重力ポテンシャル

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均一な球体の周りの重力ポテンシャルの 2次元でスライスしプロットした図、変曲点は、球体の表面にある。

重力ポテンシャル英語: gravitational potential)とは、ニュートン力学において、重力による質量あたりの位置エネルギーである。すなわち、空間内の位置質点を動かす際に重力が質点に行う質量あたりの仕事の符号を変えたものに等しい。 静電ポテンシャルとの類推で電荷の役割を質量が果たす。通常は無限の遠方を重力ポテンシャルの基準点(重力ポテンシャルが0となる点)として選び、有限の距離では重力ポテンシャルは常に負値をとる。

数学では、重力ポテンシャルはニュートンポテンシャル英語版とも呼ばれ、ポテンシャル論の研究において基本的である。

位置エネルギー[編集]

重力ポテンシャルは質量あたりの位置エネルギー(ポテンシャルエネルギー)である。 重力ポテンシャルを φ とすれば、位置 r にある質点 m の位置エネルギー U は

となる。位置エネルギーは、基準点(通常は無限遠点)から空間内の与えられた位置へ物体を移動させる重力場によってなされる仕事の符号を変えたものに等しい。単位質量の質点に対しては、その質点の位置エネルギーは、重力ポテンシャルに等しい。

ある状況下では、場が位置によらないとしてこの関係式を単純化することができる。つまり日常的な状況である地表付近では、重力加速度は定数であると考えることができる。この場合には、ある高さと別の高さでの位置エネルギーの差は、高さの差と比例関係にあると近似できて

となる。

数学的な形[編集]

質量 M の点粒子から x 離れた位置のポテンシャル(potential) V は、無限遠点からその点への単位を移動させる重力場のなす仕事として定義される。すなわち、

であり、ここに G は重力定数である。ポテンシャルは、MKS単位系で単位質量毎のエネルギー単位、つまり J/kg である。慣例により、定義されている重力ポテンシャルは常に負であり、x が無限遠点へ近づくと重力ポテンシャルはゼロに近づく。

このように、重力場は質量をもった物体の周りの空間の中での小さな物体の加速度であり、重力ポテンシャルの負の勾配である。このようにして、負の勾配の負であるという性質は、質量を持った物体の方向への正の加速度であることを意味している。何故ならば、ポテンシャルは角度成分を持たず、その勾配は、

である。ここに x は小さな物体の質量点からの向きを持つ長さ x のベクトルでり、 は小さな物体からの向きを持つ単位のベクトルである。従って加速度の大きさからは、逆2乗の法則

が従う。

質量分布英語版(mass distribution)に伴うポテンシャルは、点質量のポテンシャルのスーパーポジションである。質量分布が点質量の有限個の集まりであり、点質量が点 x1, ..., xn の位置にあり、質量 m1, ..., mn であれば、点 x での質量分布のポテンシャルは、

である。

xr とする。r は質量分布(灰色)の中に含まれ、微分された質量 dm(r) は点 r に位置するとする。

質量分布が 3次元ユークリッド空間 R3 上の質量測度(measure) dm として与えられると、ポテンシャルは、−G/|r| と dm の畳み込みである。[1] これは積分

に等しく、ここに |x − r| は、点 xr の間の距離である。r での質量分布の密度を表現する函数 ρ(r) が存在し、従って、dv(r) をユークリッド空間の体積要素(volume element)とするとき、dm(r)= ρ(r)dv(r) となるときは、重力ポテンシャルは体積積分英語版(volume integral)

である。

V を連続の質量分布 ρ(r) からのポテンシャル函数とすると、ρ はラプラス作用素 Δ 使い再現することができる。

この式は、点粒子に対し ρ が連続で、有界な領域の外側でゼロであれば成り立つ。一般に、質量測度 dm は、ラプラス作用素をシュワルツ超函数の意味とすると、同じ方法で再現される。結論として、重力ポテンシャルは、ポアソン方程式を満たす。3変数ラプラス方程式のグリーン函数英語版(Green's function for the three-variable Laplace equation)やニュートンポテンシャル英語版(Newtonian potential)を参照。

球対称性[編集]

球対称な質量分布は、分布の外側にいる観察者からは、質量の全体が中心に集まっているように振る舞うように見える。このようにシェル定理英語版(shell theorem)を使ったものが、有効理論としての点質量(point mass)である。地球の表面上で、加速度はいわゆる標準重力 g で近似値 9.8 m/s2 で与えられる。この近似値は経度と緯度により少し変わるが、加速度の大きさは、地球は扁球しているので、北極や南極で少し大きくなる。

球対称な質量分布の中では、球対称座標のポアソン方程式英語版(Poisson's equation in spherical coordinates)を解くことができる。半径 R で密度が ρ の均一な球体の中では、球の内部の重力 g は中心から距離 r に線型に変化し、重力ポテンシャルを与える。これは、[2]

となる。これに球の外側のポテンシャル函数に接続されている。(先頭の図を参照)

一般相対論[編集]

一般相対論では、重力ポテンシャルが計量テンソルに置きかわる。重力場が弱く、ソースが光速度に比して非常に遅く運動しているときは、一般相対論はニュートン重力を再現し、計量テンソルは重力ポテンシャルの拡張となっていると考えることもできる。[3]

参照項目[編集]

出典[編集]

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参考文献[編集]

  • Peter Dunsby (1996年6月15日). “Mass in Newtonian theory”. Tensors and Relativity: Chapter 5 Conceptual Basis of General Relativity. Department of Mathematics and Applied Mathematics University of Cape Town. 2009年3月25日閲覧。
  • Lupei Zhu Associate Professor, Ph.D. (California Institute of Technology, 1998). “Gravity and Earth's Density Structure”. EAS-437 Earth Dynamics. Saint Louis University (Department of Earth and Atmospheric Sciences). 2009年3月25日閲覧。
  • Charles D. Ghilani (2006年11月28日). “The Gravity Field of the Earth”. The Physics Fact Book. Penn State Surveying Engineering Program. 2009年3月25日閲覧。
  • Thornton, Stephen T.; Marion, Jerry B. (2003), Classical Dynamics of Particles and Systems (5th ed.), Brooks Cole, ISBN 978-0-534-40896-1 .
  • Rastall, Peter (1991). Postprincipia: Gravitation for Physicists and Astronomers. World Scientific. pp. 7ff.. ISBN 981-02-0778-6. 
  • Vladimirov, V. S. (1971), Equations of mathematical physics, Translated from the Russian by Audrey Littlewood. Edited by Alan Jeffrey. Pure and Applied Mathematics, 3, New York: Marcel Dekker Inc., MR 0268497 .