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'''ニボルマブ'''({{lang-en-short|nivolumab}}、商品名:オプジーボ)は、[[悪性黒色腫]]治療を目的とし、後に[[非小細胞肺癌]]・[[腎細胞癌]]に適用拡大された[[分子標的治療薬]]の一つで、ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル[[抗体]]医薬品で、当時の京都大学医学部の[[本庶佑]]博士の研究チームが開発に貢献<ref>[http://www.nippon.com/ja/column/g00268/ 脚光を浴びる新たな「がん免疫療法」:小野薬品のオプジーボ 京都大学・本庶研究室が開発をけん引]</ref><ref name="nikkei20141024">{{cite news|title = 15年間諦めなかった小野薬品 |
'''ニボルマブ'''({{lang-en-short|nivolumab}}、商品名:オプジーボ)は、[[悪性黒色腫]]治療を目的とし、後に[[非小細胞肺癌]]・[[腎細胞癌]]に適用拡大された[[分子標的治療薬]]の一つで、ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル[[抗体]]医薬品で、当時の京都大学医学部の[[本庶佑]]博士の研究チームが開発に貢献<ref>[http://www.nippon.com/ja/column/g00268/ 脚光を浴びる新たな「がん免疫療法」:小野薬品のオプジーボ 京都大学・本庶研究室が開発をけん引]</ref><ref name="nikkei20141024">{{cite news|title = 15年間諦めなかった小野薬品 がん消滅、新免疫薬 |url = http://www.nikkei.com/article/DGXMZO78790300T21C14A0X11000/|publisher = [[日本経済新聞]]|date = 2014年10月24日| accessdate = 2015年2月10日}}</ref>。日本においては[[2014年]][[7月4日]]製造販売が承認され<ref name="nikkeimedical20140718">{{cite news|title = オプジーボ:新機序の悪性黒色腫治療薬 |url = http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/series/drug/update/201407/537506.html|publisher = [[日経BP|日経メディカル]]|date = 2014年7月18日| accessdate = 2015年2月10日}}</ref>、2014年[[9月]][[小野薬品工業]]から発売が開始された<ref name="brystolmyers20141210">[http://www.bms.co.jp/press/20141210_2.html ブリストルマイヤーズ公式サイト - ニュースリリース2014年12月10日]</ref>。 |
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== 薬理 == |
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ニボルマブは、癌が免疫から逃れるためのチェックポイント・シグナル'''PD-1'''を抑制することにより、リンパ球による癌への攻撃を促進する<ref name="nikkei20141024"/><ref name="nikkeimedical20140718"/>。 |
ニボルマブは、癌が免疫から逃れるためのチェックポイント・シグナル'''PD-1'''を抑制することにより、リンパ球による癌への攻撃を促進する<ref name="nikkei20141024"/><ref name="nikkeimedical20140718"/>。 |
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: [[抗癌剤]]の多くは、[[核酸]]代謝や[[蛋白]]合成、細胞シグナルを阻害することにより作用する。ところが、ニボルマブは、がん免疫を活性化するという独特な作用を持つ。 |
: [[抗癌剤]]の多くは、[[核酸]]代謝や[[蛋白]]合成、細胞シグナルを阻害することにより作用する。ところが、ニボルマブは、がん免疫を活性化するという独特な作用を持つ。 |
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: 欧米ではすでに標準治療薬となっている[[イピリムマブ]](抗CTLA4抗体)とニボルマブを併用することで、腫瘍への客観的反応は |
: 欧米ではすでに標準治療薬となっている[[イピリムマブ]](抗CTLA4抗体)とニボルマブを併用することで、腫瘍への客観的反応は53%にみられた<ref>Jedd D. Wolchok JD and others. Nivolumab plus Ipilimumab in Advanced Melanoma. N Engl J Med 2013; 369:122-133. {{DOI|10.1056/NEJMoa1302369}}</ref>。同併用療法は2015年6月に[[アメリカ食品医薬品局|FDA]]に承認申請された<ref>{{cite web |url=http://www.yakuji.co.jp/entry44088.html |title=【米BMS】オプジーボとイェルボイ、免疫療法薬併用では初申請‐未治療進行メラノーマ適応で |publisher=薬事日報 |date=2015-06-11 |accessdate=2015-06-12}}</ref>。 |
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== 適応症 == |
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* 悪性黒色腫(承認取得日は日本:2014年7月<ref>{{cite web |url=http://www.ono.co.jp/jpnw/PDF/n14_0704.pdf |title=ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体「オプジーボ®点滴静注20mg、100mg」根治切除不能な悪性黒色腫に対する製造販売承認取得のお知らせ |date=2014-07-04 |accessdate=2014-12-25}}</ref>、米国:2014年12月<ref>{{cite web |url=https://www.mixonline.jp/tabid/55/artid/50972/Defalut.aspx?ex141225e |title=米FDA |
* 悪性黒色腫(承認取得日は日本:2014年7月<ref>{{cite web |url=http://www.ono.co.jp/jpnw/PDF/n14_0704.pdf |title=ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体「オプジーボ®点滴静注20mg、100mg」根治切除不能な悪性黒色腫に対する製造販売承認取得のお知らせ |date=2014-07-04 |accessdate=2014-12-25}}</ref>、米国:2014年12月<ref>{{cite web |url=https://www.mixonline.jp/tabid/55/artid/50972/Defalut.aspx?ex141225e |title=米FDA メラノーマ治療薬ニボルマブを承認 |date=2014-12-25 |accessdate=2014-12-25}}</ref>、欧州:2015年6月<ref>{{cite web |url=http://www.yakuji.co.jp/entry44387.html |title=【米BMS】抗PD-1抗体「オプジーボ」、欧州承認を取得 |publisher=薬事日報 |date=2015-06-25 |accessdate=2015-06-26}}</ref>) |
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* 非小細胞肺癌(承認取得日は日本:2015年12月、米国:2015年10月) |
* 非小細胞肺癌(承認取得日は日本:2015年12月、米国:2015年10月) |
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* 腎細胞癌(承認取得日は米国:2015年11月) |
* 腎細胞癌(承認取得日は米国:2015年11月) |
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== 副作用 == |
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主な副作用は[[痒み|瘙痒症]](31.4%)、遊離トリヨードチロニン減少(22.9%)、血中[[甲状腺刺激ホルモン|TSH]]増加(20.0%)などであり<ref name="nikkeimedical20140718"/>、重大な副作用としては[[間質性肺炎|間質性肺疾患]](2.9%)、[[重症筋無力症]]、[[筋炎]]、大腸炎、重度の下痢(2.9%)、肝機能障害(5.7%)、[[肝炎]]、甲状腺機能障害(甲状腺機能低下症(14.3%)等)、インフュージョンリアクションが報告されている<ref>{{cite web |url=http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/4291427A1024_1_04/ |title=オプジーボ点滴静注20mg/オプジーボ点滴静注100mg 添付文書 |date=2015-09 |accessdate=2015-09-16}}</ref>。 |
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== 研究 == |
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* 再発または治療抵抗性[[ホジキンリンパ腫]]に対して、ニボルマブは |
* 再発または治療抵抗性[[ホジキンリンパ腫]]に対して、ニボルマブは87%の患者で効果がみられた<ref>Ansell SM, et al. PD-1 Blockade with Nivolumab in Relapsed or Refractory Hodgkin's Lymphoma. N Engl J Med. Dec 6, 2014. {{DOI|10.1056/NEJMoa1411087}}</ref>。 |
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== 評価 == |
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== 価格問題 == |
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極めて高価な薬であり2014年の薬価で100mgで729,849円もする<ref>http://pharmacista.jp/contents/skillup/new_drug_info/nhi-price-listing/899/</ref>このため一年間使用すると3500万円にもなる<ref>http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03165_01</ref>この価格は高価と言われた従来の抗がん剤よりも極めて高価であり日本の医療財政の大きな負担になると國頭英夫は主張している。 |
極めて高価な薬であり2014年の薬価で100mgで729,849円もする<ref>[http://pharmacista.jp/contents/skillup/new_drug_info/nhi-price-listing/899/ オプジーボ点滴静注(ニボルマブ(遺伝子組換え))薬価収載「2014年9月2日」]</ref>このため一年間使用すると3500万円にもなる<ref>[http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03165_01 コストを語らずにきた代償 “絶望”的状況を迎え,われわれはどう振る舞うべきか] 週刊医学界新聞 第3165号 2016年03月07日</ref>この価格は高価と言われた従来の抗がん剤よりも極めて高価であり日本の医療財政の大きな負担になると國頭英夫は主張している。 |
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== 脚注 == |
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* [https://www.opdivo.jp/contents/product/ 製品基本情報](小野薬品工業) |
* [https://www.opdivo.jp/contents/product/ 製品基本情報](小野薬品工業) |
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* [http://www.bms.co.jp/press/ ニュースリリース](ブリストル・マイヤーズ) |
* [http://www.bms.co.jp/press/ ニュースリリース](ブリストル・マイヤーズ) |
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*[http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48369 |
* [http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48369 がん治療「革命」の旗手! 夢の薬「オプジーボ」はこんなに効く皮膚がんに続き、肺がんにも保険適用 - 現代ビジネス] |
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2016年6月20日 (月) 00:20時点における版
モノクローナル抗体 | |
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種類 | 全長抗体 |
原料 | ヒト |
抗原 | Programmed cell death 1 |
臨床データ | |
法的規制 |
|
識別 | |
CAS番号 | 946414-94-4 |
ATCコード | none |
化学的データ | |
化学式 | C6362H9862N1712O1995S42 |
分子量 | 143.6 kDa |
ニボルマブ(英: nivolumab、商品名:オプジーボ)は、悪性黒色腫治療を目的とし、後に非小細胞肺癌・腎細胞癌に適用拡大された分子標的治療薬の一つで、ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体医薬品で、当時の京都大学医学部の本庶佑博士の研究チームが開発に貢献[1][2]。日本においては2014年7月4日製造販売が承認され[3]、2014年9月小野薬品工業から発売が開始された[4]。
薬理
悪性腫瘍には、免疫システムから逃れるための仕組みを持つものがある。悪性黒色腫と肺癌には、まれに自然治癒例がみられることがあり、免疫により癌が攻撃され、治癒することが示唆されていた。
癌細胞は細胞表面にPD-L1を発現しており、免疫細胞であるT細胞のPD-1と結合して免疫細胞の攻撃を免れている[5]。
ニボルマブは、癌が免疫から逃れるためのチェックポイント・シグナルPD-1を抑制することにより、リンパ球による癌への攻撃を促進する[2][3]。
- 抗癌剤の多くは、核酸代謝や蛋白合成、細胞シグナルを阻害することにより作用する。ところが、ニボルマブは、がん免疫を活性化するという独特な作用を持つ。
- 欧米ではすでに標準治療薬となっているイピリムマブ(抗CTLA4抗体)とニボルマブを併用することで、腫瘍への客観的反応は53%にみられた[6]。同併用療法は2015年6月にFDAに承認申請された[7]。
適応症
- 悪性黒色腫(承認取得日は日本:2014年7月[8]、米国:2014年12月[9]、欧州:2015年6月[10])
- 非小細胞肺癌(承認取得日は日本:2015年12月、米国:2015年10月)
- 腎細胞癌(承認取得日は米国:2015年11月)
副作用
主な副作用は瘙痒症(31.4%)、遊離トリヨードチロニン減少(22.9%)、血中TSH増加(20.0%)などであり[3]、重大な副作用としては間質性肺疾患(2.9%)、重症筋無力症、筋炎、大腸炎、重度の下痢(2.9%)、肝機能障害(5.7%)、肝炎、甲状腺機能障害(甲状腺機能低下症(14.3%)等)、インフュージョンリアクションが報告されている[11]。
研究
評価
免疫力を高めることにより悪性腫瘍を攻撃する新しいタイプの抗がん剤であり、世界的な革命技術として、アメリカの科学雑誌サイエンスの2013年のブレークスルー・オブ・ザ・イヤー」のトップを飾った[2]。
価格問題
極めて高価な薬であり2014年の薬価で100mgで729,849円もする[13]このため一年間使用すると3500万円にもなる[14]この価格は高価と言われた従来の抗がん剤よりも極めて高価であり日本の医療財政の大きな負担になると國頭英夫は主張している。
脚注
- ^ 脚光を浴びる新たな「がん免疫療法」:小野薬品のオプジーボ 京都大学・本庶研究室が開発をけん引
- ^ a b c “15年間諦めなかった小野薬品 がん消滅、新免疫薬”. 日本経済新聞. (2014年10月24日) 2015年2月10日閲覧。
- ^ a b c “オプジーボ:新機序の悪性黒色腫治療薬”. 日経メディカル. (2014年7月18日) 2015年2月10日閲覧。
- ^ ブリストルマイヤーズ公式サイト - ニュースリリース2014年12月10日
- ^ “免疫を抑制するがん細胞との闘い”. がん治療新世代WEB. 2015年6月12日閲覧。
- ^ Jedd D. Wolchok JD and others. Nivolumab plus Ipilimumab in Advanced Melanoma. N Engl J Med 2013; 369:122-133. doi:10.1056/NEJMoa1302369
- ^ “【米BMS】オプジーボとイェルボイ、免疫療法薬併用では初申請‐未治療進行メラノーマ適応で”. 薬事日報 (2015年6月11日). 2015年6月12日閲覧。
- ^ “ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体「オプジーボ®点滴静注20mg、100mg」根治切除不能な悪性黒色腫に対する製造販売承認取得のお知らせ” (2014年7月4日). 2014年12月25日閲覧。
- ^ “米FDA メラノーマ治療薬ニボルマブを承認” (2014年12月25日). 2014年12月25日閲覧。
- ^ “【米BMS】抗PD-1抗体「オプジーボ」、欧州承認を取得”. 薬事日報 (2015年6月25日). 2015年6月26日閲覧。
- ^ “オプジーボ点滴静注20mg/オプジーボ点滴静注100mg 添付文書” (2015年9月). 2015年9月16日閲覧。
- ^ Ansell SM, et al. PD-1 Blockade with Nivolumab in Relapsed or Refractory Hodgkin's Lymphoma. N Engl J Med. Dec 6, 2014. doi:10.1056/NEJMoa1411087
- ^ オプジーボ点滴静注(ニボルマブ(遺伝子組換え))薬価収載「2014年9月2日」
- ^ コストを語らずにきた代償 “絶望”的状況を迎え,われわれはどう振る舞うべきか 週刊医学界新聞 第3165号 2016年03月07日
外部リンク
- 製品基本情報(小野薬品工業)
- ニュースリリース(ブリストル・マイヤーズ)
- がん治療「革命」の旗手! 夢の薬「オプジーボ」はこんなに効く皮膚がんに続き、肺がんにも保険適用 - 現代ビジネス