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[[Image:DN-ST-86-11105-Juliett class submarine-11 Aug 1986.JPEG|thumb|300px| ジュリエット型 1986年8月撮影]]
[[File:DN-ST-86-11105-Juliett class submarine-11 Aug 1986.JPEG|thumb|300px| ジュリエット型 1986年8月撮影]]


'''ジュリエット型潜水艦'''(-がたせんすいかん ''Juliett'' class submarine)は、[[ロシア海軍|ソヴィエト/ロシア海軍]]の[[通常動力型潜水艦]]である。ソ連初の本格的な[[巡航ミサイル潜水艦]]として開発された。
'''ジュリエット型潜水艦'''(ジュリエットがたせんすいかん ''Juliett'' class submarine)は、[[ロシア海軍|ソヴィエト/ロシア海軍]]の[[通常動力型潜水艦]]である。ソ連初の本格的な[[巡航ミサイル潜水艦]]として開発された。


'''ジュリエット型'''は[[NATOコードネーム]]であり、ソ連海軍の計画名は'''651型潜水艦'''(''{{lang|ru|Подводные лодки проекта 651}}'')である。
'''ジュリエット型'''の名称は[[NATOコードネームの一覧 (潜水艦)|NATOコードネーム]]であり、ソ連海軍の計画名は'''651型潜水艦'''(''{{lang|ru|Подводные лодки проекта 651}}'')である。


== 概要 ==
== 概要 ==
[[1950年代]]、ソ連海軍の戦力は[[アメリカ海軍]]に比べ劣勢であり、特にアメリカが誇る[[航空母艦|空母]]打撃部隊([[機動部隊]])や水上戦闘艦隊は[[ソビエト連邦|ソ連]]にとって重大な脅威であった。これに対抗すべく、ソ連海軍はミサイル[[飽和攻撃]]による米艦隊殲滅作戦を企てた。そのため、大量の[[巡航ミサイル]]の運用・発射が可能な[[巡洋艦]]・[[駆逐艦]]・潜水艦などが必要となった。
[[1950年代]]、ソ連海軍の戦力は[[アメリカ海軍]]に比べ劣勢であり、特にアメリカが誇る[[航空母艦|空母]]打撃部隊([[機動部隊]])や水上戦闘艦隊は[[ソビエト連邦|ソ連]]にとって重大な脅威であった。これに対抗すべく、ソ連海軍は対艦ミサイル[[飽和攻撃]]による米艦隊殲滅作戦を企てた。そのため、大量の[[巡航ミサイル]]の運用・発射が可能な[[巡洋艦]]・[[駆逐艦]]・潜水艦などが必要となった。


このため、ソ連海軍は巡航ミサイル潜水艦を構想し、まず実験台として、[[ズールー型潜水艦]]の一部に[[スカッド|P-11]]ミサイルを搭載し、その可能性を検証した。次いで、本格的な巡航ミサイル潜水艦として開発されたのが、651型潜水艦であった。651型は、[[核弾頭]]を装備した艦対艦巡航ミサイル4発を搭載し、対米艦隊ミサイル飽和攻撃部隊の一角を担った。搭載兵装として、当初は慣性誘導型[[対艦ミサイル]]の[[P-5 (ミサイル)|P-5]]、[[P-6 (ミサイル)|P-6]]を搭載していたが、後に衛星誘導型の[[P-500 (ミサイル)|P-500]]に変更されている。
このため、ソ連海軍は巡航ミサイル潜水艦を構想し、まず実験台として、[[ズールー型潜水艦]]の一部に[[スカッド|P-11]]ミサイルを搭載し、その可能性を検証した。次いで、本格的な巡航ミサイル潜水艦として開発されたのが、651型潜水艦であった。651型は、[[核弾頭]]を装備した艦対艦巡航ミサイル4発を搭載し、対米艦隊ミサイル飽和攻撃部隊の一角を担った。搭載兵装として、当初は慣性誘導型[[対艦ミサイル]]の[[P-5 (ミサイル)|P-5]]、[[P-6 (ミサイル)|P-6]]を搭載していたが、後に衛星誘導型の[[P-500 (ミサイル)|P-500]]に変更されている。


本型は技術的特徴としては、船体構造に磁場の発生を低下させるために[[オーステナイト]](γ鋼)製の船体構造材を採用し、静粛性向上のため50mmの硬質ゴム製吸音タイルを船体に貼り付けた。居住性も在来艦より改善され、寝台は乗組員1人につき1台の割合で配置され、空気浄化装置、空調設備も完備していた。
本型は技術的特徴としては、船体構造に[[磁場]]の発生を低下させるために[[オーステナイト]](γ鋼)製の船体構造材を採用し、静粛性向上のため50mmの硬質ゴム製吸音タイルを船体に貼り付けた。居住性も在来艦より改善され、寝台は乗組員1人につき1台の割合で配置され、空気浄化装置、空調設備も完備していた。


1960年から建造が開始され、当初は36隻の建造が予定されたが、より高性能な巡航ミサイル[[原子力潜水艦]]である[[エコー型原子力潜水艦|エコー型]]の完成により、16隻で建造は中止された。
1960年から建造が開始され、当初は36隻の建造が予定されたが、より高性能な巡航ミサイル[[原子力潜水艦]]である[[エコー型原子力潜水艦|エコー型]]の完成により、16隻で建造は中止された。
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== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
*[[ソ連・ロシア海軍艦艇一覧]]
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2010年11月9日 (火) 13:15時点における版

ジュリエット型 1986年8月撮影

ジュリエット型潜水艦(ジュリエットがたせんすいかん Juliett class submarine)は、ソヴィエト/ロシア海軍通常動力型潜水艦である。ソ連初の本格的な巡航ミサイル潜水艦として開発された。

ジュリエット型の名称はNATOコードネームであり、ソ連海軍の計画名は651型潜水艦Подводные лодки проекта 651)である。

概要

1950年代、ソ連海軍の戦力はアメリカ海軍に比べ劣勢であり、特にアメリカが誇る空母打撃部隊(機動部隊)や水上戦闘艦隊はソ連にとって重大な脅威であった。これに対抗すべく、ソ連海軍は対艦ミサイル飽和攻撃による米艦隊殲滅作戦を企てた。そのため、大量の巡航ミサイルの運用・発射が可能な巡洋艦駆逐艦・潜水艦などが必要となった。

このため、ソ連海軍は巡航ミサイル潜水艦を構想し、まず実験台として、ズールー型潜水艦の一部にP-11ミサイルを搭載し、その可能性を検証した。次いで、本格的な巡航ミサイル潜水艦として開発されたのが、651型潜水艦であった。651型は、核弾頭を装備した艦対艦巡航ミサイル4発を搭載し、対米艦隊ミサイル飽和攻撃部隊の一角を担った。搭載兵装として、当初は慣性誘導型対艦ミサイルP-5P-6を搭載していたが、後に衛星誘導型のP-500に変更されている。

本型は技術的特徴としては、船体構造に磁場の発生を低下させるためにオーステナイト(γ鋼)製の船体構造材を採用し、静粛性向上のため50mmの硬質ゴム製吸音タイルを船体に貼り付けた。居住性も在来艦より改善され、寝台は乗組員1人につき1台の割合で配置され、空気浄化装置、空調設備も完備していた。

1960年から建造が開始され、当初は36隻の建造が予定されたが、より高性能な巡航ミサイル原子力潜水艦であるエコー型の完成により、16隻で建造は中止された。

諸元

種類 巡航ミサイル潜水艦
建造計画 第651号計画
NATOコード Juliet
基準排水量 水上3174t、水中4137t
寸法 全長85.9m、全幅9.7m、喫水6.9m
速力 水上16ノット、水中14ノット
可潜深度 240m
乗組員 82名
主機 ディーゼル発動機(4000馬力)、電動機(3000馬力)、2軸推進
兵装 533mm発射管(艦首6門、艦尾4門)、巡航ミサイル4発

関連項目