IBM T220/T221 LCDモニター

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IBM T221で80x24 xtermウインドウに等幅フォントで6x13 表示している様子

IBM T220およびT221は、2001年から2005年まで販売されていた解像度3840×2400ピクセル、画面サイズ22.2インチ液晶ディスプレイである。921万6千画素、204ppiと、当時のモニタとしては高解像度・高密度であり、主に高画素が必要な印刷業界や医療業界や研究所で利用された。価格は2001年の時点で、T220は専用ビデオカード込みで298万円[1] 後継機のT221は専用ビデオカードが不要となり228万円であった[2]。このような高解像度ディスプレイは、AppleRetinaディスプレイのような新しい高密度ディスプレイが普及するまで、ほぼ10年間ニッチな製品にとどまっていた[3][4][5]

IBM T220 (9503-DG0)[編集]

IBM T220は2001年6月に発表された、初めて3840×2400という解像度をドット・バイ・ドットでサポートしたモニタである[6] このような高解像度は、通常のコネクタではサポート出来なかった。背面パネルには、2器のLFH-60を備えた。 2本のケーブルはそれぞれが2つのシングルリンクのDVIコネクタに分割され、合計4チャンネルのDVIがあった。1, 2, 4系統のDVIで接続できる。

IBM T220はMatrox G200 MMSビデオカードと2本の電源系統があった。 ネイティブ解像度は、960×2400ピクセル、または1920x1200 ピクセル、を4つ組み合わせて表示していた。 リフレッシュレートは41 Hzである。

IBM T221[編集]

横から見たT221

T220の後継機。主な改良点は、電源アダプタの必要な数を2個から1個にしたことと、より多くの画面モードをサポートしたことである。当初は9503-DG1と9503-DG3の2モデルが発売された。9503-DG1モデルには、Matrox G200 MMSグラフィックスカードとLFH-60コネクタケーブル2本が付属していた。9503-DG3モデルには、グラフィックスカードの1つまたは2つのデュアリンクDVIポートからT221のLFH-60ソケットに接続するケーブルが1本付属していた[要出典]

9503-DG1モデルは、4つの960x2400を縦に表示する仕組みである。後のファームウェアでは、 1920×1200タイルモードが加わった[要出典]

ネイティブ解像度による最高リフレッシュレートは、TMDSリンクを何本使用するかによる。1, 2, 4リンクでは、13, 25, 41 Hzである。フリッカー低減は、 TMDS 1, 2, 4リンクで17.1,[7] 33.72, 41 Hz である。内部のリフレッシュレートは常に41 Hzである。 最後のT221 9503-DG5/DGP(光沢モデル)/DGM(非光沢モデル)は、2003年9月に発表された[8]

9503-DG5/DGP/DGMモデルはネイティブリフレッシュレートが48Hzで、グラフィックカードは付属しないが、デュアルリンクDVI信号を受信し、再同期、バッファリング、2つのシングルリンク信号(1つは奇数画素+同期、もう1つは偶数画素+同期)に分割する外付けコンバータボックスが付属していた。日本で販売されていたサードパーティ製のコネクタアダプタは、TMDS同期信号のみをバッファリングして分割する。内部デュアルリンクの後付けには、TMDS同期信号のバッファなしハードワイヤージャンパ分割(インピーダンスの不一致を招く)、TMDS同期信号のバッファなしハードワイヤ分割(各レッグに24オームの直列抵抗を使用)などがあった。デュアルリンクDVIインターフェースをコンバータボックス経由で1つだけ使用すると、24Hzまたは25Hzのリフレッシュレートが可能になる。コンバータボックスを3つ目のシングルリンクDVI入力と並列に使用すると、48Hzのリフレッシュレートを達成できる。このモードでは、デュアルリンクDVIが画面の左2624×2400部分を駆動し、シングルリンクDVIが残りの1216×2400部分を駆動する。もしくは、2つのデュアルリンクDVIポートで2つのコンバータボックスを同時に使用して、DG5を48Hzで2つの1920×2400ストライプとして駆動することもできる。TMDSチャンネルが3つしかないレガシーAGPビデオカード(NVIDIA Quadro FX 3000NVIDIA GeForce 6をベースにしたほとんどのカードなど)の場合、最大リフレッシュレートを得るにはコンバーターボックスが必要であった。

4つのTMDSリンクを用いることにより、対応する解像度全てで、4つの1920x1200タイルを最高リフレッシュレートで駆動できる。 コンバータボックスは、初期のT221には対応していない。4本のDVIケーブルでモニターを駆動するには、例えばMatrox Parhelia HR256レガシーPCI-Xカードなど、十分に強力なグラフィックカードが必要である[9]。 一般的でない解像度、接続、画面分割は、公式にサポートされていないシステムではカスタム設定が必要になる場合がある[要出典]

Viewsonic VP2290b-3は、名前を変えただけの同等製品である[要出典]。 The IBM T221 9503-DG5は2007年1月に発売終了となった[10]

経緯[編集]

顕微鏡による200倍拡大画像。 IBM T221には、デュアルドメインのIPS方式のLCDパネルが使われている

IBM T221は、IBMトーマス・J・ワトソン研究所のフラット・パネル・ディスプレイ・グループの実験技術としてスタートした。2000年、IBM研究所と日本IBMの共同作業により、コードネーム「Bertha」と呼ばれる22.2インチTFT LCDが試作された。このディスプレイの画素数と表示密度は3840×2400(QUXGA-W)、204ppiであった。2000年11月10日、IBMはカリフォルニア州にある米エネルギー省ローレンス・リバモア国立研究所にプロトタイプを出荷したと発表した。2001年6月27日、IBMは製品版をT220として発表した。その後2001年10月15日、IBMはその後継機であるIBM T221を発表した[11]。2002年3月7日、IBMはIBM T221の価格を17,999米ドル(228万円)から8,399米ドル(135万円)に引き下げると発表した[12]。2003年9月2日、IBMは9503-DG5モデルの発売を発表した。

BMと台湾の奇美集団は2001年にIDTech[13][14]という合弁会社を設立し、T221を日本で製造した。ViewSonic[15]iiyama[16]は、T221をOEMし、それぞれのブランド名で販売した。IDTechでは、非光沢モデルと光沢モデルの両方を生産した。八洲テクノロジーのIDTechの生産ラインは2005年にソニーに売却され[17]T221の運命は不明となった。このモニターは現在販売されていない。2023年現在、5つのメーカーが13.4インチから16インチまでのWQUXGAパネルを生産している[18]

他社ブランドモデル[編集]

ブランド名 機種名 基となったIBMの機種
Iiyama AQU5611D BK, AQU5611DT BK 9503-DG3
ViewSonic VP2290b, VP2290b-2 9503-DG3
ViewSonic VP2290b-3 9503-DG5
IDTech OEMパネル MD22292B2/C2 9503-DG1/DG3
IDTech OEMパネル MD22292B5 9503-DG5/DGP/DGM

See also[編集]

出典[編集]

  1. ^ 元麻布春男の週刊PCホットライン”. pc.watch.impress.co.jp. 2022年12月20日閲覧。
  2. ^ IBM T221(T220の後継機種)22.2型TFT液晶デジタル・カラー・モニター(黒)(920万画素)”. www.ibm.com (2008年11月19日). 2022年12月20日閲覧。
  3. ^ Apple、まったく新しいMacBook Pro Retinaディスプレイモデルを発表”. Apple Newsroom (日本) (2012年6月12日). 2022年12月20日閲覧。 “このRetinaディスプレイのピクセル密度は1インチ当たり220ピクセル(220ppi)”
  4. ^ Apple、27インチiMac Retina 5Kディスプレイモデルを発表”. Apple Newsroom (日本) (2014年10月16日). 2022年12月20日閲覧。 “iMac Retina 5Kディスプレイモデルが備える5,120×2,880という解像度は、標準的な27インチiMacの4倍に当たり、最新の4Kディスプレイと比較してさらに67パーセントもピクセルが多い”
  5. ^ Novakovic. “IBM T221 - the world's finest monitor?”. The Inquirer. 2009年9月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年8月30日閲覧。
  6. ^ "IBM Introduces World's Highest-Resolution Computer Monitor" (Press release). IBM. 27 June 2001. 2012年5月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年3月9日閲覧
  7. ^ IBM T221 3840x2400 204dpi Monitor – Part 5: When You Are Really Stuck With a SL-DVI” (2013年4月6日). 2013年4月10日閲覧。
  8. ^ "IBM T221-DG5 22.2-Inch QUXGA-W Flat-Panel Color Monitor" (Press release). IBM. 2 September 2003. 2007年7月17日閲覧
  9. ^ Matrox Parhelia HR256”. Matrox. 2009年7月16日閲覧。
  10. ^ T221 22.2型TFT液晶デジタル・カラー・モニターの営業活動終了の発表”. www.ibm.com (2008年11月19日). 2023年12月17日閲覧。
  11. ^ IBM T221(T220の後継機種)22.2型TFT液晶デジタル・カラー・モニター(黒)(920万画素)”. www.ibm.com (2008年11月19日). 2023年12月9日閲覧。
  12. ^ 22.2型TFT液晶デジタル・カラー・モニター(黒)(920万画素)値下げのお知らせ”. www.ibm.com (2008年11月19日). 2023年12月9日閲覧。
  13. ^ IDTech LCDs - Resolution so high, it's more than meets the eye”. IDTech. 2007年10月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年7月17日閲覧。
  14. ^ 9.2 Million-Pixel 22.2-Inch LCD Monitor”. Idtech (2003年11月26日). 2007年6月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年7月17日閲覧。
  15. ^ "ViewSonic Brings World's Highest Resolution Monitor To Its LCD Lineup" (Press release). ViewSonic. 25 June 2002. 2009年7月16日閲覧
  16. ^ Iiyama AQU5611DTBK flat screen monitor specification”. LcdNfo.com. 2007年7月17日閲覧。
  17. ^ "Sony To Acquire IDTech's Yasu LCD Manufacturing Facility" (Press release). IDTech. 7 January 2005. 2007年5月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年7月17日閲覧
  18. ^ PanelLook”. Template:Cite webの呼び出しエラー:引数 accessdate は必須です。

外部リンク[編集]