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現代の[[日本]]で一般的に認識されている女性語の起源は、[[明治]]時代の有産階級の女学生から広まった言葉遣い「'''てよだわ言葉'''」である。「よくってよ」「いやだわ」などの言葉の流行は、当時は「異様なる言葉づかひ」([[尾崎紅葉]]<ref>[http://www.ne.jp/asahi/nihongo/okajima/huseigo/teyodawa.html 『流行言葉』]</ref>)など文化人の非難の的になったが、結果的には中流以上の女性で女性語として定着してしまう。 |
現代の[[日本]]で一般的に認識されている女性語の起源は、[[明治]]時代の有産階級の女学生から広まった言葉遣い「'''てよだわ言葉'''」である。「よくってよ」「いやだわ」などの言葉の流行は、当時は「異様なる言葉づかひ」([[尾崎紅葉]]<ref>[http://www.ne.jp/asahi/nihongo/okajima/huseigo/teyodawa.html 『流行言葉』]</ref>)など文化人の非難の的になったが、結果的には中流以上の女性で女性語として定着してしまう。 |
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[[1980年代]]頃からは、男女ともに「だよ」「だね」「じゃん」といった[[ユニセックス]]な言い回しが好まれるようになり、[[1970年代]]以降に生まれた女性の間では |
[[1980年代]]頃からは、男女ともに「だよ」「だね」「じゃん」といった[[ユニセックス]]な言い回しが好まれるようになり、[[1970年代]]以降に生まれた女性の間では一部の女性語は多用されなくなり、中年以上の女性が用いるほかは、[[オネエ言葉]]に誇張された形で残っているものが出始めた。しかし、公式な場で用いられるものや方言、[[若者言葉]]の一部等、1970年代以降に生まれた女性でも用いることが多い女性語も多く存在する。 |
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話し言葉としては衰勢にある女性語だが、話者が女性であることを際立たせるための[[役割語]]としては、現在もよく用いられる。特に男性作家による作品中ではしばしば用いられる。女性作家による作品中では、女性の台詞は現実の言葉遣いを反映してユニセックスな言い回しであることも多いが、あえて女性語が多用されることも少なくない。 |
話し言葉としては衰勢にある女性語だが、話者が女性であることを際立たせるための[[役割語]]としては、現在もよく用いられる。特に男性作家による作品中ではしばしば用いられる。女性作家による作品中では、女性の台詞は現実の言葉遣いを反映してユニセックスな言い回しであることも多いが、あえて女性語が多用されることも少なくない。 |
2012年10月23日 (火) 02:26時点における版
女性語(じょせいご)とは、女性特有の言い回しや言葉。
日本語の女性語
江戸時代には、女性の話し言葉には、地域や階層により、大きな違いがあった。武家や町人の間では、「丁寧な言葉遣いを用いる」「漢語よりも和語を用いる」などが女性の言葉遣いとして望ましいとされ、また遊女言葉・娘言葉・武家の奥方の言葉など、特殊な社会で発生した女性語があった。
現代の日本で一般的に認識されている女性語の起源は、明治時代の有産階級の女学生から広まった言葉遣い「てよだわ言葉」である。「よくってよ」「いやだわ」などの言葉の流行は、当時は「異様なる言葉づかひ」(尾崎紅葉[1])など文化人の非難の的になったが、結果的には中流以上の女性で女性語として定着してしまう。
1980年代頃からは、男女ともに「だよ」「だね」「じゃん」といったユニセックスな言い回しが好まれるようになり、1970年代以降に生まれた女性の間では一部の女性語は多用されなくなり、中年以上の女性が用いるほかは、オネエ言葉に誇張された形で残っているものが出始めた。しかし、公式な場で用いられるものや方言、若者言葉の一部等、1970年代以降に生まれた女性でも用いることが多い女性語も多く存在する。
話し言葉としては衰勢にある女性語だが、話者が女性であることを際立たせるための役割語としては、現在もよく用いられる。特に男性作家による作品中ではしばしば用いられる。女性作家による作品中では、女性の台詞は現実の言葉遣いを反映してユニセックスな言い回しであることも多いが、あえて女性語が多用されることも少なくない。
主な言葉
- 一人称は「わたし」が基本形で、砕けた「あたし」もよく使われる。改まった場では「わたくし」。これらは女性語であると同時に、男性においても改まった場で使われる言葉である。また、西日本では「うち」も用いられる(「うちの会社」等の用法と同じだが、他地域では一人称には用いない。)。
- 二人称は「あなた」が代表的であるが、同輩か目下には「君」「あんた」などの使用もある。また、現在ではほとんど用いられないが「お前さん」などの使用もある。
方言における女性語
- 東京では女性語とされやすい「よ」「ね」「わ」は、地方によっては女性語ではなく、男性も用いる(主に西日本)。
- 関西弁(特に京言葉)では女性語が一般化することが多く、「や」「ねん」「へん」「やんか」などの基本的な表現も女性層で成立したとされる。また「いや」(あらまあ)や「やる」(られる)のような女性語がある。
- いくつかの方言では、「ね」を女性的な語尾として用いる。名古屋弁の「だがね」、金沢弁の「がね」「わいね」など。
女性語一覧
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目次 | ||||||||||
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あ | か | さ | た | な | は | ま | や | ら | わ |
あ行
- あら 【感動詞】 ちょっとした驚きを表す言葉。
- あたし 【一人称】 ややくだけた表現。複数形は「あたしたち」「あたしら」。
- あたくし 【一人称】 ややくだけた表現。
- あたい 【一人称】 「あたし」がくだけた表現。元は下町女性の言葉で、1970年代から1980年代頃には不良少女などが用いていたが、現在はほとんど使われない。落語に登場する人物・与太郎など、男性も使用していたことが判る。
- あなた、あんた 【二人称】 女性が多用するが、男性も使う。複数形は「あなたたち」「あんたたち」。
- いえ、いいえ 【否定詞】 女性語の一般的な返事。改まった場を中心に男性にも使われる。
- いやーん、やーん 【感動詞】 驚きを表現する言葉。何かを拒絶している意味合いは無い。「心が動揺せずに居られない」といった事から来た表現である。
- うそ、うそー、うそっ、うっそー 【感動詞】 驚き・相槌を表す言葉。男性も使う。一旦相手の言葉を疑ってみせる点で、近年男女共に用いる「マジで」と同じ。
- うち 【一人称】 複数称は「うちら」。本来は関西弁だが、近年は他地域の女性と共に男性も使う例も多くなった。
- うふっ、うふふ 【感動詞】 主に女性の笑い声を表す言葉。稀に男性に対しても使われる[2]。
- ええ 【応答詞】 女性語の一般的な返事。男性も改まった場を中心に使用することがある。
- お 【丁寧語】 お菓子、お皿のように、言葉の上に付ける表現。男性も幾分使うが、女性は多用する傾向あり。美化語の一種。男性が用いる場合は「あなたの…」という意味であることが多い。自分が書いたのは手紙、あなたから届いたのはお手紙。
- おほほ 【感動詞】 上流階級の女性の笑い声を表す言葉。
か行
- かしら、かしらん 【副助詞・終助詞】 女性がよく使う疑問の言葉。「か知らぬ」の変形で、男性も使用することがある。
- かしこ、あらあらかしこ 【手紙】 女性が手紙の文章の最後につける。
- かわいー 【感動詞】 たまらなく可愛いものを見たときの感動詞。
- きーっ 【感動詞】 女性が悔しがる時に発する言葉。
- きゃっ、きゃー、きゃあ、きゃーっ 【感動詞】 女性の悲鳴の表現として使う。濁点が付くぎゃーは通常、男性の悲鳴表現に用い、女性が用いる時はよほど生理的・根源的な驚きや嫌悪から発したものとみなされる。
- 敬語、丁寧語のあとに「わ」「のよ」「かしら」「もの」といった終助詞をつける 「そうですわ」「いますわ」「ですのよ」「できますかしら」「ですもの」といった使い方をする。お嬢様言葉や貴婦人や年配女性などが使う用法とされる。
- ごきげんよう 【挨拶】 かつての女学校などで使われていた挨拶。出会った時、別れる時共用である。フィクションの世界では、主にお嬢様言葉、貴婦人の言葉として使われることが多い。
- こと 【終助詞】 丁寧さを表す表現。「結構ですこと」などと用いる。
さ行
- ざます 【終助詞】 上流階級の奥様の言葉(山の手言葉)。岡山弁等にも見られる。
- して 【終助詞】 女性が疑問の意味で用いる言葉。「どうかして?」などと用いる。
- そう 【疑問詞・感動詞】 女性がよく使う疑問・相槌の言葉。
- そいで 【疑問詞・感動詞】 「そいで、どうしたの?」というふうに使う女学生言葉。
た行
- て 【終助詞】 「帰って」「どうなさって?」といった、男性の使用例とは違う用法がある。
- ちょうだい 【終助詞】 「安心してちょうだい」というふうに使う。
- だわ 【終助詞】 「わ」と同じ。
な行
- なさい 命令を表す言葉。一般には名詞に直接付かず、「勉強しなさい」となるところを、「勉強なさい」のように名詞からも直接続く。
- ね 【終助詞】 創作の世界で多用されるが、比較的生きている女性語でもある。男性もある程度は使う。
- の 【疑問詞】 男性も場合によっては使う。
- のよ 【終助詞】 主に中年以上の女性、創作の世界で多用される。
は行
- ひどーい 【感動詞】 相手や第三者の非道に衝撃を受け、咎める表現。
ま行
- まあ 【感動詞】 語尾を上げるアクセントは「呆れた」との感情を示すもので、女性語特有だが、終始高音の場合は通常の驚きや言葉のつなぎを意味し、男女とも用いる。
- ませ、まし 【終助詞】 どちらかというと、お嬢様や貴婦人の言葉である。
- もの 【終助詞】 「…だから」の意味。「ですもの」などと用いる。
ら行
- ランラン、ルンルン 【表現】 主に少女、若い女性がご機嫌な様子。
わ行
- わ 【終助詞】 てよだわ言葉の象徴のような表現。女性語として使用される場合は上昇調であり、下降調のものは男性や若い世代の女性も(特に方言で)使用される。
- わね 【終助詞】 これも創作の世界でよく使われる。
- わよ、わよね 【終助詞】 やや、はすっぱな表現。
- わたし 【一人称】 男性も公的な場では使う。複数形は「わたしたち」。
- わたくし 【一人称】 男性も使うが、女性言葉としては貴婦人やお嬢様の一人称とされる。創作の世界で多用される。
日本語以外の女性語
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- 英米では言語表現の男女差はそれほど顕著ではないが、女性的と言われる表現もある。アメリカ合衆国では、強調のsoの多用、lovelyやwonderfulといった形容詞の多用、Oh dear!やHow....!、What....?などの感嘆詞を多用すると、女性的な印象になると言われる。ただし、地域差が激しい。
- また、付加疑問文はヴィクトリア朝時代、上流貴族の女性が疑問形(疑いのニュアンス)を避けるために使われ始め、後に一般化したとされる。
- インディアンの言語
- アメリカ・インディアンの言語の中には、男性と女性で別言語を用いる例が見られる。
- 映画ダンス・ウィズ・ウルブズにおいては、俳優がダコタ語の特訓を受けたが、指導者が女性のみであり、男性俳優であってもダコタ語の女性語を話す事態となり、ダコタ語を知っている者にとっては笑いを禁じえない内容になったという。
参考文献
- 金水敏『ヴァーチャル日本語 役割語の謎』(岩波書店、ISBN 978-400006827-7、2003年)