「ダクテッドファン」の版間の差分
m bot: シャフト (曖昧さ回避) 関連 link |
m →デメリット: 動翼枚数が奇数であることはダクテッドファンの特徴やデメリットではない |
||
13行目: | 13行目: | ||
=== デメリット === |
=== デメリット === |
||
ナセルによる[[抗力]]が大きいために高速化に適さない。ただし、抗力は速度に比例して大きくなるため、ホバークラフト等の低速な搭載機においては問題とならない。 |
|||
多くの |
多くの実例としてファンはエンジンから離れた場所にあり、[[ギア]]と[[シャフトドライブ|シャフト]]を介した駆動系が必要である。前述のRFB ファントレーナーにおいては[[ターボシャフトエンジン]]の軸出力でファンを駆動させている。そのため、整備性の低下や専用部品によりコストが増加する場合が多い。 |
||
[[ホバークラフト]]等ではプロペラが露出して回転すると危険なので防護壁を兼ねている場合もある。また、[[ヘリコプター]]のテールローターでも[[フェネストロン]]として使用される。 |
[[ホバークラフト]]等ではプロペラが露出して回転すると危険なので防護壁を兼ねている場合もある。また、[[ヘリコプター]]のテールローターでも[[フェネストロン]]として使用される。 |
||
なお、[[共振]]を防ぐためにファンの[[プロペラ#ブレード|ブレード]]数は[[奇数]]であることが多い。 |
|||
== 利用例 == |
== 利用例 == |
||
34行目: | 32行目: | ||
<gallery> |
<gallery> |
||
ファイル:X-22a onground bw.jpg|[[X-22 (航空機)|ベル X-22]] |
|||
ファイル:Caproni Stipa from front.jpg|[[スティパ・カプロニ]] |
|||
ファイル:Brooklands-Aerospace Optica Srs 301.jpg|[[エジレイ オプティカ]] |
|||
ファイル:RFB Fantrainer 400 AN2236582.jpg|[[RFB ファントレーナー]] |
|||
ファイル:Meeting Ferté Alais-0008.JPG|Airbus E-Fanのダクテッドファン |
|||
</gallery> |
</gallery> |
||
49行目: | 47行目: | ||
<gallery> |
<gallery> |
||
ファイル:Turtle DSV-3.jpg|[[深海潜水艇]] |
|||
ファイル:USN hovercraft.jpg|[[LCAC-1級エア・クッション型揚陸艇]] |
|||
ファイル:JMSDF Type 97 dummy torpedo pump-jet propeller left front view at Kanoya Air Base April 30, 2017.jpg|[[97式魚雷]] |
|||
</gallery> |
</gallery> |
||
2020年1月3日 (金) 12:22時点における版
ダクテッドファンとは、円筒形のダクトやナセルの中にプロペラ状のファンを据え、それを回転させることによって推力を生み出す推進器の一種である。もともと航空機用に研究されてきたが、量産航空機での採用は2例しかなく、むしろホバークラフトやラジコン飛行機[1]の推進器としてよく採用される。
仕組み
プロペラ状のファンに円筒状の覆い(ダクトまたはナセル)を被せたような構造が特徴であり、推進力を得る基本的な仕組みは通常のプロペラと大差ない。
メリット
通常のプロペラ推進では進行方向だけでなく、それと直交する平面内にもプロペラ端から気流が発生している(渦流)。これは推力とならないため、エネルギーの無駄になってしまうばかりか、衝撃波となって騒音の原因にもなっている。プロペラの外側を筒で覆ってやればプロペラ先端部から発生する気流を全て進行方向側に整流することができ、エネルギー効率が上がると同時に衝撃波の発生を抑えて騒音を減らすこともできる。
円筒状のナセルをうまく使うことでさらなる効果を得られる。このナセルは空気取入れ口が排出口に比べて広い、“ハ”の字型の断面をしていることが多いが、このようにしてさらに円筒壁面の断面形状(翼形)を工夫するとナセル自体が進行方向側に揚力を生み出すようになる[2]。また、ナセルを偏向させることで気流の向きを変え、ある程度の推力偏向能力を持たせることも可能である。
上記の特徴から固定翼機に採用した場合、操縦特性は『出力が低いターボファンエンジン機』に類似している。このためジェット機のパイロットを養成する初等練習機としてRFB ファントレーナーが開発された。
デメリット
ナセルによる抗力が大きいために高速化に適さない。ただし、抗力は速度に比例して大きくなるため、ホバークラフト等の低速な搭載機においては問題とならない。
多くの実例としてファンはエンジンから離れた場所にあり、ギアとシャフトを介した駆動系が必要である。前述のRFB ファントレーナーにおいてはターボシャフトエンジンの軸出力でファンを駆動させている。そのため、整備性の低下や専用部品によりコストが増加する場合が多い。
ホバークラフト等ではプロペラが露出して回転すると危険なので防護壁を兼ねている場合もある。また、ヘリコプターのテールローターでもフェネストロンとして使用される。
利用例
航空機
航空機用としてはスティパ・カプロニ、VTOL機向けに研究されてきたアメリカのベル X-22のように実験の域を出ることはあまりなく、実用機として販売されたのはエジレイ オプティカとRFB ファントレーナーのみである。ただし普及している高バイパス比ターボファンエンジンのファンは一般にダクテッドファンの一種とも言える。
電動航空機とすることで複雑な駆動系を廃し電線に置き換えることが可能である。エアバスはダクテッドファンを電動機で直接駆動するAirbus E-Fanを開発した。またLilium(リリウム)GmbHが開発中の『Electric Jet Engines』は電動ダクテッドファンであるが、ターボファンエンジンのように空気を圧縮するとしている。
スカイカーのMoller M400 Skycarは4機のダクテッドファンの向きを偏向することでVTOLが可能となっている。
飛行船ではダクテッドファンであれば、プロペラについた氷が遠心力で飛ばされた際に、船体を破る危険が極めて小さくなる。
ラジコン飛行機用の小型推進器としては比較的ポピュラーな存在である。特にモデルとした実機がジェット機である場合に、プロペラが外から見えないようにするため、小型かつ安価なモデルでは模型用ジェットエンジンの代わりに搭載される。電動モーター駆動のファンの後に燃料噴射装置とバーナーを備えた燃焼室を設け、ジェット排気による推力を付与するものもある[3]。
-
Airbus E-Fanのダクテッドファン
船舶
船舶用としてはホバークラフト用の推進器がある。
類似の機構としてスクリュープロペラの周囲を整流板(ノズル)で囲うノズル・プロペラ(ダクトプロペラ)が砕氷船、タグボート、潜水艦、魚雷、深海潜水艇に使用されている。プロペラの先端から生じる渦流が減少するため静粛化に貢献し、プロペラが覆われるため破損の危険性が低下する。一方で、ノズルの分だけ重量が増加し、プロペラのメンテナンスにはダクトを外す必要があるなどのデメリットがある。
1934年に登場したコルト式ノズル・プロペラ(Kort nozzle)は低速高加重での大推力が得られ、推力が30-45%増大するが、キャビテーションの発生が激しくノズル側面に穴が開くなど問題もあるため、砕氷船を除けばあまり採用されない傾向がある[4]。