カマス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。ねこの森には帰れない (会話 | 投稿記録) による 2020年12月15日 (火) 07:21個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (→‎分類)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

カマス科
オニカマス Sphyraena barracuda
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
亜綱 : 新鰭亜綱 Neopterygii
上目 : 棘鰭上目 Acanthopterygii
: スズキ目 Perciformes
亜目 : サバ亜目 Scombroidei
: カマス科 Sphyraenidae
: カマス属 Sphyraena
英名
Barracudas
下位分類
本文参照

カマス(魳、梭子魚、梭魚、魣)は、スズキ目サバ亜目カマス科学名Sphyraenidae)に分類される魚類の総称。カマス科はカマス属のみ1属で構成され、オニカマスなど少なくとも21種が記載される[1]バラクーダ(Barracuda)という英名でも知られている。秋冬時期のカマスを特に「霜降りカマス」という。

分布・生態

カマス科の魚類はすべて海水魚で、太平洋インド洋大西洋熱帯亜熱帯域に幅広く分布する。主に沿岸域に生息し、サンゴ礁岩礁の周囲で群れを形成し、活発に泳ぎ回る。食性魚食性で、イワシなど他の魚類を貪欲に捕食する[2]。ヒトに対して攻撃性を示す魚類の一つであり、一部の地域ではサメよりも危険な存在と捉えられている[1][3]

ほとんどの種類が釣魚あるいは食用魚として利用され、定置網延縄などで漁獲される。肉は白身で淡白だが、生では水っぽく柔らかいため、刺身で食べられることは少ない。ほとんどが干物塩焼きから揚げなどに加工される。

形態

カマス科の仲間は細長い円筒形の体型をもち、全長は20-30cmほどの種類から2mに達することもあるオニカマスまでさまざまである[2]。口は大きく、やや突き出た下顎には鋭く強靭な歯を備える。側線がよく発達する一方、鰓耙はないか退化的[1]

背鰭は2つあり、互いの間隔は広く離れている。前方の背鰭は5本の棘条からなり、後方は1棘9軟条。胸鰭は体側のやや低い位置にある。近縁のタチウオ科とは異なり、小離鰭をもたない。椎骨は24個[1]

分類

カマス科にはNelson(2006)の体系において1属21種が認められている[1]。本体系はカマス科をサバ亜目で最も原始的なグループとして位置付けているが、本科をサバ亜目から除外する見解も多い[4][5]

本稿では、FishBaseに記載される1属26種についてリストする[2]

タイワンカマスSphyraena flavicauda)。インド太平洋に広く分布し、水平方向に長い群れを作る[6]
オオメカマスSphyraena forsteri)。和名の通り大きな眼が特徴

主な種類

全長50cm。和名のとおり体が赤っぽく、体側に1本の黒い縦縞がある。腹鰭が背鰭より前にある。はヤマトカマスと比べて大きい[6]。北海道以南から南シナ海まで分布する。
  • ヤマトカマス Sphyraena japonica (英:Japanese barracuda)
全長35cm。アカカマスに比べて小型で、体色は青味がかり、体側の縦帯を欠く。腹鰭は背鰭と同じか、やや後方に位置する。鱗は小さく剥がれやすい。アカカマスに対して「ミズカマス」とよばれることもある。東北以南から南シナ海まで分布する。タチウオの仕掛けに掛かることがある。
全長180cmに達する大型種。世界中の熱帯海域に広く分布する。食用にされていたが、産地によってはシガテラ毒シガトキシン)を持つため、バラムツアブラソコムツイシナギ(肝臓のみ)と並び、食品衛生法により販売禁止となっている。
詳細は関連項目参照

出典・脚注

  1. ^ a b c d e Nelson 2006, p. 430-431.
  2. ^ a b c Family Sphyraenidae - Barracudas”. fishbase.se. 2020年12月15日閲覧。
  3. ^ キャンベル&ドーズ 2007, p. 106.
  4. ^ 岩井 2005, p. 45-46.
  5. ^ Helfman et al 2009, p. 306.
  6. ^ a b 岡村&尼岡 1997, p. 652-655.
  7. ^ Sphyraena iburiensis Doiuchi & Nakabo, 2005 イブリカマス”. BISMaL. Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology. 2020年12月15日閲覧。
  8. ^ Miki, Ryohei; Wada, Masaaki (2018). “First Japanese records of the barracuda Sphyraena jello (Teleostei: Sphyraenidae)”. Biogeography 20: 62-66. doi:10.11358/biogeo.20.62. 

参考文献

  • J.S. Nelson (2006) (英語). Fishes of the World (4th Edition ed.). New Jersey: Wiley & Sons, Inc. ISBN 0-471-25031-7 
  • Gene S. Helfman; Bruce B. Collette; Douglas E. Facey; Brian W. Bowen (2009) (英語). The Diversity of Fishes: Biology, Evolution, and Ecology (2. Edition ed.). Wiley-Blackwell. ISBN 978-1-4051-2494-2 
  • A.キャンベル, J.ドーズ 編、松浦啓一, 渋川浩一, 今村央 訳『魚類 II』松浦啓一(監訳)、朝倉書店〈海の動物百科3〉、2007年。ISBN 978-4-254-17697-1 
  • 岩井保『魚学入門』恒星社厚生閣、2005年。ISBN 978-4-7699-1012-1 
  • 『日本の海水魚』岡村収, 尼岡邦夫(編・監修)、山と溪谷社〈山渓カラー名鑑〉、1997年。ISBN 4-635-09027-2 

関連項目

外部リンク