M-4 (航空機)
M-4“バイソン”
アムール州ベロゴルスク郊外のウクラインカ航空基地の展示機[2]
(2004年 の撮影)
- 用途:爆撃機
- 分類:戦略爆撃機
- 設計者:ミャスィーシチェフ設計局
- 製造者:ミャスィーシチェフ設計局
- 運用者:
- 初飛行:1953年
- 生産数:93機
- 運用開始:1956年
- 退役:1994年*空中給油機型
- 運用状況:退役済
M-4(ロシア語:М-4エーム・チトゥィーリェ)は、ソビエト連邦のミャスィーシチェフ設計局において開発された戦略爆撃機である。
なお、中期型は当初M-6(М-6エーム・シェースチ)とも呼ばれたが、その後は3M(3Мトリー・エーム)の名称が用いられるようになった。名称は異なるがM-4、M-6、3M各型は同じシリーズの機体である。
DoDが割り当てたコードネームはType 37。NATOコードネームでは「バイソン」(Bison)と呼ばれた。
概要
1940年代末から1950年代初頭にかけて激化した冷戦の影響でアメリカ合衆国とソ連は互いに核戦力の充実と、それを敵地に向けて投下する為の戦略爆撃機の開発に力を注いでいた。
当時アメリカはB-36・B-47・B-52といった爆撃機を送り出し、ソ連に対しての威圧感を強めつつあった。一方、第二次世界大戦を終えたばかりのソ連にある爆撃機といえばほとんどが、小型のPe-2やTu-2などであり、これらもジェット戦闘機が台頭してきた時代においては戦力として期待できるものではなかった。
その為、ソ連はB-29戦略爆撃機をコピーしたTu-4において高度な戦略爆撃機の開発技術を会得して以降、一挙にTu-80・Tu-85・Tu-16といった機体を製造し、新世代の戦略爆撃機の開発を模索するようになった。
M-4とTu-95はこうした状況下における「新しい革新的な技術を用いたアプローチによって開発された機体」と「従来からの保守的な技術から作成された機体」という関係の元に作成された(もっともTu-95の高速ターボプロップエンジンは、現代においても凌駕するものが無い優れた先進技術である)。
「革新的な技術」の側から開発されたM-4は登場すると同時に西側に甚大な脅威を与え、ボマーギャップ論を巻き起こした。
しかしながら、「革新的な技術」であった当時のジェットエンジンは長時間の飛行には適さず、M-4バイソンは戦略爆撃機として必要な航続距離を得ることができなかった。その為、戦略爆撃機としての任務はTu-95が引き受け、M-4は輸送機や空中給油機として用いられる事となった。
M-4は1963年までに93機が生産された。最後まで使用されたのが空中給油機型で、1994年まで使用された。
派生型
試作機
- M-4A
- 開発機。
- M-204M
- エンジンをD-15(推力13,000kg)に転装した試験機。
爆撃機型
- M-4
- 最初の爆撃機型。NATOコードネームでは「バイソンA」と呼ばれた。1機の地上試験機と34機の量産型を製造。
- 2M
- エンジンをAM-3AからVD-5に換装した改良型で、3Mの基礎となった。開発名称は≪28≫であった。
- 3M
- エンジンを強化型のVD-7に搭載し、ペイロードと航続距離を増強した発展型。1956年に初飛行した。当初はM-6と呼ばれていて、開発名称は≪201≫であった。NATOコードネームでは「バイソンB」と呼ばれた。
- 3MS-1
- 3MにRD-3M-500Aにエンジンを換装した改良型。NATOコードネームでは「バイソンB」と呼ばれた。
- 3MS-2
- 3MにRD-3M-500Aにエンジンを換装した改良型。後に大部分は空中給油機に改造された。NATOコードネームでは「バイソンB」と呼ばれた。
- 3MN-1
- 3MにVD-7Bエンジンを搭載した改良型で、燃費の良いエンジンの搭載により、同じく改良型の3MSよりさらに15 %の航続距離向上を実現した。NATOコードネームでは「バイソンB」と呼ばれた。
- 3MSN-1
- 3MにVD-7AターボジェットエンジンまたはAM-3Aを搭載した型式。NATOコードネームでは「バイソンB」と呼ばれた。
- 3MSR-1
- 3MにAM-3Aターボジェットエンジンを搭載した型式。NATOコードネームでは「バイソンB」と呼ばれた。
- 3MD
- VD-7Bを搭載した新しい派生型。Kh-10空対地ミサイルを装備した機体で9機製造された。翼面積を増すなど大幅な改設計が行われていた。1959年に初飛行し、翌1960年にソ連空軍に配備された。NATOコードネームでは「バイソンC」と呼ばれた。
- 3MYe
- VD-7P(またはRD-7Pとも呼ぶ)を搭載した高高度爆撃機型。1963年にソ連空軍に配備された。
偵察機型
- 3MR
- 機首に大型の哨戒レーダーを装備した洋上長距離偵察機型。1964年にソ連海軍航空部隊に配備された。
給油機型
- M-4-2
- 空中給油機型。コードネームはバイソンA。
- 3MS-2
- M-4-2を基に、3MSから開発された空中給油機型。1975年に初飛行した。Il-78の登場まで主力空中給油機としてソ連空軍で使用され、Tu-22Mなどへの空中給油能力を有していた。
- 3MN-2
- 3MNから改修された空中給油機型。ZMN-2同様に運用された。NATOコードネームでは「バイソンB」と呼ばれた。
輸送機型
試験機型
- 3M-5
- VD-7エンジンを装備しKSR-5空対地ミサイルを運用可能にした試験機。1機のみ製造でNATOコードネームは「バイソンB」。
- 3ME
- アビオニクスなどをアップグレードした試験機で1機の3Mを改造。その後、M-50試作機と地上で衝突事故を起こして失われた。NATOコードネームは「バイソンB」。
- M-29
- 1956年に3Mから設計された旅客機型であったが、製作されなかった。M-6Pとも呼ばれた。
-
M-4“バイソンA”
(1982年の撮影) -
各型の機首の差異を示した図
要目
- 全長:53.4 m
- 全幅:52.5 m
- 全高:11.5 m
- 翼面積:320m2
- 機体重量
- 全重:90,000 kg
- 最大離陸重量:210,000 kg
- エンジン:ミクーリン AM-3Dターボジェットエンジン (推力9,500 kg)× 4
- 最大速度:マッハ 0.95
- 航続距離:5600 km (フェリー時 8100 km)
- 実用上昇限度:17,000 m
- 武装
- NR-23 23mm 機銃 6 基
- ペイロード:15,000 kg