 1-5. doi:10.1007/s00406-015-0649-2. PMID 26482736 .
- ^ “侵害受容性・炎症性疼痛および神経障害性疼痛患者に対するミノサイクリンの鎮痛効果に関するOpen label探索試験”. upload.umin.ac.jp. 東京大学 (2014年2月1日). 2016年9月11日閲覧。