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事件が自分の手に余ると[[ベーカー街221B]]を訪れ、シャーロック・ホームズに[[捜査]]の手助けを依頼する少々頼りない人物として知られているが、作中では[[ロンドン]]の[[新聞一覧|新聞各紙]]にその捜査ぶりを称えられる名物警部でもある。
事件が自分の手に余ると[[ベーカー街221B]]を訪れ、シャーロック・ホームズに[[捜査]]の手助けを依頼する少々頼りない人物として知られているが、作中では[[ロンドン]]の[[新聞一覧|新聞各紙]]にその捜査ぶりを称えられる名物警部でもある。


[[ファーストネーム]]は不明。しかし、[[ボール箱]]でホームズに宛てた[[手紙]]にはG・レストレード(G. Lestrade)と記名されており、[[頭文字]]だけは判明している。
[[ファーストネーム]]は不明。しかし、[[ボール箱]]でホームズに宛てた[[手紙]]にはG・レストレード(G. Lestrade)と記名されており、[[頭文字]]だけは判明している。


== 外見と評価 ==
== 外見と評価 ==
レストレード[[警部]]の外見に対する[[ジョン・H・ワトスン|ワトスン]]の印象はあまり良いものではなかったらしく、第[[緋色の研究]]に登場した際には「少し血色の悪い、ネズミのような顔をした黒目の男」<ref>原文 Little sallow, rat-faced, dark-eyed fellow</ref>などと評され、[[ボスコム渓谷の惨劇]]でも「ずるそうな格好で人目を忍ぶように待っている、痩せたイタチのような感じの男」<ref>原文 A lean, ferret-like man, furtive and sly-looking, was waiting</ref>と書かれたりしている。
レストレード[[警部]]の外見に対する[[ジョン・H・ワトスン|ワトスン]]の印象はあまり良いものではなかったらしく、第1[[緋色の研究]]に登場した際には「少し血色の悪い、ネズミのような顔をした黒目の男」<ref>原文 Little sallow, rat-faced, dark-eyed fellow</ref>などと評され、[[ボスコム渓谷の惨劇]]でも「ずるそうな格好で人目を忍ぶように待っている、痩せたイタチのような感じの男」<ref>原文 A lean, ferret-like man, furtive and sly-looking, was waiting</ref>と書かれたりしている。
とは言え、年代が下るにつれ親しさゆえかワトスンの評価もだいぶ持ち直し、[[ブルースパーティントン設計書|ブルース・パーティントン設計書]]では[[マイクロフト・ホームズ|マイクロフト]]と共に[[ベーカー街221B|ベーカー街]]を訪ねた彼の外見について「痩せた、厳めしい顔つきの男」<ref>原文 Thin and austere</ref>と表現されていた。
とは言え、年代が下るにつれ親しさゆえかワトスンの評価もだいぶ持ち直し、[[ブルースパーティントン設計書|ブルース・パーティントン設計書]]では[[マイクロフト・ホームズ|マイクロフト]]と共に[[ベーカー街221B|ベーカー街]]を訪ねた彼の外見について「痩せた、厳めしい顔つきの男」<ref>原文 Thin and austere</ref>と表現されていた。


[[捜査]]官としては常に[[シャーロック・ホームズ|ホームズ]]の後塵を拝し、その能力についても折につけ酷評されているような印象があるものの、ホームズの[[スコットランド・ヤード]]をはじめとする[[警察]]組織全体に対する評価と比べると、[[ボール箱]]などで語られる彼のレストレード警部に対する評価は意外に高く、時には[[六つのナポレオン]]のように警察の組織力を活用してホームズを驚かせるほどの短時間で被害者の身元を割り出すなど、彼の有能さを示す描写も作中に見受けられる。[[空き家の冒険]]では久々に再会したホームズに「一年に未検挙の殺人事件が3件もある」と指摘されたが、ある怪事件を解決させた事に関しては「見事だった」と評価されている。
[[捜査]]官としては常に[[シャーロック・ホームズ|ホームズ]]の後塵を拝し、その能力についても折につけ酷評されているような印象があるものの、ホームズの[[スコットランド・ヤード]]をはじめとする[[警察]]組織全体に対する評価と比べると、[[ボール箱]]などで語られる彼のレストレード警部に対する評価は意外に高く、時には[[六つのナポレオン]]のように警察の組織力を活用してホームズを驚かせるほどの短時間で被害者の身元を割り出すなど、彼の有能さを示す描写も作中に見受けられる。[[空き家の冒険]]では久々に再会したホームズに「一年に未検挙の殺人事件が3件もある」と指摘されたが、ある怪事件を解決させた事に関しては「見事だった」と評価されている。


しかし、物語への登場期間の長さに反して、作中でのレストレードの[[階級 (公務員)|階級]]は初登場時から一貫して警部のままであり、新聞でも常々有能と称される世間の評判と裏腹に一階級も昇進した様子はない。そのため、「[[シャーロック・ホームズシリーズ|ホームズ作品]]に登場するレストレードなる人物は、実は複数存在するのではないか」と言う意見もある。
しかし、物語への登場期間の長さに反して、作中でのレストレードの[[階級 (公務員)|階級]]は初登場時から一貫して警部のままであり、新聞でも常々有能と称される世間の評判と裏腹に一階級も昇進した様子はない。そのため、「[[シャーロック・ホームズシリーズ|ホームズ作品]]に登場するレストレードなる人物は、実は複数存在するのではないか」と言う意見もある。
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[[緋色の研究]]に登場して以来、レストレード警部は[[シャーロック・ホームズシリーズ|ホームズ作品]]に[[警察]]関係者の中では最も頻繁に姿を見せる人物だけあって、[[シャーロック・ホームズ|ホームズ]]、[[ジョン・H・ワトスン|ワトスン]]両名との関わりも深い。
[[緋色の研究]]に登場して以来、レストレード警部は[[シャーロック・ホームズシリーズ|ホームズ作品]]に[[警察]]関係者の中では最も頻繁に姿を見せる人物だけあって、[[シャーロック・ホームズ|ホームズ]]、[[ジョン・H・ワトスン|ワトスン]]両名との関わりも深い。


当初はホームズを[[アマチュア]]と侮り、その捜査の方法をやや[[軽蔑]]を含んだ目で見ていたが、共に難事件に携わりながらそれらを解決する手際を見るうちに次第に彼の能力に敬意を表するようになり、[[六つのナポレオン]]の頃には時折個人的に[[ベーカー街221B|ベーカー街]]を訪れて談笑し、不可解な事件を鮮やかに解決したホームズの手腕をワトスン共々憚りなく絶賛するほどにまで打ち解けた。また、[[ブルースパーティントン設計書]]では犯罪まがいの行動を取ったホームズに「あまりそんな事はしないで欲しい」と釘を刺している。基本的に彼が担当する事件にホームズが関わる事が多いが、[[バスカヴィル家の犬]][[空き家の冒険]]ではホームズの依頼に応じて現地に駆けつけている。
当初はホームズを[[アマチュア]]と侮り、その捜査の方法をやや[[軽蔑]]を含んだ目で見ていたが、共に難事件に携わりながらそれらを解決する手際を見るうちに次第に彼の能力に敬意を表するようになり、[[六つのナポレオン]]の頃には時折個人的に[[ベーカー街221B|ベーカー街]]を訪れて談笑し、不可解な事件を鮮やかに解決したホームズの手腕をワトスン共々憚りなく絶賛するほどにまで打ち解けた。また、[[ブルースパーティントン設計書]]では犯罪まがいの行動を取ったホームズに「あまりそんな事はしないで欲しい」と釘を刺している。基本的に彼が担当する事件にホームズが関わる事が多いが、[[バスカヴィル家の犬]][[空き家の冒険]]ではホームズの依頼に応じて現地に駆けつけている。


== 登場作品 ==
== 登場作品 ==

2008年12月5日 (金) 05:16時点における版

レストレード警部Inspector Lestrade)は、イギリス小説家アーサー・コナン・ドイル(Arthur Conan Doyle 1859 - 1930)によって19世紀から20世紀にかけて発表された私立探偵シャーロック・ホームズを主人公とする一連の推理小説、『シャーロック・ホームズシリーズ』に登場する、スコットランド・ヤード所属の架空の警察官

事件が自分の手に余るとベーカー街221Bを訪れ、シャーロック・ホームズに捜査の手助けを依頼する少々頼りない人物として知られているが、作中ではロンドン新聞各紙にその捜査ぶりを称えられる名物警部でもある。

ファーストネームは不明。しかし、ボール箱でホームズに宛てた手紙にはG・レストレード(G. Lestrade)と記名されており、頭文字だけは判明している。

外見と評価

レストレード警部の外見に対するワトスンの印象はあまり良いものではなかったらしく、第1作『緋色の研究』に登場した際には「少し血色の悪い、ネズミのような顔をした黒目の男」[1]などと評され、『ボスコム渓谷の惨劇』でも「ずるそうな格好で人目を忍ぶように待っている、痩せたイタチのような感じの男」[2]と書かれたりしている。 とは言え、年代が下るにつれ親しさゆえかワトスンの評価もだいぶ持ち直し、『ブルース・パーティントン設計書』ではマイクロフトと共にベーカー街を訪ねた彼の外見について「痩せた、厳めしい顔つきの男」[3]と表現されていた。

捜査官としては常にホームズの後塵を拝し、その能力についても折につけ酷評されているような印象があるものの、ホームズのスコットランド・ヤードをはじめとする警察組織全体に対する評価と比べると、ボール箱などで語られる彼のレストレード警部に対する評価は意外に高く、時には『六つのナポレオン』のように警察の組織力を活用してホームズを驚かせるほどの短時間で被害者の身元を割り出すなど、彼の有能さを示す描写も作中に見受けられる。『空き家の冒険』では久々に再会したホームズに「一年に未検挙の殺人事件が3件もある」と指摘されたが、ある怪事件を解決させた事に関しては「見事だった」と評価されている。

しかし、物語への登場期間の長さに反して、作中でのレストレードの階級は初登場時から一貫して警部のままであり、新聞でも常々有能と称される世間の評判と裏腹に一階級も昇進した様子はない。そのため、「ホームズ作品に登場するレストレードなる人物は、実は複数存在するのではないか」と言う意見もある。

ホームズとの交流

緋色の研究に登場して以来、レストレード警部はホームズ作品警察関係者の中では最も頻繁に姿を見せる人物だけあって、ホームズワトスン両名との関わりも深い。

当初はホームズをアマチュアと侮り、その捜査の方法をやや軽蔑を含んだ目で見ていたが、共に難事件に携わりながらそれらを解決する手際を見るうちに次第に彼の能力に敬意を表するようになり、『六つのナポレオン』の頃には時折個人的にベーカー街を訪れて談笑し、不可解な事件を鮮やかに解決したホームズの手腕をワトスン共々憚りなく絶賛するほどにまで打ち解けた。また、『ブルースパーティントン設計書』では犯罪まがいの行動を取ったホームズに「あまりそんな事はしないで欲しい」と釘を刺している。基本的に彼が担当する事件にホームズが関わる事が多いが、『バスカヴィル家の犬』や『空き家の冒険』ではホームズの依頼に応じて現地に駆けつけている。

登場作品

ドイル自身の筆による作品

パスティーシュ作品

M.J.トロー (en:M. J. Trow)が、レストレードを主人公としたパスティーシュ小説シリーズを発表している。

日本語訳は以下の通り。

脚注

  1. ^ 原文 Little sallow, rat-faced, dark-eyed fellow
  2. ^ 原文 A lean, ferret-like man, furtive and sly-looking, was waiting
  3. ^ 原文 Thin and austere