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ヘルシンキ地下鉄

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ヘルシンキ地下鉄
Helsingin metro
Helsingfors metro
ロゴマーク
タピオラ駅
タピオラ駅
基本情報
 フィンランド
所在地 ヘルシンキ
種類 地下鉄
開業 1982年8月2日
(42年前)
 (1982-08-02)
運営者 ヘルシンキ市交通局
詳細情報
総延長距離 43 km
路線数 2路線
駅数 30駅
輸送人員 92,600,000 (2019)
1日利用者数 304,000 (2017)
軌間 1,522 mm[1]
電化方式 直流750V 第三軌条方式
最高速度 80 km/h
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ヘルシンキ地下鉄(ヘルシンキちかてつ、フィンランド語: Helsingin metroスウェーデン語: Helsingfors metro)は、フィンランドの首都ヘルシンキ地下鉄である。フィンランドで唯一の地下鉄であり、世界で最北の地下鉄でもある。27年にわたる計画・建設ののち、1982年8月2日に開業した。ヘルシンキ市交通局(HKL) によって運営されている。

一端が分岐した全長43kmの2路線で、30の駅がある。ヘルシンキ西部のエスポーからヘルシンキ中心部を通り東部の住宅地(ヴオサーリ地区とメルンキュラ地区)までを結んでおり、あるいは都心内部の移動手段としても利用されている。交通局の統計によると、年間の利用者数は5600万人(2005年)に上る。運賃はヘルシンキ市内・エスポー市内間の移動で2.9ユーロヘルシンキエスポー間の移動で5ユーロ(いずれも券売機で購入した場合)。

ヘルシンキ地下鉄路線図
ランシメトロ区間の路線図
ランシメトロ開業後の路線図

歴史

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開業までの経緯

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ヘルシンキにおいて地下鉄建設を求める動きは1955年9月に始まり、1963年3月には最初の草案が市議会に提出された。しかしその概要は全長86.5km、108駅と非常に大規模であったため、長期間の審議の末に否決され、カンッピ駅からヘルシンキ東部のプオティラ駅までの1路線だけを建設することに決定した。

1969年5月7日、地下鉄建設の第1期工事の正式な認可が下り、そのうち車両基地のあるロイフペルトからヘルットニエミ駅までの試験区間は1971年に完成した。第1期の全区間は1977年の開業を予定していたが、車両の問題などによって予定より5年遅れの1982年に開業した。1982年6月1日には正式な開業を前にラッシュ時のみ開業し、8月2日にはヘルシンキ中央駅~イタケスクス駅の区間が正式に開業した。なお同区間の駅は当初は6駅だけであった。

路線の延伸

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ヘルシンキ地下鉄の路線は、20年に渡って少しずつ延伸開業して今に至る。

また、数十年にわたる審議によって西への延伸路線ランシメトロlänsimetro:西の地下鉄という意。エスポー市へ至る路線)の建設が進められ、ルオホラハティ - マティンキュラ間が2016年8月15日に開業する予定であった[2]。しかし2016年6月にシステムの安全面での試験が遅れていることから開業を延期[3]、同年7月1日の時点では、2017年1月までには暫定開業できる見込みとされていた[4]。その後も延期が続き、2017年9月に同区間の実車を用いた試運転が開始された[5]。同年11月10日、開業は2017年11月18日になることが発表され[6]、11月18日に開通した。

設備

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海を渡る地下鉄

路線の概要

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ヘルシンキ地下鉄の路線は、エスポー市から海を越えてラウッタ島を通り、ヘルシンキの中心部を通り東部の郊外に延びる。途中のイタケスクス駅から先は二手に分岐するY字形をしており、全部で25の駅がある。エスポーからヘルシンキ中心部までの区間は地上区間であるが、東部郊外は地上や高架区間が大半である。しかし地上駅でも、積雪対策などのためホームをコンクリートなどで覆っている構造のものが多い。これまで路線番号はつけられてなかったが、延伸区間が開業したことでM1(ヴオサーリ駅~キベンラティ間)、M2(メッルンマキ駅~タピオラ駅間)の2路線が運行されることとなった。なお、両線が重複しているイタケスクス−タピオラ間では同じ線路を走行しており、明確な区別はされていない。

列車はすべて各駅停車で、タピオラ~イタケスクス間の場合は通常4~5分おきに運行している。メッルンマキ発着の列車とブオサーリ発着の列車はほぼ同じ本数で、交互に運行されている。駅名は、フィンランドの公用語であるフィンランド語スウェーデン語の2言語で命名されており、車内などではその両方で放送される(フィンランドでは、地名などが2言語別々に存在する)が、英語名が付けられているラウタティエントリ駅(ヘルシンキ中央駅ː Central Railway Station)、ヘルシンキ大学駅(University of Helsinki)、アールト大学駅(Aalto University)は英語での案内放送がある。イタケスクス駅到着時の車内放送 ただし、夏季は観光客向けに全区間で英語も併用される。

ヘルシンキ地下鉄は、ヘルシンキ市内の公共交通機関の中核を担っており、多くのバスが地下鉄駅とその周辺地域との間で運行されている。バスから地下鉄へと乗り継がなければ都心まで行けないこともあり、たとえばラーヤサロからのバスは、日中は全てヘルットニエミ駅が終点となっている。

駅の一覧

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マティンキュラ駅
ニーッテュクンプ駅
運動公園駅
ケイラニエミ駅
ラウッタサーリ駅
ルオホラハティ駅
ハカニエミ駅
KivenlahtiRuoholahti (Länsimetro)
キヴェンラハティ - ルオホラハティ (ランシメトロ)
フィンランド語 スウェーデン語 備考
Kivenlahti
キヴェンラハティ英語版
Stensvik
ステンスヴィク
2022年12月3日開業 エスポー
Espoonlahti
エスポーンラハティ英語版
Esboviken
エスボヴィケン
2022年12月3日開業
Soukka
ソウッカ英語版
Sökö
ソカー
2022年12月3日開業
Kaitaa
カイター英語版
Kaitans
カイタンス
2022年12月3日開業
Finnoo
フィンノー英語版
Finno
フィノ
2022年12月3日開業
Matinkylä
マティンキュラ英語版
Mattby
マトゥビー
2017年11月18日開業
Niittykumpu
ニーッテュクンプ英語版
Ängskulla
エングスクッラ
2017年11月18日開業
Urheilupuisto
運動公園英語版
Idrottsparken
運動公園
2017年11月18日開業
Tapiola
タピオラ英語版
Hagalund
ハーガルンド
2017年11月18日開業
乗り換え:トランクルート 550
Aalto-yliopisto
アールト大学
Aalto-universitetet
アールト大学
2017年11月18日開業
乗り換え:トランクルート 550、ヨケリ・ライトレール
Keilaniemi
ケイラニエミ英語版
Kägeludden
ケーゲルッデン
2017年11月18日開業
乗り換え:ヨケリ・ライトレール
Koivusaari
コイヴサーリ英語版
Björkholmen
ビョークホルメン
2017年11月18日開業 ヘルシンキ
Lauttasaari
ラウッタサーリ英語版
Drumsö
ドゥルムソ
2017年11月18日開業
Ruoholahti
ルオホラハティ英語版
Gräsviken
グレースヴィーケン
1993年8月16日開業
乗り換え:路面電車
RuoholahtiItäkeskus
ルオホラハティ~イタケスクス
フィンランド語 スウェーデン語 備考
Ruoholahti
ルオホラハティ
Gräsviken
グレースヴィーケン
1993年8月16日開業
乗り換え:路面電車
ヘルシンキ
Kamppi
カンッピ
Kampen
カンペン
1983年3月1日開業
乗り換え:路面電車
Rautatientori
ラウタティエントリ
Järnvägstorget
ヤーンヴェーグストーリイェット
英語名:Central Railway Stationヘルシンキ中央駅
1982年開業。乗り換え:路面電車VRグループ
Helsingin yliopisto
ヘルシンキ大学
Helsingfors universitet
ヘルシンキ大学
1995年3月1日開業
乗り換え:路面電車
Hakaniemi
ハカニエミ英語版
Hagnäs
ハーグネス
1982年6月1日開業
乗り換え:路面電車
Sörnäinen
ソルナイネン英語版
Sörnäs
セールネス
1984年9月1日開業
乗り換え:路面電車
Kalasatama
カラサタマ
Fiskhamnen
フィスクハムネン
2007年1月1日開業
Kulosaari
クロサーリ英語版
Brändö
ブレンドー
1982年6月1日開業
Herttoniemi
ヘルットニエミ英語版
Hertonäs
ヘルトネス
1982年6月1日開業
Siilitie
シーリティエ英語版
Igelkottsvägen
イーゲルコッツヴェーゲン
1982年6月1日開業
Itäkeskus
イタケスクス英語版
Östra centrum
エストラ・セントゥルム
1982年6月1日開業
乗り換え:ヨケリ・ライトレール
ItäkeskusMellunmäki
イタケスクス~メッルンマキ
フィンランド語 スウェーデン語 備考
Itäkeskus
イタケスクス
Östra centrum
エストラ・セントゥルム
1982年6月1日開業
乗り換え:トランクルート 550
ヘルシンキ
Myllypuro
ミュッリュプロ英語版
Kvarnbäcken
クヴァーンベッケン
1986年10月21日開業
Kontula
コントゥラ英語版
Gårdsbacka
ゴーズバッキャ
1986年10月21日開業
乗り換え:トランクルート 560
Mellunmäki
メッルンマキ英語版
Mellungsbacka
メルングスバッキャ
1989年9月1日開業
乗り換え:トランクルート 560
ItäkeskusVuosaari
イタケスクス~ヴオサーリ
フィンランド語 スウェーデン語 備考
Itäkeskus
イタケスクス
Östra centrum
エストラ・セントゥルム
1982年6月1日開業 ヘルシンキ
Puotila
プオティラ英語版
Botby gård
ボットビー・ゴード
1998年8月31日開業
Rastila
ラスティラ英語版
Rastböle
ラストボーレ
1998年8月31日開業
乗り換え:トランクルート 560
Vuosaari
ヴオサーリ英語版
Nordsjö
ノードフォー / ノードショー
1998年8月31日開業
乗り換え:トランクルート 560

車両基地

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シーリティエ駅とイタケスクス駅の間のロイフペルトには車両基地があり、整備などもここで行っている。路線の東側と西側の両方から出入りできるようになっており、車両基地に戻る際は降車用のイタケスクス駅3番ホームが使用される。運転前に車両を長時間暖めなくても済むように、通常の車庫のほかに暖房付きのエリアもある。

営業路線と反対の方(北側)には、時速100キロメートルでの運転が可能な試験用の線路があり、その先は長さ5キロメートルの非電化区間を経て VR 本線のオウルンキュラ駅に接続していた(軌間は双方とも1524mmを採用)。連絡線の大部分はヘルットニエミ港湾鉄道に沿うように作られており、ヴィーッキ地区では路面上を走る併用軌道となっていた。途中にヴァンター川と国道4号線を渡る鉄道橋があるが、これはヨケリ・バス路線も使用している。

2012年以降、VRとはヴオサーリ新港を経由して接続するように変更され、上記の連絡線はヴオサーリ駅の引き上げ線から伸びる新連絡線に代替される形で廃止となった。

車両

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ヘルシンキ地下鉄は、VRグループの近郊電車と同じく軌間1524mmの広軌を採用しているが、直流750Vの第三軌条方式である。車両はM100系M200系M300系の3種類がある。M100系・M200系は2両編成、M300系は4両編成を基本とし、通常は4両編成か6両編成を組んで運用されるが、混結は不可能。最高速度はトンネル内で70km/h、地上部分で80km/h、ポイント通過時が35km/hまたは60km/hとなる。

計画中の駅と路線

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イタメトロ計画路線図

ヘルシンキ地下鉄の最近の変化としては、ソルナイネン駅とクロサーリ駅の間に開業したカラサタマ駅がある。この新駅は、再開発が予定されている古い港湾地域であるカラサタマ区のために建設された。またシーリティエ駅とイタケスクス駅の間にもロイフペルト駅が、計画中の住宅地のために計画されている[7]。なお、ロイフペルトは車両基地のある場所でもある。

ヘルシンキ市は西に隣接するエスポー市や、北東のヴァンター市シポー市への延伸を計画しているが、近隣の各自治体はあまり積極的ではなく、特にエスポー市南部への延伸路線ランシメトロlänsimetro:西の地下鉄という意)は多くの議論を呼び、エスポー市の内部やヘルシンキ市との間に政治的な衝突を生むこととなった。しかし、2005年に行なわれた世論調査によると、エスポー市民の75%がランシメトロの建設を支持し、2006年9月25日にはエスポー市議会が建設を認可した。前述のとおり、ルオホラハティ - マティンキュラ間は2017年11月18日に開業した。さらに、その先のマティンキュラ~キヴェンラーティ間の延伸工事が進められており5つの駅が設置されて2022年12月3日に完成した。

ランシメトロの他には、現在線のメッルンマキから東のシポー市方面への延伸計画であるイタメトロ(itämetro:東の地下鉄の意)や、サンタハミナから現在線のカンッピ駅、VRのパシラ駅を経由してヘルシンキ・ヴァンター国際空港、および市内北東部のヴィーッキへ至る2号線(toinen metrolinja)の建設案がある。これらの延伸案は既に市議会で議論されているが、仮に実現するとしても2020年以降になる見通しである。なお最初の路線建設の時点で、カンッピ駅には2号線のためのプラットホームの空間が掘削され用意されている。

統計

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ヘルシンキ市交通局(HKL)の2003年の統計を以下に示す。

  • 年間利用者数 5540万人
  • 総輸送距離 4億410万km
  • 売上 1690万ユーロ
  • 利益 380万ユーロ

ヘルシンキ市内の交通機関の中で、ヘルシンキ地下鉄は1人・1kmあたりの運賃が最も安く、0.032ユーロ/km・人 である。次いで安いのが路面電車ヘルシンキ・トラム)で、0.211ユーロ/km・人となる。

2002年の年間の使用電力量は、2001年の32.2GWhより増加し39.8GWhであったが、これは1人・1kmあたり0.10kWhとなり、路面電車(0.19kWh/km・人)よりも省エネルギーである[8]

ギャラリー

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脚注

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  1. ^ Rata ja metrovarikko - Kaupunkiliikenne Oy”. Kaupunkiliikenne Oy - Kaupunkiliikenne Oy. ヘルシンキ市交通局. 2022年9月10日閲覧。
  2. ^ Seitsemän vuoden urakka valmistuu elokuussa - metrolla Espooseen 15.8.” (in Finnish). Länsimetro.fi (2016年3月7日). 2016年4月7日閲覧。
  3. ^ Opening of the West Metro delayed – HSL redesigs bus routes”. Länsimetro.fi (2016年6月14日). 2016年8月15日閲覧。
  4. ^ West Metro ready for trial operation in January 2017”. Länsimetro.fi (2016年7月1日). 2016年8月15日閲覧。
  5. ^ HKL is performing West Metro test runs on Thursday 14 Sep – Passengers must get off at Ruoholahti”. HSL. 2017年10月27日閲覧。
  6. ^ Metro service to Matinkylä to begin on Saturday 18 November 2017”. HSL. 2017年11月11日閲覧。
  7. ^ Yleiskaava 2002”. Helsingin kaupunki. 2007年12月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年2月23日閲覧。
  8. ^ Helsinki City Transport - a key player in a sustainable city. 2008年4月10日時点のオリジナルよりアーカイヴ。

外部リンク

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