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2019年12月14日 (土) 02:41時点における版
菌根(きんこん)は、菌類が植物の根に侵入して形成する特有の構造を持った共生体。菌根を作る菌類を菌根菌という。
菌根は外生と内外生に大別でき、それらを下記のように分類している。加えて、菌従属栄養植物を別カテゴリに分類する。それぞれ関与する菌類や植物が異なり、構造も異なる。
- 外生菌根または外菌根類 (Ectomycorrhizas)
- 内外生菌根類 (Endomycorrhizas)
- アーバスキュラー菌根 (Arbuscular mycorrhiza、かつてはVA菌根と呼んだ)
- エリコイド菌根 (Ericoid mycorrhiza、ツツジ科に特異的な菌類)
- ラン菌根 (Orchid mycorrhiza)
- モノトロポイド菌根 (Monotropoid mycorrhiza、菌従属栄養植物に特異的な菌根)
これに、最近独立すると認識されてきたものにバラ科の植物に特異的なハルシメジ型菌根を加えることがある[1]。
菌根は、よく細菌(原核生物、バクテリア)と植物の根との共生体である根粒と混同される。しかし、菌根の共生微生物は真菌(真核生物、ユーカリオタ)であり、菌根の宿主植物は陸上植物の大半といえるほど多く、窒素固定を行わないなど、根粒とは全く異なるものである。一方で、近年のアーバスキュラー菌根の形成に関する研究から、菌根と根粒の形成過程に関与する植物側の遺伝子には共通するものも多いことが明らかになっている。
菌根の主要な機能としては、一般に土壌中の栄養塩類、すなわち肥料分の吸収と宿主への輸送、土壌病害への抵抗性の向上、水分吸収能力の強化の3点が挙げられる。これに対し植物が菌根菌に光合成産物(エネルギー)を与えるという相利共生を営んでいるとされるが、これには例外も多い。アーバスキュラー菌根や外菌根ではこの相利共生が成立するものも多いが、たとえばホンゴウソウ科やヒナノシャクジョウ科などの無葉緑植物もアーバスキュラー菌根を形成する。共生相手が無葉緑植物では菌根菌は光合成産物を得ることはできず、アーバスキュラー菌根菌は絶対共生者で腐生的に養分獲得を行うこともできないが、この場合は同一の菌糸体が他方で光合成を行う緑色植物とも共生関係を結んでおり、そこから光合成産物を得てその一部を無葉緑植物に渡していると考えられている。そのため、エネルギー的にはホンゴウソウ科やヒナノシャクジョウ科の植物は菌に寄生していることになり、菌従属栄養植物と呼ばれている。
アルブトイド菌根、モノトロポイド菌根、ラン科植物の発芽初期でのラン菌根では基本的に植物が菌に寄生する関係となっており、モノトロポイド菌根を形成する無葉緑植物のギンリョウソウや、ラン科のなか無葉緑ランでありラン菌根を形成するオニノヤガラやツチアケビなどもまた菌従属栄養植物である。アルブトイド菌根を形成するイチヤクソウ類も強く菌根菌に依存した生活様式をもっている。かつては他の植物に寄生しない無葉緑植物は土壌中の腐植などから養分を獲得していると想像され腐生植物と呼ばれたが、近年それらは菌根から養分を獲得しておりその起源も必ずしも腐植とは限らないことが明らかになってきたため、菌従属栄養植物という言葉が使われるようになってきた。
脚注
- ^ 小林久泰「日本産ハルシメジ類の菌根の形態及び生態とその利用に関する研究」『筑波大学博士 (農学) 学位論文』、つくばリポジトリ、2005年。