石灰

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石灰の一種である消石灰の粉末

石灰(せっかい)とは、生石灰(酸化カルシウム、CaO)または消石灰(水酸化カルシウム、Ca(OH)2)のこと。炭酸カルシウム(CaCO3)やカルシウム(Ca)を指すこともある。消石灰は生石灰を消和してつくり、炭酸カルシウムは消石灰と二酸化炭素が反応してできる。その証拠に二酸化炭素と石灰水を混ぜると白く濁る。

製法

生石灰は、石灰岩などの主成分である炭酸カルシウムを1,100℃ほどに加熱し、二酸化炭素を放出させる熱分解により製造するが、これは人類が古代から知っている化学反応のひとつで、先史時代から知られている。化学反応式は以下の通り。

CaCO3 → CaO + CO2

産出

石灰岩として石灰鉱山より産出する。採掘される石灰岩は、主として地質時代に生息していた石灰質の殻を持った海棲生物の遺骸などが堆積して地層化したもので、珊瑚三葉虫腕足類アンモナイトウミユリ紡錘虫貨幣石といった化石が多く発見される。鉱物資源としての自給率は、現在の日本では珍しく100%であり、元々の純度の高さや優れた製錬技術により世界的にも高い品質を誇っている。

用途

石灰石貝殻珊瑚などを焼いて石灰を作るための釜を、石灰窯という。石灰の用途は多岐にわたるが、建築材料としては、古代エジプトで発明されたモルタル近代建築に欠かせないコンクリート、また伝統的な日本家屋白壁に使う漆喰原材料でもある。製鉄業においても鉄の不純物除去に欠かせない重要資源である。また、農業園芸分野では、カルシウムを俗に石灰という場合もある。消石灰(水酸化カルシウム)は酸性化した土壌に撒き、中和させる目的で用いられる。上記のように無害ということで、運動場や野球場などで白線を引くためのライン引きに使われてきたが、アルカリ性を持つために触ると皮膚がかぶれてしまう危険性があることに加え、目に入ると視力の低下を引き起こすなどの問題が指摘され、より安全性の高い炭酸カルシウムが使われはじめてはいるが、まだまだ消石灰のものも使用されている。生石灰(酸化カルシウム)は安価でよく湿気を吸うので、乾物類せんべいなどの乾燥剤として使われることも多い。また、水との化学反応を利用して発熱材として、野外での食品・飲料の加熱に用いられている。

フレスコ画の原料。

土壌改良材

日本では江戸時代後期、田畑に石灰を投入することにより収穫量が増加することが見いだされた。価格も当時流通していた金肥の数分の一と安価であり、肥料の一種として珍重されるようになった[1]。当時、石灰の生産は、石灰岩の産出地周辺で原始的な石灰窯で盛んに製造されている。20世紀に入ると化学肥料が製造され始めたが、原料が軍需物資ということもあり大規模な使用は控えられた。このため石灰は、第二次世界大戦が終了するまで農業生産に大きな役割を果たし続けた[2]

脚注

  1. ^ いち早く使用制限-廉価で大流行の石灰肥料 三重県環境生活部文化振興課県史編さん班 2017年7月17日閲覧
  2. ^ 大山の歴史編集委員会(編)『大山の歴史』大山町、1990年、p.525

関連項目

外部リンク