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== 毒性と薬用 ==
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[[File:Eykman1883-Scopoliae Rhizoma.jpg|left|thumb|120px|ロートコン]]
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全草に毒を含むが、[[根茎]]と[[根]]が特に毒性が強い。主な成分は[[トロパンアルカロイド]]で、摂取し中毒を起こすと、[[嘔吐]]や[[散瞳]]、異常興奮を起こし、最悪の場合には[[死]]にいたる。これは、[[ハシリドコロ属]]の[[ベラドンナ]]などと同様の[[症状]]である。ハシリドコロのトロパンアルカロイドの成分は、[[ヒヨスチアミン]]やそのラセミ体である[[アトロピン]](''l''-ヒヨスチアミン)、他に[[ノルヒヨスチアミン]]、[[スコポラミン]]等が含まれる。これらの物質は[[副交感神経]]を麻痺させるため、先述のような症状がおこるのである。
全草に毒を含むが、[[根茎]]と[[根]]が特に毒性が強い。主な成分は[[トロパンアルカロイド]]で、摂取し中毒を起こすと、[[嘔吐]]や[[散瞳]]、異常興奮を起こし、最悪の場合には[[死]]にいたる。これは、[[ハシリドコロ属]]の[[ベラドンナ]]などと同様の[[症状]]である。ハシリドコロのトロパンアルカロイドの成分は、''l''-[[ヒヨスチアミン]]やそのラセミ体である[[アトロピン]](''dl''-ヒヨスチアミン)、他に[[ノルヒヨスチアミン]]、''l''-[[スコポラミン]]等が含まれる。これらの物質は[[副交感神経]]を麻痺させるため、先述のような症状がおこるのである。


ただし、用法・用量をまもって使用すれば有用であり、成分の強い根茎と根は'''ロートコン'''(莨菪根、''Scopoliae Rhizoma'')という薬品として[[日本薬局方]]にも収められている。ロートコンに含まれるアトロピンは[[硫酸アトロピン]]の原料になり、ロートコンの成分を[[水]]または[[エタノール]]に浸出させたものは'''ロートエキス'''と呼ばれる。たまに[[ロート製薬]]の名前の[[由来]]になっていると言われる場合がある(同社の[[胃腸薬]]「パンシロン」シリーズにもロートエキスを含む製品がある)が、[[目薬]]の処方を手がけた当時の[[眼科医]]界の権威・[[井上豊太郎]]の[[ドイツ]]留学時代の恩師である[[ミュンヘン大学]]教授[[アウグスト・フォン・ロートムント]]の名前にちなむものであり、ロートコンがロート製薬の由来というのは間違いである。
ただし、用法・用量をまもって使用すれば有用であり、成分の強い根茎と根は'''ロートコン'''(莨菪根、''Scopoliae Rhizoma'')という薬品として[[日本薬局方]]にも収められている。ロートコンに含まれるアトロピンは[[硫酸アトロピン]]の原料になり、ロートコンの成分を[[水]]または[[エタノール]]に浸出させたものは'''ロートエキス'''と呼ばれる。たまに[[ロート製薬]]の名前の[[由来]]になっていると言われる場合がある(同社の[[胃腸薬]]「パンシロン」シリーズにもロートエキスを含む製品がある)が、[[目薬]]の処方を手がけた当時の[[眼科医]]界の権威・[[井上豊太郎]]の[[ドイツ]]留学時代の恩師である[[ミュンヘン大学]]教授[[アウグスト・フォン・ロートムント]]の名前にちなむものであり、ロートコンがロート製薬の由来というのは間違いである。

2009年11月3日 (火) 06:45時点における版

ハシリドコロ
 
ハシリドコロ
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
: ナス目 Solanales
: ナス科 Solanaceae
: ハシリドコロ属 Scopolia
: ハシリドコロ S. japonica
学名
Scopolia japonica
和名
ハシリドコロ

ハシリドコロ(走野老、莨菪、Scopolia japonica)は、ナス科ハシリドコロ属草本。別名、キチガイイモキチガイナスビオニヒルグサヤ

特徴

日本本州四国九州に分布する多年草。山間の日陰などに群生する。早春にに包まれた新芽を出し、全長は40~50cm程度に成長する。花期は4月から5月。釣鐘状の暗紫紅色のを咲かせる。夏先には休眠状態に入るため枯れる。からまでは見ることができない典型的な春植物である。

アルカロイド類の毒成分が含まれる有毒植物である。和名は、食べると錯乱して走り回ること、また、根茎トコロ(野老)に似ていることから付けられた。

毒性と薬用

ロートコン

全草に毒を含むが、根茎が特に毒性が強い。主な成分はトロパンアルカロイドで、摂取し中毒を起こすと、嘔吐散瞳、異常興奮を起こし、最悪の場合にはにいたる。これは、ハシリドコロ属ベラドンナなどと同様の症状である。ハシリドコロのトロパンアルカロイドの成分は、l-ヒヨスチアミンやそのラセミ体であるアトロピンdl-ヒヨスチアミン)、他にノルヒヨスチアミンl-スコポラミン等が含まれる。これらの物質は副交感神経を麻痺させるため、先述のような症状がおこるのである。

ただし、用法・用量をまもって使用すれば有用であり、成分の強い根茎と根はロートコン(莨菪根、Scopoliae Rhizoma)という薬品として日本薬局方にも収められている。ロートコンに含まれるアトロピンは硫酸アトロピンの原料になり、ロートコンの成分をまたはエタノールに浸出させたものはロートエキスと呼ばれる。たまにロート製薬の名前の由来になっていると言われる場合がある(同社の胃腸薬「パンシロン」シリーズにもロートエキスを含む製品がある)が、目薬の処方を手がけた当時の眼科医界の権威・井上豊太郎ドイツ留学時代の恩師であるミュンヘン大学教授アウグスト・フォン・ロートムントの名前にちなむものであり、ロートコンがロート製薬の由来というのは間違いである。

間違えやすい山菜

早春に土から顔を出す新芽はフキノトウと間違いやすく、葉は青々として食べられそうに見えるため誤食されやすい。


ギャラリー

関連項目

参考書籍

  • 原色牧野和漢薬草大図鑑 旧版監修:三橋博 編修:和田浩志・寺林進・近藤健児 出版:北隆館 ISBN 483260810X
  • 新装版山渓フィールドブックス⑭山菜 著者:木原浩 出版:山と渓谷社 ISBN 4635060713

参考リンク