点灯管
点灯管(てんとうかん)はスターター形の蛍光灯を点灯させる用途に使われる放電管である。 これはグロースターター(glow starter)・グローランプ (glow lamp) ・グロー方式点灯管・グロー球等とも呼ばれる。
点灯管や高周波点灯専用安定器を用いる従来型照明器具より消費電力が少ないインバーター式器具の普及によって、従来型器具の生産は大幅縮小されており、新規用途は流し元灯や物置用の一部のみとなった。 さらに、蛍光灯や白熱電球より消費電力が少なく、かつ、長寿命で交換も不要なLED照明の急速な普及に伴って、メーカー各社は従来型照明器具の生産を大幅に縮小した。 日本国内においては、照明器具のシェア首位のパナソニックが、従来型照明器具の一般住宅向けモデルの生産を2014年4月1日付でパナソニックライティングデバイスとして分離して[1]、2015年に業界の先陣を切ってLED照明へ完全移行した[2][3]。 なお、白熱電球生産は(一部特殊用途を除き)2012年を以て国内メーカー全社が完全終了し、卓上型の電球及び蛍光灯器具の生産は2011年限りで終了され、生産はLED照明へ完全移行した。
2009年頃から需要は縮小傾向にあり、各社のグロー方式点灯管の生産は次々と打ち切られ、生産は電子点灯管へと移行している。 特に、東芝ライテックでは2010年3月末をもって従来型グロー方式点灯管の製造を中止し、電子点灯管のみの製造に切り替えている[4]。 これは蛍光灯や電球型蛍光灯と共に、交換用途に絞って生産が継続されている。なお日立グローバルライフソリューションズは国内大手電機メーカーで初めて「蛍光灯器具のみならず蛍光ランプ・点灯管生産を2019年12月限りで完全終了」した。続く2021年3月には三菱電機照明も蛍光ランプ・点灯管生産を完全終了予定。生産を継続する大手各社も蛍光灯・電球型蛍光灯・点灯管ラインナップを以前より大幅縮小させている。
規格
口金の形状により、電球と同様に捻じ込んで使うエジソンソケット(E17)を使うE型と、差し込んだ後に捻って固定するピンソケット(P21)を使うP型の2種類がある。日本では30W形以下の蛍光灯にFG-1PやFG-7Pを採用している照明器具は極めて少なく、対応する電子点灯管も日本国内では市販されていない。
樹脂や金属製の外装を有し、その内部にガスが封入されたガラス管がある。 E型の一部では、電球のようにガラス管が外装を兼ねて、内部電極が観察できるものもある。
それらの構造は、殆ど同じだが、P型にはラジオ等の雑音防止用にコンデンサーが内蔵されている。 E型を使用する場合は器具側のグローソケットに並列にコンデンサーが取り付けられている。 P型では、このコンデンサーは点灯管の一部として取り付けられてはいるが、点灯管動作時の雑音を防止するためではなく、蛍光灯の点灯(定常放電)中の雑音を防止するために、その効果の最大化を狙って、管に直に並列に導入されている [5]。
照明器具全体として、点灯管の使用回数が増え耐久性能を超えると蛍光灯の点灯までの時間が長くなったり点灯できなくなるが、容易に点灯管(や蛍光灯)のみを交換できるようになっている。 なお、ラピッドスタート式やインバーター式の器具では、点灯管は使われない。
点灯管 | 電子点灯管 | 口金 | 対応する蛍光灯 |
---|---|---|---|
FG-7E | FE-7E | E17形 | 4W-10W形 |
FG-1E | FE-1E | 10W-30W形 | |
FG-7P | P21形 | 4W-10W形 | |
FG-1P | 10W-30W形 | ||
FG-5P | FE-5P | 25W-32W形 | |
FG-4P | FE-4P | 35W-40形、65W形 | |
FG-52P | FE-52P | 52W形 |
動作原理
スターター形の蛍光灯は点灯する前に蛍光灯内の電極を予熱する必要が有る。 先ず器具の電源が入ると、点灯管内の固定電極とバイメタル電極(可動電極)間に放電が発生する。 その放電により生じた熱で2枚の極板が湾曲・接触して、通電が開始され、蛍光灯の電極が予熱される。 すると、放電が消えて、数秒後には点灯管電極も冷え、バイメタル電極が元に戻り、接点が開く。 この際に安定器に高電圧が発生する。 これを数回繰り返して蛍光灯が点灯する。 点灯するまで、点灯管と蛍光灯は点滅を繰り返す。 蛍光灯の点滅は電極のエミッター部材を何度も飛散させ、それが飛散し切ると蛍光灯は点灯しなくなる[6]。
電子点灯管
グロー方式を電子回路で実装した電子点灯管が普及している。 これは、その仕組みにより、一回の動作で蛍光灯を点灯させられる。 そのため、ラピッドスタート方式や高周波点灯方式のように点灯する。 電子回路により一定時間確実に予熱し、点滅も一回のみであり、蛍光灯を劣化させ難い。 グロー方式点灯管と比較すると、蛍光灯の点灯に要する時間は遥かに短く、また、イニシャルコスト以上に遥かに長寿命であり、ランニングコストは安く済む。
外装は樹脂のケースで、その内部に電子回路を実装した基板が有る。
なお、電子点灯管のオン・オフを素早く繰り返し続けると、蛍光灯が不点灯となるが、その場合には、数十秒以上の間隔を空けたうえで再度オンにすれば、蛍光灯が再点灯する[7]。
デジタル点灯管
ASICを電子点灯管に組み込んでソフトウェア制御で動作するデジタル点灯管も存在する[8]。 電子点灯管の場合と異なり、これを生産・販売しているメーカーは限られており、その流通量は少ない。
照明器具本体よりも高いほどの耐久性能を持ち、多頻度点滅を行うような照明器具の場合には点灯管の消耗を極力抑えられる[7]。
製造業者
日本
- 東芝ライテック[9]
- 三菱電機照明[10] (MITSUBISHI OSRAM)
- パナソニック ライティングデバイス[11]
- 日立グローバルライフソリューションズ[12]
- ホタルクス[13]
- 朝日電器[14][15][16] (ELPA)
- オーム電機[17][18]
- トヨスター[19]
- ヤザワコーポレーション[20][21] (Yazawa)
- ディーシーティ(DCT)[22][23]
外国
- フィリップス・ライティング[24]
- BG・エレクトリカル[25][26] (Arlen)
- GE・ライティング[27]
- レヴィトン[28]
- エイコー・グローバル[29]
- ハベルズ・シルバニア[30]
- クロンプトン・ランプス[31]
- ザバックス[32]
- シュアライト[33]
- 世紀亜明照明
注釈
- ^ “パナソニック、蛍光灯・電球事業を分社”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社). (2013年12月20日)
- ^ “パナソニック、住宅照明の全てをLEDに 蛍光灯など生産終了”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社). (2014年3月3日)
- ^ “消えゆく蛍光灯 パナ、住宅用器具終了へ”. 朝日新聞デジタル (朝日新聞社). (2014年3月4日). オリジナルの2014年9月11日時点におけるアーカイブ。
- ^ "グロー方式点灯管の製造中止について" (Press release). 東芝ライテック. 11 December 2009.
- ^ 「蛍光灯雑音障害の防止」(PDF)『日立評論』照明特集号別冊第17号、日立製作所、1956年、57-61頁。
- ^ デイヴィド・ナイト. “Glow Switches” ((英語)). 2015年10月1日閲覧。
- ^ a b Kenichi Mizuguchi. “点灯管の種類・仕組み”. 2015年10月1日閲覧。
- ^ “"デジタル点灯管プロ - 点灯管における省エネ環境対策"”. 株式会社ディーシーティ. 2017年8月13日閲覧。 なお同社では外部センサとデジタル点灯管とを連動させた商品も上市している。
- ^ “電子点灯管”. 東芝ライテック. 2015年10月1日閲覧。
- ^ “点灯管(グロースタータ) の製品情報一覧”. 三菱電機照明. 2015年10月1日閲覧。
- ^ “蛍光灯カタログ” (PDF). パナソニック. p. 112. 2015年10月1日閲覧。
- ^ “点灯管(グロースタータ)/電子点灯管”. 日立アプライアンス. 2015年10月1日閲覧。
- ^ “電子スタータ/グロースタータ(点灯管)(FE/FG)”. NECライティング. 2015年10月1日閲覧。
- ^ “点灯管”. 朝日電器. 2015年10月1日閲覧。
- ^ “電子点灯管”. 朝日電器. 2015年10月1日閲覧。
- ^ “2015ELPAカタログ”. 朝日電器. pp. 202-203. 2015年10月1日閲覧。
- ^ “グロー球”. オーム電機. 2015年10月1日閲覧。
- ^ “電子点灯管”. オーム電機. 2015年10月1日閲覧。
- ^ “点灯管”. トヨスター. 2015年10月1日閲覧。
- ^ “グロー球(点灯管)”. ヤザワコーポレーション. 2015年10月1日閲覧。
- ^ “電子点灯管”. ヤザワコーポレーション. 2015年10月1日閲覧。
- ^ “デジタル点灯管プロ”. ディーシーティ. 2015年10月1日閲覧。
- ^ “デジタル点灯管”. ディーシーティ. 2015年10月1日閲覧。
- ^ “Starters for Fluorescent Lamps Fluorescent Lamps and Starters” ((英語)). フィリップス・ライティング. 2015年10月1日閲覧。
- ^ “Technical Data” (PDF) ((英語)). BG・エレクトリカル. 2015年10月1日閲覧。
- ^ “Technical Data” (PDF) ((英語)). BG・エレクトリカル. 2015年10月1日閲覧。
- ^ “Starter” ((英語)). GE・ライティング. 2015年10月1日閲覧。
- ^ “Fluorescent starter” ((英語)). レヴィトン. 2015年10月1日閲覧。
- ^ “Fluorescent Starters” ((英語)). エイコー・グローバル. 2015年10月1日閲覧。
- ^ “FS Starter Starters” ((英語)). ハベルズ・シルバニア. 2015年10月1日閲覧。
- ^ “Starter Switches” ((英語)). クロンプトン・ランプス. 2015年10月1日閲覧。
- ^ “Starter” ((英語)). ザバックス. 2015年10月1日閲覧。
- ^ “Fluorescent Lamp Starters” ((英語)). シュアライト. 2015年10月1日閲覧。