電話加入権

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

電話加入権(でんわかにゅうけん)とは、NTT東日本西日本加入電話回線を契約・架設する権利のことである。

電話料金が長期にわたり未納の場合、電話サービス契約約款第24条[1][2]に基づき、権利が消滅することがある。

概要[編集]

電話加入権の権利所有者は、工事費を支払により電話の架設場所の移転や、利用の休止をすることができる。休止の場合5年毎に更新手続きが必要であり、更新手続きがされなかった場合5年で権利が時効となる。

相続や企業の合併・分割等、契約者の意思表示によらないで法的事実により権利が移転する場合は手数料無料で名義変更ができる。譲渡遺贈・相続分の譲渡等、契約者の意思表示で行う権利移転については手数料を払うことで名義変更をする。

電話回線の新設を申し込む際にNTT東日本・NTT西日本に支払う費用の現在の名称が施設設置負担金(しせつせっちふたんきん)であり、この費用を支払うことによって電話加入権が発生する。NTTグループも、いったん支払った後については「電話加入権」という語も使用している[3]

施設設置負担金制度の歴史[編集]

  • 1890年 - 電話事業開始。当初は電話加入権の概念はなく無料で設置できた。
  • 1897年 - 電話交換規則が制定され、加入登記料制度が発足した。当初の加入登記料は15円。(電話加入権のはじまり)
  • 1909年 - 支給開通制度発足。
  • 1925年 - 特別開通制度発足。当初の東京での設備費負担金1,500円、工事負担金1,550円
  • 1948年 - 電信電話料金法の制定により加入登記料を装置料に改称すると共に1,000円に改定。
  • 1951年 - 電信電話料金法の改正により装置料を4,000円に改定すると共に、電話設備費負担臨時措置法が制定され、電話設備費負担金を重畳的に課した。電話設備費負担金は30,000円
  • 1952年 - 日本電信電話公社発足
  • 1953年 - 電話設備費負担臨時措置法の改正により電信電話債券の引受を義務化した。当初の債券額は60,000円
  • 1960年 - 電話設備費負担金を廃止すると共に、装置料を設備料に改称し、10,000円とした。
  • 1968年 - 設備料を30,000円に改定
  • 1971年 - 設備料を50,000円に改定
  • 1976年 - 設備料を80,000円に改定
  • 1977年3月 - 電話積滞解消
  • 1983年 - 電信電話債券の新規発行を終了
  • 1985年 - 日本電信電話株式会社 (NTT) の設立と共に工事負担金に改称され、本機自由化に伴う本機分の権利金の減額により72,000円に改定。
  • 1989年 - 施設設置負担金に改称。
  • 2005年3月1日 - 施設設置負担金を37,800円に改定[4][5]

施設設置負担金は、電話網が完成した現在では役目を終え、総務省とNTTにより廃止が検討されている。

NTTの自動車電話携帯電話の施設設置負担金は1991年7月に新規加入料に改称された。1992年7月にエヌ・ティ・ティ移動通信網株式会社が分離されてから段階的に価格改定され、1994年のデジタルmova 1.5G携帯電話サービスの開始に連動して新規加入料を廃止した。この背景には、新規加入料を廃止した時点ではまだ携帯電話があまり普及しておらず、廃止しても社会的な影響は大きくないと考えたこともあると思われる。なお、PHSについては、そもそも電話加入権(あるいは施設設置負担金の徴収)がなかった。

携帯電話の加入権については、1996年3月15日、日本テレシスがmovaの新規加入料の値下げにより資産価値が損なわれたとして損害賠償請求訴訟を起こしたが、新規加入料が絶対的な価値を持つ資産ではないとして、1997年9月24日の福井地方裁判所、1998年4月20日の名古屋高等裁判所金沢支部で損害賠償請求が棄却され、1998年10月27日の最高裁判所の上告棄却により確定した。

施設設置負担金の廃止の問題点[編集]

電話加入権は譲渡可能な権利であり、また権利の内容は時間の経過によっても変化しないため、法人税法上では減価償却のできない無形固定資産とされている。このため、企業会計上で電話加入権を簿価計上している企業も多いが、近年は時価会計を行う例も多い。この場合は簿価と時価の差額を減損する。

本来電話加入権は質権を設定できないものであったが、中小企業などからの要望が多かったために「電話加入権質に関する臨時特例法」が制定され、いくつかの条件の下で質権を設定できるようになった。そのため、借入金の担保や国税等の滞納処分の差し押さえ物権とされるようになった。

施設設置負担金の廃止は、電話加入権の資産価値や担保価値を毀損するものであり、これは法人政府地方公共団体への簿価会計に少なくない影響を与えるが、会計基準により時価会計を採用している場合は、時価の下落により簿価が相当程度減損している為に会計に与える影響度は限定的である。

2006年5月30日、「加入料値下げにより加入権の資産価値が不当に下落した」として、25都道府県の37社と個人69人がNTTや国(監督官庁の総務省)を相手取って損害賠償を求める訴訟を起こした[6]。提訴に対しNTTは「負担金は回線建設費の一部であり権利に非ず、財産的価値まで保証はしていない」とコメントしている。判決・控訴審判決共に請求を棄却した。

脚注[編集]

  1. ^ 東日本電信電話株式会社 (1999年7月1日). “電話サービス契約約款 (PDF)”. 2010年4月29日閲覧。
  2. ^ 西日本電信電話株式会社 (1999年7月1日). “電話サービス契約約款 (PDF)”. 2010年4月29日閲覧。
  3. ^ 電話の利用休止は、最長10年で解約となってしまうのですか?その場合、加入権はどうなってしまうのでしょうか。
  4. ^ “施設設置負担金の見直しについて” (プレスリリース), 東日本電信電話株式会社, (2004年11月5日), http://www.ntt-east.co.jp/release/0411/041105b.html 2010年4月29日閲覧。 
  5. ^ “施設設置負担金の見直しについて” (プレスリリース), 西日本電信電話株式会社, (2004年11月5日), http://www.ntt-west.co.jp/news/0411/041105c.html 2010年4月29日閲覧。 
  6. ^ 東京地方裁判所 (2007年10月22日). “平成18年(ワ)11104号,14504号,19429号,19433号,25757号 損害賠償請求事件 (PDF)”. 2010年4月29日閲覧。

外部リンク[編集]