重力場
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重力場(じゅうりょくば、英語: gravitational field)とは、万有引力(重力)が作用する時空中に存在する場のこと。
重力を記述する手法としては、ニュートンの重力理論に基づく手法と、アインシュタインによる一般相対性理論に基づく手法がある。
ニュートン的な重力場[編集]
位置 r にある質量 m の粒子に作用する重力 Fg は
と表される。このベクトル場 g が重力場である。比例係数である質量 m は、ときに重力質量とも呼ばれるが、等価原理に則れば慣性質量と区別する必要はない。
ニュートンの重力理論によれば、位置 x に生じる重力場 g は、すべての質点のもたらす重力の重ね合わせであり、各点を位置 ri 質量 mi としたとき、各点ごとの質量に比例すると同時に各点からの距離の 2 乗に反比例し[1]次式で表される。
ここで、比例係数 G はニュートンの重力定数である。
重力ポテンシャル[編集]
重力場は、その回転を取るとゼロとなる。従って、次式のように重力場を導くスカラーポテンシャルを定義できる。
重力ポテンシャルを指して重力場と呼ぶ場合もある。
質点系に対して重力ポテンシャルはつぎのように表される。
ここで質量分布を
で定義すれば、重力ポテンシャルは
となる。
任意の質量分布に対し、その重力ポテンシャルはポアソン方程式
を解くことで決定できる。
一般相対性理論と場の方程式[編集]
一般相対性理論においては、質量やエネルギーのもたらす時空の歪みにより物体同士は近づきあうものと考える。かならずしも力として解釈する必要はないが、ニュートン説になぞらえて重力という言葉を用いての説明も多い。
時空の歪みは時空の計量 gμν によって表される。 これは世界間隔 ds2 を時空の座標 xμ=(ct,x,y,z) を用いて表示する係数
として定まる二階の対称テンソル場であり、四次元時空の場合10個の独立な成分を持つ。ただし gμν そのもの、 あるいはその微分(クリストッフェル記号)は座標変換によりその値が変化し、 特に一点で gμν がミンコフスキー計量に一致しクリストッフェル記号がすべてゼロであるような座標系が常に存在する(局所慣性系)。 従って計量のうち時空の曲がりを記述するものはその二階微分であり、座標変換の自由度を除くと20成分存在する[2]。 この自由度はちょうどリーマン曲率テンソルにより記述されるものに等しい。 従って、真の重力場が存在することはリーマンテンソルがゼロでないこととして特徴づけられる。 この主張は物理的には潮汐力の存在と関係している[3]。 例えばミンコフスキー時空の場合リーマンテンソルの成分はすべてゼロである。 逆にリーマンテンソルがゼロであるとき、その時空は(少なくとも局所的には)ミンコフスキーであり時空の歪みは存在しない[4]。
重力場が弱く物質場が非相対論的であるときには世界間隔は
と表され、計量はニュートン的な極限で重力ポテンシャルと関係している[5]。
歪んだ時空の中での進み方は測地線の方程式
で記述される。Γ はクリストッフェル記号で、計量の微分によって書かれる。
重力場の力学方程式はアインシュタイン方程式
である。これは計量 gμν に関する非線型二階双曲型偏微分方程式であり、 適切な座標条件および初期条件のもとで計量の時間発展を記述する[6]。アインシュタイン方程式は重力(場)を表す式とされるが、「重力方程式」ではなく、「場の方程式(Field Equation)」と呼ばれる。
たとえば地表での放物落下運動が時空のゆがみの結果であり、光を含めた万物が影響をうける。物体や光の軌道は、それ自体の生む重力が無視できる場合に、4次元時空間上で重力強度に依存して一定の曲率をとる。[?]
脚注[編集]
参考文献[編集]
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- 藤原邦男 『物理学序論としての力学』東大出版会〈基礎物理学〉、1984年。ISBN 4-13-062071-1。
- L.D.ランダウ, E.M.リフシッツ 『場の古典論』東京図書〈理論物理学教程〉、1978年。ISBN 4-489-01161-X。
- 田中貴浩 『深化する一般相対論 ブラックホール・重力波・宇宙論』丸善出版、2017年。ISBN 978-4621302316。
- Hawking, S. W.; Ellis, G. F. R. (1973). The large scale structure of space-time. Cambridge, UK: Cambridge University Press. ISBN 978-0-521-09906-6
関連項目[編集]
- アインシュタイン方程式(重力場の方程式)