ドラジェ

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シュガープラムイタリアの手作りの装飾シュガーペースト
ドラジェ

ドラジェ: : dragée: confetti:コンフェッティ)は、菓子の一種で糖衣菓子のこと。掛け物菓子(かけものがし)とも。ヨーロッパでは出産、洗礼、婚礼などの慶事で配られる菓子として知られている[1]薬学の分野では、糖衣掛けした錠剤(糖衣錠)もドラジェと呼ばれる[2]

語源[編集]

菓子の考案者といわれる料理人ドラジェ(Dragatus)の名前[1]ギリシア語ラテン語で「美味しい物」を意味する「tragemata」[3]などが語源と考えられている。なお、キャンディピーナッツなどに荒く糖衣掛けをしたものはソフトドラジェ、金平糖ゼリービーンズなどのように固い板状の糖衣をかぶせたものはハードドラジェと呼ばれる。

発祥・歴史[編集]

紀元前177年古代ローマの貴族ファビウス家の料理人ジュリアス・ドラジェがアーモンドを蜂蜜に落とした時にこの菓子の原型ができたと言われる[1]。ファビウス家では婚礼や跡継ぎの誕生などの祝い事の場で、蜂蜜でコーティングされたアーモンドが配られていた[3]1220年ごろにフランスのヴェルダンで考案されたものが現代のドラジェの原型になったと考えられており[1][3]、ヴェルダンでもドラジェの製造が盛んに行われている[3]。中世のフランスでは薬剤師が蜂蜜や砂糖シロップでコーティングしたアーモンド、ナッツ、コリアンダーアニスを携帯し、口臭剤や消化剤として使用していた[3]

習慣[編集]

アーモンドは実をたくさんつけることから多産や繁栄を意味し、幸福の象徴とされてきた。そこから、アーモンドに白やピンク色などに色付けした砂糖ペーストをコーティングしたものは、ヨーロッパで古くから結婚式や誕生日などの祝い菓子として用いられており、日本でも結婚式で招待客に渡されることがある[1]。イタリアの結婚式では、幸福、健康、富、子孫繁栄、長寿を意味する5粒のドラジェをひとまとめにして配る習慣がある[1]。フランスでは出産の際に男の子が生まれた場合には青いドラジェ、女の子が生まれた場合にはピンクのドラジェを贈る習慣がある[1]

金平糖の精[編集]

なお、チャイコフスキーバレエ音楽くるみ割り人形』に登場する日本語訳「金平糖の精」の原語(フランス語)は"Danse de la fee Dragee"(ドラジェの精)である[4]

脚注[編集]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g お菓子の由来物語 P.129
  2. ^ 和田忠男 (1995). “薬学および関連分野の資料解説1”. 薬学図書館 40巻4号: 313頁. 
  3. ^ a b c d e フランス食の事典 PP.424-425
  4. ^ 国立国会図書館. “①バレエ「くるみ割り人形」に金平糖の精が登場するが、なぜ金平糖と訳されたのか。②公演が行われている国...”. レファレンス協同データベース. 2023年2月6日閲覧。

参考文献[編集]

  • 猫井登『お菓子の由来物語』幻冬舎、2008年9月。ISBN 978-4779003165 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

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