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{{天体 位置
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'''OJ 287''' は、ほぼ一定の周期で爆発的な増光を見せる[[とかげ座BL型天体|とかげ座BL型]]の[[活動銀河|活動銀河核]]([[クエーサー|ブレーザー天体]])である。1891年に写真観測で発見され、[[オハイオ・スカイサーベイ]] ([[:en:Ohio Sky Survey|en]]) によって電波源であることが判明した。
'''OJ 287''' は、ほぼ一定の周期で爆発的な増光を見せる[[とかげ座BL型天体|とかげ座BL型]]の[[活動銀河|活動銀河核]]([[クエーサー|ブレーザー天体]])である。1891年に写真観測で発見され、[[オハイオ・スカイサーベイ]] ([[:en:Ohio Sky Survey|en]]) によって電波源であることが判明した。


中心部にはこれ以前に知られていた最大のものより6倍以上大きい、180億[[太陽質量]]という[[超大質量ブラックホール|超巨大なブラックホール]]がある<ref name="newscientist">{{cite news | url=http://space.newscientist.com/article/dn13166-biggest-black-hole-in-the-cosmos-discovered.html | title= Biggest black hole in the cosmos discovered| date=10 January 2008 | publisher= NewScientist.com news service | first= David | last= Shiga}}</ref>。計算上OJ 287の[[シュヴァルツシルト半径|シュヴァルツシルト半径]]は約530億kmにもなる。これは[[冥王星]]の平均公転半径の9倍にも達する。
中心部にはこれ以前に知られていた最大のものより6倍以上大きい、180億[[太陽質量]]という[[超大質量ブラックホール|超巨大なブラックホール]]がある<ref name="newscientist">{{cite news | url=http://space.newscientist.com/article/dn13166-biggest-black-hole-in-the-cosmos-discovered.html | title= Biggest black hole in the cosmos discovered| date=10 January 2008 | publisher= NewScientist.com news service | first= David | last= Shiga}}</ref>。計算上OJ 287 の[[シュヴァルツシルト半径]]は約530億kmにもなる。これは[[冥王星]]の平均公転半径の9倍にも達する。


OJ 287 の{{仮リンク|光学曲線|en|light curve}}は 11 - 12 年の周期で変化し、増光の極大には2つの狭いピークがある。<ref>{{cite journal|title=A new model for the periodic outbursts of the BL Lac object OJ287| last=Shi| first= Weizhao| coauthors= Liu, Xiang; Song, Huagang| journal=Astrophysics and Space Science| volume=310| issue= 1-2| pages= 59-63| year=2007| doi=10.1007/s10509-007-9413-z}}</ref> これは、小さな(ほんの1億太陽質量ほどしかない)[[ブラックホール]]が、大きなブラックホールの周囲を 11 - 12 年で公転していることを示す。増光は、この[[連星]]系の伴星が[[近点・遠点|近点]]の前後で主星の[[降着円盤]]を突き抜ける時に観測されるのである。
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2012年12月22日 (土) 19:34時点における版

OJ 287
星座 かに座
見かけの等級 (mv) 14[1]
分類 とかげ座BL型天体
位置
元期:J2000.0[2]
赤経 (RA, α)  08h 54m 48.87492s[2]
赤緯 (Dec, δ) +20° 06′ 30.6408″[2]
赤方偏移 0.306000[1]
距離 35億光年
(10億7300万 pc)[1]
物理的性質
半径 531億5500万 km[3]
質量 180億 M
平均密度 5.69×10-5 g/cm3
表面重力 344.4 G
表面温度 3.4×10-18 K[4]
色指数 (B-R) -1.17
色指数 (R-J) 2.057
色指数 (J-H) 0.936
色指数 (H-K) 0.799
他のカタログでの名称
EGO 0851+202,
3EG J0853+1941,
RGB J0854+201,
SDSS J085448.87+200630.7,
B2 0852+20,
PG 0851+203
Template (ノート 解説) ■Project

OJ 287 は、ほぼ一定の周期で爆発的な増光を見せるとかげ座BL型活動銀河核ブレーザー天体)である。1891年に写真観測で発見され、オハイオ・スカイサーベイ (en) によって電波源であることが判明した。

中心部にはこれ以前に知られていた最大のものより6倍以上大きい、180億太陽質量という超巨大なブラックホールがある[5]。計算上、OJ 287 のシュヴァルツシルト半径は約530億kmにもなる。これは冥王星の平均公転半径の9倍にも達する。

OJ 287 の光学曲線英語版は 11 - 12 年の周期で変化し、増光の極大には2つの狭いピークがある。[6] これは、小さな(ほんの1億太陽質量ほどしかない)ブラックホールが、大きなブラックホールの周囲を 11 - 12 年で公転していることを示す。増光は、この連星系の伴星が近点の前後で主星の降着円盤を突き抜ける時に観測されるのである。

1988年に OJ 287 がブラックホール連星系である可能性が示唆され、その後1994年、1995年、2005年に増光が観測された。2007年9月13日に起きると予測された次の増光を観測するため、フィンランド・トゥオルラ天文台マウリ・ヴァルトネンを中心に、日本の大阪教育大学も含む世界規模の観測ネットワークが組織され、予測通りの増光を検出することに成功した。この観測結果を元に質量が算出され、アメリカ天文学会第211回総会で発表された[7]。増光のタイミングから伴星の楕円軌道の歳差(1周あたり39°)がわかり、アインシュタインの一般相対性理論を用いて中央のブラックホールの質量を計算することができる(一般相対性理論におけるケプラー問題 (en) を参照)[5]

伴星の軌道の歳差がまだ限られた回数しか観測されていないために測定の精度は低いが、更に観測を続けることによって補正できるだろう。伴星の軌道は重力波を放射しながら縮小しつつあり、およそ1万年後には主星と合体すると予測されている[5]

これらの研究は『アストロフィジカル・ジャーナル』に掲載された[8]

関連項目

出典

  1. ^ a b c NASA/IPAC Extragalactic Database”. Results for OJ +287. 2008年7月10日閲覧。
  2. ^ a b c SIMBAD
  3. ^ シュヴァルツシルト半径
  4. ^ ホーキング放射の温度。
  5. ^ a b c Shiga, David (2008年1月10日). “Biggest black hole in the cosmos discovered”. NewScientist.com news service. http://space.newscientist.com/article/dn13166-biggest-black-hole-in-the-cosmos-discovered.html 
  6. ^ Shi, Weizhao; Liu, Xiang; Song, Huagang (2007). “A new model for the periodic outbursts of the BL Lac object OJ287”. Astrophysics and Space Science 310 (1-2): 59-63. doi:10.1007/s10509-007-9413-z. 
  7. ^ “Huge black hole tips the scales”. BBC. (2008年1月10日). http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/7181877.stm 2008年1月10日閲覧。 
  8. ^ Valtonen, M. J.; Lehto, H. J.; Sillanpää, A.; Nilsson, K.; Mikkola, S.; Hudec, R.; Basta, M.; Teräsranta, H.; Haque, S.; Rampadarath, H. (07 2006). “Predicting the Next Outbursts of OJ 287 in 2006-2010”. The Astrophysical Journal 646 (1): 36–48. doi:10.1086/504884. .
  • Valtonen, M. J.; Nilsson, K.; Sillanpää, A.; Takalo, L. O.; Lehto, H. J.; Keel, W. C.; Haque, S.; Cornwall, D.; Mattingly, A. (05 2006). “The 2005 November Outburst in OJ 287 and the Binary Black Hole Model”. The Astrophysical Journal 643 (1): L9–L12. doi:10.1086/505039. 
  • Valtonen, M.J.; et al. (2008), “A massive binary black-hole system in OJ 287 and a test of general relativity”, Nature 452 
  • (PDF) Nature 論文(2008年4月17日号)の解説 原文: M. Valtonen(大阪教育大学 宇宙科学研究室)

外部リンク