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「脂肪肝」の版間の差分

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== 病態 ==
== 病態 ==
[[砂糖]]を過剰に摂取すると、脂肪肝が生じる。砂糖が分解してできる[[果糖]]は、量に依存する肝毒性を示す。果糖は、肝臓でのみ代謝される。果糖は、肝臓や骨格筋に[[インスリン抵抗性]]を引き起こす。インスリン抵抗性が生じると、膵臓からの[[インスリン]]分泌が促される。過剰なインスリンによる[[高インスリン血症]]は、各種の臓器障害をもたらす。例えば、[[脂質異常症]]や肝臓の炎症をもたらす<ref name="Taubes">[http://www.nytimes.com/2011/04/17/magazine/mag-17Sugar-t.html?pagewanted=all&_r=0 Is Sugar Toxic?] The New York Times、2011年4月13日</ref><ref>[http://podcast.uctv.tv/webdocuments/Fructose-Epidemic.pdf The Fructose Epidemic] Robert H. Lustig</ref>。
[[砂糖]]を過剰に摂取すると、脂肪肝が生じる。砂糖が分解してできる[[果糖]]は、量に依存する肝毒性を示す。果糖は、肝臓でのみ代謝される。この理由として、果糖はグルコースに比べ開環率が高く(約10倍も[[糖化反応]]に使われやすいため<ref name=mc>{{cite journal |doi=10.1021/bi00406a016 |author=McPherson JD, Shilton BH, Walton DJ |title=Role of fructose in glycation and cross-linking of proteins |journal=Biochemistry |volume=27 |issue=6 |pages=1901–7 |year=1988 |month=March |pmid=3132203}}</ref>)、生体への毒性はグルコースよりも遥かに高い。この毒性を早く消す目的で、[[肝臓]]はグルコースよりも果糖を優先的に処理する<ref>山内俊一、[http://doi.org/10.6032/gnam.34.219 糖質ー特にフルクトースに関してー]、痛風と核酸代謝 Vol.34 (2010) No.2 p.219-, {{DOI|10.6032/gnam.34.219}}</ref>。果糖は、肝臓や骨格筋に[[インスリン抵抗性]]を引き起こす。インスリン抵抗性が生じると、膵臓からの[[インスリン]]分泌が促される。過剰なインスリンによる[[高インスリン血症]]は、各種の臓器障害をもたらす。例えば、[[脂質異常症]]や肝臓の炎症をもたらす<ref name="Taubes">[http://www.nytimes.com/2011/04/17/magazine/mag-17Sugar-t.html?pagewanted=all&_r=0 Is Sugar Toxic?] The New York Times、2011年4月13日</ref><ref>[http://podcast.uctv.tv/webdocuments/Fructose-Epidemic.pdf The Fructose Epidemic] Robert H. Lustig</ref>。


脂肪肝においては、血清[[フェリチン]]の増加がしばしばみられ、脂肪肝のなかでも非アルコール性脂肪性肝炎 (NASH) を含んだ非アルコール性脂肪性肝疾患では、肝組織内の[[鉄過剰症|鉄の過剰]]が肝障害の増悪因子と考えられている<ref>船津和夫、山下毅、本間優 ほか、[http://doi.org/10.11320/ningendock2005.20.32 脂肪肝における血中ヘモグロビン値の検討]、人間ドック (Ningen Dock) Vol.20 (2005) No.1 p.32-37, {{DOI|10.11320/ningendock2005.20.32}}</ref>。
脂肪肝においては、血清[[フェリチン]]の増加がしばしばみられ、脂肪肝のなかでも非アルコール性脂肪性肝炎 (NASH) を含んだ非アルコール性脂肪性肝疾患では、肝組織内の[[鉄過剰症|鉄の過剰]]が肝障害の増悪因子と考えられている<ref>船津和夫、山下毅、本間優 ほか、[http://doi.org/10.11320/ningendock2005.20.32 脂肪肝における血中ヘモグロビン値の検討]、人間ドック (Ningen Dock) Vol.20 (2005) No.1 p.32-37, {{DOI|10.11320/ningendock2005.20.32}}</ref>。

2016年8月28日 (日) 14:08時点における版

CTによって撮影された脂肪肝

脂肪肝(しぼうかん、英語:fatty liver)とは、肝臓中性脂肪が蓄積した状態を指す。

ガチョウの肝臓を強制肥育によって肥大化させた高級食材「フォアグラ」や、稀にニワトリの雌鶏に見られる「白肝」も実は脂肪肝である。

臨床像

脂肪肝による肝臓の変化。脂肪が蓄積して肥大(左)→肝細胞壊死し、線維に置き換わって瘢痕となり(中)→肝硬変に至る(右)。

要因として以下がある。

画像検査

  • エコー検査
    肝腎コントラスト上昇(hepatorenal contrast)」(腎よりも肝が高エコー)や「肝脾コントラスト上昇」(脾よりも肝が高エコー)が見られる。また深部減衰(deep attenuation)もみられる。肝は腫大し、肝右葉下端が右下極よりも尾側に位置することがある。超音波が斜めに入射する胆嚢壁では、壁が不明瞭化する「fatty boundless sign」もみられる。
    限局性に脂肪沈着が多い部分・少ない部分がある場合、腫瘍と鑑別を要する。鑑別点は、門脈など正常の脈管構造の有無などである。
  • CT
    形態から肝障害・脂肪変性の評価を行う。脂肪変性に伴い脈管と実質の信号強度が正常肝と逆転することもある(肝実質がむしろ低吸収像となる)。
  • MRI

病理検査

非アルコール性の脂肪肝疾病(NAFLD)のマッソン・トリクロームおよびヴァーホフ染色による顕微鏡写真。大きな楕円形の空隙が脂肪滴、残った肝細胞は赤、死滅した細胞の痕に集まった線維が緑に染まっている。大きく膨らんだ脂肪滴が、圧迫により肝細胞のを変形させている。

肝生検にての病理組織所見は決定される。基本的には肝細胞の脂肪変性が認められる。

  • アルコール性脂肪肝
  • 非アルコール性脂肪肝

病態

砂糖を過剰に摂取すると、脂肪肝が生じる。砂糖が分解してできる果糖は、量に依存する肝毒性を示す。果糖は、肝臓でのみ代謝される。この理由として、果糖はグルコースに比べ開環率が高く(約10倍も糖化反応に使われやすいため[1])、生体への毒性はグルコースよりも遥かに高い。この毒性を早く消す目的で、肝臓はグルコースよりも果糖を優先的に処理する[2]。果糖は、肝臓や骨格筋にインスリン抵抗性を引き起こす。インスリン抵抗性が生じると、膵臓からのインスリン分泌が促される。過剰なインスリンによる高インスリン血症は、各種の臓器障害をもたらす。例えば、脂質異常症や肝臓の炎症をもたらす[3][4]

脂肪肝においては、血清フェリチンの増加がしばしばみられ、脂肪肝のなかでも非アルコール性脂肪性肝炎 (NASH) を含んだ非アルコール性脂肪性肝疾患では、肝組織内の鉄の過剰が肝障害の増悪因子と考えられている[5]

治療

コロラド州立大学教授の Michael Pagliassotti が、実験動物を、摂取エネルギー量の20%分を砂糖で飼育したところ、その実験動物には、数ヶ月後には脂肪肝が生じて、インスリン抵抗性が生じた。砂糖をやめたところ、脂肪肝は速やかに消失し、インスリン抵抗性も消失した[3]

抗脂肪肝ビタミン

糖アルコールの一種であるイノシトールは、抗脂肪肝ビタミンとも呼ばれ、肝臓における中性脂肪の合成を抑える働きがある。

出典

  • 脂肪肝 メルクマニュアル オンライン版

脚注

  1. ^ McPherson JD, Shilton BH, Walton DJ (March 1988). “Role of fructose in glycation and cross-linking of proteins”. Biochemistry 27 (6): 1901–7. doi:10.1021/bi00406a016. PMID 3132203. 
  2. ^ 山内俊一、糖質ー特にフルクトースに関してー、痛風と核酸代謝 Vol.34 (2010) No.2 p.219-, doi:10.6032/gnam.34.219
  3. ^ a b Is Sugar Toxic? The New York Times、2011年4月13日
  4. ^ The Fructose Epidemic Robert H. Lustig
  5. ^ 船津和夫、山下毅、本間優 ほか、脂肪肝における血中ヘモグロビン値の検討、人間ドック (Ningen Dock) Vol.20 (2005) No.1 p.32-37, doi:10.11320/ningendock2005.20.32

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