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帯域幅の考え方としては、「使用する帯域 / 利用する免許人の数」で算出することが原則となった。[[マルチチャネルアクセス無線]]などについては利用実態に応じた換算係数が定められている。
帯域幅の考え方としては、「使用する帯域 / 利用する免許人の数」で算出することが原則となった。[[マルチチャネルアクセス無線]]などについては利用実態に応じた換算係数が定められている。


減免措置として、次のようなものが定められた。
次のようなものに対し、減免措置が定められた。
* 公共の安全に関する[[防災無線]]・[[放送]]に関するもの。
* 公共の安全に関する[[防災無線]]等(従前から減免あり)・[[放送]]に関するもの。
* [[航空]]・[[船舶]]などの安全のために設置義務のあるもの。
* [[航空]]・[[船舶]]などの安全のために設置義務のあるもの。
* 2年以内に廃止するもの。
* 2年以内に廃止するもの。
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かつては、[[国]]・[[地方公共団体]]・[[独立行政法人]]が開設する公共の安全(安全保障、治安維持、防災対応、気象業務等)に関する無線局は電波利用料の減免措置があったが、平成20年の[[電波法]]改正によりこれらも徴収の対象となった。ただし、金額は政府・独立行政法人全体で4億円程度といわれる名目的なものに抑えられており、各種手数料等への転嫁も行われずにすむ見込みである。
かつては、[[国]]・[[独立行政法人]]が開設する無線局は電波利用料の適用除外であったが、平成20年の[[電波法]]改正によりこれらも徴収の対象となった(同時に、公共の安全(安全保障、治安維持、防災対応、気象業務等)に関しては、[[地方公共団体]](水防、防災業務)と同様、減免措置が定められた)。ただし、金額は政府・独立行政法人全体で4億円程度といわれる名目的なものに抑えられており、各種手数料等への転嫁も行われずにすむ見込みである。


=== 納付方法 ===
=== 納付方法 ===

2011年9月15日 (木) 12:01時点における版

電波利用料(でんぱりようりょう)とは、電波の適正な利用を確保するため、行政機関が無線局の免許人から徴収する料金のことである。競売でライセンスを販売する方式と、金額を政府機関や審議会で決定する方式がある。

日本の電波利用料

日本では1993年平成5年)5月1日から導入された制度であり、当初の目的は

  1. 電波の監視及び規正並びに不法に開設された無線局の探査
  2. 総合無線局管理ファイルの作成及び管理

の受益者負担を目的とした利用料的性質のものであり、そのため電波の占有量ではなく、免許されている局数に対して「1免許あたりいくら」の徴収であった。

2005年9月以前の電波利用料の額

電波利用料の年額を次に示す。無線局免許状の免許の有効期間を超えない範囲で、あらかじめ支払う前納が可能な場合がある。

  1. 移動する無線局(パーソナル無線など) - 400円
  2. 移動しない無線局で、移動する無線局と通信を行うため陸上に開設するもの(8.を除く) - 5,500円
  3. 人工衛星局(8.を除く) - 24,100円
  4. 人工衛星局の中継により無線通信を行う局(8.を除く) - 10,500円
  5. 自動車船舶その他移動するもの、又は携帯して使用する無線局にあって、人工衛星の中継により無線通信を行う局(8.を除く) - 2,200円
  6. 放送をする無線局 - 23,800円
  7. 多重放送をする無線局 - 900円
  8. 実験局およびアマチュア無線局 - 300円
  9. その他の無線局 - 16,300円
  10. 上記区分にかかわらず、包括免許における特定無線局(携帯電話MCA移動局など) - 540円

テレビジョン放送の無線局は、2003年(平成15年)度から2010年(平成22年)度においては、追加額が指定されている。

大規模局 中規模局 小規模局
出力 VHF: 50kW以上
UHF:10kW以上
VHF: 0.1W以上50kW未満
UHF:0.2W以上10kW未満
VHF: 0.1W未満
UHF:0.2W未満
料額 310,000,000円 83,000円 620円

2005年10月以降の電波利用料の算定方式

2005年10月より、移動体通信無線アクセス向けの周波数帯域の迅速な新規割り当てのため、逼迫周波数・逼迫地域での利用について帯域幅・人口密度空中線電力などを加味した算定方法となった。その他の区分においても、利用価値に応じた料金となった。

帯域幅の考え方としては、「使用する帯域 / 利用する免許人の数」で算出することが原則となった。マルチチャネルアクセス無線などについては利用実態に応じた換算係数が定められている。

次のようなものに対し、減免措置が定められた。

  • 公共の安全に関する防災無線等(従前から減免あり)・放送に関するもの。
  • 航空船舶などの安全のために設置義務のあるもの。
  • 2年以内に廃止するもの。
  • 他の無線局からの一定の混信を許容するもの。
無線局の周波数帯域
周波数 (GHz) 利用の方針 帯域当たりの負担係数
- 3 移動体通信への割り当てを増やす 3
3 - 6 無線アクセスへの割り当てを増やす 1
6 - 用途開発を行う
無線局の設置場所
地域区分 地域名 帯域当たりの負担係数
第1 東京都
第2 神奈川県大阪府
第3 過疎地・離島を除くその他の道府県
第4 過疎地・離島

かつては、独立行政法人が開設する無線局は電波利用料の適用除外であったが、平成20年の電波法改正によりこれらも徴収の対象となった(同時に、公共の安全(安全保障、治安維持、防災対応、気象業務等)に関しては、地方公共団体(水防、防災業務)と同様、減免措置が定められた)。ただし、金額は政府・独立行政法人全体で4億円程度といわれる名目的なものに抑えられており、各種手数料等への転嫁も行われずにすむ見込みである。

納付方法

無線局の免許の日になると、総務省から無線局免許状の免許人に対して納入告知書が送付されるので、それを日本銀行金融機関に持参して納付するか、口座振替やインターネットバンキングなどの手続きによって行う。印紙での納付はできない。

指定された納付期限までに納付できない場合は、督促状が送付され、延滞金が加算される(利用料1000円未満の場合は加算はない)。それでも納付されない場合は、国税徴収法滞納処分の例によって、 強制的に差押等の処分がなされることがある。

電波利用料に対する批判

支出の透明性に対する批判

電波利用料の料額は、電波法で規定されており、国会の議決が必要となっている。電波利用料は税金ではないため、財務省による再分配の対象とはならず、全額が総務省によって使われる。

年間650億円(平成19年実績)と総合通信局の予算に対しても少ない額ではないため、支出には透明性が要求されるが、当初の目的である総合無線局監理システムや電波監視システムの整備・運用、周波数逼迫対策のための技術試験事務、携帯電話の過疎地での基地局維持・設置などに充てられている額は電波利用全体の半分程度であり、「その他」の支出項目において多額の人件費が支出されていることなど、不透明な支出が多いことが問題とされることがある。

2008年5月に電波利用料が総務省総合通信局にて職員のレクリェーションのために電波使用料を流用していたことが国会での質問により明らかになり。「道路特定財源と同様に『特定財源』のブラックボックスの中で無駄遣いされている可能性がある」という批判をうけた。

占有周波数に対する不公平感に対する批判

2005年10月までは無線局数に対する徴収であり、携帯電話1台が無線局1つとされるため、国内においてもっとも無線局数の多い携帯電話事業者から、負担のわりに受益が少なく不公平であるという批判があった[誰によって?]。 また、携帯電話の普及により大幅に収入が増えたため当初の「電波の規正」などだけでなく、アナアナ変換の費用支出特定周波数変更対策業務が追加されたことがさらに携帯電話事業者の不公平感を大きくすることになった。

「特定周波数変更対策業務」は地上デジタル放送への移行より生じるアナログTV局の周波数指定変更に伴う費用で、総務省の計画ミスにより費用が大幅に膨らんだことなどから電波利用料を当てることになったといわれている。

テレビ局に対する電波利用料はわずか7億円。アナアナ変換対策にかかる暫定追加電波料30億円。合計38億円であり 、携帯電話会社が多く負担することで間接的に国民の負担する額と比較してテレビ局が負担する額が微々たるものであり、一部で国民の負担が大きすぎるのではないか、各自業者間に不公平感があるのではないか、放送局に対して社会的責任を認識させるには不十分な額であり放送局の暴走を許しているのではないか、といった指摘がなされている[1]

国の放送事業歳出費は2百数十億円に及ぶのに、テレビ局が38億円(H19年度)しか払わず、約7倍の格差があるのは不公平との声が、総務省内などからも上がり、現在、テレビ局の電波利用料値上げなどについて議論されている。例えば民主党の2009年版のマニフェスト[2]には日本版FCCの創設と共に電波オークションの導入があげられている。

電波オークション

電波オークションとは、周波数帯域の利用免許を競売電気通信事業者に売却して事業を行わせるものである。有限な公共財である電波を有効利用するための手法である。オークションの方式には様々なものがあるが、一回のオークションは一日から数か月の期間で公開入札形式で実施される。

アメリカ合衆国移動体通信事業で1996年に世界ではじめて採用された。その後、ヨーロッパ各国の第三世代携帯電話で採用された。予想以上の高額で落札が行われたため、経営破綻する事業者が続出し事業開始の遅れの原因となったと批判されることもある。また、周波数帯域の需要と供給の実態に即しない「周波数バブル」であるとの批判もある。しかし現在ではオークション理論を用いて制度は改善されており大きな税収源となっている。

一方で、OECD加盟国の約2/3は既に電波オークションを導入しており、実施されているオークションの大部分は大きな問題や批判がなく運用できているのも実態である。

日本の電波行政と異なりアメリカなどでは携帯電話のエリアが有線電話のエリアとの兼ね合いで非常に細かく設定されており、日本のように方式や事業計画の優劣を十分に時間をとって審議することができないということがオークションにいたった理由である。それ以前の有線電話事業などでは、割り当ては「早いものがち」であった。

そのアメリカでは、連邦通信委員会 FCCが2010年3月にNational Broadband Plan[[1]](国家ブロードバンド計画)を発表。ブロードバンド用に新たに500MHzの周波数を割り当てることを決定すると共に、その割り当て方式としてオークションを採用している。また、同計画には、インセンティブ・オークションの導入も明記されており、より少ない周波数で従来の放送サービスを提供する技術の利用に自発的に同意する放送事業者に、オークションの収益を分配できる仕組みも明記されている。

この計画の実施は全て電波オークションからの資金で賄えるとも明言されており、電波オークションの国家財源への影響力の大きさを伺うことができる。

各国の制度比較

各国の電波利用料およびオークションによる収入、そのうちテレビ局に掛かる金額を以下に示す(総務省調べ)。

  • 日本
    • 電波利用料収入653.2億円(平成19年度)。そのうち80%を携帯電話会社が負担。
    • 周波数オークションは制度化されていない。
  • アメリカ
    • 電波利用料収入約240億円、オークション収入年平均4,600億円。
    • 放送局の免許も、原則オークションの対象。
  • イギリス
    • 電波利用料収入約213億円、オークション収入年平均2,250億円
    • 放送局に対する電波利用料は減額。代わりに放送事業免許料約538億円を徴収。放送局に対する特別措置を勘案して、総額は840億円となる。
  • フランス
    • 電波利用料収入約94億円、第三世代携帯電話免許料年平均約113億円+売上げの1%
    • 放送局に対する電波利用料は免除。代わりに映画産業等の支援のための目的税等約380億円を徴収。
  • 韓国
    • 電波利用料収入約200億円、出捐金による収入約250億円
    • 放送局に対する電波利用料は免除。代わりに広告収入の一部約350億円を徴収し、放送発展基金に充当

関連項目

外部リンク