銃夢火星戦記

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動
銃夢火星戦記
ジャンル SF漫画
格闘漫画
サイバーパンク
漫画
作者 木城ゆきと
出版社 講談社
掲載誌 イブニング
レーベル KCデラックス イブニング
発表号 2014年22号 -
巻数 既刊7巻(2020年11月時点)
シリーズ作品
テンプレート - ノート
プロジェクト 漫画
ポータル 漫画

銃夢火星戦記』(ガンム マーズクロニクル、GUNNM MARS CHRONICLE)は、木城ゆきとのSF漫画。『イブニング』(講談社)2014年22号より連載中。

サイボーグの少女ガリィを主人公とした「銃夢シリーズ」の最終章であり、前作『銃夢 LastOrder』の続編として始まりつつ、それまで明確には描かれなかった第1作『銃夢』の前日談も描く。

ストーリー[編集]

過去編
e.s.370年(西暦2326年)、紛争が絶えない火星。孤児として医者のフィンチに拾われた陽子とエーリカは、マミアナという小さな町の孤児院に引き取られる。しかし、町は突如攻め込んできた軍隊によって壊滅し、生き残った2人は再びフィンチに連れられ、シドニア領へと目指す。移動の途中、生活空間を支える火星天蓋(バルダヒーン)が軍隊によって破壊され、大勢が死亡する。3人は天蓋協会(MBV)のムイに助けられるも、戦争をやめない地上の人々に嫌気がさし、エーリカと陽子を天蓋を支える柱(ゾイレ)の人柱にしようとする。しかしその直後、大巫女から二人のどちらかが「転移の相」を持つという神託を告げられ、2人を解放する。
その後、3人はエーリカの故郷にたどり着くが、エーリカは両親を殺害していたことを思い出し愕然とする。その頃、18人の領主があつまり太陽鏡反射権を決めるエドム会議の場に、怪人バロン・ムスターが現れ、シドニア領から反射権を奪うよう脅迫していた。陽子は母を名乗る人物に引き取られ、エーリカは落ち込むが、そこに陽子にかけられた賞金を狙う賞金稼ぎが現れる。エーリカはムスターに救われるも、それはエーリカが父から盗んだ本が目的であった。ところが、エーリカの生い立ちを聞いたムスターは、悪の後継者として彼女を育てることを決める。
引き取られた陽子は火星18大公のひとつシドニア公ドルンブルク家の分家・バウムブルク家で育てられるが、分家当主であるマルキが本家当主であるシドニア公・カグラから領主の座を奪うための駒とされる。元から因縁を持っていたムスターの暗躍もあり、シドニア領都は崩壊した。
e.s.372年(西暦2328年)、シドニア領都を脱出したエーリカと陽子はゴロツキのダスに紹介された「カオフマンのクアン」に会うためにラドー・シュタットにあるモズビー商会を経て墜落した宇宙船跡に作られた街「ロジャー・ソリス」に潜入する。
現代編
前作「LastOrder」の3年後のe.s.594(西暦2550年)から物語が始まる。
「独立自治権」を与えるという名目の、LADDER(太陽系条約調停議会)による擬似戦争に過ぎなかった「ZOTT(森羅天頂武闘会)」を制し、また、ムバディによる洗脳からLADDERを解放したことで、地球と火星の運命、ひいては全宇宙の今後のあり方を変えたガリィ(陽子)は、かつてマミアナがあった土地に立っていた。そこにエーリカが現れ、戦いを挑んでくるが、彼女は「屍人兵士(ネクロ・ソルジャー)」であり、本人は200年前にガリィが殺害していた。ガリィは彼女を蘇らせた者が黒幕「ダーザイン」であると告げるが、同じくネクロ・ソルジャーとして蘇ったゲルクトが現れ、エーリカを連れて去っていく。
直後ガリィは、リメイラ女王の暗殺未遂容疑でザジに拘束される。リメイラ女王はすでに回復してるものの、ガリィは彼女もネクロ・ソルジャーではないかと不安を募らす。大巫女ムイによって解放されたガリィは、エーリカを人間に戻す方法を求めて、ムイに紹介されたS・ノヴァに「ネクロ・ソルジャーに施された外部からの制御を解き、自由意志を持つ人間に戻す治療法の研究」を依頼する。

登場人物[編集]

主要人物[編集]

ガリイ
主人公。元の名前は「陽子(ヨーコ)」。前作のZOTTで優勝を果たした。機甲術の使い手。ZOTTから3年、金星でエージェント「LastOrder」としての仕事を果たしたのち、200年ぶりに火星に帰還した。前作で大幅な進化を遂げたイマジノス体はある事情から再生力が低下している。
火星の戦災孤児で、生まれた時からサイボーグとなっている。エーリカと共に孤児院で過ごすが、後に母を名乗る人物に引き取られる。火星18大公のひとつ・シドニア公カグラの後継者とされるが、それはムスターによる偽装で、本来は生き別れていたムスターの妹・ノリンの人面腫から生み出された摘出児だった。
エーリカ・ヴァルト / フラウ・X
陽子(ガリィ)の幼馴染で、同じく機甲術の使い手。過去にガリィが殺害したが、ネクロ・ソルジャーとして蘇った。
犯罪者の父と売春婦の母を持ち、激しい虐待によって左目と左手を失う。自宅の窓から見える看板に描かれた家族の絵に逃避した結果、父の盗品を狙った強盗犯に手を貸して父と母を殺害。その後は陽子と同じ孤児院で過ごし、陽子と離れ離れになった後はバロン・ムスターに拾われて「悪の後継者」として育つことになる。
ダンコ
銃器型のナノマシン兵器。バーサーカー細胞変異体で、前作からの空白の時間にガリィが金星にいたとき着いてきた。体内でバーサーカー細胞と崩壊弾を複合した弾丸を生成して発射する能力をもつ。被弾すれば無制御化したバーサーカー細胞に侵食された末に崩壊するが、弾の口径が大きく誘導弾なこともあって弾速が遅いのが欠点。
ザジ
リメイラ女王の護衛。銃器のエキスパート。前作でガリィと共にZOTTに出場し戦い抜いた戦友だが、リメイラ暗殺容疑としてガリィを逮捕する。
リメイラ
火星の女王。火星統一に向けて奔走していたが、ガリィを騙る何者かによって殺害されかける。再生医療によって復活するが、ガリィやカエルラからはネクロ・ソルジャーではないかと疑われている。
カエルラ・サングウィス
作品世界では生存権すら認められない孤児を保護・育成する団体「星の保育園協会(ステラ・ナーサリー・ソサエテイ/SNS)」の理事長。V型ウイルス感染による変異体、いわゆる吸血鬼。不老であり、文明崩壊前の時代から生きている。生身でありながらガリィを凌ぐ戦闘能力を持つ。ガリィとは別行動でダーザインを追っている。リメイラ暗殺未遂容疑で拘束されたガリィの尋問の最中に現れ、ダーザインとネクロソルジャーに関する情報を伝える。その帰りに搭乗していた飛行機をダーザインの手によって爆破され、以後の生存は不明である。
クー・ツァン
SNSの所有する強襲保育園バス「ガントロール」船長。カエルラの留守中は代役を務める。前作においてZOTTから脱出後に火星王国議会派に亡命。受け入れてもらった義理から議会派の軍事作戦にも協力している。
ゼクス
ガリィの戦闘データから作られた人工知能をもつアンドロイド。ZOTT決勝の後に対戦する約束だったガリィを探しているうちにSNSに転がり込んだ。作られてからの実年齢が「5歳」ということもあってクー・ツァンからは「デカイ幼稚園児」と呼ばれている。
ムイ
火星の生活空間を支える火星天蓋の維持管理を任された、天蓋協会の人間。ガリィの幼少期からの知り合いで、当時は庭師(ゲルトナー)だったが、現代での再会時には大巫女(プリステリン)となっている。庭師時代は天蓋がなければ生きていけないのに戦争を繰り返す火星住民を嫌悪しており、天蓋破裂に巻き込まれたガリィたちに新たなゾイレを建てる人柱になれと要求したが、当時の大巫女の神託によって解放した。
S・ノヴァ
前作でムバディに協力し、ガリィと敵対していたマッドサイエンティスト。ネクロ・ソルジャーの治療法を求めて訪れたガリィと再会する。ムイからは「優秀な医者」と評されていたが、相変わらず人体実験を繰り返している。
ツアイクロウ
S・ノヴァの執事。元・機甲術使いの集団「グリューンタール」に所属する上位戦士だった。200年前、陽子(ガリィ)の任務失敗によって戦争の責任を押し付けられたグリューンタールから逃亡。その後はLADDER議会直属部隊「NEW ORDER」に所属していたがイエールに潜入してきたガリィに敗北。S・ノヴァに引き取られる。ガリィからゲルクトが(ネクロ・ソルジャーとしてだが)健在と知らされ、逃亡時に組織の資金を持ち逃げしたことを白状してしまう。ガリィからのハッタリ混じりの脅迫もあって差し当り協力的な態度を示している。
ゲルクト
英霊団(エインヘルヤル)の隊長。かつてはグリューンタールの総師範である「マイスター」と呼ばれるリーダーだった。
パラベラム、ブレーメン
英霊団メンバー。パラベラムは「銃夢(無印)」ではガリィの回想に登場している。ブレーメンは「戦争博士」と呼ばれる参謀格。

過去編[編集]

フィンチ
ゲルダによって救出された陽子やエーリカをマミアナに送り届けた巡回医師。キューリーシュタットで陽子が引き取られて以降、エーリカと共に行動していたが陽子を追っていたエージェントに襲撃された際に離れ離れになってしまう。優しいが、酒好きが原因のしくじりも多い。子供の舌には厳しいベーマイトを食べさせて「好き嫌いしていると大きくなれない」という。
ニノン・ズィルバー
マミアナの孤児院で子供たちのリーダーとなっていた少女。真偽は不明だが、火星有力者の血筋だと称し将来は「火星の女王」になると宣言していたが、襲撃してきた軍事勢力「パパガイ兵団」に殺害される。彼女の姓が本名なら18大公のひとつ「フランマリオン公」の係累だとされる。ニノンの記憶によると3つある兵団のうち、2つが謀反を起こした際にパパガイ兵団は領主側に付いていたというが、マミアナを襲撃した事実から内実は逆だった模様。
バロン・ムスター / イタル・ソナン
各地であらゆる犯罪を犯している凶悪犯。黄金の杖と無数の仮面が着いた衣装を着た怪人。シドニア領に対して恨みを抱いており、エドム会議にてシドニア領から反射権を奪うよう大公たちを脅迫し、シドニアの滅亡を図る。その体は人面腫(マスケトーマ)という奇病に侵されており、治療法を求めて「不滅の秘宝」を探している。その手掛かりである、エーリカの父が盗んだ「クラウゼヴィッツ戦争論下巻」を手に入れるためエーリカを誘拐するが、彼女の過去を聞いて弟子にすることを決める。
過去編からさらに13年前(e.s.357年(西暦2313年))のエピソードでは考古学者クルヒト・ソナンの息子であり、容姿には恵まれなかったが才能あふれる若者でエーリカの父ヨハンとは友人だった。シドニア公主カグラの依頼からシドニア領にあるメリル・ヨタ遺跡(人面岩)の発掘調査をしていたが、遺跡から「黄金杖(ゴルトシュトック)」が見つかると証拠隠滅に処分されそうになる。ヨハンからの連絡と侍女であったポルヴィットを人質に離脱するが、逆に発掘隊を虐殺した罪で指名手配される。妹のノリンが重傷を負い、治療のために出頭することを決めた際に宝の手がかりとなる「杖と本」をヨハンと手分けする。しかし、恋慕していたカグラ、そして友人と信じていたヨハンに立て続けに裏切られたショックから、それだけの罰に見合うだけの罪業を犯さなければならないと決意し、バロン・ムスターを名乗って稀代の悪漢となる。自身諸共カグラとシドニアを滅ぼし、悪人としての人生を全うする。陽子の伯父にあたることがのちに判明する。
ノリン・ソナン
ムスターの妹にして陽子の本当の母親。父や兄と共に人面岩の発掘調査に参加するが、「黄金杖」の発掘後の襲撃で重症を負う。彼女もまた「恐怖の虹」を吸い込み全身を人面腫に侵されていた。カグラに目をつけられたことからなぶり者にされ、凄惨極まりない拷問を受け廃人と化す。後にドクトル・ヌゲマに払い下げられ、そこから見世物小屋に貸し出されていたところをムスター達に発見される。最期はムスターの手によって砂上化毒を注入され安楽死させられた。
ヨハン・ヴァルト
エーリカの父親。呑んだくれのダメ親父で妻と共に娘に暴力を振るっていた。その存在を否定したエーリカによって引き入れられた強盗に殺害される。過去編からさらに13年前のエピソードではソナン博士の調査隊で働いていた。元々は火星南部地域の出身で軍に在籍していたが上官を殺してしまい北部に逃げてきた。カグラによる証拠隠滅から脱出する際にノリンが重傷を負い、治療のために出頭することを決めた際、宝の手がかりとなる「杖と本」をイタルと手分けする。しかし、「本」を隠した古井戸が建築物で塞がれてしまい、「杖」だけでも確保しておこうと救い出したイタルを騙し討ちするが、杖と共に取り逃がす。
カグラ・ドルンブルク
火星18大公のひとつ、シドニア公の名を持つ女性。ムスターと同じ人面腫に侵されている。当初は陽子の母親と思われていた。美男子を拷問死させる過程で排出させた精液でマンドレイクという名の茄子科の毒植物を育てる残酷な趣味を持つ。過去編の時点で既に全身を人面腫に侵されており、人前に姿を現すことはない。ポリセラの死後は叔父のマルキ公爵によって陽子と領主の地位を交代させられることとなる。領主交代の「継承の儀」の最中、ムスターに扮したゾーイの手によって醜い肉塊と化した体を晒された上に目の前で重臣たちを殺され、本物のムスターの待つオデオンバッハの操縦室に監禁させられる。人面腫の影響で脳波による操作が正常に行われず暴走するオデオンバッハによって自らの領民と領地を壊滅させられ、さらにムスターを拷問する際に用いたフッ化水素酸全身を全身に浴び、三日三晩悶え苦しんだ挙句ムスター共々溶け合って死亡するという壮絶な最期を遂げた。過去編からさらに13年前のエピソードでは当時はまだ公主という立場ながらソナン博士にメリル・ヨタ遺跡の調査を依頼するが、黄金杖が見つかると発掘隊を襲い証拠の隠滅を謀る。
およそ自分以外の存在は道具としか認識していないが、ポリセラの死に関して怒りを見せたところから同性愛者だった模様。
ポリセラ・ポルヴィット
シドニア公カグラの代理としてエドム会議に出席していたが、ムスターに結晶化毒(クリスタルモルテン)で殺害される。過去編からさらに13年前のエピソードでは当時はまだ公主だったカグラの侍女を務めていた。ムスターの正体に気付いた際の動揺振りから、カグラほど他者に対して無関心ではいられない人物だった模様。
ゾーイ
ムスターの部下。全身に傷跡のある女性。悪人としてのムスターに心酔しており、その意味では善人。彼が気に掛けているエーリカを殊更に嫌っている。
ギラティン、ダス、ロッコ
サイボーグのゴロツキ。フリーランスの何でも屋で、ポルヴィットの依頼を受けて陽子を探していた。ダスとロッコはコンビを組んでいる。ギラティンは偶々同じ依頼を受けただけだったが、荒事専門だったため、調査・探索ができる2人とチームを組んだ。ダスとロッコはエーリカの依頼を受けてシドニア領からの脱出を手助けし、ギラティンとは追手として対立した。
ダスやロッコはゴロツキながら風情も楽しみ、子供の前では格好つける大人としての一面もあったが、ギラティンはそのような物は解しないリアリストだった。
クアン
靴屋・モズビー商会の「カオフマン」と呼ばれるエージェントでグリューンタール出身の機甲術者。本人曰く「ロートル」だが、腕は鈍っていない。潜入目的はデジャー・ソリスが事故を起こした際に消息を絶った男の記録手に入れること。
デジャー・ソリスに潜入したまま連絡を絶っていたが、ダスに紹介された相手で探しに来たエーリカたちと接触する。当初は「貸した金も踏み倒してくたばったヤツの頼みなんぞ利く義理はねえ」という態度だった。
ユニエ・ホルベルク
デジャー・ソリスで掃除婦として暮らす少女。夢見がちな天然ちゃんで潜入してきたエーリカと陽子を妖精さんと呼んでいる。
「塵旋風(ダスト・デビル)憑き」と呼ばれる症状があり、幽体離脱で本人の意識が離れると熟練の戦士のような身体操作を見せる。
ビッグ・マダム
デジャー・ソリスの顔役を務める女性。街の元になった宇宙船船長の娘。
盲人だが情報に長けているほか、元は宇宙船だった街のパーツに聴診器を当てることでおおよその事情を把握する能力を持つ。
ヤコレワ・ヤンツェン
軍閥組織・ファージャルグの少佐。メカニズモ出身の情報将校で完全サイボーグだが、人型は擬態であり、人体とは異なる関節構造をもつ。

用語[編集]

ダーザイン
ガリィやカエルラが追う謎の勢力。リメイラ女王の暗殺や、ネクロソルジャーの生産など、世界の裏で暗躍しているとされる。
屍人兵士(ネクロ・ソルジャー)
人間の脳を化学処理して電気回路化。当人の記憶・人格・能力を再現した上で遠隔操作するシステム。基本的な技術は200年前に完成しており、作中現在編においては擬装技術も向上して通り一遍の検査では見破れない。死んだ人間を再利用することから付いた呼び名だが、生きている人間も処置されるパターンがある。現在活動している英霊団を始めとしたネクロ・ソルジャーはダーザインによるものだとされる。
治療に関してはS・ノヴァをして「現物を診なければ何とも言えない」と答えている。
英霊団(エインヘルヤル)
ネクロ・ソルジャーで構成された武装組織。エーリカを始め、かつてはグリューンタールに所属していた機甲術使いがネクロ・ソルジャー化している。
機甲術(パンツァー・クンスト)
ガリィやエーリカが使う、対サイボーグ戦闘、無重力下戦闘を想定した火星古武術(マルス・クリーグ、マーシャル・アーツ)。過去の事件で流派は消滅している。古くから伝わる技だけでも絶大な戦闘力を発揮するが、技術の進歩・発展から編み出された新しい技法も存在し、前者をクラシック・スタイル。後者をモダン・スタイルと呼ぶ。
天蓋協会(MBV、Mars Baldachin Verein、エムベーファオ)
本来大気の薄い火星でも生活できるよう作られた、火星天蓋(バルダヒーン)を維持管理する組織。天蓋を支える巨大な柱(ゾイレ)は彼らが文字通り人柱となって作られている。不干渉原則により地上の争いごとには基本的に関知しない。天蓋を管理するために外界より100年は先という独自の技術発展を遂げているが、傷病者は治療するよりゾイレにしてしまう関係上、医療技術は停滞気味。
天蓋(バルダヒーン)
火星の大気を1気圧に維持している屋根。微細機械によって形成されている。ゾイレによって支えられ、隔壁(ヴァント)によって「天蓋地」と呼ばれる一定の区域に分割されている。様々な要因によって天蓋が破壊される(天蓋破裂/ヒンメルブルフ)と、その区域は一気に0.007気圧にまで低下してしまう。天蓋自体は隕石でも滅多に破れることはないが、人為的な破壊には弱い。それらを防止するため、宇宙船が軌道上から地上に直接降下できるポイントは限定される。移動するには既定の門(トーア)を通らなければならないが天蓋協会の宇宙船(バイネ)は天蓋を破壊せずに通過できる。また、天蓋が未設置または天蓋破裂を起こした区域は「無天蓋地(ボイド)」と呼ばれる。
エドム会議
火星の環境維持システムのひとつ「太陽鏡衛星(ティーダカガン)」の照射権を調整するために3年に1度、火星の大領主たち「18大公(グロース・アハツエーン)」が集まって開催されている会議。農業生産などに直結する以外にも厳冬季の住環境にも影響するため照射権の配分に関しては侃々諤々の激論になる。
人面腫(マスケトーマ)
火星でも稀に発生する奇病。細胞再生のメカニズムを暴走させ、顔面状の腫瘍を形成する。厄介なのは形成された腫瘍に知性こそないものの「脳」も作られることで大量の酸素やブドウ糖といったものを消費し、増殖すると心肺機能が追い着かなくなる。発症した時点で人面腫の因子「恐怖の虹(メトスイーリス)」は全身に浸透しており外科手術で切除しても新たな腫瘍ができサイボーグ化すれば脳にまで腫瘍が発生する。ムスターは自身の細胞から作り出したガン細胞を注射することで腫瘍の増殖を抑えているが、対症療法に過ぎない上に身体にかかる負担も大きい。
Dr.ヌゲマによって適切な方法で育成した腫瘍は摘出後に一個体といえるレベルにまで成長することが明らかとなる。摘出された個体「摘出児(ヘラオスキント)」は人面腫が発症しないどころか、「LO」終盤のガリィ(生脳)の様に生身の肉体を得ることも可能。
結晶化毒(クリスタルモルテン)
ケイ酸鉱物のノアキス石を粉末状にして作られた毒物。クルヒト・ソナン博士が発見したが、悪用されることを恐れて秘匿していた物を、息子であるイタル・ソナンことバロン・ムスターが実用化した。
それ自体は無毒な上、無味無臭で摂取しても1週間ほどで体外に排出されるが、体内に残留した状態で特定の周波数の超音波を受けると粒子が共振して周囲のタンパク質を瞬時に結晶化させる。Dr.チンモイに研究委託して対象が砂と化して崩れる「砂状化毒(サブルムモルテン)」も試作された
不滅の秘薬(ほろびずのくすり)
火星の秘宝とうたわれた宝物。黄金杖とクラウゼヴィッツ戦争論下巻をカギとして、そのデータを記したディスクをムスターが手に入れた。貴重なロストテクノロジーだが、人面腫の治療には不適格だった。
護国天使(エトルナク)
十二大公が相伝する巨大な機動兵器。伝説上の九大始祖が使役した護国天使を模した物で、力と富と権力の象徴とされる。シドニアでは領主交代の「継承の儀」は護国天使の一つ「オデオンバッハ」の操縦権の継承を指す。脳波による命令で操縦し、不慣れな者でも操縦できるようAIによる半自動化がなされている。フル出力の臨戦モードでは腕を振るっただけで都市の一街区を破壊するなど絶大な性能を誇る。
メカニズモ
機械結社といわれる組織で技術情報の収集・売買を目的としている。所属するサイボーグには非人間型や人体構造と異なるボディを持つ者が多い。


書籍情報[編集]

脚注[編集]

[脚注の使い方]

注釈[編集]

出典[編集]

  1. ^ 銃夢火星戦記(1)”. 講談社. 2020年11月23日閲覧。
  2. ^ 銃夢火星戦記(2)”. 講談社. 2020年11月23日閲覧。
  3. ^ 銃夢火星戦記(3)”. 講談社. 2020年11月23日閲覧。
  4. ^ 銃夢火星戦記(4)”. 講談社. 2020年11月23日閲覧。
  5. ^ 銃夢火星戦記(5)”. 講談社. 2020年11月23日閲覧。
  6. ^ 銃夢火星戦記(6)”. 講談社. 2020年11月23日閲覧。
  7. ^ 銃夢火星戦記(7)”. 講談社. 2020年11月23日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]