ヒメコウゾ

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ヒメコウゾ
若枝の上部が雌花序、下部が雄花序
分類APG
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
: バラ目 Rosales
: クワ科 Moraceae
: コウゾ属 Broussonetia
: ヒメコウゾ B. kazinoki
学名
Broussonetia kazinoki Siebold
和名
ヒメコウゾ(姫楮)

ヒメコウゾ(姫楮[1]学名: Broussonetia kazinoki)はクワ科コウゾ属落葉低木。学名に関しては、長らくBroussonetia kazinokiとされてきたが、近年の研究で命名者であるシーボルトが持ち帰ったBroussonetia kazinokiとされた原資料を調査した結果、それらの資料にヒメコウゾはないことからBroussonetia kazinoki =ヒメコウゾ説は否定され、ヒメコウゾの学名としてはBroussonetia monoicaとすることが提唱された[2]

和紙の原料としても使われているコウゾ(楮、学名: B. kazinoki × B. papyrifera)は、本種とカジノキ(学名:B. papyrifera)の雑種で、葉もより大型である[1]

特徴[編集]

樹高は2 - 5メートル (m) ほどになる。はややつる性となるが、茎は直立する。は枝に互生[1]、長さ0.5 - 1センチメートル (cm) ほどの葉柄を持ち軟毛が生える。葉の形はゆがんだ卵形から広卵形で、ときにクワの葉のように2 - 3片に深裂する[1]。葉身の長さ4 - 10 cm、幅2 - 5 cm、基部はゆがんだ円形または鋭形で、先は尾状に長く尖る。葉の縁は鈍鋸歯があり、表面には短毛があり、裏面の葉脈には粗い毛がある。葉柄は短い[1]。秋になると、比較的鮮やかな黄色に紅葉する[1]

花期は4 - 5月、雌雄同株で、新枝の下部の葉腋に雄花序、上部の葉腋に雌花序をつける。雄花序は径1 cmほどの球状、雌花序は径4ミリメートル (mm) ほどの球状で、雌花序には赤紫色の長さ5 mmほどの糸状の花柱を多数つける。果期は7 - 8月で、径1.5 cmほどの赤熟した球状の集合果をつける。

分布と生育環境[編集]

日本では、本州岩手県以南、四国九州奄美大島まで)に、東アジアでは朝鮮半島中国中南部に分布する。低地や低山地の林縁に自生する[1]。コウゾ類は和紙の原料として栽培されたので、人里周辺に多い[1]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f g h 林将之 2008, p. 23.
  2. ^ 大場秀章,秋山忍 (6 2014). “日本のカジノキ属植物(クワ科)と学名”. 植物研究雑誌 89 (3): 123-128. 

参考文献[編集]

  • 林将之『紅葉ハンドブック』文一総合出版、2008年9月27日。ISBN 978-4-8299-0187-8 
  • 佐竹義輔他編『日本の野生植物 木本Ⅰ』(1989)平凡社

関連項目[編集]