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[[Image:Royal Aircraft Factory FE2b profile.jpg|thumb|[[RAF F.E.2|RAF F.E.2b]]<br />尾部が枠構造になっている。]]
[[File:First flight2.jpg|thumb|推進式を採用した[[ライトフライヤー号]]]]
[[image:rutan.long-EZ.g-wily.arp.jpg|thumb|[[ルータン ロング・イージー|ルータン ロング-EZ]]。組み立て式の推進式航空機。]]
'''推進式'''('''すいしんしき'''、または'''プッシャー式'''、Pusher configuration)とは、[[航空機]]において[[プロペラ]]や[[ダクテッドファン]]が機体後部に設置されている形式<ref>Such as Propeller-Driven Sleighs {{cite web |url=http://www.aqpl43.dsl.pipex.com/MUSEUM/TRANSPORT/propsleigh/propsleigh.htm |title=Archived copy |accessdate=2008-09-10 |deadurl=no |archiveurl=https://web.archive.org/web/20110710222219/http://www.aqpl43.dsl.pipex.com/MUSEUM/TRANSPORT/propsleigh/propsleigh.htm |archivedate=2011-07-10 |df= }} or [[Aerosani]]</ref>。プロペラの回転によって生ずる空気の流れは機体を"押し出す"形になる。これに対して[[牽引式 (航空機)|牽引式]](トラクター式、Tractor configuration)では、プロペラが機体前部に設置されるため機体を"引っ張る"形になる。
[[File:Technoflug Piccolo HB-2130 engine3.jpg|thumb|モーターグライダー後部に搭載されたエンジンと畳まれたプロペラ]]
'''推進式'''('''すいしんしき'''、または'''プッシャー式'''、Pusher configuration)とは、[[航空機]]において[[プロペラ]]が機体後部に設置されている形式のことで、プロペラの回転によって生ずる空気の流れは機体を"押し出す"形になる。これに対して[[牽引式 (航空機)|牽引式]](トラクター式、Tractor configuration)では、プロペラが機体前部に設置されるため機体を"引っ張る"形になる。


== 概要と歴史 ==
== 概要 ==
初期の航空機の多くは推進式であり、この中には世界初の有人動力飛行を達成した[[ライトフライヤー号]]や[[ユージン・バートン・イーリー]]によって初めて艦上からの離陸に成功した[[カーチス モデルD]]も含まれている。第一次世界大戦初期において、[[イギリス]]でプロペラの回転域を通過させて前方に射撃する手段を持たなかったため、推進式の航空機([[ヴィッカース F.B.5]] ガンバス、[[ロイヤル・エアクラフト・エスタブリッシュメント|王立航空機廠]](RAF) [[RAF F.E.2|F.E.2]]、[[エアコー]] [[エアコー DH.2|DH.2]]など)が好まれた([[ドイツ]]は早期にプロペラ同調装置が開発されためこの傾向はない)
世界初の有人動力飛行を達成した[[ライトフライヤー号]]や[[ユージン・バートン・イーリー]]によって初めて艦上からの離陸に成功した[[カーチス モデルD]]など、初期の航空機の多くは推進式であった。
単発・推進式の航空機では、エンジンは機体のナセル後部中心線上に配置される。このような機体では、いわゆる胴体と呼ばれる部分を持っておらず、尾部はプロペラのクリアランスを確保するために枠構造、またはテイルブーム([[AGO C.II]]や[[閃電]]の様に)となっている。


後述するように推進式のメリットとデメリットの多くは表裏一体であり、デメリットの解消がメリットの減少に繋がっている。また機銃の搭載位置というアドバンテージもほどなくして新技術で解決されており、サイズと用途によっては不利となることもある。プロペラ機は航空機の歴史を通して推進式が主流だったのはライトフライヤー号の飛行から数年であり、そもそも航空機においては潜水艦や船舶においてプロペラ(スクリュー)を後部に配置することに比べ効果は少ないという意見もある<ref>{{citation |title=ASK DJ Aerotech Question |work=DJ Aerotech Electrics Soaring and Accessories |date=14 February 2007 |last=Don Stackhouse |url=http://www.djaerotech.com/dj_askjd/dj_questions/pushtractor.html |deadurl=yes |archiveurl=https://web.archive.org/web/20111121030726/http://djaerotech.com/dj_askjd/dj_questions/pushtractor.html |archivedate=21 November 2011 |df= }}</ref>。
プロペラ同調装置が広く採用された結果、推進式のほとんどの利点は失われ、牽引式が支持されるようになった。戦後、推進式は絶滅するまでには至らなかったが、新規に開発される航空機では少数派となってしまった。


単発の[[飛行艇]]、[[モーターグライダー]]、[[エンテ型]]、先尾翼機は推進式が多い<ref name=kore_p184>p184 これだけ航空力学</ref>。特に単発の飛行艇はプロペラを水面から離すため、[[スーパーマリン・ウォーラス]]のようにエンジンごと機体上部に配置する設計の機体が主流であり、小型機ではさらに推進式とした機体が複数存在する([[リパブリック RC-3 シービー]]、[[SIAI-マルケッティ FN.333]]、{{仮リンク|コロニアル スキマー|en|Colonial Skimmer}}、{{仮リンク|グッドイヤー ダック|en|Goodyear Duck}}、[[:en:ICON A5|ICON A5]]など)。
1930年代、[[スーパーマリン・ウォーラス]]([[水上機]])は推進式を採用した。また、ショート S.19 シンガポールのように大型の多気筒エンジンを搭載した場合には、牽引式と推進式を組み合わせた[[プッシュプル方式 (航空機)|プッシュプル方式]](push-pull configuration)が引き続き採用された。極端な例としては、[[コンベア]] [[B-36_(航空機)|B-36]]がある。この機体はこれまで[[アメリカ合衆国|アメリカ]]で運用された爆撃機の中でも最大級の大きさで、P&W R-4360星型エンジンを6基、推進式に配置した。しかしそれでもパワーが不足ぎみであったため、更にB-36Dでは[[ゼネラル・エレクトリック|GE]] J47 ターボジェット4基(2対)を追加し、合計10基のエンジンを推進式配置することになった。また、[[震電]]や[[サーブ 21]]ではジェットエンジンが利用できない段階であったにも関わらず、推進式で開発された。
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第一次世界大戦初期において、[[イギリス]]ではプロペラの回転域を通過させて前方に射撃する手段を持たなかったため、推進式の航空機([[ヴィッカース F.B.5]] ガンバス、[[ロイヤル・エアクラフト・エスタブリッシュメント|王立航空機廠]](RAF) [[RAF F.E.2|F.E.2]]、[[エアコー]] [[エアコー DH.2|DH.2]]など)が好まれたが、プロペラ同調装置が広く採用された結果、推進式のほとんどの利点は失われた([[ドイツ]]では早期にプロペラ同調装置が開発されたためこの傾向はない)。


牽引式が支持されるようになった。戦後、推進式は絶滅するまでには至らなかったが、新規に開発される航空機では少数派となってしまった
[[モーターグライダー]]の中には機体後部にエンジンとプロペラを搭載し、滑空時にプロペラ畳む機種も存在する。


単発・推進式の航空機では、エンジンは機体のナセル後部中心線上に配置される。このような機体では、いわゆる胴体と呼ばれる部分を持っておらず、尾部はプロペラのクリアランスを確保するために枠構造、またはテイルブーム([[AGO C.II]]や[[閃電]]の様に)となっている。

1930年代、[[スーパーマリン・ウォーラス]]([[水上機]])は推進式を採用した。また、ショート S.19 シンガポールのように大型の多気筒エンジンを搭載した場合には、牽引式と推進式を組み合わせた[[プッシュプル方式 (航空機)|プッシュプル方式]](push-pull configuration)が引き続き採用された。極端な例としては、[[コンベア]] [[B-36_(航空機)|B-36]]がある。この機体はこれまで[[アメリカ合衆国|アメリカ]]で運用された爆撃機の中でも最大級の大きさで、P&W R-4360星型エンジンを6基、推進式に配置した。しかしそれでもパワーが不足ぎみであったため、更にB-36Dでは[[ゼネラル・エレクトリック|GE]] J47 ターボジェット4基(2対)を追加し、合計10基のエンジンを推進式配置することになった。また、[[震電]]や[[サーブ 21]]ではジェットエンジンが利用できない段階であったにも関わらず、推進式で開発された。
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== 利点 ==
== 利点 ==
推進式では牽引式に比べ胴体が短くて済み、尾翼は胴体下部から伸びたブームか枠だけの尾部に取り付けることで<ref>p184 これだけ航空力学</ref>機体重量を減らすことが出来る<ref>{{citation |title=Aircraft Design: A Conceptual Approach, |first=Daniel P. |last=Raymer |publisher=AIAA |page=222}}</ref>。特に[[エンテ型]]では尾部自体が不用となり胴体は操縦席とエンジンルームだけとなり、機首に搭載する物がなければ、[[ジャイロフルーク SC 01 スピード・カナード|ジャイロフルーク SC 01]]のように操縦席を機首先端付近まで送りさらに胴体を短縮する設計も可能である。
[[File:Republic RC-3 Seabee AN1799758.jpg|thumb|水陸両用飛行艇の[[リパブリック RC-3 シービー]]]]
胴体後部にプロペラを配置することによって効率が向上することがある。なぜなら、胴体表面を流れるにつれて発達した[[境界層]]に対しエネルギーを供給し、剥離を防ぐことで、形状[[抗力]]が減少するためである。しかし、潜水艦や船舶においてプロペラ(スクリュー)を後部に配置することに比べると、小型航空機での効果は大きくはない。潜水艦や船舶では[[レイノルズ数]]がずっと大きい<!--水の[[動粘性係数]]νは空気のそれより1桁小さく、Re=Ul/νからRe_waterはRe_airより1桁大きい-->ためである。


機首にエンジンが無いため形状を空力的に最適化することができる<ref name=kore_p184 />。単発機でも操縦席前方にプロペラが無いため視界が良好となる<ref name=CT2015_umeda>[http://hflab.k.u-tokyo.ac.jp/papers/2015/CT2015_umeda.pdf 電動スカイカーにおけるラダー操舵による走行安定化制御法に関する基礎検討] - [[宇宙航空研究開発機構]]</ref>ため、[[エジレイ オプティカ]]や[[:en:Seabird Seeker|Seabird Seeker]]など観測機に採用されている。
また、翼の全域で[[プロペラ後流]](プロップ後流、プロップウォッシュ)が存在しないため、翼の効率が向上する。


尾翼に[[スリップストリーム]](プロペラ後流)が当たる設計の場合、直接当たるので[[昇降舵]]と[[方向舵]]の効きが良くなり<ref name=kore_p184 />、エンジンを後部に搭載し尾翼までの距離が短いことは重心が後ろに移動するため、昇降舵の操作量が少なくなり反応が機敏になる<ref name=yokuwakaru_p70>p70 よくわかる航空力学の基本</ref>など、運動性能を重視する戦闘機には向いた特性となる。
{{要出典|範囲=後方に[[推力]]の作用点があるため、牽引式に比べると安定性がやや低い|date=2014年5月}}。しかし逆にこれによって機動性が向上する可能性がある。


胴体が短いため[[:en:Weathervane effect|風見鳥効果]]は少なくなるが、離陸滑走中の横風には敏感ではないというメリットもある<ref>{{citation |url=http://www.flightglobal.com/pdfarchive/view/1992/1992%20-%201611.html |title=Grob tests highlight exhaust problem |journal=Flight International |date=24–30 June 1992 |page=11 |deadurl=no |archiveurl=https://web.archive.org/web/20110520124243/http://www.flightglobal.com/pdfarchive/view/1992/1992%20-%201611.html |archivedate=20 May 2011 |df= }} Flight test : Low sensitivity to crosswind gusts and turbulence is another outstanding feature.</ref><ref>''Flight test Results for Several Light, Canard-Configured airplanes'', Philip W. Brown, NASA Langley Research Center, Pusher Airplane Evaluation (VariEze), Flying Qualities : Directional control during take-off roll is quite easy, even with a strong, gusty crosswind.</ref>。
単発飛行機について考えると、推進式のエンジン配置は、コクピットの前方にエンジンとプロペラ回転面のある牽引式に比べると、操縦者の視界がよい。従って、初期の戦闘用[[偵察機]]に広く使われた。今日でも[[超軽量動力機]]などに残っている。


単発の牽引式では常に主翼や垂直尾翼にプロウォッシュ(螺旋状の気流)が当たり効率が落ちる<ref name=CT2015_umeda />ことに加え、垂直尾翼が気流で押されて機首が左に向く現象が発生し<ref name=Propeller_Effects304_307 />低速時に出力を上げると[[ピッチ]]と[[ヨー]]の制御に強く影響する<ref>[http://www.cfijapan.com/study/html/to199/html-to125/107e-3_slipstream.htm Basic Aerodynamics Term 基本的な航空力学の用語]</ref>ため、離陸時にはバランスを取るための当て舵操作が必要となり<ref name=Propeller_Effects304_307 />、垂直尾翼を[[ローリング|ローリング軸]]から僅かに傾けて取り付ける、エンジンのプロペラ軸を僅かに右に傾けるなどの調整が行われるが、完全には消えない<ref>[https://alphaaviation.aero/ja/kiji/gakko-kiji/42831]</ref>。
単発機のプロペラは、RAF FE2b(本稿右上の画像)に見て取れるように、[[昇降舵]]や[[方向舵]]により近づけて設置することが可能である。こうすると舵面上の流れが速くなり、低速時のピッチ(上下の首振り運動)とヨー(左右の首振り運動)の制御がしやすくなる。特にエンジンが全開である[[離陸]]時には効果を発揮する。これはブッシュフライング(不整地での離着陸)における利点になりうる。特に、障害物で囲まれているような滑走路に離着陸する際には、低速で飛びながら障害物を避けなければならないため、有効である。

[[ルータン ロング・イージー]]や[[XB-42 (航空機)]]のようにプロペラが機体後端にある設計の場合、胴体周りに流れるプロウォッシュの影響はなく、ほぼ全てが推進力となり効率が上がる<ref name=Propeller_Effects304_307>The Design of the Aeroplane, Propeller Effects, p304-307</ref>。

機体に[[スリップストリーム]](プロペラ後流)が当たらない場合は振動が少なくなるため、機内の騒音が軽減される<ref name="AVweb27Apr10">{{cite news |url=http://www.avweb.com/avwebbiz/news/Naples_Targets_Piaggio_Noise_202459-1.html |title=Naples Targets Piaggio Noise |accessdate=13 December 2011 |last=Niles |first=Russ |date=13 December 2011 |work=AVweb}}</ref>。旅客機では大きなメリットであるため、[[ピアッジョ P.180 アヴァンティ]]ははT字尾翼を高くすることで尾翼にも当たらない設計とし、静粛性をセールスポイントの一つとした<ref name="AVweb27Apr10" />。

初期の戦闘機は後部に機銃手を乗せて敵機と並行して銃撃するか、プロペラに当たることを前提に金属製のガードを付けて機首に搭載する([[モラーヌ・ソルニエ L]])など不完全なものであった<ref>p26 戦闘機と空中戦の100年</ref>。推進式であれば機首に機銃を搭載してもプロペラに当たらないため、敵機の後ろについて追撃することができた<ref>p22 戦闘機と空中戦の100年</ref>。これにより本格的な[[格闘戦]]が可能な[[制空戦闘機]]が誕生した<ref>p26 戦闘機と空中戦の100年</ref>。

<gallery>
File:Malle Gyroflug Speed Canard 01.JPG|操縦席とエンジンルームだけで構成されたジャイロフルーク SC 01の胴体
File:Seabird SB7L-360A Seeker 2 Bundaberg Vabre.jpg|細いブームの先端に尾翼を設置した[[:en:Seabird Seeker|Seabird Seeker]]
File:RQ-2B pioneer uav.jpg|2本のブームを水平尾翼で繋いだ[[RQ-2 パイオニア]]
image:rutan.long-EZ.g-wily.arp.jpg|[[ルータン ロング・イージー]]
File:Airco D.H.2 ExCC.jpg|機首に機銃を搭載した[[エアコー DH.2]]
</gallery>


== 欠点 ==
== 欠点 ==
離陸時の機首上げ動作では地面とプロペラのクリアランスが少なくなるため、地面と接触しないような対策が必要となるが、
[[Image:Mercy-tech-N429MA-fod-060318-01cr-8.jpg|thumb|FODの例。小さなボルトがタービンブレードを破壊したもの。]]
[[画像:Piaggio P 180 Avanti 2004 by-RaBoe.jpg|thumb|ピアッジョ P.180 アヴァンティ]]
推進式配置は、墜落事故や不時着の際に乗員・乗客を危険に晒してしまう。仮にエンジンが客室の後方にあった場合、墜落する際にエンジンは慣性に従って前方へ移動して客室内へ侵入し、乗客を死傷させてしまう。逆に客室前方にあれば、エンジンは進路上に飛び出して地面に叩きつけられるか突き刺さるので、乗客にとってはかなり安全であるといえる。


* [[降着装置]]を長くする - 重量と搭載スペースが増加する。
単発・推進式の航空機では、搭乗員が脱出する際にプロペラに接触する可能性がある。推進式を採用することで、理論上は操作性が向上するにも関わらず、この潜在的な危険を理由に[[第一次世界大戦]]後の[[戦闘機]]ではほとんど使われることがなかった<ref>[[牽引式 (航空機)|牽引式]]でも脱出時に尾翼に激突する危険はあり、(代表例として[[第二次世界大戦]]期のエースパイロット、[[ハンス・ヨアヒム・マルセイユ]]も火災を起こした自機([[Bf109]])から脱出した直後に尾翼に激突され死亡している)、戦闘機の高速化に伴い自力での脱出が難しくなったこともあって、[[射出座席]]が開発される要因となった。</ref>。
* ローリング軸からずらす - モーメントが発生し上下のバランスが崩れる。
* プロペラ経を小さくする - 推進力が落ちる。
* 浅い機首上げ角度で離陸する - より長い滑走路が必要となる。


など、それぞれデメリットがある。
さらに危険で、実際の運用上懸念されるのが外的要因による損傷([[FOD_(航空用語)|FOD]]:Foreign Object Damage)である。推進式のプロペラ回転域は一般的に[[降着装置]]の後方に存在するため、石や埃など様々な異物が車輪によって巻き上げられ、ブレードが破損、もしくは磨耗が加速されてしまう。また、機体中心軸上にプロペラを配置している機種(ルータン Long-EZなど。本稿左上の画像を参照)のいくつかは、離着陸時の機首上げ動作を行うとプロペラ回転域が地面にかなり接近するため、[[芝生]]の滑走路ではブレードに植物が接触してしまうことがある。


[[震電]]では降着装置を長めに設計していたが、テストでの離陸滑走中、機首を上げ過ぎてプロペラ端を地面に接触させる事故を起こしたため、側翼(主翼に付けられた垂直尾翼)の下部に車輪を付けている。
飛行中に[[気温]]が[[氷|氷点]]下になると、翼に氷の層が形成される。一度翼についた氷が溶け、剥がれ落ちる際にはプロペラブレードを破損させることがある。また、ブレードに当たった氷の多くは弾き飛ばされて機体に被害を与えることがある。


牽引式ではプロペラ後流が主翼に当たる部分で揚力が増すため、離陸時に滑走距離を短くできる<ref name=yokuwakaru_188>p188 よくわかる航空力学の基本</ref>が、推進式では主翼に後流が当たらないため恩恵はない。また尾翼に後流が当たらない設計では[[昇降舵]]と[[方向舵]]の効きは牽引式より弱くなる<ref name=yokuwakaru_188 />。
牽引式配置の[[空冷エンジン]]では、プロペラから生み出される気流によって効率的にエンジンを冷却することができる。しかし推進式の場合は同じ効果を得られず、いくつかの機種で冷却が不十分になる問題が発生している。[[キャブレター]]の凍結においても同様で、[[シリンダー]]から発生する熱(熱風)によってキャブレターを暖めたり凍結を防止することは(牽引式に比べて)難しい点が多い。


単発機で胴体上部にプロペラを設置する場合はプロペラ径を大きくできない<ref name=kore_p184 />が、プロペラ径を小さくすると推進力が落ちるため、プロペラ軸を上にずらしドライブベルトなどで駆動する([[:en:Technoflug Piccolo|Technoflug Piccolo]])、エンジンごとマスト状の構造物に載せる([[:en:Lake Renegade|Lake Renegade]])など高さを稼いだ機体もあるが、動力の伝達機構にはメンテナンスが必要となり、構造物は重量と空気抵抗が増加する。
プロペラから発生する騒音は、エンジン排気によって増幅されることがある。この効果は、大排気量の[[ターボプロップエンジン]]を使用した際に顕著に現れる。例として、[[ピアッジョ P.180 アヴァンティ]]ではプロペラ回転域を通過する排気によって高いピッチ音が発生し(逆に客室内の騒音は低減している)、着陸時には大きな騒音が聞かれる。


主翼にエンジンを設置する場合には主翼を[[ガル翼]]としてエンジンの位置を高くする設計があり、この形式を採用した[[:en:Piaggio P.166|Piaggio P.166]]は広告でアピールしていた<ref>[https://www.flightglobal.com/pdfarchive/view/1980/1980%20-%202649.html?search=Pusher%20configuration ]</ref>。ただしガル翼で高くなるのは片側1カ所であり双発機にしか使えない。
主翼から発生する[[ダウンウォッシュ]](吹き降ろし)によってプロペラが振動するため、気流と推力は非対称なものとなり結果として操縦性の悪化や速度低下を招くことがある。


動力装置が[[空冷]]式の場合、機体内部に設置すると冷却性能が落ちる<ref name=CT2015_umeda />。空冷エンジンを機体後部に搭載した[[震電]]は胴体側面から空気を取り入れ、エンジン後方に設置したファンで空気を強制的に導く方式を採用したが、試験飛行では全力を出していないにもかかわらずエンジンの油温が上昇していた。液冷式を採用した[[XB-42 (航空機)]]は試験飛行に成功している。
[[フラップ]]を使用する時にも問題が起こりやすい。
*プロペラ後流が翼面に当たっていない場合、フラップを通過する空気の流れは遅くなり、その効果は減少する。
*エンジンを主翼に装備することで、本来利用可能なフラップ領域が狭められてしまい、結果として十分な効果を得られなくなる。


翼面積が同じならば抵抗は牽引式よりも少ないが、プロペラ後流を主翼に当てられないためエンジン出力を上げて揚力を増加する操作ができない<ref name=mu2>[https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsass1953/13/143/13_143_396/_pdf 三菱双発ター坊多用途機 MU-2]</ref>。
尾部の前方にプロペラを設置することで様々な利点もあるものの(上節を参照)、逆に欠点となる場合もある。エンジン出力の加減で尾翼に流れる気流の速度が変化するため、ピッチ&ヨー運動が急激なものになるからである。気性の荒いパイロットは、まずエンジン出力を調整してから飛行経路を維持することが要求されるだろう。

運動性能が良好なことは、僅かな操作にも反応するなど安定性が失われやすく、慣れない者には操縦しにくくなる。

戦闘機のメリットであった機首に機銃を搭載できる利点は、1915年には[[:en:Synchronization gear|プロペラと機銃を同調させる機構]]を搭載した[[フォッカー アインデッカー]]が登場したことで失われた<ref>p30 戦闘機と空中戦の100年</ref>。その後も翼内機銃や[[モーターカノン]]などプロペラと干渉しない機構が登場している。

ジャイロフルーク SC 01やルータン ロング・イージーは機首脚だけが格納できるようになっており、駐機中はプロペラが地面と接触しないように機首脚を格納して機体後部を上に向ける機能を搭載している。

<gallery>
image:A prototype of J7W Shinden.jpg|長い降着装置を採用し、側翼に車輪を付けた[[震電]]
File:Technoflug Piccolo HB-2130 engine1.jpg|プロペラのみを上部にオフセットした[[:en:Technoflug Piccolo|Technoflug Piccolo]]
File:I-FENI-P166-RIAT-3301.JPG|エンジンポッドを[[ガル翼]]の高い部分に設置した[[:en:Piaggio P.166|Piaggio P.166]]
File:Lake LA-4-250 Seawolf N59CA 03.JPG|エンジンをマスト上に設置した[[:en:Lake Renegade|Lake Renegade]]
File:DSC 5985 (8734437003).jpg|機体後部を上に向けたジャイロフルーク SC 01
</gallery>

==採用機種==
小型機から大型機まで開発されたが、プロペラ機の主流とはならなかった。

単発の小型機としては[[セスナ]]、[[パイパー]]、[[ビーチクラフト]]、[[シーラス]]などの主要なメーカーでは採用されていない。|[[ルータン ロング・イージー]]は[[ホームビルト機]]として販売された。

騒音が少ないため旅客機に向いているとされ、[[ピアッジョ P.180 アヴァンティ]]、[[ビーチクラフト スターシップ]]、[[:en:Embraer/FMA CBA 123 Vector|CBA 123]]、[[:en:LearAvia Lear Fan|LearAvia Lear Fan]]など[[ターボプロップエンジン]]を採用した[[ビジネス機]]が登場したが、1970年代には比較的小型ながらターボプロップより高出力で周囲への騒音が低い[[ターボジェットエンジン]]([[ハネウェル TFE731|TFE731]]や[[ゼネラル・エレクトリック J85|J85]]など)が登場し、ビジネス機もジェット化が進んだため、プロペラ機自体が低調となり商業的には成功しなかった。[[MU-2]]では開発当初推進式プロペラが検討されたが、コストや重量面でメリットが少ないと判断され、牽引式が採用された<ref name=mu2 />。

プロペラ配置は、機体後端([[ルータン ロング・イージー]])と機体上部([[リパブリック RC-3 シービー]]、[[SIAI-マルケッティ FN.333]]、{{仮リンク|コロニアル スキマー|en|Colonial Skimmer}}、{{仮リンク|グッドイヤー ダック|en|Goodyear Duck}}、[[:en:ICON A5|ICON A5]])がある。機体上部に設置する場合、FN.333のように垂直尾翼をプロペラの後部からずらした設計もある。

機体が小型軽量で機首にセンサーを搭載できるため、小型の[[無人航空機|無人偵察機]]としては普及している。代表的な機種は[[RQ-1 プレデター]]、[[RQ-2 パイオニア]]、[[RQ-5 (航空機)]]、[[RQ-7 (航空機)]]、[[RQ-11 レイヴン]]、[[RQ-15 (航空機)]]、[[RQ-21 (航空機)]]、[[スキャンイーグル]]などがある。

<gallery>
File:Republic RC-3 Seabee AN1799758.jpg|水陸両用飛行艇の[[リパブリック RC-3 シービー]]
File:Piaggio P-180 Avanti Rennes 2010 (cropped).jpg|[[ピアッジョ P.180 アヴァンティ]]
File:SMFN333Rivera.jpg|[[SIAI-マルケッティ FN.333]]
File:Goodyear ga-2 Duck.jpg|{{仮リンク|グッドイヤー ダック|en|Goodyear Duck}}
File:Icon A5 in the water.jpg|[[:en:ICON A5|ICON A5]]
File:MQ-1 Predator.jpg|[[RQ-1 プレデター|MQ-1 プレデター]]
</gallery>


== 脚注・出典 ==
== 脚注・出典 ==
{{Reflist}}
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== 参考文献 ==
* 戦闘機と空中戦(ドッグファイト)の100年史―WW1から近未来まで ファイター・クロニクル 関 賢太郎 著 潮書房光人社 2016年 ISBN 978-4769816287
* これだけ! 航空工学 飯野 明 著 秀和システム 2016年 ISBN 978-4798046174
* 図解入門よくわかる航空力学の基本 第2版 飯野 明 監修 2009年 ISBN 978-4798024493
<!--
https://www.flightglobal.com/pdfarchive/search.aspx?ArchiveSearchForm%24search=Pusher+configuration&ArchiveSearchForm%24fromYear=1910&ArchiveSearchForm%24toYear=2004&x=36&y=14

https://scholar.google.co.jp/scholar?hl=ja&as_sdt=0%2C5&as_vis=1&q=%E6%8E%A8%E9%80%B2%E5%BC%8F%E3%80%80%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%9A%E3%83%A9&btnG=

Category:Monoplanes with pusher-propellers--->


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
*[[牽引式 (航空機)]]
*[[プッシュプル方式 (航空機)]] - 機体の後部にプロペラを配置する方式。
* [[ダクテッドファン]]
*[[2重反転プロペラ]]


== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
{{Commons category|Pusher configuration aircraft}}
* [http://www.flightglobal.com/pdfarchive/view/1931/1931%20-%200408.html The FIZIR "A.F.2": A New German " Pusher " Two Seater]''Flight'', May 1, 1931
* [http://www.flightglobal.com/pdfarchive/view/1936/1936%20-%201133.html ANOTHER "PUSHER" REVIVAL The Dunstable Dart, a New Singleseater] ''Flight'' April 30, 1936
* [http://www.flightglobal.com/pdfarchive/view/1932/1932%20-%200190.html PRESSURE AND FORCE MEASUREMENTS ON AIRSCREW BODY COMBINATIONS]


{{DEFAULTSORT:すいしんしき}}
{{DEFAULTSORT:すいしんしき}}

2018年9月13日 (木) 11:26時点における版

推進式を採用したライトフライヤー号

推進式すいしんしき、またはプッシャー式、Pusher configuration)とは、航空機においてプロペラダクテッドファンが機体後部に設置されている形式[1]。プロペラの回転によって生ずる空気の流れは機体を"押し出す"形になる。これに対して牽引式(トラクター式、Tractor configuration)では、プロペラが機体前部に設置されるため機体を"引っ張る"形になる。

概要

世界初の有人動力飛行を達成したライトフライヤー号ユージン・バートン・イーリーによって初めて艦上からの離陸に成功したカーチス モデルDなど、初期の航空機の多くは推進式であった。

後述するように推進式のメリットとデメリットの多くは表裏一体であり、デメリットの解消がメリットの減少に繋がっている。また機銃の搭載位置というアドバンテージもほどなくして新技術で解決されており、サイズと用途によっては不利となることもある。プロペラ機は航空機の歴史を通して推進式が主流だったのはライトフライヤー号の飛行から数年であり、そもそも航空機においては潜水艦や船舶においてプロペラ(スクリュー)を後部に配置することに比べ効果は少ないという意見もある[2]

単発の飛行艇モーターグライダーエンテ型、先尾翼機は推進式が多い[3]。特に単発の飛行艇はプロペラを水面から離すため、スーパーマリン・ウォーラスのようにエンジンごと機体上部に配置する設計の機体が主流であり、小型機ではさらに推進式とした機体が複数存在する(リパブリック RC-3 シービーSIAI-マルケッティ FN.333コロニアル スキマー英語版グッドイヤー ダック英語版ICON A5など)。

利点

推進式では牽引式に比べ胴体が短くて済み、尾翼は胴体下部から伸びたブームか枠だけの尾部に取り付けることで[4]機体重量を減らすことが出来る[5]。特にエンテ型では尾部自体が不用となり胴体は操縦席とエンジンルームだけとなり、機首に搭載する物がなければ、ジャイロフルーク SC 01のように操縦席を機首先端付近まで送りさらに胴体を短縮する設計も可能である。

機首にエンジンが無いため形状を空力的に最適化することができる[3]。単発機でも操縦席前方にプロペラが無いため視界が良好となる[6]ため、エジレイ オプティカSeabird Seekerなど観測機に採用されている。

尾翼にスリップストリーム(プロペラ後流)が当たる設計の場合、直接当たるので昇降舵方向舵の効きが良くなり[3]、エンジンを後部に搭載し尾翼までの距離が短いことは重心が後ろに移動するため、昇降舵の操作量が少なくなり反応が機敏になる[7]など、運動性能を重視する戦闘機には向いた特性となる。

胴体が短いため風見鳥効果は少なくなるが、離陸滑走中の横風には敏感ではないというメリットもある[8][9]

単発の牽引式では常に主翼や垂直尾翼にプロウォッシュ(螺旋状の気流)が当たり効率が落ちる[6]ことに加え、垂直尾翼が気流で押されて機首が左に向く現象が発生し[10]低速時に出力を上げるとピッチヨーの制御に強く影響する[11]ため、離陸時にはバランスを取るための当て舵操作が必要となり[10]、垂直尾翼をローリング軸から僅かに傾けて取り付ける、エンジンのプロペラ軸を僅かに右に傾けるなどの調整が行われるが、完全には消えない[12]

ルータン ロング・イージーXB-42 (航空機)のようにプロペラが機体後端にある設計の場合、胴体周りに流れるプロウォッシュの影響はなく、ほぼ全てが推進力となり効率が上がる[10]

機体にスリップストリーム(プロペラ後流)が当たらない場合は振動が少なくなるため、機内の騒音が軽減される[13]。旅客機では大きなメリットであるため、ピアッジョ P.180 アヴァンティははT字尾翼を高くすることで尾翼にも当たらない設計とし、静粛性をセールスポイントの一つとした[13]

初期の戦闘機は後部に機銃手を乗せて敵機と並行して銃撃するか、プロペラに当たることを前提に金属製のガードを付けて機首に搭載する(モラーヌ・ソルニエ L)など不完全なものであった[14]。推進式であれば機首に機銃を搭載してもプロペラに当たらないため、敵機の後ろについて追撃することができた[15]。これにより本格的な格闘戦が可能な制空戦闘機が誕生した[16]

欠点

離陸時の機首上げ動作では地面とプロペラのクリアランスが少なくなるため、地面と接触しないような対策が必要となるが、

  • 降着装置を長くする - 重量と搭載スペースが増加する。
  • ローリング軸からずらす - モーメントが発生し上下のバランスが崩れる。
  • プロペラ経を小さくする - 推進力が落ちる。
  • 浅い機首上げ角度で離陸する - より長い滑走路が必要となる。

など、それぞれデメリットがある。

震電では降着装置を長めに設計していたが、テストでの離陸滑走中、機首を上げ過ぎてプロペラ端を地面に接触させる事故を起こしたため、側翼(主翼に付けられた垂直尾翼)の下部に車輪を付けている。

牽引式ではプロペラ後流が主翼に当たる部分で揚力が増すため、離陸時に滑走距離を短くできる[17]が、推進式では主翼に後流が当たらないため恩恵はない。また尾翼に後流が当たらない設計では昇降舵方向舵の効きは牽引式より弱くなる[17]

単発機で胴体上部にプロペラを設置する場合はプロペラ径を大きくできない[3]が、プロペラ径を小さくすると推進力が落ちるため、プロペラ軸を上にずらしドライブベルトなどで駆動する(Technoflug Piccolo)、エンジンごとマスト状の構造物に載せる(Lake Renegade)など高さを稼いだ機体もあるが、動力の伝達機構にはメンテナンスが必要となり、構造物は重量と空気抵抗が増加する。

主翼にエンジンを設置する場合には主翼をガル翼としてエンジンの位置を高くする設計があり、この形式を採用したPiaggio P.166は広告でアピールしていた[18]。ただしガル翼で高くなるのは片側1カ所であり双発機にしか使えない。

動力装置が空冷式の場合、機体内部に設置すると冷却性能が落ちる[6]。空冷エンジンを機体後部に搭載した震電は胴体側面から空気を取り入れ、エンジン後方に設置したファンで空気を強制的に導く方式を採用したが、試験飛行では全力を出していないにもかかわらずエンジンの油温が上昇していた。液冷式を採用したXB-42 (航空機)は試験飛行に成功している。

翼面積が同じならば抵抗は牽引式よりも少ないが、プロペラ後流を主翼に当てられないためエンジン出力を上げて揚力を増加する操作ができない[19]

運動性能が良好なことは、僅かな操作にも反応するなど安定性が失われやすく、慣れない者には操縦しにくくなる。

戦闘機のメリットであった機首に機銃を搭載できる利点は、1915年にはプロペラと機銃を同調させる機構を搭載したフォッカー アインデッカーが登場したことで失われた[20]。その後も翼内機銃やモーターカノンなどプロペラと干渉しない機構が登場している。

ジャイロフルーク SC 01やルータン ロング・イージーは機首脚だけが格納できるようになっており、駐機中はプロペラが地面と接触しないように機首脚を格納して機体後部を上に向ける機能を搭載している。

採用機種

小型機から大型機まで開発されたが、プロペラ機の主流とはならなかった。

単発の小型機としてはセスナパイパービーチクラフトシーラスなどの主要なメーカーでは採用されていない。|ルータン ロング・イージーホームビルト機として販売された。

騒音が少ないため旅客機に向いているとされ、ピアッジョ P.180 アヴァンティビーチクラフト スターシップCBA 123LearAvia Lear Fanなどターボプロップエンジンを採用したビジネス機が登場したが、1970年代には比較的小型ながらターボプロップより高出力で周囲への騒音が低いターボジェットエンジンTFE731J85など)が登場し、ビジネス機もジェット化が進んだため、プロペラ機自体が低調となり商業的には成功しなかった。MU-2では開発当初推進式プロペラが検討されたが、コストや重量面でメリットが少ないと判断され、牽引式が採用された[19]

プロペラ配置は、機体後端(ルータン ロング・イージー)と機体上部(リパブリック RC-3 シービーSIAI-マルケッティ FN.333コロニアル スキマー英語版グッドイヤー ダック英語版ICON A5)がある。機体上部に設置する場合、FN.333のように垂直尾翼をプロペラの後部からずらした設計もある。

機体が小型軽量で機首にセンサーを搭載できるため、小型の無人偵察機としては普及している。代表的な機種はRQ-1 プレデターRQ-2 パイオニアRQ-5 (航空機)RQ-7 (航空機)RQ-11 レイヴンRQ-15 (航空機)RQ-21 (航空機)スキャンイーグルなどがある。

脚注・出典

  1. ^ Such as Propeller-Driven Sleighs Archived copy”. 2011年7月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年9月10日閲覧。 or Aerosani
  2. ^ Don Stackhouse (14 February 2007), “ASK DJ Aerotech Question”, DJ Aerotech Electrics Soaring and Accessories, オリジナルの21 November 2011時点におけるアーカイブ。, https://web.archive.org/web/20111121030726/http://djaerotech.com/dj_askjd/dj_questions/pushtractor.html 
  3. ^ a b c d p184 これだけ航空力学
  4. ^ p184 これだけ航空力学
  5. ^ Raymer, Daniel P., Aircraft Design: A Conceptual Approach,, AIAA, p. 222 
  6. ^ a b c 電動スカイカーにおけるラダー操舵による走行安定化制御法に関する基礎検討 - 宇宙航空研究開発機構
  7. ^ p70 よくわかる航空力学の基本
  8. ^ “Grob tests highlight exhaust problem”, Flight International: 11, (24–30 June 1992), オリジナルの20 May 2011時点におけるアーカイブ。, https://web.archive.org/web/20110520124243/http://www.flightglobal.com/pdfarchive/view/1992/1992%20-%201611.html  Flight test : Low sensitivity to crosswind gusts and turbulence is another outstanding feature.
  9. ^ Flight test Results for Several Light, Canard-Configured airplanes, Philip W. Brown, NASA Langley Research Center, Pusher Airplane Evaluation (VariEze), Flying Qualities : Directional control during take-off roll is quite easy, even with a strong, gusty crosswind.
  10. ^ a b c The Design of the Aeroplane, Propeller Effects, p304-307
  11. ^ Basic Aerodynamics Term 基本的な航空力学の用語
  12. ^ [1]
  13. ^ a b Niles, Russ (2011年12月13日). “Naples Targets Piaggio Noise”. AVweb. http://www.avweb.com/avwebbiz/news/Naples_Targets_Piaggio_Noise_202459-1.html 2011年12月13日閲覧。 
  14. ^ p26 戦闘機と空中戦の100年
  15. ^ p22 戦闘機と空中戦の100年
  16. ^ p26 戦闘機と空中戦の100年
  17. ^ a b p188 よくわかる航空力学の基本
  18. ^ [2]
  19. ^ a b 三菱双発ター坊多用途機 MU-2
  20. ^ p30 戦闘機と空中戦の100年

参考文献

  • 戦闘機と空中戦(ドッグファイト)の100年史―WW1から近未来まで ファイター・クロニクル 関 賢太郎 著 潮書房光人社 2016年 ISBN 978-4769816287
  • これだけ! 航空工学 飯野 明 著 秀和システム 2016年 ISBN 978-4798046174
  • 図解入門よくわかる航空力学の基本 第2版 飯野 明 監修 2009年 ISBN 978-4798024493

関連項目

外部リンク